社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2010年02月03日)時点のものです
私(わたし)は,愛媛(えひめ)県西条(さいじょう)市の農林土木課で働いています。「農業基盤(きばん)整備(せいび)事業」の担当(たんとう)として,農道・水路・圃場(ほじょう)(畑のこと)などの整備(せいび)計画を立てたり,設計(せっけい)や工事をしたり,事務(じむ)の管理をしたりしています。農業は人間が生活していく上でかけがえのない産業で,西条(さいじょう)市には約4,700ヘクタールの農地があります。裸麦(はだかむぎ)・あたご柿(がき)・春の七草の収穫(しゅうかく)量は全国第一位,他にも水稲(すいとう)・アスパラガス・いちご・キャベツ・きゅうり・ほうれん草など,収穫(しゅうかく)量が県内第一位の作物がたくさんあります。また,農業は生態系(せいたいけい)や景観の保全(ほぜん)などの役割(やくわり)も果たしていて,水田に水を貯めることは地下水の保全(ほぜん)に繋(つな)がります。最近では工事をする前に,小学生の皆(みな)さんと一緒(いっしょ)に工事を予定している場所に行き,どんな植物や動物がいるのか調査(ちょうさ)することもあります。県内でもメダカは絶滅(ぜつめつ)危惧種(きぐしゅ)に指定され,数が減(へ)ってきています。そこに棲(す)む生き物たちのことも考えた工事ができるように計画したいと思っています。
西条(さいじょう)市内には,農道・溜池(ためいけ)・水路の維持(いじ)管理をしている「水土里(みどり)ネット」という農家の団体(だんたい)が合計43あります。この水土里(みどり)ネットを通じて,農家の方から,区画整理,農道・用排水路(ようはいすいろ)の改修(かいしゅう),圃場(ほじょう)整備(せいび)などの要望を聞きます。要望を実現(じつげん)するためには色々(いろいろ)な方法があり,例えば,市だけのお金を使う方法,国や県などの補助(ほじょ)を受ける方法などがあります。それぞれ工事で満たさなければいけない基準(きじゅん)が法律(ほうりつ)などで決まっているので,なるべく農家の方の負担(ふたん)が少なくなる方法を考えて計画していきます。ただ時には,頑張(がんば)って計画をしても,農家の方々(かたがた)の要望通りにならないこともあります。農家の方全員の意見が一致(いっち)しない時や,国・県が決めた基準(きじゅん)と農家の要望が折り合わない時です。このような時は,説明会などを開催(かいさい)し,農家の皆(みな)さんと意見を交換(こうかん)しながら計画をまとめていきます。きちんと理解(りかい)してもらえるように,何度も農家の方の元へ足を運びます。
地元農家の了解(りょうかい)を得ながら整備(せいび)計画を立てた後,工事をします。水路工事を例に挙げると,始めに設計書(せっけいしょ)を作り,建設(けんせつ)業者へ作業を依頼(いらい)します。建設(けんせつ)業者は現場(げんば)で測量(そくりょう)をして,計画された水路の位置や高さを示(しめ)す「丁張(ちょうは)り」と呼(よ)ばれる木の目印を現地(げんち)に設置(せっち)します。次に,機械で土砂(どしゃ)を決められた深さに掘(ほ)り,砂利(じゃり)などを敷(し)いて土台となる基礎(きそ)工事を行ないます。そして,水路用の製品(せいひん)を据(す)え付け,コンクリートを流し込(こ)んで整備(せいび)します。最後に土砂(どしゃ)を埋(う)め戻(もど)し,仕上げをして工事は終わりです。完成後に検査(けんさ)をして,合格(ごうかく)すれば水路を農家へ引き渡(わた)します。
農家の方々(かたがた)に「やっぱり工事をして良かった。ありがとう」と喜んでもらえた時が一番嬉(うれ)しいですね。現在(げんざい),農業をされている方の高齢(こうれい)化が問題になっています。自分の子どもや孫に田や畑を少しでも良い状態(じょうたい)で残したいという人や,地域(ちいき)の農家に耕作(こうさく)して欲(ほ)しいという方も増(ふ)えています。私(わたし)は以前,愛媛(えひめ)県大洲(おおず)出張(しゅっちょう)所という場所で仕事をしていました。平成5年頃(ごろ)に担当(たんとう)した内子町(うちこちょう)の工事現場(げんば)が印象に残っています。その時,内子町(うちこちょう)石畳(いしだたみ)地区にある木造(もくぞう)の屋根付橋(やねつきばし)の改修(かいしゅう)を担当(たんとう)しました。当時は設計(せっけい)や施工(せこう)で苦労しましたが,何年か経(た)って現場(げんば)を見に行った時,自分が係わった橋や水路を地元の人達が大切に使ってくださっていることや,年月が経(た)って橋や水路が地域(ちいき)に溶(と)け込(こ)んでいることを感じた時,幸せな気持ちになりました。
農家の方から要望が出されて工事が完成するまで,早い物で2~3年,大きい工事になると8~10年くらいかかります。ですから地元農家の方々(かたがた)との話し合いを大切にするように心がけています。農家の方がどのような物を必要としているのかよく聞いて,相手の気持ちを理解(りかい)した上で計画をまとめていくことが大切です。国・県等の基準(きじゅん)に合わせて工事をする場合は,それを無理やり押し付けるのではなく,分かりやすい言葉で伝えられるように注意しています。農家の方々(かたがた)の要望をできるだけ実現(じつげん)できるように努力していきたいと思います。
高校生の頃(ころ)まで,将来(しょうらい)なりたい職業(しょくぎょう)を決めることができませんでした。大学では,農学部で農業工学を専攻(せんこう)していたので,勉強したことを活かせる仕事に就(つ)きたいと思いました。大学3年生の頃(ころ),県か国の農業土木に関わる公務員(こうむいん)になろうと決めました。私(わたし)が就職(しゅうしょく)した平成元年当時,県の「農業土木職(しょく)」という採用(さいよう)があり,県の試験に合格(ごうかく)してこの職業(しょくぎょう)に就(つ)きました。現在(げんざい),私(わたし)は愛媛(えひめ)県職員(しょくいん)という立場で西条(さいじょう)市役所に派遣(はけん)されています。
小学生の頃(ころ)は,友達と「草野球」や「6むし」などボールを使って遊ぶことが大好きでした。漫画(まんが)を読むことが好きで,「ドラえもん」「おばけのQ太郎(たろう)」や「ドカベン」などをよく読んでいました。家の中にいるより外で遊ぶのが好きで,小学生の頃(ころ)は顔が日焼けで真っ黒でした。現在(げんざい)は,マウンテンバイク,ロードバイクなど自転車が趣味(しゅみ)で,休日にはよく走りに行きます。
世の中には,皆(みな)さんが思っている以上にたくさん,色々(いろいろ)な仕事があります。これになりたいと簡単(かんたん)に決まらない人もいると思いますが,慌(あわ)てずにゆっくり考えて探(さが)して下さい。自分が好きなことで,長く続けられる仕事に就(つ)ければ良いと思います。また,小・中学生の頃(ころ)は,動物や植物など自然と触(ふ)れ合って,自然を感じることが大事だと思います。外で友達と一緒(いっしょ)にたくさん遊んで下さい。