• 東京都に関連のある仕事人
  • 1953年 生まれ

    出身地 山形県

しるくすくりーんいんさつシルクスクリーン印刷

須貝すがい たけし

  • 仕事内容

    お客さまからいただいた原稿(げんこう)を,きれいに早く刷る。

  • 自己紹介

    仕事では完璧主義(かんぺきしゅぎ)だが,ふだんは正反対。たまの休みは孫と遊んだり,ゴルフに行くこともあります。

  • 出身高校

    山形県立置賜農業高等学校

  • 【このページに書いてある内容は取材日(2016年12月13日)時点のものです】

須貝 毅


仕事人記事

Tシャツなどの(ぬの)製品(せいひん)に印刷をする

Tシャツなどの<ruby><rb>布</rb><rp>(</rp><rt>ぬの</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>製品</rb><rp>(</rp><rt>せいひん</rt><rp>)</rp></ruby>に印刷をする

(わたし)は「スカイプリント」という印刷会社の社長をしています。印刷といえば紙を思い()かべるかもしれませんが,うちの会社では,主にTシャツなどの(ぬの)製品(せいひん)への印刷をしています。(ぬの)に印刷するときは,「シルクスクリーン」という方法を使います。お客さまからの依頼(いらい)を元に(はん)作製(さくせい)してプリントし,(ふくろ)()めやネーム付けをして納品(のうひん)しています。
東京にはTシャツのプリントを手がける会社が山ほどありますが,他社ではなかなか手がけていない技術(ぎじゅつ)も用いています。たとえば,生地にインクをのせるとき,スプレーをかけたようなぼかしを入れる「エアブラシ」という技法(ぎほう)などは,他ではあまりできないはずです。
また,印刷会社と併行(へいこう)して,2年ほど前に版権(はんけん)(あつか)う会社を買収(ばいしゅう)し,有名なキャラクターの使用権(しようけん)も取得しました。最近では「ジョジョの奇妙(きみょう)冒険(ぼうけん)」や「ドラえもん」「おそ松くん」「初音ミク」などのキャラクターグッズを制作(せいさく)して,イベントやオンラインショップでも販売(はんばい)しています。

朝は早くから

朝は早くから

朝は早いです。午前中だけ勤務(きんむ)する従業員(じゅうぎょういん)が6時半に来るので,(わたし)も6時には出社します。社屋の3階を自宅(じたく)にしているのですが,早いときは4時ごろに仕事を始めることもあります。朝に行う作業は,お客さまに送る商品サンプルの作成や,印刷に使うインクの配合などです。早く起きて準備(じゅんび)()ませておくと,日中の印刷工程(こうてい)をスムーズに進められます。また,インクは夜につくると,照明の加減(かげん)(ちが)う色に見えることもあるので,インクづくりは太陽光の差す朝に行うようにしています。
時頃(じごろ)から印刷作業を始めます。(はん)をセットし,Tシャツを型に着せ,1色刷ったら乾燥機(かんそうき)(かわ)かし,そのあと2色目を刷ります。色数に(おう)じて何度も乾燥(かんそう)させ,完全に(かわ)いたら完成です。作業場は1階と2階に分かれ,それぞれ同じ流れで仕事をしていますが,2階では,ベテランの従業員(じゅうぎょういん)が小ロットで特に丁寧(ていねい)さの求められる仕事を担当(たんとう)しています。また,手の()んだ加工が必要な場合は,(わたし)が自分で行います。

毎日が時間との戦い

毎日が時間との戦い

(いそが)しい時期には,さばききれないほどの多くの注文が入り,納期(のうき)の中でやりくりするのが非常(ひじょう)に大変です。仕事があふれているからといって新しい注文を(ことわ)るわけにもいかないので,毎日が時間との戦いです。現状(げんじょう)(わたし)にしかできない作業も多くあります。経営(けいえい)をしながら作業を行うのは,体力的に(きび)しいですが,(むずか)しい注文を受けられることがこの会社の強みでもあるので,何とか頑張(がんば)らなくてはいけません。
実際(じっさい)に作業をするうえでは,自分の感性(かんせい)を大事にしています。布地(ぬのじ)にプリントする(さい)は,同じ(はん)を使ってもインクの置き方や刷り方でかすれ具合が変わるため,自分の手の感覚を(たよ)りに加減(かげん)しています。Tシャツは,インクでプリント面が固くなると着心地に影響(えいきょう)してしまうので,できるだけ(やわ)らかくなるよう独自(どくじ)にブレンドしたインクを使っています。そういった試みが評価(ひょうか)されたときは,これまでの苦労が(むく)われる思いがします。利益(りえき)としてすぐに返ってこないこともよくありますが,日頃(ひごろ)の努力を(おこた)らずに続けていけば,必ず次の仕事につながっていくと信じて頑張(がんば)っています。

いいモノをつくりたい

いいモノをつくりたい

仕事の上で一番大事にしているのは,単価(たんか)の安い仕事でも手を()かずにやることです。どんな仕事のときでも,(しつ)を変えることはありません。経営(けいえい)を考えると,単価(たんか)が安くなるほど数を多くつくらなければならず,どうしても作業が(ざつ)になりがちです。しかし,(わたし)(もう)けを追求するのではなく,自分が(ほこ)りを持てるものをつくりたいと思っているので,そうした中でも手を()かないということを信条(しんじょう)としています。
また,(つね)に新しい技術(ぎじゅつ)挑戦(ちょうせん)することを心がけています。アイデアが思い()かんでも,すぐに実現(じつげん)できるものではありません。うまくできなければ,いったん時間を置いて他のことをやり,もう一度試したりします。一日中かけてやってもなかなか解決(かいけつ)しないときは,日にちを置いて発想を変えることがコツです。偶然(ぐうぜん)成功する場合もありますが,それも普段(ふだん)の努力があってのこと。まずはこつこつと一生懸命(いっしょうけんめい)取り組むことが大切ですね。
意識(いしき)はしていないのですが,いつも仕事のことが頭にあるのか,たまに,仕事のアイデアを(ゆめ)に見ることもあります。新しい技術(ぎじゅつ)(ゆめ)で思いつくんですが,後で実際(じっさい)に試してみて,うまくいくこともあるんですよ。

農家から一転,印刷の道へ

農家から一転,印刷の道へ

地方に生まれた(わたし)は,実家を()ぐために農業高校に通い,卒業後は地元の電器店で働きながら農業をしていました。そんなとき,東京で版画(はんが)制作(せいさく)をしていたおじから「Tシャツのプリントを手がけるので手伝わないか」と(さそ)われたのです。田舎(いなか)での農業生活にうまく馴染(なじ)めなかった(わたし)は,その(さそ)いに乗り,23(さい)で上京しました。
初めはおじからインクと(はん)(わた)されただけでしたが,見よう見まねで刷り方を覚えました。新しいことに挑戦(ちょうせん)するのが好きだったので,一週間もたたずに手(ごた)えを感じ「他の人に負けないぞ」と夢中(むちゅう)で練習しました。上京直後は標準語(ひょうじゅんご)がうまく話せず()ずかしかったりもしましたが,次第に知り合いも()え,シルクスクリーンの版画(はんが)をやっている有名な人たちにも会うようになり,いろいろなことを教わりました。そうしていくうちに自分で会社を立ち上げて,今に(いた)っています。

芸術(げいじゅつ)の好きな野球少年

<ruby><rb>芸術</rb><rp>(</rp><rt>げいじゅつ</rt><rp>)</rp></ruby>の好きな野球少年

小さい(ころ)からものをつくるのが好きでした。小学校のときは特に書道が得意でしたね。また,学校で絵や茶碗(ちゃわん)制作(せいさく)すると,いつも校長室に(かざ)られていました。版画家(はんがか)のおじは国展(こくてん)(※日本最大級の美術(びじゅつ)公募(こうぼ)(てん))に入賞する腕前(うでまえ)だったので,(わたし)芸術家(げいじゅつか)の血を引き()いでいたのかもしれないです。ただ,つくるのは好きでも,取りかかるまでに時間がかかりました。切羽詰(せっぱつ)まらないとやらないタイプでしたね。その点は今とは正反対です。
もともと体は弱かったのですが,野球が大好きな少年でした。中学ではもっと体を(きた)えようと柔道(じゅうどう)部に入ったものの,あるときグラウンドで野球の試合を見かけたとき,熱い思いをおさえられなくなり,結局野球に(もど)りました。そこからは他人に負けないように努力して,だんだん体も丈夫(じょうぶ)になり,()()びました。高校では(かた)(こわ)して硬式(こうしき)野球をあきらめましたが,軟式(なんしき)(さそ)われ,楽しい学校生活を送りました。今の仕事は体力も使うので,この(ころ)に体を強くしておいたことがとても役立っています。

好きなものに挑戦(ちょうせん)し続けよう

好きなものに<ruby><rb>挑戦</rb><rp>(</rp><rt>ちょうせん</rt><rp>)</rp></ruby>し続けよう

独立(どくりつ)したころ,夕方の6時からサンプル作りに没頭(ぼっとう)するうち,いつの間にか朝の6時になっていたということもありました。好きなことには,()る間も()しむほど夢中(むちゅう)になることができます。
みなさんも,やりたいと思ったことは何でもやってみてください。何かを始めるのに(おそ)すぎるということはないと思います。長くやってきた人に追いつくことも,努力次第でできるはずです。何より,やる前からあきらめないことが大切です。
そして,やるならとことんやってほしいと思います。芽が出るまでには時間がかかり,ときには挫折(ざせつ)することもありますが,そんな経験(けいけん)()り返すことで,徐々(じょじょ)に自分の方向(せい)が見えてくるでしょう。大人になってから「あの(ころ)こうやっておけばよかった」と後悔(こうかい)しないように,(わか)いうちから全力で取り組んでください。
(わたし)は地方から上京し,これまで自由気ままにやってきましたが,今の世の中,何をやるにも周りから反対されることが多いかもしれません。みなさんが自分の感性(かんせい)理解(りかい)()ばしてくれる人に出会えるよう願っています。

  • 取材・原稿作成:東京書籍株式会社/協力:城北信用金庫

私のおすすめ本

  • 世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ

    くさばよしみ(編),中川学(絵)

    南米ウルグアイのムヒカ大統領(当時)がブラジルの国際会議で演説した内容が,わかりやすく絵本になっています。ムヒカ大統領の言っている事は自然の流れですが,人類の発展・進化には多少の環境破壊がどうしてもついて回ってしまうのもまた事実。だが,それも一人ひとりの心がけで変わっていくのではないか…と考えさせられる本です。大人はもちろん,これからの世の中をささえていく学生や子どもたちにぜひ読んでほしい本です。