仕事人

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東京都に関連のある仕事人
1997年 生まれ 出身地 兵庫県
藤岡ふじおか 拓己たくみ
子供の頃の夢: お笑い芸人
クラブ活動(中学校): サッカー部
仕事内容
“世界初のリニア中央しんかんせん”の名にじない、さいせんたんかつお客さまに愛される「駅」をつくる。
自己紹介
休みの日はほんてきにアウトドアで、しゅのサッカーをしたり、友人といっしょに旅行に出かけたり、キャンプに行ったりすることが多いです。先日、ついに47都道府県をせいしました。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2023年06月26日)時点のものです

リニア中央しんかんせん「神奈川県駅」のけんちく計画をたんとう

リニア中央新幹線「神奈川県駅」の建築計画を担当

わたしはJR東海で、けんちくじゅつしゃとして働いています。げんざいわたしの仕事は、リニア中央しんかんせんに必要な建物をつくることです。具体的には、みなさんにご利用いただく「駅」や、リニア中央しんかんせんに電気を送る「変電所」、車両のメンテナンス・しゅうを行う「車両工場・車両」といったものがあります。わたしけんちくじゅつしゃとして、それぞれの建物に求められるのうや使う人のことを考えながら、計画・せっけいをしています。
わたしは、リニア中央しんかんせんの中間駅の一つである「神奈川県駅」(しょう。以下同じ)のけんちくたんとうしています。駅には、お客さまが利用する改札やホームのほかにも、空調せつやリニア中央しんかんせんを走らせるための電気せつなど、せっしなくてはならない機器やせつがたくさんあります。そうした機器やせつをどのように駅の中に配置すればこうりつてきなのかを考えたり、駅のコンセプトやデザインを考えたりすることがわたしの仕事です。

駅づくりに関わるたくさんの方々と協力し、計画を進める

駅づくりに関わるたくさんの方々と協力し、計画を進める

ぎょうでは、駅こうぞうぶつやトンネルをけんせつする土木部門や、駅に必要な機器やせつを計画する機械・電気・信号通信部門、駅のオペレーションなどを考えるうんえいぎょう部門といった社内関係者だけでなく、駅のせっけいせっけい会社やじっさいに工事を行うこう会社、ぎょうせい機関など、社外の関係者とも相談・協議をかえしながら計画を進めています。
具体的には、社内の各部門のたんとうしゃから出た「こういう電気せつが必要」「このせつを入れたい」といったじょうけんや意見を取りまとめ、それをもとに駅全体のレイアウトを考えていきます。駅の中の区画をどう配置するか決めたり、「この区画にはこの機械が入るから広さはこのくらいにしよう」と考えたり……。パズルを組み立てていくようなイメージで、駅をつくるために必要な計画を作成し、せっけい会社にせっけいいてもらいます。また、こう会社と相談しながら、駅をつくるさいの工事の方法や工事の進め方を考えるのも、わたしの仕事です。より良い駅になるようにと、多くの関係者とコミュニケーションを取りながら、仕事に取り組んでいます。

駅をご利用いただくみなさまに「ごしやすい」と感じてもらえるように

駅をご利用いただくみなさまに「過ごしやすい」と感じてもらえるように

駅のせっけいをするうえでは、おとずれた人が「ごしやすい」と感じてもらえるような空間をつくることをしきしています。特に神奈川県駅は、リニア中央しんかんせんの中間駅でゆいいつ、地下につくられる駅です。そのため、太陽の光が入ってこない地下空間でも息苦しさを感じさせないようなふうが必要です。えいぞうひょうする「デジタルサイネージ(電子かんばん)」をせっしたり、緑をふんだんに取り入れたりと、地下でもワクワクしてもらえるようなけを、せっけい会社と相談しながらけんとうしています。
また、神奈川県駅ならではのせつを取り入れることもけんとう中です。神奈川県駅のある相模さがみはらは「さがみロボット産業特区」として、ロボット産業に力を入れています。さらに、ちゅうの研究や開発を行っている、JAXA(ジャクサ、ちゅうこうくう研究開発こう)のせつがある場所でもあります。今後、自治体やいきのみなさんとの相談だいではありますが、そうしたいきとくちょうを駅のせつにも取り入れていくことができたらいいなとも考えています。
駅を計画するにあたってのアイデアは、プライベートでおとずれた街や建物、駅を参考にすることも多いです。駅をおとずれたさいは、駅のデザインやこうぞうこんざつじょうきょうや駅を利用するお客さまのにぎわいなど、じゅつしゃてんで観察するようにしています。多くのけんちくぶつを見て、そこでのけいけんや感じたことを生かし、より良い空間をていあんできるじゅつしゃでありたいです。

毎日勉強を欠かさずに、未来をそうぞうしながら駅づくりにいど

毎日勉強を欠かさずに、未来を想像しながら駅づくりに挑む

わたしの仕事には、いっぱんてきけんちくしきだけでなく、鉄道けんちくに必要なしき、さらにはリニア中央しんかんせんというさいせんたんじゅつについてのしきも求められます。そのため、駅をつくるために守るべき法令などに加え、リニア中央しんかんせんいっぱんてきな鉄道とのちがいや、リニア中央しんかんせんに必要な機械せつや電気せつにはどんなものがあるのかなどについて、毎日勉強を欠かさず仕事にいどんでいます。
なによりむずかしいなと感じるのは、「何もないところから計画を進めなくてはならない」ということです。リニア中央しんかんせんはこれまでにない鉄道プロジェクトです。前例がないためこんなんに直面することもありますが、日々の勉強で積み上げたしきと、これまでたんとうしてきた東海道しんかんせんざいらいせんのプロジェクトで学んだじゅつを生かして、計画を少しずつ前に進めています。
また、神奈川県駅の計画にあたっては、少し先の、まだ見ぬ未来をそうぞうしながらけんとうしなければいけません。これも苦労するところです。わたしたちの生活スタイルがしんがたコロナウイルスのえいきょうで大きく変化したように、駅に求められるのうも、これからますます変わっていくはずです。さらに、駅の中に入る機械やせつも、日々どんどん新しいものが開発されています。だからこそ、しょうらい、駅を利用するお客さまのことを考えながら、駅の計画もつねに最新のものにアップデートしていく必要があります。考えなくてはならないことが多くじょうに大変ではありますが、それだけにやりがいも大きく、達成感をられる仕事であると感じています。

相手の意見にいながら、より良い空間をていあんしていく

相手の意見に寄り添いながら、より良い空間を提案していく

仕事をするうえで何より大切にしているのは、「つねにおたがいにとって良い結果になるようなさいぜんさくいだすこと」です。わたしぎょうでは、土木・機械・電気のたんとうしゃや、けんちくせっけいせっけい会社、工事を行うこう会社など、たくさんの人と関わります。わたしの仕事は、各所からの意見を取りまとめて駅の計画を立てることですが、考え方やせんもん分野がちがうさまざまな人がいるからこそ、意見やほうしんちがうことも多いです。ただ、そのときに相手の意見をていして自分の考えをとおすだけでは、問題はかいけつしません。 そのため、相手がなぜそういう意見を持つにいたったのか、そのはいけいこんきょまでしっかり聞いて、かいするよう心がけています。
駅を利用するお客さまのてんわすれてはなりません。駅は、不特定多数の人が利用する場所です。こうれいの方やしょうがいのある方も安全でかいてきごせる空間になるよう、バリアフリーの目線でせっけいすることや、海外の方々が利用しやすい駅であることも重要です。
このように、駅をつくる人、使う人、すべての人にとってのさいぜんさくを見つけ、全体を客観的に見て、良い方向にみちびいていくのがわたしにんであると考えています。「良い建物や良い空間をていあんできるそんざい」として、これからも相手にいながらけんちくに取り組んでいきます。

やりがいを感じるのは、自分の計画が形になり、利用してもらえるとき

やりがいを感じるのは、自分の計画が形になり、利用してもらえるとき

この仕事のりょくは、「自分の考えた建物の計画がさいようされ、じっさいに形になり、多くの人に利用してもらえる」ことだと思います。多くの関係者やいきのみなさんと意見をわしながら、自分が進めた計画が形になり、新しい建物や駅が生まれるということには、大きなやりがいを感じます。
に、名古屋にある車両工場のたいしんきょうたんとうしたことがあるのですが、そこでも、自分の意見がはんえいされたことがあります。たいしんきょうは、建物にかかる重量をらすことが重要なのですが、工場内には古くて重いクレーンがてんじょうせっされていました。そのクレーンが建物のたんとなっていることに気づいたわたしは、クレーンのえをていあんしたのです。自分の意見がさいようされ、じっさいしんがあったときの建物へのえいきょうけいげんし、計画を見直すことができたときは、大きな自信につながりました。
また、車両工場の中にある小さな建物のかいしゅうを行うさいも、入り口にスライド式のドアをせっすることをていあんしました。もともと、引いて開けるタイプのドアだったのですが、げんの人が台車を引いて出入りする様子を見て、スライド式のドアのほうが使いやすいと考えました。かいしゅう工事がかんりょうした後、「使いやすくなったよ!」と、げんの人にちょくせつ声をかけてもらえ、じょうにうれしかったのを覚えています。もちろん、計画を立てるときには不安やプレッシャーを感じることもありますが、駅や建物ができあがるしゅんかんよろこびをむねに、日々、仕事に向き合っています。

人々のおくや思い出に残る駅をつくりたいという思いから、けんちくの道へ

人々の記憶や思い出に残る駅をつくりたいという思いから、建築の道へ

わたしは小さいころから、自分の部屋のレイアウトを変えたり、友人といっしょみつをつくって遊んだりすることが大好きで、「自分で空間をつくる」ということにきょうを持っていました。その後、ほんかくてきけんちくを学んでみたいと考え、高等せんもん学校(こうせん)へ進学し、こうせんけんちくを学んでいくうちに、「人々のおくや思い出に残る建物にたずさわれたら幸せだな」と、ゆめがよりめいかくになっていきました。
人々のおくや思い出に残る建物って何だろう、と考えたときに思いついたのが、「駅」でした。わたしが生まれ育った兵庫県のあわしまには鉄道がなく、初めて鉄道の駅を利用したのは中学生のときです。今でもその駅に行くと、きっの買い方がわからずあせった思い出や、初めて電車に乗ったときのかいてきさを思い出し、なつかしく感じます。みなさんにもきっと、「初めて改札を通った駅」や「旅行先で利用した駅」など、思い出に残っている駅があるはずです。そうした駅のけんちくたずさわりたいという思いと、リニア中央しんかんせんの駅のけんちくせっけい・計画だんかいからたずさわれるということにりょくを感じ、JR東海へのしゅうしょくを決めました。

学生時代に育んだ、しきやチームをまとめる力

学生時代に育んだ、組織やチームをまとめる力

わたしあわしまという自然がゆたかな場所で育ったえいきょうから、外で遊ぶことが好きな子どもでした。かんけりをしたり、サッカーをしたり、みんなでりざおをかついで海にりをしに行くことも多かったです。そんな活発な子ども時代だったのですが、両親が共働きだったため自分でやらなくてはいけないことも多く、せきにんかんは人一倍、強かったと思います。じっさいに、中学で委員長に選ばれたり、こうせんではサッカー部のキャプテンをつとめたりもしました。
こうせんのサッカー部は、学生が主体となって練習メニューを考え、チームのうんえいを行う部活でした。部活には1年生から5年生までの学生がいるので、ねんれいはばがあるだけでなく、人数も40から50人と多く、そのなかでチームをうんえいしていくのは大変だったとおくしています。しかし、学生時代からそういったやくしょくやポジションをまかせてもらえたことで、「しきやチームをまとめる力」を身につけられ、それは今の仕事にも生きていると実感しています。

たくさんのけいけんと出会いを通して、自分を成長させていくことが大事

たくさんの経験と出会いを通して、自分を成長させていくことが大事

みなさんはこれから大人になるにつれて、さまざまなこんなんにぶつかると思います。そうしたこんなんえられるようになるためには、今までけいけんしたことのない、新しいけいけんに飛びこんでみることが大事です。最初はわからないことでもごのみせず、いろいろなけいけんをすることで、人生がゆたかになるだけでなく、自分の未来が見えてくることがあると思います。また、人間関係も自分の人生をゆたかにする大事なようです。新しい人との出会いや自分の周りにいる人を大切にすることで、こんなんにぶつかったとき、相談できるそんざいとなり、自分を助けてくれるはずです。たくさんのけいけんや、人との出会いを大切にして、自信を持って自分の成長を楽しめる大人になってほしいと思います。
特にけんちくの道に進みたいと考えているみなさんは、ぜひ街なかにあるいろいろな建物をよく観察してみてほしいです。街にはどんな建物があるのか、建物がどんなふうにつくられているのか、建物が人々にどのように利用されているのかを気にして見るだけでも、かけがえのない「けいけん」になるはずです。
リニア中央しんかんせんもこれまでにない「けいけん」をていきょうし、みなさんに愛されるような鉄道になるように計画を進めています。しょうらい、多くの人から「リニアができてよかった」「リニアの駅、かっこいい!」と言ってもらえるように、わたしも努力し続けたいと思います。

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取材・原稿作成:室井 美優(Playce)・東京書籍株式会社