仕事人

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東京都に関連のある仕事人
1966年 生まれ 出身地 北海道
ほんやくか翻訳家
片山かたやま 奈緒美なおみ
子供の頃の夢: アナウンサー 外交官
クラブ活動(中学校): 軟式テニス部
仕事内容
英語(けん)出版(しゅっぱん)された本を日本語に(やく)す。
自己紹介
好奇心(こうきしん)が強くてあきらめが悪い。もっと他に解決(かいけつ)方法があるのではとか,もっとおいしいものがあるのではと思ってしまうため,世界が(つね)に広がっています。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2017年04月10日)時点のものです

出版(しゅっぱん)翻訳(ほんやく)は,根気が必要な仕事

出版翻訳は,根気が必要な仕事

(わたし)出版(しゅっぱん)翻訳(ほんやく)という,英語で書かれた本を日本の読者が読めるように(やく)す仕事をしています。それに加えて,出版社(しゅっぱんしゃ)が日本語に(やく)して出版(しゅっぱん)するかどうか検討(けんとう)している海外の本を下読みして,それがどういう本なのか内容(ないよう)をレポートにまとめる「リーディング」という仕事もしています。(わたし)は会社などの組織(そしき)(ぞく)していないフリーランスという働き方をしています。主には出版社(しゅっぱんしゃ)翻訳(ほんやく)エージェントから仕事の依頼(いらい)をもらい,本の翻訳(ほんやく)をしています。本の翻訳(ほんやく)も,それぞれの翻訳家(ほんやくか)によって得意な分野があります。(わたし)の場合はノンフィクションで,ビジネス書を多く(やく)しています。犬を()っていることもあり,動物関連の本の依頼(いらい)をいただくことも()えています。翻訳(ほんやく)専門(せんもん)分野は,今までの読書体験や映画(えいが)やテレビをどれだけ観たかなど,普段(ふだん)の自分の生活そのままがバックグラウンドになっています。とはいえ,好きな分野だけを翻訳(ほんやく)できるとは(かぎ)らないので,それほど(くわ)しくない分野に関しては,その度,一から勉強をします。出版(しゅっぱん)翻訳(ほんやく)は,ひたすら根気が必要な仕事。仕事が好きだからこそ,続けていられるのだと思います。

一冊(いっさつ)の本を(やく)すために,3か月はつきっ切りに

一冊の本を訳すために,3か月はつきっ切りに

大学卒業後,地元の放送局に(つと)めていたのですが,結婚(けっこん)して退職(たいしょく)するのを機に,翻訳(ほんやく)の勉強を本格(ほんかく)的に始めました。翻訳(ほんやく)雑誌(ざっし)に毎月コツコツと投稿(とうこう)をしていたことがきっかけで,ある先生の私塾(しじゅく)()んでいただき,先生のもとで修行(しゅぎょう)をして,プロの翻訳家(ほんやくか)になることができました。プロの翻訳家(ほんやくか)への第一歩となるのが,リーディングの仕事です。大体2週間で,原書を読みレポートを仕上げます。それをもとに,編集者(へんしゅうしゃ)が社内の企画(きかく)会議に通します。企画(きかく)が通ると,著作権(ちょさくけん)版権(はんけん)翻訳(ほんやく)(けん)などの売買が行われ,正式に翻訳(ほんやく)依頼(いらい)をいただきます。翻訳(ほんやく)作業はペーパーバック一冊(いっさつ)だと,3か月程度(ていど)をかけて行います。3か月後の()()りまでに全てを(やく)して,全体をチェックし,その後は印刷のゲラ刷りのやり取りを2,3回行い,印刷された本が世に出回るという流れです。 仕事は基本(きほん)的には自宅(じたく)でしているのですが,長い時は1日15時間ぐらいパソコンと向き合う日もあります。気分転換(てんかん)になるのは,朝夕の犬の散歩。季節を感じながら,1時間ぐらい犬と一緒(いっしょ)に歩いて,近所の方とお話をすることもあります。

翻訳家(ほんやくか)になるには先生(さが)しから

翻訳家になるには先生探しから

小さな(ころ)から,言葉への関心が強く,表現(ひょうげん)をする仕事に()きたいという想いを持っていました。外国語と本が好きだったので,その共通項(きょうつうこう)(さぐ)った先が翻訳(ほんやく)という仕事でした。出版(しゅっぱん)翻訳(ほんやく)の世界は,今も師匠(ししょう)と弟子の関係が()く残っています。翻訳家(ほんやくか)になりたいと思ったら,まずは先生を(さが)さなくてはなりません。好きな翻訳家(ほんやくか)がいたとしても,弟子を取っていないこともあります。一番簡単(かんたん)なのは,翻訳(ほんやく)学校に入学すること。そこで教えている先生のクラスに入ることができれば,さまざまな翻訳(ほんやく)に関するテクニックを学ぶことができます。例えば,日本語は一人称(いちにんしょう)をあまり使わないので,原文のまま(やく)してしまうとわざとらしい直訳(ちょくやく)的なものになるから注意しなければならないといった類のものです。プロとして(ひと)り立ちする(さい)には,先生が出版社(しゅっぱんしゃ)編集者(へんしゅうしゃ)などを紹介(しょうかい)してくださり,本を出すことができました。

グローバルな時代でも分からないことだらけ

グローバルな時代でも分からないことだらけ

出版(しゅっぱん)翻訳(ほんやく)の仕事をしていて一番大変なのは,読み進めていく中で分からない言葉が出てきた時です。これだけインターネットが発達して,調べる方法もたくさんあるのに,どうしても分からないことが出てきます。例えば,()しい情報(じょうほう)資料(しりょう)が残っていなかったり,著者(ちょしゃ)個人(こじん)的な体験の話で現地(げんち)に行かないと分からないなど,その内容(ないよう)もさまざまです。分からないことがあった時は,なるべく書籍(しょせき)にあたります。地名など読み方が分からない場合は,ネイティブスピーカーが発音してくれるサイトがあるので,それを音で聞いてカタカナで表記することもあります。また,翻訳(ほんやく)の仕事には必ず()()りがあるので,それに間に合わせられない時はとてもつらい思いをします。いかなる事情(じじょう)や理由があったとしても,編集(へんしゅう)担当(たんとう)者との信頼(しんらい)関係に影響(えいきょう)するからです。

主人公のキャラクターは言葉づかいで表現(ひょうげん)

主人公のキャラクターは言葉づかいで表現

もちろん仕事をしていて楽しいと思うこともたくさんあります。たとえば小説を(やく)している時,最初のうちは登場人物のキャラクターを決めるのに時間がかかるので,とてもスローペースです。ペーパーバックだと50から100ページあたりのところで,だんだん()()がってきて,スピードがグンと上がります。その時はまるで,何かが()(うつ)ったように(やく)せて,自分でも気分がのっているのが分かって楽しいです。自分が(やく)す小説を読んで,この主人公はすごく思いやりのある人なのだろうと感じ取ったら,(やく)すときに言葉の端々(はしばし)にそれが伝わるような表現(ひょうげん)を選びます。翻訳(ほんやく)をする(さい)には,特定の人物像(じんぶつぞう)を想起させる特定の言葉づかい「役割(やくわり)語」を用います。例えば,「~じゃ」をつければおじいさん,「~だわ」をつければ女性(じょせい)というように助詞(じょし)を変化させます。ただし,やりすぎるといかにも翻訳(ほんやく)調になってしまうので,さじ加減(かげん)をするのが翻訳者(ほんやくしゃ)のカラーとも言えるでしょう。 一番うれしいと思うのは,本が出来上がった時です。出版物(しゅっぱんぶつ)は自分の名前が()るので,達成感があります。それに両親もとても喜んでくれます。

本の読者がどんな人なのか意識(いしき)する

本の読者がどんな人なのか意識する

仕事をする上でこだわっているのは,(だれ)がこの本を読むのかを意識(いしき)することです。読む年代や性別(せいべつ)によって(やく)し方も変わってきます。最初に編集者(へんしゅうしゃ)と打ち合わせをする時に,だいたいどのぐらいの読者をターゲットにしているのかを必ず聞くようにしています。ターゲットが中学生ならもうちょっと言葉を(やわ)らかくしようとか,高校生以上であれば,もう十分に大人だから言葉は気にしなくていいなど,(つね)に気をつけています。(むずか)しい言葉が出てきた場合の注釈(ちゅうしゃく)の有無も考えなくてはなりません。注釈(ちゅうしゃく)を入れない時は文章の中に短く説明を入れるのか,全く入れなくても文脈でわかるものなのか,想定される読者のターゲット(そう)(おう)じて変えています。

本さえあればおとなしい,本が大好きな女の子

本さえあればおとなしい,本が大好きな女の子

(わたし)は子どもの(ころ)から本が大好きでした。本に関しては成長が早くて,3(さい)ぐらいから一人で本を読んでいました。母がよく,小さな(ころ)は天才かと思ったと言います。当時,(わたし)が住んでいた旭川(あさひかわ)には本屋さんがそれほどたくさんなかったので,1か月に1回本がつまった箱が(とど)く定期便を両親が契約(けいやく)してくれました。その中には翻訳(ほんやく)書が多く入っていたので,愛読書はほとんど翻訳(ほんやく)書だったと思います。幼稚園(ようちえん)(ころ)には,小学校高学年ぐらいで読むような本を読んでいました。小学校高学年になると読む本がなくなってしまい,大人の本を読もうとして,まだ早いと言われたこともあります。幼稚園(ようちえん)(ころ)に好きだったのは,ドリトル先生のシリーズや赤毛のアン。中学生の(ころ)は,夏目漱石(そうせき)川端(かわばた)康成,太宰(だざい)治など,日本の文豪(ぶんごう)を読み,高校生になると,少しずつ英語のペーパーバックを読むようになりました。交換(こうかん)留学(りゅうがく)で海外に行った友人からシドニー・シェルダンを(すす)められて読んでみたり,環境(かんきょう)(めぐ)まれていたと思います。理系(りけい)の科目はダメでしたが,英語と国語は昔から得意でした。

たくさんのものに()れることで将来(しょうらい)(はば)が広がる

たくさんのものに触れることで将来の幅が広がる

今の(わか)い人はあまり本を読まないと言います。実際(じっさい)翻訳(ほんやく)書を出版(しゅっぱん)する(さい)も,以前に(くら)べて出版(しゅっぱん)する部数が少なくなっています。(わたし)翻訳家(ほんやくか)だからという(わけ)ではなく,やはり(わか)いうちから,本や映画(えいが)舞台(ぶたい)などいろいろなものにたくさん()れることをおすすめします。人はインプットがなければ,アウトプットができません。なるべく(わか)いうちに,いろいろな人の話を聞いて,自分の将来(しょうらい)のために吸収(きゅうしゅう)してほしいなと思います。本もせっかくなら,ある程度(ていど)長いものを読んでみてください。大作を読まなければ,書いた人の気持ちや相手の気持ちをくみ取る能力(のうりょく)が育ちません。少しずつでも挑戦(ちょうせん)していけば,それが必ず役に立つ日が来ます。自分の将来(しょうらい)選択肢(せんたくし)もグンと広がるはずです。

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取材・原稿作成:東京書籍株式会社