仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

東京都に関連のある仕事人
1990年 生まれ 出身地 岐阜県
熊谷くまがい ひとし
子供の頃の夢: エンジニア
クラブ活動(中学校): 野球部
仕事内容
電気を安定的にきょうきゅうし、地元の方々に愛される、リニア中央しんかんせんの駅をつくる。
自己紹介
こうしんおうせいでこれまでいろいろなことにちょうせんしてきましたが、一つのことに集中しすぎると周りが見えなくなってしまうこともあります。休日に家族と東京ディズニーランドに出かけ、カメラマンに子どもの写真をってもらうことが最近の楽しみです。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2023年06月26日)時点のものです

リニア中央しんかんせん「神奈川県駅」のさまざまなせつに、電気を安定的にとどける

リニア中央新幹線「神奈川県駅」のさまざまな設備に、電気を安定的に届ける

わたしはJR東海で、電気じゅつしゃとして働いています。わたししょぞくする「中央しんかんせんけんせつ 電気工事部」では、げんざいけんせつが進んでいるリニア中央しんかんせんの列車や駅に電気をきょうきゅうするためのせつやシステム、列車の安全な運行をささえるせつなどについて、計画、せっけいおよびこうかんなど、はばひろぎょうを行っています。
その中でわたしたんとうしているのは、リニア中央しんかんせんの中間駅の一つ「神奈川県駅」(しょう。以下同じ)のさまざまなせつに電気をとどける仕事です。駅には、照明をはじめ、改札機、列車の発車こくや行先をひょうする電光けいばんなど、電気が必要なせつがたくさんあります。また、列車運行に必要なせつにも電気が欠かせません。こうしたせつ一つ一つに電気をとどけるために、電力会社やぎょうせい、社内の関係各所と協議を行いながら駅の計画を進めています。
鉄道の場合、電力会社からとどいた電気を「配電所」というせつでそれぞれのせつてきしたでんあつへんかんし、ケーブルを使って電気を送っています。げんざいは駅のせっけいを進めているだんかいなので、「各せつにどれくらいの電気が必要なのか」をかくにんしながら、でんあつへんかんするためのへんあつを何台せっするかを決めたり、ケーブルの配線ルートを考えたりしています。

電気をなくきょうきゅうするにはどうすればいいかを考える

電気を無駄なく供給するにはどうすればいいかを考える

一口に「せつに電気をとどける」といっても、考えなくてはならないことがたくさんあります。たとえば、電気のきょうきゅうもととなる「配電所」を駅のどこに配置するか決めなくてはなりません。電気を送るケーブルが長くなればなるほど、電気のきょうきゅうさきとどくまでにでんあつが下がってしまいます。つまり、電気をとどけたいせつの近くに配電所をせっしてケーブルを短くする方が、電気をなくきょうきゅうすることができるのです。
ケーブルを太くすればでんあつは下がりにくくなりますが、そうすると今度はコストが上がってしまいます。このように、どうすればもっとも合理的に電気をきょうきゅうすることができるのかをつねに考えながら、電気せつの配置や配線のせっけいをしています。
とりわけリニア中央しんかんせんの駅は、これまでの鉄道にはない、リニアならではのせつへの電気のきょうきゅうについても考えなくてはならないため、むずかしさを感じています。代表的なものが「ゆうどう集電せつ」です。リニア中央しんかんせんの車両は走行時、地面からいており、地上せつせっしょくしている部分がないため、車内の照明や空調などで使う電気をどこからきょうきゅうするかという課題がありました。しんかんせんざいらいせんのパンタグラフのように地上せつせっする機器を通して電気をきょうきゅうすることができないのです。そこでさいようされたのが、「ゆうどう集電」という仕組みです。これは、置くだけでスマートフォンのじゅうでんができるじゅうでんと同じような原理で、地上にせっされたコイルに電気を流すと、でんゆうどう作用によりリニア車両の底にせっされた集電コイルに電気が流れ、地上から車両側に電気をきょうきゅうすることができます。この「ゆうどう集電」のためのせつは、駅だけでなく全線にせっされる予定です。
また、車両にりするための「じょうこうそう」は、車両がとうちゃくしたときにホームと車両ドアとの間を人が通行できるようにするためのせつで、これもリニア中央しんかんせんならではのものです。飛行機に乗りこむときの通路のようなイメージですね。こうした前例のないせつに対しても、てきしたでんあつで安定的かつこうりつてきに電気をきょうきゅうするにはどうすればいいのか考えながらせっけいしなくてはならないため、せきにん重大できんちょう感がある仕事ではありますが、いきのみなさんに愛される駅にしたいという思いをむねに、開業に向けてぎょうはげんでいます。

関わる全ての関係者がなっとくできるよう、ろんを重ねて計画を立てる

関わる全ての関係者が納得できるよう、議論を重ねて計画を立てる

ぎょうないようは日によって変わりますが、ケーブルの配線ルートや配電所の場所を考えて図面を作成したり、社外の電力会社やぎょうせいと協議したりと、はばひろぎょうを行っています。また、神奈川県駅のけんせつげんに足を運ぶこともあります。地下駅である神奈川県駅はげんざい(2023年6月時点)、駅空間を地下にかくするため地面を広く深くすすめる土木工事のだんかいです。駅の建物の下にまいせつしなければならない電気せつもあるため、土木のたんとうしゃと調整しながら計画を進めています。
この仕事は社内の土木、機械、けんちくたんとうしゃ、また社外では電力会社やぎょうせいなど、社内外の多くの人と協議を重ねる必要があり、その調整にむずかしさを感じることも多いです。たとえば「この部屋のこの位置にケーブルを通すあなを開けたい」という希望を土木、けんちくたんとうしゃに伝えても、「建物のこうぞう上、それはできない」と言われることもあります。そうすると、また位置を変えてせっけいし直さなければなりません。つまり、配線ルートを一つ決めるだけでも、他分野のたんとうしゃたちとろんを重ねながら計画を立てる必要があるのです。そのため、関わる全てのたんとうしゃなっとくできるような電気せつの計画、せっけいをすることを心がけています。

失敗からしきじょうほうを共有し、より良い駅づくりを

失敗から得た知識や情報を共有し、より良い駅づくりを

仕事をする上で大切にしていることは、目的やビジョンを持ち、それを達成するために具体的な目標を立てることです。もちろん、目標を達成できなかったり、失敗したりすることもたくさんあります。ですが、そこで落ちこむのではなく、しっかりと反省した上で失敗をポジティブにとらえるようにしています。
げんざいたんとうしている神奈川県駅の仕事でも、自信を持ってていあんした計画に問題が発覚し、計画を練り直さなくてはならなくなったことがあります。そうした場合でも、自分が失敗からしきじょうほうを、他の駅をつくっているたんとうしゃに伝えることで、同じ失敗をかえすことがふせげます。つまり、自分の失敗がほかの人の「ざいさん」になり、失敗をぼうできるのです。自分の失敗を単なる失敗で終わらせないためにも、リニア中央しんかんせんの全駅の電気関係者と定期的に集まり、じょうほうこうかんするようにしています。ぎゃくに、「こうしたらうまくいった」という成功例も積極的に発信しています。そうすることで、より良い駅づくりにつなげていくことができるはずです。しょうらい、「失敗があったからこそ前に進めた」と思えるようにしきしながら、日々の仕事にいどんでいます。

生活に欠かせない「電気」を通じて、社会にこうけんできるのがりょく

生活に欠かせない「電気」を通じて、社会に貢献できるのが魅力

世の中には、電気が必要なせつがたくさんあります。たとえば、だんみなさんが見ているテレビも、そこに電気を送る人たちがいなければ動きませんよね。電気がなければ、当然、電車も動きませんし、駅も真っ暗です。みなさんもていでんけいけんしたことがあると思いますが、そのとき「電気がなくてこまったな」と感じたのではないでしょうか。だんの生活の中で当たり前になっている電気をとどける仕事は、社会や人々のらしをささえる重要なやくわりになっているのだと実感しています。電気を通して人の役に立てるということは、この仕事のりょくだと思います。
に、静岡県西さい市にある「しんじょはら駅」のたてえ工事をたんとうしたことがありました。この駅はこうぞう上、南側から入ることができない駅でしたが、「南北どちらからでも入れるように自由通路を作りたい」という自治体からの要望をじつげんするため工事が始まりました。
わたしは、新駅舎の照明やケーブルの選定、そのルートのせっけい、受配電せつの仕様けんとうを行い、工事にさいしては、げんに立ち会って照明の位置をかくにんしたり、げん作業の安全管理をになったりしました。
工事を始めてから2年半ほどかけて新駅舎が完成しました。完成時はどうたんとうを外れていたのですが、初めてたんとうした駅ということで思い入れも強く、オープンしたさいには始発電車に乗ってげんに向かいました。早朝だったのですが、かつては行き来できなかった南北がつながり、便利になった駅を利用しているお客さまがたくさんいらっしゃいました。「便利になったね」とお客さまが話をしているのを見たときはむねが熱くなり、自分のたずさわった仕事がいきの方々の生活にこうけんしているのだと、強く実感することができました。
神奈川県駅のぎょうについても、しょうらい、駅をおとずれるみなさんに「便利になった」と感じてもらえるよう、全力で取り組んでいきたいと思います。

電気のしきを生かし、未来をつくる事業にこうけんしたいという思いでJR東海に

電気の知識を生かし、未来をつくる事業に貢献したいという思いでJR東海に

わたしが電気じゅつしゃの道に進もうと決めたのは、15さいのころです。わたしの父はDIYや工作がとくで、そんな父の姿すがたを小さいころから見ていて、自分も「ものづくりに関わりたい」と思い、岐阜工業高等せんもん学校(こうせん)に進学しました。そこで電気の分野をせんこうした理由は、人々の生活になくてはならない電気の仕事であれば、しょうらいかつやくできるフィールドが必ずあるのではないかと考えたからです。3年次で大学にへんにゅうし、そこでも電気やエネルギーをせんもんてきに学びました。
しゅうしょく活動では、こうせん、大学で学んだ電気・エネルギーのしきで社会にこうけんしたいという思いで、しゅうしょくさきさがしていました。当初は、そのしきぞんぶんに生かすことができる電力会社に行こうとも考えていたのですが、さまざまな業界を調べていく中で、鉄道会社においてもわたしがやりたい電気の仕事をしていることがわかったのです。
数ある鉄道会社のなかでもJR東海を選んだ理由は、リニア中央しんかんせんという、未来をつくる事業にひかれたからです。わたししゅうしょく活動をしていた2011年は、東日本だいしんさいが発生し、世の中が不安に包まれている時期でした。だからこそ、自分のしきを生かして未来をつくる事業にたずさわりたいと思い、入社を決意しました。
「鉄道会社に入社した」と周りの人に伝えると「電車を運転するの?」と聞かれることもありますが、JR東海では、わたしのように電気のしきを持った人もたくさんかつやくしています。みなさんにはぜひ、電気の仕事にもきょうを持ってもらえたらうれしいですね。

思い切ってチャレンジすることの大切さ

思い切ってチャレンジすることの大切さ

わたしは岐阜県の田舎いなかで育ちました。小・中学生のころは、さかなりをしたり、山の中でサバイバルゲームをしたりと、自然の中でたくさん遊びました。また、家から学校までの4キロの道を雨の日も雪の日も毎日歩いて通ったことで、子どものころからしっかり体力をつけることができたと思います。中学時代には、生徒会役員選挙にりっこうして生徒会長をつとめたこともあります。やったことのないことにも一歩みこんでみようとする、チャレンジせいしんおうせいな子ども時代でしたね。
15さいこうせんに入学を決めたことも、一つのチャレンジでした。こうせんは家から2時間以上はなれているので、親元からはなれてりょうせいかつをしなければいけませんでした。それまで小・中学生時代をともにごした同級生55人(ずっと変わらないメンバーでした)はみんなおさななじみのような関係でしたので、思い切ってかんきょうを変えて、知り合いのいない場所でがんってみようと考えたんです。
りょうは、4人で1部屋の生活でした。最初は共同生活にれず苦労も多かったのですが、せんぱいからあいさつやマナーをきびしくどうされ、人間的にも大きく成長することができたと思います。苦楽をともにした仲間たちとは、今でもれんらくを取り合う仲です。こうせん時代には、そうしたしょうがいの友をるとともに、多くのけいけんることができました。こうせんへの進学は、かんきょうを変えて思い切ってチャレンジすることの大切さを学ぶことのできた、わたしにとって大切な思い出です。

いろいろな方向にアンテナをって、自分のしょうらいせんたくを広げよう

いろいろな方向にアンテナを張って、自分の将来の選択肢を広げよう

みなさんにはげんだいのうせいがありますので、ぜひいろいろなことにきょうを持ち、多くのことをけいけんしてほしいです。
たとえば「電柱」にきょうを持ってみるとします。みなさんにとって電柱は、ただの風景の一部かもしれません。でも、「なぜ電柱があるんだろう」と不思議に思い調べてみると、家に電気が送られている仕組みを知ることができるはずです。もしかしたら、そこからまた新しいもんが生まれ、「もっとくわしく調べてみよう!」という、次のアクションにつながるかもしれません。つまり、全くきょうのなかったことでも、少しれてみたらきょうぶかかったり、そこからしょうらい、進みたいと思える道が見つかったりするのうせいがあるんです。だからこそ、いろいろな方面にアンテナをっておくことが大切だと感じています。
わたしたちは、リニア中央しんかんせんの開業に向けてこれからもちょうせんを続けていきます。「人々のらしをゆたかにする」というスケールの大きいちょうせんにはなりますが、それだけにやりがいも大きいです。そしてしょうらい、自分の関わった駅を中心に街がはってんし、日本のけいざいや社会をささえるいちよくになうことができたらいいなと思っています。

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私のおすすめ本

須賀 亮行
毎日、何気なく見ている電柱の見方が変わる一冊です。電柱に関するマニアックな本ですが、生活に欠かせない電気がどのように家庭まで届いているのか、写真つきでわかりやすくまとめてあります。専門的な知識に少しでも触れると、日常の風景になっているようなものにも疑問を持ったり、気づきを得たりすることができ、より多くの知識を身につけるきっかけになります。
宮崎 駿
映画『風の谷のナウシカ』の元になった、全7巻の漫画です。映画は漫画の一部を簡潔にまとめたもので、実際は環境問題や民族間の争いなどを深く掘り下げた、とても考えさせられるお話です。子どものころ私も映画をよく見ていましたが、親が持っていた漫画版を見つけて読んだときの衝撃は、今でも忘れられません。

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取材・原稿作成:室井 美優(Playce)・東京書籍株式会社