仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

東京都に関連のある仕事人
1974年 生まれ 出身地 大阪府
河原田かわはらだ 清和きよかず
子供の頃の夢: ゲームプログラマー
クラブ活動(中学校): サッカー部
仕事内容
デジタルじゅつを使って、ワクワクする未来をつくる。
自己紹介
こうしんおうせいで、きょうを持ったことは自分でやってみないと気がまないせいかくです。好きになったことには、とことん、のめりこんでしまいます。熱帯魚が泳ぐアクアリウム作りにぼっとうしていた時期もあり、家にはすいそうが10以上あります。休日は、大好きな車で、ソロ(一人)キャンプに出かけたりもしています。

※このページに書いてある内容は取材日(2021年11月08日)時点のものです

デジタルじゅつを使って「こうなったらいいな」をげんじつ

デジタル技術を使って「こうなったらいいな」を現実に

わたしは、東京都しぶにある「かぶしきがいしゃハニカムラボ」の社長をつとめています。ハニカムラボは、ゲーム開発のじゅつとインターネットのじゅつを組み合わせて、デジタルコンテンツをかく・開発している会社です。げんじつの世界に、コンピュータで作ったバーチャルなえいぞうを組み合わせるなどして、これまでにないワクワクする新しい体験をていきょうしています。
例えば、みなさんは「アニメのキャラクターと話をしてみたいな」と思ったことはありませんか?そうしたことも、ハニカムラボでは、デジタルじゅつを使ってのうにしています。わたしは社長のほかに、「テクニカルアーキテクト」というかたがきも持っていますが、それは、このようなにちじょうてきな体験が、どのようなデジタルじゅつや仕組みを使えばじつげんできるのかを考えるという、テクノロジー面のれいとうのような仕事です。らいしてくれるお客さまの「こうなったらいいな」「こんなことができたらいいな」という理想に近づけるため、日々、頭をなやませています。
アニメのキャラクターを大きなモニターにしゅつげんさせて、ファンがキャラクターとリアルに会話できる仕組みは、東京ゲームショウというイベントでてんしました。ハニカムラボでは、こうしたエンターテインメント分野だけでなく、てんかいでの新商品PR、会社や工場のせつ案内、けんせつげんでの作業じょといったようなビジネスの分野でも、デジタルじゅつを使った体験をそうぞうしています。例えば、けんせつげんでのけんな作業を、デジタルじゅつを使って、えんかくで安全にそうできるようにする仕組みを作るといったこともしています。

らいしゃが「何をしたいのか」に耳をかたむけ、問題をかいけつする

依頼者が「何をしたいのか」に耳を傾け、問題を解決する

わたしたちの仕事の目的は、デジタルじゅつを使って問題をかいけつすることです。さまざまななやみをかかえた人や会社かららいを受けて、仕事はスタートします。
あるコンクリートメーカーからのらいを例に挙げましょう。この会社では、けんせつげんで重い荷物を持ち上げることができるおおがたのドローンを開発していました。ちょうどそのころドローンのてんかいがあり、そこで新商品の発表をしたいと考えていました。しかし、かんじんせいひんが完成していません。どうにかしてそのりょくをアピールできるてん方法はないか、とハニカムラボに相談があったのです。
そこでまず、ドローンの大きさを体感してもらうために、バーチャルえいぞうでドローンを見せることをていあんしました。「ホロレンズ」というゴーグルのような形のディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)を通してしゅうを見ると、実物大のドローンがげんじつに飛んでいるように見える、というえんしゅつです。げんじつ空間とそう空間をゆうごうするふくごうげんじつ(MR)のじゅつを活用しました。
さらに、開発中のドローンは、自動でしょうがいぶつけることができるという、じゅうらいのドローンにはないのうそなえていたので、ゲーム開発のじゅつおうようして、そのどくせいもアピールしました。せんとうゲームでも、プレイヤーのこうげきてきがうまくかわしてしまいますよね。同じように、てん会場に配置した、しょうがいぶつに見立てたビルのけいを、「ホロレンズ」を通して見ると、えいぞうのドローンがビルの間をすりけて飛行していきます。そして、体験者がけいのビルの位置をどうさせると、えいぞう内のドローンも自動でルートをへんこうし、どうしたビルにもぶつかることなく飛行し続けるという、体験者のアクションにバーチャル世界がそくはんのうするけも加えました。実物のドローンを一台もてんしていないのは、この会社だけだったようです。

入念なじゅんりんおうへんさが大切

入念な準備と臨機応変さが大切

ハニカムラボではいつもさまざまなプロジェクトが同時進行しています。プロジェクトにもよりますが、らいをくれるお客さまからの相談を受けて、まずテクニカルアーキテクトがじゅつてきな土台を固めます。そして、プロジェクトのほんてきほうしんが決まったら、社内のスタッフを集めて、開発チームを作ります。じつげんのための具体的な仕組みについて細部まで話し合い、「これでいけそうだ」となったら、試作品を作ってけんしょうします。ここでイメージ通りに動作するか、動きに問題がないかなどをかくにんします。しかし、一度でうまくいくことはありません。ねらい通りに動くまで、こうさくかえします。
世の中で初めてのことにちょうせんする場合が多く、前例がないので、こうしたこうさくの中で問題にぶち当たったときにも、かいけつの糸口を自分たちで見つけなければならない点は、とても苦労するところです。けんしょうを終えて、イベントなどのげんせつえいしても、「3時間後にオープンなのにうまく動かない!」というような、プレッシャーのかかる場面もあります。入念なじゅんはもちろんですが、げんでは、落ち着いてりんおうへんたいおうすることも大切だと考えています。

体験した人がよろこ姿すがたをリアルに感じられるのがだい

体験した人が喜ぶ姿をリアルに感じられるのが醍醐味

イベントの仕事では、来場者の「これすごい!どうなっているんですか?」というような声にちょくせつれることができます。人のかんじょうさぶるような体験を用意して、みんながおどろいてくれたり、楽しんでくれたり、ドキドキしてくれたり、いろいろなはんのうしめしてよろこんでくれる様子をリアルに感じられるのが、この仕事の一番のりょくです。
愛媛県に作った「バーチャル水族館」も、仕事のだいを味わえた、いんしょうに残るプロジェクトです。まず、何もない四角い部屋のかべ全面に、プロジェクターでたくさんの魚をうつし、まるで海の中にいるような気分を味わえる空間を考えました。それだけでなく、えいぞうの魚にれようとするとげてしまったり、えさを求めて人に近づいてきたりといった、人の動きにはんのうするインタラクティブな手法で、じっさいに魚とって遊んでいるような体験を生み出しました。オープン後は、子どもたちがかべをバンバンたたいて、かべに手のあとが残ってしまうぐらい楽しんでくれていました。
その後、もっとおどろかせようと、あるタイミングでその魚たちがだんだん少なくなって、不気味な音楽が流れ出し、とつぜんやみおくからドーンと大きなサメがあらわれる、というけも加えました。それから、定期的に子どもたちのかんせいや悲鳴がひびくようになったそうです。こうした体験を作ることができたら最高です。

アイデアの引き出しをやして、自分をアップデート

アイデアの引き出しを増やして、自分をアップデート

仕事をらいしてくれた人に「そうぞうした以上の仕上がりのものができた」と言ってもらえたときは、本当にうれしいですね。そのために、つねに新しいしきじゅつを取り入れ、自分をアップデートするように努めています。
げんじつとバーチャルを組み合わせた体験ができるふくごうげんじつ(MR)など、さまざまなじゅつがありますが、それらはだれかの「こうなったらいいな」をかなえるための方法にすぎません。大事なのは、じゅつをどう使うか、というアイデアなんです。例えば、しゅうだんの中の一人にだけ音を聞かせることができるような「ちょうこうせいスピーカー」というじゅつを使って、お化けしきで新しいきょう体験をえんしゅつできないかな?というようなアイデアを、いつも考えています。
アイデアの参考に、少し先の未来がえがかれているファンタジーやSFの小説を読むことも多いです。MRなどは、ファンタジー小説に出てくるほうのようなじゅつですし、ファンタジーやSF小説は、クリエイターにとっては、ぜったいにアイデアの引き出しになると思いますよ。

「人を感動させる体験」を作る側の人間になりたかった

「人を感動させる体験」を作る側の人間になりたかった

げんざいの仕事にくきっかけは、中学生のころに、あるロールプレイングゲームをプレイしたことでした。当時のじゅつですし、平面的な画面がほとんどのゲームだったのですが、最後のてきたおすエンディングぎわのシーンで、そこだけ画面がフィールドをかんする画から真横のこうに変わり、キャラクターが歩く姿すがたはいけいに、山のいんえいと夕日がゆっくりスクロールして、だんだんと暗くなっていく、という画が流れたんです。そのえんしゅつにとても感動したのですが、それと同時に「自分をこんなに感動させるゲームも、実はだれかが作っているんだ」ということに気づきました。そして、「人を感動させる側の人間になろう」と心にちかったのです。
大学・大学院では、じょうほう工学を学び、卒業後にはゲームソフトのかく・開発を行う会社で、ゲームのプログラマーになりました。そこで、3Dのびょう方法、音楽をコントロールするじゅつ、キャラクターの体の動かし方など、ゲーム開発に必要なスキルをたたきこまれ、それが今の自分の血肉になっています。
その後は、ゲーム機本体を開発する会社で、ゲームソフトを開発する会社に対してじゅつどうをする仕事をしたり、さらにはインターネット業界に飛びこんだりと、きょうを持ったことには、まよわずちょうせんし続けてきました。インターネットの世界では、まだ3Dのしきを持っている人が少なかったので、3Dじゅつせんもんとして多くの相談を受け、仕事のはばが広がったことを機に、どくりつして2012年にハニカムラボを立ち上げましたが、全て自然な流れだったと感じています。

ゲーム作りに熱中した中学時代

ゲーム作りに熱中した中学時代

わたしが小学生のころは、家庭用ゲーム機が発売されて、みんながテレビゲームにちゅうでした。あるとき、中古のゲームソフトを売っているお店のそんざいを知って、自分も友だちのソフトを買い取って、仲間に売る「リアルお店屋さんごっこ」を始めたんです。そのころから、思いついたことは何でもやってみたいせいかくでした。後で先生におこられることになるのですが、じっさいにやりながら、どうすればもうかるのかを子どもなりに考えるいいけいけんだったと思います。
中学時代も、ゲームをプレイするだけではらず、パソコンを使ったゲーム作りに熱中していました。ゲームがどうやって作られているのかが、だんだんとわかってきておもしろかったんです。そのうち「ゲームを作ろう!」とクラスの仲間を集めて、「君は絵をく人ね」「じゃあ、君は音楽をたんとうしてね」とみんなのとくなことをゲーム作りに生かすようにもなりました。改めてかえると、今も仕事でたようなことをしていますね。

自分が「やりたい!」と思ったことには、全部チャレンジしてほしい

自分が「やりたい!」と思ったことには、全部チャレンジしてほしい

わたし自身、自分が「やりたい」と思って取り組んできたことのえんちょうに今がありますし、けいけんしてきたことはアイデアの引き出しとしてちくせきされています。学校のじゅぎょうでは、「こんなこと、しょうらい何の役に立つの?」と感じることがあるかもしれません。わたしも、例えば数学の「三角関数」や「ベクトル」って何に使うんだろう、と思っていました。
でもゲーム開発の仕事にいて、3Dのプログラミングでは、こうした数学のしきが必要なんだと実感しました。ちゃんと勉強しておけばよかったとこうかいしましたが、当時はわかりませんでした。やってみなければわからないことはたくさんありますし、ずっと後になって気づくこともあります。だから、まずきょうを持ったことは、なやむより先にやってみてください。自分が「楽しいな」「やってみたいな」と思ったことを大事にしてほしいです。

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取材・原稿作成:小野口 真絹(Playce)・東京書籍株式会社/協力・撮影:城北信用金庫