仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

東京都に関連のある仕事人
1957年 生まれ 出身地 宮城県
我妻あがつま 澄江すみえ
子供の頃の夢: 弁護士
クラブ活動(中学校): 卓球部
仕事内容
子どもしょくどうと学習えん教室をうんえいすることで、いきでの「子どものしょ」をつくる。
自己紹介
読書のほか、ダンス、げいのうえんげき、コンサートなどの「げきじょう通い」やえいが大好きです。おんいきが広い44けんけんばんハーモニカ(プロ仕様)のアンサンブルグループにしょぞくし、出前コンサートも行っています。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2023年08月23日)時点のものです

いきの子どもたちの生活をささえる

地域の子どもたちの生活を支える

みなさんは、「子どもしょくどう」をごぞんじですか?子どもしょくどうとは、子どもが一人でも行くことのできる、無料またはていがくしょくどうのことをいいます。子どもしょくどうは、しゃが家におらず子どもだけで食事をとらなくてはならないときや、家で十分な食事がとれないとき、友達とわいわい食事がしたいときにも来られる場所です。しょくどうによってたいしょうしゃじょうけんかいさいひんことなりますが、共通しているのは、子どもたちがしょくどうに集まって、栄養バランスのよいご飯をいきの大人といっしょに食べること。わたしは、そんな子どもしょくどううんえいする「いっぱんしゃだんほうじんCOCOROごはん」の代表理事をつとめています。
COCOROごはんでは、毎週水曜日に東京都北区のたきがわといういきで「たきがわ子どもしょくどう」を開いています。げんざいの利用たいしょうしゃは小学生から高校生で、毎回20人くらいの子どもたちがしょくどうを利用しています。コロナの前はしゃの参加もできたので、60人くらいの人でにぎわっていました。子どもたちは、ご飯を食べながら友達と楽しくおしゃべりしたり、食前・食後に遊んだりと思い思いの時間をごしています。
そのほか、COCOROごはんでは子どもたちの学習サポートもしています。じゅくに通っていない子どもや、学習えんが必要な子どもをたいしょうに、毎週「学習えんしつ」を開いています。高校受験をひかえた中学生には、定期試験前に10日間ほど集中的な学習えんをする「COCORO自習室」もかいさいしています。子どもたちはこうのサポートを受けながら、せいせきを上げる努力をしています。

子どもしょくどううんえいするためにはきん集めが必要

子ども食堂を運営するためには資金集めが必要

わたしは、子どもしょくどうや学習えんしつうんえいするためのさまざまな仕事をしています。主な仕事の一つがきん集めです。わたしたちの子どもしょくどうや学習えんしつでは、利用者の子どもからお金はいっさい受け取っていません。うんえいに必要なお金は、活動にさんどうしてくださる人たちからのきんぎょうせいざいだんほうじんの助成金などでまかなっているのです。子どもたちに配るジュースや料理の食材といったひんをいただき、子どもしょくどうで使うこともあります。
をいただくためには、まずはわたしたちの活動を世の中の人たちに知ってもらう必要があるので、ホームページやSNSでのじょうほう発信は欠かせません。助成金をもらうためにしんせい書類を作ったり、お金をどのように使ったかというほうこくしょを作ってていしゅつもします。きんひんを受け取ったり、活動に必要な食材や調理器具の買い付けをしたりすることも日々の仕事です。

子どものこまりごとのかいけつを手助けすることも大切

子どもの困りごとの解決を手助けすることも大切

子どもしょくどうや学習えんしつは、ご飯を食べたり勉強をしたりする以外に、子どもたちにとって「こまったときにかけこめる場所」というやくわりになっています。そのため、子どもたちと話をすることも大切な仕事だと思っています。話をする中で、友達関係のなやみや、家でのなやみなどの相談を受けることがあるのです。その一つ一つのなやみを聞きながら、いっしょかいけつさくを考えます。
中には、家族以外の大人が間に入って問題かいけつをしなくてはならないようなこともあります。例えば親からぼうりょくを受けていたり、生活の世話をしてもらえなかったり、ひんこんにより生活自体が苦しかったり、心身の健康をそこなうようなじょうきょうおちいっていたり、学校としんらい関係がきずけなかったりする場合もあります。
そういったしんこくな相談を受けたときは、学校や児童相談所と協力しながらじょうきょうかいぜんに努めます。子どものしゃと話をしたり、子どもをたくで一時的にあずかったりすることもあります。家庭がかかえるふくざつじょうに耳をかたむけながら話を前に進めたり、子どもをあずかるためにしゃぎょうせいひんぱんれんらくを取り合ったりするのはかんたんな仕事ではありません。でも、わたしたちをたよってきてくれた子どもたちを守るために、できることに一つずつ取り組んでいるのです。

活動にせられるみんなの思いがよろこびに

活動に寄せられるみんなの思いが喜びに

活動を続けていると、うれしいこともたくさんけいけんできます。例えば、見ず知らずの人が「ホームページを見ました」と電話やメールでを申し出てくれたり、ぎょうの人がしょくどうに必要な食器や電化せいひんしてくれたりすることがあります。は子どもしょくどうや学習えんしつうんえいする上でとても助かりますし、何より子どもたちのことを思ってを申し出てくれるその気持ちがうれしいのです。つらいげんじつたりにしてむねが苦しくなることもありますが、協力者があらわれると「世の中、てたもんじゃないね!」なんて思えます。
子どもたちの成長を実感できることもこの仕事のだいの一つです。学習えんしつで勉強していた子が都立高校にごうかくしたり大学に進学したりと結果が出たときは、スタッフみんなでよろこびます。小学6年生のときから子どもしょくどうに来ていた子が大学に入学して、学習えんしつこうになってくれたときは、まるでおんがえしをしてもらったようでうれしかったです。そして子どもやそのしゃから、「ここに子どもしょくどうがあって本当によかった」と言われるのは、この上ないごほうです。わたしたちの子どもしょくどういきけこんで、みんなにとってほっとできる場所になっていると実感できると「続けていてよかったな」と思えます。

しんらい関係をきずき、子どもたちからたよられるそんざいになる

信頼関係を築き、子どもたちから頼られる存在になる

わたしがこの仕事で大切にしていることは、いろいろな人とのしんらい関係です。何よりまず、子どもたちにわたしたちをしんらいできる大人としてみとめてもらい、こまったときにSOSを出してもらえるようなかんけいせいを作る必要があります。そのためにはだんから子どもたちの話をしっかり聞いてコミュニケーションを取るように努めています。また、何かあったときに学校やぎょうせいと協力し合えるよう、ごろから交流をはかるようにしています。さまざまな人としんらい関係をきずいておくことが、一人一人の子どもにとってのさいぜんにつながるのです。
仕事をする上で大切にしているもう一つのことは、活動をけいぞくすることです。わたしたちの活動がいきから必要とされているということは、ないとみんながこまるということでもあります。COCOROごはんは15人のスタッフが中心となりうんえいしていますが、だれかが休む日でも活動できるよう、つねごろからのじょうほう共有は欠かしません。子どもしょくどうを開いた日に何があったか、しゃからどんな意見がせられたか、助成だんたいの方などのほうもんしゃがある日はどのようにたいおうするかなど、スタッフみんながうんえいじょうきょうを知っておくことで、何があってもたいおうできるたいせいを整えています。

子どものしょをつくるためにしょくどうをオープン

子どもの居場所をつくるために食堂をオープン

わたしは、20代のときにけっこんをしてたきがわしてきました。子どもが生まれてからは、いきをよくしようとさまざまな市民活動をやってきました。親子で生のたいかんしょうしたり、外で思いっきり遊ぶ「子どもげきじょう」というだんたいうんえい委員長をしたり、じょせいが社会でかつやくすることをあとしするしきで30年近くうんえいメンバーをつとめたり、子どもの小学校でPTAの会長をしたりもしてきました。そんなふうにいきこうけんの仕事を続けていたところ、はんざいこうに走った人の立ち直りを手助けする民間のボランティアであるすいせんされ、の仕事をするようになったのです。
は、はんざいを起こしてしまった人がこうせいできるように、定期的に本人と会って生活の様子を聞き、こまっていたら助言をするのが仕事です。関わった人が無事にこうせいすることもあれば、残念ながらふたたはんざいに手をめてしまう場合もあります。
はんざいを起こした理由やはいけいはさまざまですが、中には子どものころにけいざいてきひんこんぎゃくたいあいじょう不足などをけいけんし、大人に不信感をもっていることが少なくありません。こうなる前に、いきしんらいできる大人に相談できたらいいのに、とよく思います。子どもしょくどうを始めたはいけいには、そういう思いもありました。

じんな思いをしている人を見るのがつらかった

理不尽な思いをしている人を見るのがつらかった

わたしは宮城県の出身です。小学生のころからはっきりと意見を言い、クラスにいじめられている子がいるといじめている子と取っ組み合いのけんかになってでも守るようなせいかんの強い子どもでした。じんな思いをしている人を見ているのがまんならなかったのです。
勉強はしっかりとしていた方ですが、外でドッジボールをして遊んだり読書をしたりすることも好きでした。親のすすめでピアノ、習字、日本ようといった習い事もしていました。ちょっと苦手に感じる習い事もありましたが、大人になった今、「どの習い事もやっておいてよかったな」と感じています。子どものころに積んだしきけいけんをベースに、しゅとしてげきじょう通いを楽しんだり、バンドやけんばんハーモニカでアンサンブルを楽しんだりできているからです。毛筆でかんばんひょうばんを作ることもできるんですよ。子どものころに習ったことが、大人になってじゅつみがいて、心の安定や友達づくりに役立ったりしているのです。
上京して大学に進学してからは、社会で起きている出来事やけんたりにしておもなやむこともありました。生まれ育ったきょうぐうちがえばかんも考え方もちがう中で、おたがいのしゅちょうにどう折り合いを付けるべきか……など、ずいぶんと考えたものです。そんななやみのかいけつの糸口になったのが、一人で行った海外旅行でした。わたしはガイドブックをかたにリュックサックをい、列車でロシアをおうだんしたり、ヨーロッパを鉄道旅行したりしました。旅先で、こくせきも人種も民族もしゅうきょうことなるいろいろな人に出会う中でが広がり、「いろいろな人がいて、ちがって当たり前。共通点をさがせばいい」と思えるようになったのです。大学卒業後は家業を手伝うために実家にもどってけいなどを手伝い、けっこんを機に東京にもどり、市民活動に関わっていくようになりました。

活動をけいぞくしていくことを目標に

活動を継続していくことを目標に

子どもしょくどうは全国各地にあり、社会こうけん活動として主にいき住民のゆう、NPO法人などによってうんえいされています。わたしも、市民活動をする中でできたいきの仲間に声をかけて、2016年11月にたきがわ子どもしょくどうを始めました。子どもしょくどうを始めるにあたり、特別なかくとどは必要ありませんが、しょくどうが安全に運用できるよういきけんじょにアドバイスをもらいに行くなどの事前じゅんは必要です。そのほか、いきで何が必要とされているかを知っておくことや、長く続けるためにわかい世代のスタッフをやしていく必要もあります。たきがわ子どもしょくどうには、学生ボランティアも参加してくれています。かれらは調理のじょに加えて、子ども好きのやさしい子ばかりなので、近いしょうらいのロールモデルになってくれています。
この記事を読んでいるみなさんには、学校や家だけではなく、それ以外のしょを見つけることをおすすめします。学校や家にごこの悪さを感じたら、気の合う仲間がつどう場所にかけこめばいい。そこで気持ちを落ち着けたり、だれかに相談したりすると心がずいぶん楽になると思います。そんなしょになれるようわたしたちはがんりますし、いつかみなさんが大人になったらわたしたちの仲間になってくれるとうれしいです。

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取材・原稿作成:大野 晴香(Playce)・東京書籍株式会社/協力:城北信用金庫