• 東京都に関連のある仕事人
  • 1975年 生まれ

    出身地 新潟県

かしせいぞう菓子製造

小林こばやし 瑞樹みずき

  • 仕事内容

    愛情(あいじょう)をこめて,おいしい「きなこ(ぼう)」を作る。

  • 自己紹介

    好奇心旺盛(こうきしんおうせい)で,何事にも前向き。日曜日には空手教室の指導員(しどういん)として,子どもたちに空手を教えています。

  • 出身大学・専門学校

    東京農業大学 農学部 畜産学科

  • 【このページに書いてある内容は取材日(2017年01月26日)時点のものです】

小林 瑞樹


仕事人記事

昔なつかし「きなこ(ぼう)

昔なつかし「きなこ<ruby><rb>棒</rb><rp>(</rp><rt>ぼう</rt><rp>)</rp></ruby>」

(わたし)は東京都荒川(あらかわ)区南千住で「鈴ノ屋(すずのや)」という,駄菓子(だがし)をつくる会社を経営(けいえい)しています。5年ほど前に,(つま)の実家の製菓(せいか)会社からのれん分けして今の会社を始めました。
当社では,昔ながらのお菓子(かし)「きなこ(ぼう)」を製造(せいぞう)しています。「きなこ(ぼう)」は,きなこに黒蜜(くろみつ)を練り()んでつくります。材料にこだわって国産のきなこと自家製(じかせい)黒蜜(くろみつ)を使っており,(かお)りの良さとシンプルな(あま)さ,もちもちの食感が特徴(とくちょう)です。昔は子ども向けに砂糖(さとう)菓子(がし)やせんべいなどを売る駄菓子屋(だがしや)さんがたくさんありましたが,「きなこ(ぼう)」も駄菓子屋(だがしや)さんでよく売られていたお菓子(かし)のひとつです。最近では,駄菓子屋(だがしや)さんだけでなく,スーパーやコンビニなど,さまざまな小売店にも(おろ)しています。
(わたし)の仕事は,黒蜜(くろみつ)仕込(しこ)みや材料の調合,練り工程(こうてい)など,実作業が大半を()めていますが,その(かたわ)らで,営業(えいぎょう)や配達,電話での問い合わせの対応(たいおう)といった,社長としての業務(ぎょうむ)も行っています。新商品を開発する(さい)は,(つま)と2人でデザインや価格(かかく)設定(せってい)などを考えていますね。

菓子(かし)づくりは体力勝負

お<ruby><rb>菓子</rb><rp>(</rp><rt>かし</rt><rp>)</rp></ruby>づくりは体力勝負

仕事の始まりは毎朝,とても早いです。(いそが)しい時期には深夜2時半に起き,4時すぎには機械を動かし始めます。作業の流れとしては,まず,大きな(かま)で,きなこと黒蜜(くろみつ)を練って生地をつくります。それを棒状(ぼうじょう)に成形してカットし,包装(ほうそう)をしていきます。(わたし)はパートの人たちが来る朝の8~9時までに,その日に出荷する分を作っておきます。パートの人たちが来たら,包装(ほうそう)する作業をしてもらいます。こうして,毎日,10万本の「きなこ(ぼう)」をつくっているのです。
早朝から始まる仕事は,午後6時頃(じごろ)にようやく終わります。1日に使うきなこや水飴(みずあめ)などの重さは,約500キログラムにもなります。それだけの材料を毎日運び入れ,()ぜ合わせたり練り上げたりという作業を何十回と()り返すので,自然と体力もつきます。(わたし)は小さい(ころ)から空手をやっているのですが,この仕事を始めてから筋力(きんりょく)がさらにつき,練習がとても楽になりました。少し前には,大学生ばかりの大会で3位に入りました。体力勝負で大変な面もありますが,毎日体を動かす仕事なので,健康にはよいのかもしれません。

機械のメンテンナンスは重要

機械のメンテンナンスは重要

機械を動かし,加える材料の量などを微妙(びみょう)加減(かげん)しながら「きなこ(ぼう)」を製造(せいぞう)していく作業は職人技(しょくにんわざ)です。(だれ)かに代わってもらうことができません。注文は毎日たくさん入っていて,製造(せいぞう)を欠かすことはできないので,体調を(くず)さないよう自己(じこ)管理をしっかりするようにしています。
また,毎日使っている機械が突然(とつぜん)(こわ)れてしまうこともあります。新しい機械なら製造(せいぞう)した会社に電話して対処法(たいしょほう)を教えてもらうこともできますが,うちには昔から使われている機械も多く,いったん(こわ)れてしまうと,簡単(かんたん)には直せません。業者の人を待っていたらその日の出荷に間に合わなくなってしまうので,どこが(こわ)れたのか,原因(げんいん)(さぐ)り,自分たちで直しています。製造(せいぞう)途中(とちゅう)で機械が止まり,(あわ)てて部品を買いに行ったこともありました。どうやって機械を維持(いじ)していくかには,(つね)に気を配っています。

「おいしい」の一言がうれしい

「おいしい」の一言がうれしい

こんな問い合わせが過去(かこ)にありました。病院に入院中,売店にあったうちの「きなこ(ぼう)」を気に入って,よく買っていたという方が,「晴れて退院(たいいん)したのですが,鈴ノ屋(すずのや)さんの『きなこ(ぼう)』は病院以外だとどこで買えるのですか」と問い合わせをしてきてくれたのです。こういうことがあると,「きなこ(ぼう)」がお客さまの喜びに(つな)がっていると感じられて,うれしいですね。
お客さまから電話や手紙で「おいしかった」という言葉をいただくこともよくあります。「とてもおいしかったから,一言伝えたくて」という,それだけを言うために電話をかけてきてくださるお客さまもいるんですよ。そんな電話があると,やっていて良かったな,これからも頑張(がんば)ろうと思えます。
最近はアレルギーのお子さんも多いですが,「きなこ(ぼう)」のアレルギー物質(ぶっしつ)は大豆のみで,(たまご)牛乳(ぎゅうにゅう)は入っていません。保存料(ほぞんりょう)や着色料,香料(こうりょう)なども不使用で,駄菓子(だがし)としてはとても(めずら)しいと思います。昔から()れ親しんできた方には(なつ)かしく,初めて食べる方には素朴(そぼく)新鮮(しんせん)なものであり,健康志向(しこう)が高まっている今の時代に合う部分もあるのかもしれません。

昔ながらのお菓子(かし)を守り伝えるために

昔ながらのお<ruby><rb>菓子</rb><rp>(</rp><rt>かし</rt><rp>)</rp></ruby>を守り伝えるために

お客さまの口に入るものですから,信頼(しんらい)のあるお菓子(かし)をつくらなければいけません。うちでは一人ひとりが衛生(えいせい)管理を意識(いしき)し,実践(じっせん)しています。また,お客さまは,商品の(しつ)の高さも信用してくださっているので,それに(こた)えることは(わたし)たちの責任(せきにん)です。「きなこ(ぼう)」は,練るときの温度によって,生地の(やわ)らかさが変わります。たった0.2℃ほどの(ちが)いでも生地に影響(えいきょう)するので,自分の感覚を(たよ)りに微調整(びちょうせい)を加え,(つね)に同じ仕上がりを維持(いじ)しているのです。
「きなこ(ぼう)」は,文化として昔から受け()がれ,多くの人から愛されてきました。パートの方々(かたがた)にも「きなこ(ぼう)」が大好き,という方が多いんですよ。だからこそ,気持ちよく働ける環境(かんきょう)を整え,良い商品をつくれるようにしています。働いている人たちや,問屋さん,小売のお店さんとも力を合わせ,「きなこ(ぼう)」の文化を次の時代につなげていくことも(わたし)たちの使命のひとつだと思っています。

ヒットのきっかけは“()包装(ほうそう)

ヒットのきっかけは“<ruby><rb>個</rb><rp>(</rp><rt>こ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby><rb>包装</rb><rp>(</rp><rt>ほうそう</rt><rp>)</rp></ruby>”

(つま)の両親は,昔ながらの駄菓子(だがし)をつくり続けていました。「きなこ(ぼう)」は30年ほど前から売り始め,人気があったので,途中(とちゅう)からはこれ一本に(しぼ)ってやってきたそうです。(わたし)たちがのれん分けをしてもらい独立(どくりつ)したとき,商品はたったひとつ,3本入の「きなこ(ぼう)」だけでした。まずはラインナップを()やさなければと,(つま)とあれこれ考えた結果,すでに洗練(せんれん)されたお菓子(かし)である「きなこ(ぼう)」自体を()えるのは(むずか)しいので,「食べやすい()包装(ほうそう)」かつ「買いやすい100円設定(せってい)」の「きなこ(ぼう)」をつくることに決めたんです。
1本ずつ()包装(ほうそう)にする機械が必要でしたが,お金がかかるので業者さんには(たの)まず,自分たちで工夫してつくりました。試行錯誤(さくご)の末,新商品が完成して各方面に案内を出したところ,いつも取引のある問屋さんから「こんなに安くていいのか」と問い合わせをいただき,それをきっかけに大手量販店(りょうはんてん)のバイヤーの方の目に止まって,取引をさせていただくことになったんです。今ではテレビに取り上げていただくことも多くなりました。昔ながらの作り方を受け()ぎながら,食感だけ少し(やわ)らかくするなど,時代に合うように工夫もしています。

子どもの(ころ)から運動好き

子どもの<ruby><rb>頃</rb><rp>(</rp><rt>ころ</rt><rp>)</rp></ruby>から運動好き

(わたし)の実家は酪農家(らくのうか)でした。子どもの(ころ)は牛に乗って遊んだり,草原で寝転(ねころ)がって空を(なが)めたり,とうもろこし畑でかくれんぼをしたりと,のびのびと()ごしていましたね。体を動かすのが好きで,空手だけでなく走ったり泳いだりするのも得意でした。
中学はバスケ部,高校ではバスケ部と空手部をかけ持ちしていました。放課後になると空手の道場に行き,夜の9時頃(じごろ)まで練習する日々(ひび)で,大学は空手の(じゅん)推薦(すいせん)で入りました。空手では先生に(めぐ)まれ,他人を(うやま)うこと,年下を大切にすることといった大切な考え方をたくさん学びました。「何でもいいから一生懸命(いっしょうけんめい)やれ」と言われ続けてきたことで,ひとつのことを精一杯(せいいっぱい)やり続けることができるようになり,今につながっているのだと思います。空手は今でも続けていて,休日には空手教室の指導員(しどういん)もしています。

努力の積み重ねが自信につながる

努力の積み重ねが自信につながる

他の人と一緒(いっしょ)である必要はないと思います。人はみんな(ちが)うから,自分は自分らしく,そのときやれることを一生懸命(いっしょうけんめい)頑張(がんば)ればいい。目の前にあるものを全力でやり,その経験(けいけん)を積み重ねていくことで,自分に自信がつくと思います。成功のカギは,自信を持つこと。努力を継続(けいぞく)していくことで,おのずと結果がついてくるのだと思います。
何かを続けていくには,やはり「楽しい」とか「好き」という気持ちが大事です。(わたし)は空手を始めてから1年ぐらいで全国大会に出ることになったのですが,周りは黒帯ばかりで,ひとりだけ白帯だった(わたし)は,最初は(いや)だなと思っていました。しかし,実際(じっさい)に試合に出てからは,空手の面白さにとりつかれ,中学に上がって黒帯になると,さらに面白くなりました。空手の楽しさがどこかでエネルギーに変わったのだと思います。
楽しいことや面白いことは周りにたくさんあると思います。みなさんにもぜひ,自分の「頑張(がんば)りどころ」を見つけて追求し,自信につなげてほしいと思います。

  • 取材・原稿作成:東京書籍株式会社/協力:城北信用金庫

私のおすすめ本

  • 駄菓子屋の社会学

    椙田 萌美

    「駄菓子屋」をテーマに,インタビュー調査をして書かれた本です。駄菓子の歴史や役割,ひいては,駄菓子屋を未来へ残すための提案なども書かれています。早稲田大学の学生だった椙田さんの卒業論文をもとに出版されたもので,鈴ノ屋のことも取り上げられています。著者の情熱と「駄菓子好き」が伝わってくる一冊です。