※このページに書いてある内容は取材日(2017年08月28日)時点のものです
銅製の部品をみがいて検査する
私は東京都足立区にある「株式会社オーティエス」という会社で働いています。銅を材料とした,機械の部品を作っている会社です。ポテトチップスなどの食品を作る機械や印刷機,テレビの液晶など,さまざまな機械に使われる部品を作ります。工場には金属を削る「旋盤」や,板金を金型で加工する「プレス機」,プログラム通りに全自動で金属を加工する「マシニングセンタ」という機械などがあります。
主に扱うのは銅を材料とした部品ですが,銅は比較的,柔らかい金属なので,加工中にどんどん反ってきます。また,加工で発生した熱で変形しやすく,加工が難しい金属です。私の仕事は,金属を削ったり曲げたりして完成した部品をきれいにみがき,寸法の検査をし,キズがつかないように梱包して送り出すというものです。注文された図面通りに部品ができているかや,部品の大きさ,開けた穴の内径や深さ,切った溝の幅などを,10分の1ミリ,時には100分の1ミリの単位で精密に検査をします。
進行を確認しながら仕事を進める
朝の8時,工場の中と外をみんなで清掃することから仕事が始まります。清掃が終わったら朝礼を行って,今日の仕事の内容を確認します。自分がその日に何をすればいいのか,予定外に入った仕事はあるのか,全員が知っておくための朝礼です。
仕事にかかる前に,道具のチェックをします。私が主に使う道具は,モーターで紙ヤスリを細かく振動させる「サンダー」という電動工具です。仕上がってきた銅の部品は加工時に細かなキズがついてしまうため,サンダーでみがいて傷を消していきます。部品の全面をくまなくみがき終わったら,洗浄剤やアルコールで細かな銅の削り粉を洗い落とし,保護フィルムを貼ってキズから守ります。このフィルム貼りは,小さなものはひとりでできますが,1メートルを超えるような大きな部品には,2人で呼吸を合わせて貼ります。フィルムを貼ったら,さらにエアキャップなどでくるみ,梱包をします。こうしてでき上がった部品をお客さまのところに届けます。
夕方5時半には終礼を行い,その日の仕事の進行を確認します。掃除をして日報を書いたら仕事は終了,長引いても6時には終わり,残業はほとんどありません。
銅はデリケート
扱っているものが金属ですから,重くて持ち上げるだけでも大変です。重い部品は2人で持ち上げ,もっと重いものは工場のクレーンを使います。さらに,みがき上げた銅は空気に触れただけでもすぐに変色する,デリケートなものです。銅に手の脂がつくと,拭いてもとれませんし,つばが飛んでもいけないので手袋とマスクは欠かせません。梅雨時の湿度が高い時期は変色も早まりますから,仕上げて梱包するまでは時間との勝負です。
仕事を始めたころは,進行の度合いを報告するのがしんどかったですね。仕事が進んでいないと怒られると思って,遅れていることを報告したくありませんでした。でも,自分一人で勝手に考えて,工場全体の仕事の予定を遅らせてしまうのが一番いけないことです。仕事が進まないのは何か理由があるのですから,なぜ進まないか考えて解決しなければなりません。みんなに報告するなかで理由がわかることもあるし,そうでなければ他の人に手伝ってもらいます。工場の中でのコミュニケーションをいつも心がけています。
仕事はお客さまが第一
お客さまからの発注があって初めて仕事が発生します。だからお客さま第一というのが私のポリシーです。そのためには仕事がきちんと進むようにしなければなりません。道具のチェックが済んでいるか,検査がきちんとできているか,仕事の進行を全員が共有しているか。これらのことが全部うまくできると仕事がきちんと回り始めます。
コミュニケーションも大切です。特に営業職とのコミュニケーションをしっかり取れば,製造の現場にいる私も,お客さまが何を求めているか知ることができます。お客さまが私たちの仕事にどんなことを期待しているのか,納期はどうか,クレームはないかを知ることで,期待に応えることが可能になります。
自分の仕事が「きれいにできていた」と評価されるのは嬉しいですね。お客さまからの要望で予定より早く仕上げることもありますが,営業の人から「お客さまが喜んでいた」と聞くと,がんばって仕事をしてよかったと感じます。
子どものころからもの作りが好きだった
じっとしているのが嫌いな子どもだった
子どものころはやんちゃな子でした。少しもじっとしておらず,泳いでいないと死んでしまうというマグロみたいに,いつも何かしていましたね。プラモデルの他に,少年野球にも夢中でした。
中学では剣道部,高校では合唱部に入りました。母校の小松原高校(当時)は,私が高校生の時に,NHKの全国学校音楽コンクールに出場して優良賞をとりました。今もOB合唱団に入って活動し,大会にも出場しています。
学校の勉強は好きではなく,特に算数・数学が苦手だったのですが,今の仕事では,製品の検査で計算をしなければいけません。先輩に教えてもらって,複雑な計算もできるようになりました。仕事で必要なことはなんとか身につくものです。
できるまでやってみる探究心を持とう!
人と人との関わりはとても大事です。友だち,家族,先生と話してコミュニケーションをしっかりとることで,自分に役立つたくさんの知識を得ることができます。いまの自分は何をしなければならないかを理解するには,コミュニケーションを取るのが大切です。先生には,自分がわかるまで何度でも質問して答えてもらいましょう。それが探究心を持つということです。
どんな仕事をしたいかと子どもたちに聞くと,“パティシエ”や“消防士”といった,カッコいい職業を答えます。それもいいのですが,例えばテレビを作るには,誰がどんな作業をしているのか。マンションの建設現場では,どんな専門の人たちが,どんな機械を使って大きなマンションを建てているのか。こうしたことを考えてみるのも面白いものです。これも探究心です。
何かがうまくできないことがあったら,自分で一生懸命考えて,工夫してやってみるのもいいでしょう。先輩に聞いてみることも大事です。自分の考えと,先輩の経験のいいところを合わせてやってみればきっとうまくいきます。できるまでやってみる探究心をもつことが大切ですよ。