• 東京都に関連のある仕事人
  • 1978年 生まれ

    出身地 東京都

機械技術者

安食あじき 智史ともひと

  • 仕事内容

    射出(しゃしゅつ)成形の金型の加工や若手(わかて)の教育を行う。

  • 自己紹介

    昔から車やバイクが好きなので,休日は車やバイクをいじったり,(つま)とドライブに行ったりしています。

  • 出身高校

    東京都立港工業高等学校 機械科

  • 【このページに書いてある内容は取材日(2017年02月07日)時点のものです】

安食 智史


仕事人記事

プラスチック製品(せいひん)ができるまで

プラスチック<ruby><rb>製品</rb><rp>(</rp><rt>せいひん</rt><rp>)</rp></ruby>ができるまで

みなさんの身のまわりには,プラスチックでできたものがたくさんあると思います。たとえば,プラスチックのコップ。どこにも()ぎ目がないように見えますが,どうやってつくられていると思いますか? まず,コップの内側をかたどった(とつ)(じょう)の型と,外側をかたどった(おう)(じょう)の型を用意します。それらを組み合わせたときにできる隙間(すきま)に,プラスチックのもととなる合成樹脂(じゅし)を熱で()かして流し()みます。樹脂(じゅし)が冷え固まるのを待ち,型から外せばコップのできあがりです。このように型に流し()んで成形する方法を「射出(しゃしゅつ)成形(せいけい)」といいます。
(わたし)(つと)める「タカラ樹脂(じゅし)工業」という会社では,この射出(しゃしゅつ)成形(せいけい)に使う金型を設計(せっけい)製造(せいぞう)し,製造(せいぞう)した金型を使って自動車のプラスチック部品や建設(けんせつ)機の内装(ないそう)用部品などをつくっています。 以前は一日中工場にこもり,一人でもくもくと作業することもよくありましたが,今は(わか)い世代が育ってきたことで,(わたし)製造部(せいぞうぶ)の部長として,実際(じっさい)製造(せいぞう)工程(こうてい)よりも,後進の育成やお客さまとの商談などに重点をおいた仕事をしています。

中国に行くこともある

中国に行くこともある

(わたし)の仕事の1日の流れは,朝8時に出社し,まずはお客さまからのメールを確認(かくにん)してやりとりします。日中の業務(ぎょうむ)は日によって大きく(こと)なり,製品(せいひん)の打ち合わせや若手(わかて)指導(しどう)をすることもあれば,現場(げんば)に出て作業することもあります。一日の仕事が終わるのはだいたい19時(ごろ)ですが,精度(せいど)が求められる加工や,特殊(とくしゅ)な加工作業は,若手(わかて)社員が帰ったあとに(わたし)が行っています。
自動車などの部品をつくっているので,何年かに一度,車体のモデルチェンジがあるときには,新しい金型の注文がたくさん入ってきます。また,大型連休の直前は「休み明けに納品(のうひん)してほしい」という依頼(いらい)が多く,年末年始やお盆休(ぼんやす)みの前がとても(いそが)しいですね。
この仕事に()いて20年以上()ちますが,今では製造(せいぞう)以外にもたくさんの業務(ぎょうむ)にかかわっています。当社は中国にも進出しており,協力メーカーへは(わたし)が年に数回(おとず)れ,現地(げんち)製造(せいぞう)された金型を使って試作品をつくり,型が正しくつくられているか,立ち会って確認(かくにん)するなどしています。

(しつ)を上げ,コストを下げる

<ruby><rb>質</rb><rp>(</rp><rt>しつ</rt><rp>)</rp></ruby>を上げ,コストを下げる

ものづくりの仕事には必ず納期(のうき)があります。そのため帰りが夜(おそ)くになることもあります。以前は朝8時から働いて,早くて22時頃(じごろ)に帰るような日々(ひび)を送っていて,工場に寝泊(ねと)まりすることもありました。ただ,(わたし)は小さい(ころ)から没頭(ぼっとう)して何かをつくることが大好きだったので,当時の状況(じょうきょう)をそこまでつらいとは感じていませんでしたね。
ものづくりを生業(なりわい)とする者として心がけるべきことは,納期(のうき)や予算といったさまざまな制約(せいやく)があるなかで,最良のものを提供(ていきょう)することです。ただし,「いいものをつくりたい」と(しつ)を追求しすぎた結果,お客さまの希望より納期(のうき)(おそ)くなったり,コストが上がったりしては意味がありません。「技術(ぎじゅつ)()し売り」をしてはいけないのです。
(わたし)たちは,(しつ)を上げる方法とコストを下げる方法,その両方を提案(ていあん)しながら,お客さまが何を求めているのかを見極め,良い意味での妥協点(だきょうてん)(さぐ)る必要があります。

(つちか)った技術(ぎじゅつ)臨機応変(りんきおうへん)対応(たいおう)

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当社は射出(しゃしゅつ)成形(せいけい)金型の設計(せっけい)製造(せいぞう)射出(しゃしゅつ)成形(せいけい)品の製造(せいぞう)専門(せんもん)ですが,まれに専門(せんもん)分野ではない依頼(いらい)をいただくことがあります。
以前,ランドセルを製造(せいぞう)する老舗(しにせ)のメーカーから,昔から受け()いで使っている(かわ)(しぼ)り金型が(こわ)れる前に,なんとか複製(ふくせい)をつくりたいという相談をいただきました。すでに何社かから(ことわ)られたようで,どうにか力になれればと思いました。当社でも事例がなかったため,初めて製造(せいぞう)する案件(あんけん)であることを了承(りょうしょう)いただいたうえでお(あず)かりしました。細かい寸法(すんぽう)をすべて(はか)って一から(けず)り出す大変な仕事でしたが,無事に納品(のうひん)することができました。
また,公園に置いてある海外(せい)の遊具が(こわ)れてしまい,翌週(よくしゅう)のお祭りまでに急いで直したいという相談をいただいたこともありました。使うであろう工具を用意して現場(げんば)まで出向き,その場で修理(しゅうり)方針(ほうしん)を決め,必要なものを調達して,どうにか期日までに直すことができました。そのあとのお祭りも無事に終わったようです。
このような通常(つうじょう)とは(こと)なる依頼(いらい)(わたし)担当(たんとう)することが多いのですが,お客さまの要望に(こた)えることができれば,大きなやりがいを感じることができます。

次の世代を育てるには

次の世代を育てるには

学校で製造(せいぞう)に関する知識(ちしき)修得(しゅうとく)した人でも,すぐに仕事ができるようになるわけではありません。若手(わかて)社員には,機械の電源(でんげん)の入れ方にはじまり,加工するときの音やにおい,振動(しんどう)などの微妙(びみょう)(ちが)いが仕上がりにどのように影響(えいきょう)するか,理解(りかい)してもらいます。また,機械にもそれぞれ特性(とくせい)があるので,その(ちが)いも理解(りかい)してもらわなければなりません。
指導(しどう)するときは,手取り足取り,丁寧(ていねい)に教えるということはしません。基本(きほん)的なことだけを説明し,そのあとはある程度(ていど)本人に(まか)せ,自分で考えて解決(かいけつ)する習慣(しゅうかん)を身に付けてもらうようにしています。どうすればうまくいくのか,よく考えずに質問(しつもん)してきたときは,(わたし)もすぐには答えずに,ちゃんと考えたのか,もう一度あれこれ試すように(うなが)していますね。教えるのはそれから。そうしないと,いつまでたっても技術(ぎじゅつ)が向上していかないんです。基本(きほん)的な作業であっても,どうすればもっと良くなるか,効率(こうりつ)よくできるかを考えながら取り組んでほしいと思います。

好きが高じてものづくりの世界へ

好きが高じてものづくりの世界へ

(おさな)(ころ)から,ものを分解(ぶんかい)して組み立て直したりするのが好きでした。はじめは目覚まし時計などでしたね。小学生の(ころ)は,家族と買い物に行くと,お菓子(かし)ではなくドライバーのセットが()しいと親にせがんでいたそうです。
高校生になってからは,オートバイや自動車に熱中しました。この会社を選んだ理由として,自動車の部品の試作をしていることも大きかったです。自動車整備士(せいびし)を目指すという選択肢(せんたくし)もありましたが,好きなことにはとめどなくのめり()んでしまう性格(せいかく)からか,仕事にするなら間接(かんせつ)的に(たずさ)わるほうがいいのではと,親がアドバイスしてくれました。分解(ぶんかい)改造(かいぞう)()りはじめると,市販(しはん)のパーツだけでは物足りず,自分でつくりたくなってしまうんです。この会社ならいろいろな機械がそろっているから,もしかしたら使わせてもらえるかもしれないという思いもありましたね。実際(じっさい)に,入社後,社長の許可(きょか)をもらうことができ,GTウイングという,車の後部につける羽のような部品など,色々な物をつくらせてもらいました。

何にでも挑戦(ちょうせん)した子ども時代

何にでも<ruby><rb>挑戦</rb><rp>(</rp><rt>ちょうせん</rt><rp>)</rp></ruby>した子ども時代

小さい(ころ)は,何かを思いついたら,すぐに行動に(うつ)すような子どもでした。とてもやんちゃな性格(せいかく)でもあったので,いろいろないたずらを(くわだ)てては実行し,よく(おこ)られていましたね。中学校に上がってからは,学級委員を(まか)されたこともあり,学校のさまざまな活動に積極的に参加するようになりました。
もともと失敗を(おそ)れることなく,まずは何でもやってみるというのが(わたし)信条(しんじょう)で,フットワークは軽く,いつも物事をポジティブに考えるようにしていました。この考え方が,今の仕事にも生きていると思います。ものづくりには試行錯誤(さくご)肝心(かんじん)です。同じ失敗をするのは問題ですが,何度失敗してもあきらめずに,いろいろなやり方を試してみることが大切です。そうすることで,(むずか)しい局面を乗り()えられることもあります。失敗続きでも,そこから思いもよらない収穫(しゅうかく)を得られることがあるんです。

自分の好きなことを()ばそう

自分の好きなことを<ruby><rb>伸</rb><rp>(</rp><rt>の</rt><rp>)</rp></ruby>ばそう

まずは,たくさんのことにチャレンジしてみてください。成功することも失敗することもあると思いますが,そのなかで自分は何が好きなのかを見つけてほしいと思います。また,自分にとってはできて当たり前のことでも,他人から見れば(おどろ)くべき能力(のうりょく)であることもあります。たとえば,絵を()くのが得意な人にとっては,絵が()けることは特別なことではないし,価値(かち)のあることではないと思うかもしれません。しかし,自分で気がついていないだけで,周りの人から見ると,それはとても素晴(すば)らしい能力(のうりょく)なんです。人にはそれぞれ,大きな可能(かのう)(せい)()めた能力(のうりょく)がきっとあると思います。
「好きこそものの上手なれ」という言葉がありますが,好きなことであれば,上達は早く,苦労を苦労と感じることもなく,失敗にもめげなくなるでしょう。自分の好きなことを仕事にすることができたら,とても幸せだと思います。

  • 取材・原稿作成:東京書籍株式会社/協力:城北信用金庫

私のおすすめ本

  • 下町ロケット

    池井戸 潤

    大人になっても夢を追い続ける佃社長と,その社長に振り回されながらも,自分たちの技術を信じ,一丸となって難題に挑戦し続ける佃製作所の社員たち。ものづくりの仕事に対する情熱を思い出させてくれる一冊でした。仕事に悩んだり,初心に帰りたいときにおすすめです。