仕事人

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東京都に関連のある仕事人
1956年 生まれ 出身地 東京都
宇井うい 敏伸としのぶ
子供の頃の夢: 電気工事士
クラブ活動(中学校): 園芸工作部
仕事内容
ビルや工場に電気を通す。
自己紹介
休みの日は部屋のそうをするほか,ひるをしたり読書をしたりするなど,ゆっくりごすことが多いです。最近は家庭菜園にも取り組んでいます。
出身高校
芝浦工業大学工業高等学校
出身大学・専門学校
東海大学短期大学部 電気通信工学科

※このページに書いてある内容は取材日(2020年03月12日)時点のものです

オフィスビルや病院など,さまざまな建物の電気工事をたんとうする

オフィスビルや病院など,さまざまな建物の電気工事を担当する

わたしとうきょうかつしかにあるたいしんでんせつという会社で社長をしています。たいしんでんせつは,オフィスビルや病院,学校,商業せつ,駅など,さまざまな建物やせつに電気を通す「電気工事」の会社です。1966年にわたしの父がそうぎょうし,叔父おじわたしと,3代にわたって続けてきました。げんざいは14名の社員が働いています。
たいしんでんせつで行う電気工事は,主に3種類あります。1つ目は新しいビルのけんせつともなう電気工事,2つ目はオフィスなどのかいしゅうともなう電気工事,3つ目はかいしゅうしたオフィスなどをもとのじょうたいもどすための電気工事です。
中でも多いのが,10~20階建てのだいなビルのけんせつともなう電気工事です。ゼネコンとばれる大手のけんせつ会社が工事をするげんで,柱やかべつくけんちく工事業者やエアコンなどをせっするせつ工事業者といっしょに,協力しながら工事を進めていきます。けんちく工事業者やせつ工事業者などと協力しなければならない理由は,電気工事が,建物をつくりながら行わないといけない仕事だからです。けんちく工事業者が柱・かべてんじょうなどをつくっているちゅうに,わたしたちがかべの中やてんじょうの中に電気の配管や配線をしていきます。そのあとにせつ工事業者がエアコンなどさまざまなせつを取り付け,それを積み重ねて,ビルができ上がっていくのです。
ビルができ上がったら,照明,エアコン,さいほう,セキュリティシステムなどにきちんと電気が通っているか,正しく動くかをかくにんし,けんごうかくすれば「完工」(工事かんりょう)となります。

せっけいからこうまで。チームで仕事に向かい合う

設計から施工まで。チームで仕事に向かい合う

電気工事は,ゼネコンなどの発注業者からもらった電気せつせっけいかくにんするところからスタートします。かべはばてんじょうの高さ,柱やまどの位置などが細かく書かれた図面を参考にしつつ,発注業者からのや要望を聞いて,まずはどのように電気の配管や配線をしたらよいかを考えるのです。例えば,「ゆかに6つ,へきめんに8つコンセントを付けるには,どう配線したらよいか」とか,「ここにはインターホンがせっされる予定だから,ゆかから〇㎝の高さまでケーブルをってこないといけないな」とか。そういったことを考え,めながら,「電気せつこう」とばれるものを作ります。
電気せつこうができ上がったら,部品の調達や工事にかかるようを算出します。そして,必要な部品を手配してげんに向かい,工事を行います。工事は,数名から数十名で行うケースがいっぱんてきです。だいな建物や急ぎの仕事などの場合は,フリーランスの電気工事おうえんようせいしたり,他の電気工事会社とぶんたんしたりして,大人数で行うこともあります。
たいしんでんせつの場合,大手の電気工事会社から仕事を受注して工事を行います。工事の期間は,しんちくビルの場合だと,短くても9か月ぐらい,長い場合は4年ぐらいかかります。

安全教育やかくしゅとくえんに力を入れている

安全教育や資格取得の支援に力を入れている

社長であるわたしの仕事は,主に3つあります。会社のけいえいの仕事,新しい仕事を受注するための積算とこうしょうをするえいぎょうの仕事,社員に安全について教育する仕事です。
中でもわたしが力を入れているのが,安全についての教育です。さまざまな重機やざいあつかう工事げんは,重大なが起こりやすい場所でもあります。作業員が新しい工事げんに入るときは必ず安全教育を受けさせなければなりません。たいしんでんせつの場合は,しょくちょうばれるリーダーが,社員や協力業者の作業員に対してぼうと安全に関する教育けんしゅうかいを行っています。教育けんしゅうかいでは「このげんにはこんなけんがありますよ」「万が一のときはこうなんしてくださいね」といったじょうほうを共有します。わたししょくちょうに対し,安全教育のじゅうようせいや業界の流れ,国が求めていることなどを話し,しきを高める働きかけを日ごろからするようにしています。じっさいに工事げんに行き,自分の目でげんけんせいをチェックして,しょくちょうに「こんなけんもありそうだよ,他の作業員にも伝えてね」とどうすることもあります。
他に,会社として,社員がかくしゅとくすることについても全面的にバックアップしています。電気工事は,「電気工事」という国家かくがなければできない仕事です。それ以外にも「一級電気工事こう管理」などさまざまなかくがあり,かくを取ればげんでできる仕事のはばが広がるのです。社員には,できるだけ多くのかくを,積極的に取ってもらいたい。そう考え,会社がようたんして,外部のこうしゅうかく試験を受けられるようなたいせいを整えています。

電気工事は「知的な仕事」。だからおもしろくやりがいがある

電気工事は「知的な仕事」。だから面白くやりがいがある

電気工事のりょくは,なんといっても「知的な作業」であるところです。なぜここに照明器具を付けなければならないのか,どのていの明るさのものが必要なのか,こうりつのよい配線をするにはどうしたらよいかなど,かく試験の勉強で学んだしきげんでのけいけんを生かして,さまざまなことを考えながら取り組まなければなりません。また,電気工事法や電気工事業法などといったほうりつに関するしきけつです。工事というと「体力勝負」「身体を使う仕事」というイメージを持たれがちですが,じっさいは,頭をしっかり使いながら身体を動かさなければいけない仕事です。考えることが好きな人,楽しめる人に合うしょくしゅだと思います。
他に,一生もののかくが取れるところもポイントです。電気工事関連の国家かくのなかには,持っていればずっと使える,こうしんの必要がないかくそんざいします。一度しゅとくしてしまえば,かくを生かしててんしょくすることもできますし,どくりつすることものうです。たいしんでんせつからも多くの電気工事どくりつしており,よく当社の仕事を手伝ってもらっています。
電気工事は,新しい建物のけんせつとメンテナンスがあるかぎり,なくなることのない仕事です。最近は,工具のがた・軽量化が進み,わかい人や年配の人でも作業ができるようになってきています。スペシャリストとして長くかつやくしたい,そんな人におすすめできる仕事です。

だいかつふくざつな工事が多く,人員の調整がむずかしい

大規模かつ複雑な工事が多く,人員の調整が難しい

仕事をしていてもっとも大変だと感じるのが,人員の調整です。新しいビルをけんせつするときは,数か月から数年かけて,多くの業者と関わりながらふくざつな工事を進めなければなりません。関係各社との調整に手間取ったり,予期せぬトラブルで工事に時間がかかったり……。想定外の出来事があちらこちらで発生し,予定通りに進まないことが多いのです。
こうしてスケジュールがズレていくと,作業のピークだとそくして人をたくさん配置していた時期に人手があまってしまったり,ぎゃくに,作業が少ないと思っていた時期に人手が必要になったりします。あまった人員を他のげんに回したり,いそがしいげんおうえんの人員をけんしたりしてたいしょしていますが,スムーズにいかないことも多く,いつも苦労しています。
その一方で,会社で受けているふくすうの工事のスケジュールを,おくれまでして予想できたときや,事前にバランスよく人員配置ができたときはごたえを感じます。電気工事の管理者としても,けいえいしゃとしても「つとめが果たせたな」と思うのです。
そしてなにより大きなやりがいを感じるのが,苦労してつくった建物を目にしたとき。完成直後ではなく,数年後に近くを通ったときに「ここ,たいしんでんせつで工事したところだよね」と思い出すことが楽しいのです。大変だったことを思い出すときには,「がんばったかいがあったなあ」と,しみじみとみしめています。

大切にしているのは「よい仕事をていきょうすること」と「投げ出さないこと」

大切にしているのは「よい仕事を提供すること」と「投げ出さないこと」

たいしんでんせつは50年以上続く会社です。先々代,先代が,時間をかけて,お客さまとのつながりとしんらいきずげてきました。3代目であるわたしせきは,「そのつながりとしんらいを決してこわさないこと」と「これまで以上によい仕事をていきょうすること」です。そのためには,わたしだけでなくすべての社員が,よい仕事をするというしきを持つことが欠かせません。日ごろからわかい社員と積極的にコミュニケーションを取って,「君たちがよい仕事をすることが,次の仕事につながるんだよ」と話しています。
もうひとつ,わかい社員によく話していることがあります。それは「投げ出さない」ということ。「一度始めたことは,どんなことがあってもやり切りなさい」と折にれて伝えるようにしています。つらいことや苦しいことは,やり切れば必ずかてになります。楽にできてしまったことより,あっとうてきに大きなけいけんになるはずです。
これからも,「よい仕事をていきょうすること」と「ぜったいに投げ出さないこと」を大切に,お客さまとのつながりとしんらいを育てていきたいと思っています。

家業にも電気にもきょうのない子どもだった

家業にも電気にも興味のない子どもだった

わたしは,とうきょうだちあやで生まれ育ちました。昔のあやは田んぼと池しかないようなのどかなところで,そこら中をただ走り回って遊んでばかりいたことを覚えています。勉強はあまり好きではなく,家業であるたいしんでんせつや電気にもまったく関心がありませんでした。
転機がやってきたのは中学生のときのことでした。学校でしょくぎょうてきせいけんを受けて,「あなたに向いているしょくぎょうは,電気工事です」と書かれた結果を受け取ったのです。意外な結果におどろきましたが,一方で「たしかに,じっとしているよりは身体を動かすほうが向いているかもしれないな」というなっとく感もありました。それで,まよいつつも,電気科がある高校に進学することを決めたのです。その後,短大の電気通信工学科に進学し,電気工事になり,げんざいいたっています。

自分ので進むべき道を決めてほしい

自分の意志で進むべき道を決めてほしい

子どものころ,家業や電気にまったくきょうがなかったのは,親が「自分のことは自分で決めなさい」という教育ほうしんつらぬいていたこともえいきょうしているのだと思います。家業をいでほしいといった話はいっさいされたことがありませんし,父が電気工事として働く姿すがたも見たことがありませんでした。
結局,電気工事になって家業をぐわけですが,がされたのではなく,自分で「電気工事になる」「家業をぐ」と決めて行動したからこそ,ここまで続けてこられたのだと思います。自分で決めたことだからげない,投げ出さない。だからこそつらく苦しいこともえられるし,道がひらけたのだと思うのです。
親や先生に「こうしろ」と言われたからやるのではなく,自分ので進むべき道を決めてほしい。回り道をしてもいい,道はあらゆる方向にびています。だからこそ自分で決めてほしい。そのためにはいろんなものを見聞きすることが必要です。わかいみなさんには,ぜひたくさんのことをけいけんしてもらいたい。その中で,はんだんりょくけつだんりょくを養ってほしいなと思います。

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取材・原稿作成:久保 駆(Playce),秋山 由香 (Playce)/協力:城北信用金庫