仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

東京都に関連のある仕事人
1969年 生まれ 出身地 東京都
大倉おおくら 哲治てつじ
子供の頃の夢: ゲームクリエイター
クラブ活動(中学校): 卓球部
仕事内容
たたみせいぞうしゅう,工事を行う。
自己紹介
子どものころからゲームが好きで,今では自分の子どもたちといっしょに遊んでいます。子どもの方がうまいので,子どもに教わりながらプレイしています。

※このページに書いてある内容は取材日(2020年02月07日)時点のものです

たたみをきれいにしたり,新しいたたみを作ったりするたたみしょくにん

畳をきれいにしたり,新しい畳を作ったりする畳職人

わたしとうきょうだちにあるおおくらたたみてんたたみしょくにんをしています。おおくらたたみてんわたしの父が始めた店で,げんざいわたしつまの2人でけいえいしています。
たたみしょくにんは主に,新しいたたみを作る仕事と,すでかれているたたみしゅうしてきれいなじょうたいにする仕事をしています。前者は「しんだたみ」といい,後者は「うらがえし」「おもてえ」という2種類に分かれます。
まず「しんだたみ」では,わらをあっしゅくして作った「たたみどこ」という長方形の土台の上に,イグサという植物をんで作った「たたみおもて(ござ)」をけ,長辺を「たたみべり」でおおうことでたたみを作ります。最近ではわらやイグサだけではなく,木材を細かくくだいて固めて作ったたたみどこや,和紙でできたたたみおもてなど,さまざまなざいが使われるようになりました。
たたみかれてから時間がつと,たたみおもてきずよごれがついてしまいます。そうしたたたみをきれいにしゅうするため,たたみどこからたたみおもてをいったんはがしてたたみおもてをひっくり返し,きれいな面を表にしてりなおすのが「うらがえし」。たたみどこ自体はそのままで,たたみおもてだけを新しいものにえるのが「おもてえ」です。
さらに,すでかれているたたみしゅうのためにゆかからはがしたり,せいぞうしゅうしたたたみきこんだりする工事もたたみしょくにんが行います。

らいを受けて,工事を行う

依頼を受けて,工事を行う

わたしの仕事は,らいをくれたお客さまのもとをおとずれて,「しんだたみ」「うらがえし」「おもてえ」の中からどの作業を行うかをていあんするところから始まります。例えば「古いたたみをきれいにしたい」というらいの場合は,かれているたたみじょうたいかくにんし,「たたみおもてうらめんまでよごれてしまっているので,おもてえが必要」というように,てきせつな作業ないようを考えたり,お客さまの要望を聞いて,たたみおもてざいようていあんしたりしながら,見積もりを作成します。
作業ないようが決定したら,じっさいに作業を行います。「うらがえし」「おもてえ」の場合は,かれているたたみをはがして,お店の作業場へと運び,しゅうを行います。「しんだたみ」の場合は,たたみく部屋の大きさをけいそくし,スペース内にきちんとおさまるようにたたみどこの大きさを調節しながらたたみを作っていきます。こうしてでき上がったたたみを,部屋にきこめば仕事はかんりょうです。作業期間は「うらがえし」「おもてえ」であれば1日,「しんだたみ」であればおよそ1週間です。
わたしはこのほかにも,しゅうが必要なころになったらお客さまにれんらくしたり,お店のせんでんのためのパンフレットを作ったりする仕事もしています。

たたみしょくにんには体力とていあん力が必要

畳職人には体力と提案力が必要

たたみの工事は体力を使う仕事ですが,中でもいちばん大変なのは,たたみを運ぶことです。たたみどこがわらでできたたたみいちまい25~35㎏あり,エレベーターのない古いだんなどで工事を行うときは,たたみを持ってかいだんを何おうふくもしなければいけないこともあります。20代のころはきんりょくトレーニングだと思って楽しく運んでいましたが,だんだんとつかれを感じることも出てきました。それでも仕事中は気合いがあとしとなって,たたみを運べています。
また,洋風の部屋がえて年々,たたみじゅようってきたため,たたみしょくにんやイグサの農家さんが仕事を続けることがむずかしくなってきました。しかし,最近ではしんちくの家を建てるときに,たたみいた小さなスペースを作ることが少しずつえており,特にフチなしのたたみなど,新しいデザインのたたみが使われるようになってきています。わたしは自分たちも農家さんたちも仕事を続けられるよう,店のせんでんに力を入れるほか,たたみざいやデザイン,き方などの点でお客さまにさまざまなていあんをしていくことに力を注いでいます。

お客さまからのかんしゃの言葉がやりがい

お客さまからの感謝の言葉がやりがい

たたみしょくにんの仕事のやりがいは,なんといっても工事の後にお客さまのよろこんだ顔が見られることです。おおくらたたみてんではたたみえるほかにも,工事のときに家具を無料でどうさせたり,たたみをはがすときに部屋のよごれをそうしたりするサービスを行っているのですが,そうしたサービスもお客さまにじょうよろこんでもらえます。
最近は工事が終わった後に,工事の感想などを書いてもらうアンケートを取るようにしました。アンケートはもともと,たたみおもてあつかう問屋さんがしゅさいするたたみしょくにんの勉強会で「最近は他の人の口コミやレビューを見て商品を買う人が多い」ということを聞いて始めたんです。アンケート結果をお店のホームページにけいさいして,他のお客さんに見てもらいます。文章として改めてかんしゃの言葉をもらうと,「今やっていることはちがいではないんだ」「もっとよろこんでもらえるように,努力していこう」と,やる気にもつながります。
また,このアンケートなど,自分のアイデアだいでさまざまなかくができることは,仕事の中で楽しいポイントの一つです。

農家さんの苦労を知り,「いい商売」のけいぞくに努める

農家さんの苦労を知り,「いい商売」の継続に努める

わたしが仕事の中で大切にしているのは,時代に全国で商売していた近江おうみげんざいけん)の商人が残した「三方よし」という考え方です。この「三方」は「売り手」「買い手」「世間」を指し,「三方よし」とは,「売り手であるお店と,買い手であるお客さんがともに満足し,さらに世間の人たちにもこうけんできる商売がいい商売である」ということを意味しています。
わたしは,イグサ農家さんが作るたたみおもてを仕入れてたたみせいぞうしゅうを行っているので,農家さんがいなくては仕事を続けられないのですが,仕事を始めてすぐのころは,ひんしつよりも安さゆうせんたたみおもてを仕入れ,お客さまに安くていきょうすることだけを考えていました。しかし,あるとき他のたたみしょくにんさんといっしょにイグサ農家さんをおとずれて,農家さんがイグサやたたみおもてを作るのにどれだけ苦労しているかを知り,「いいたたみおもてをきちんとしただんで仕入れ,お客さまにていきょうすることが大切だ」と気づいたんです。安いたたみばかりを売っていると,たたみも農家さんももうからなくなってしまいますし,安いざいたたみだけではお客さまにも満足してもらえません。わたしも農家さんも商売を続けていくために,ひんしつのいいたたみおもてをきちんとしただんで仕入れて,それをお客さまにていあんし,満足してもらうことに力を入れています。

小さいころからたたみしょくにんの仕事にれていた

小さいころから畳職人の仕事に触れていた

わたしが小さいころは,ザリガニりや木のえだを使ってチャンバラをするなど,活発な子どもでした。自転車でスピードを出して転んだり,道路に飛び出してトラックとしょうとつしそうになったりするなど,あぶないけいけんもたくさんしましたね。中学生のころはテレビゲームにちゅうになり,よく友達と集まっていっしょに遊んでいました。
父が家でたたみしょくにんの仕事をしていたので,作業する様子を見ていたり,中学のころにはいっしょたたみを運んだりするなど,たたみしょくにんの仕事が身近にありました。高校は工業学校の電気科に通い,卒業後は電気会社ででんこうとして働いていました。そのころも会社が休みの日などは父の仕事を手伝っていたのですが,ある日「もしたたみしょくにんの仕事をぐのなら,3年以内に決めてほしい」と言われ,お客さまのよろこぶ顔が見られるなど,仕事の成果がすぐにられることにりょくを感じ,おおくらたたみてんぐことを決めたんです。
最初のうちは父を手伝いつつ,「うちだけではなく,他のしょくにんさんのやり方も学ぶといい」という父のアドバイスを受けて,たたみせいぞうを学ぶことができる学校に通い,じゅつみがいていきました。

一人で仕事をするようになり,成長することができた

一人で仕事をするようになり,成長することができた

おおくらたたみてんは,もともとわたしの父と母がけいえいしていたお店で,わたしが入ってからは父とわたしとで工事を行っていました。働き始めた当時はお客さまとのやり取りなども父が行っていたので,わたしはその後ろをついていくというような,父にたよるような働き方をしていたと思います。
しかし,わたしが26さいのときに父が体調をくずしてしまい,母のサポートはありましたが,ほとんどわたし一人で仕事をするようになったんです。一人で工事に行くと,お客さんからも「一人でだいじょう?」と言われることもありましたが,そこでニコニコしながら「だいじょうですよ」とお伝えすることで,お客さまにも安心してもらえるよう努めました。また,じゅつりょくがあることをお客さまにお伝えするために,1級たたみのうというかくしゅとくしています。
家具のどうや工事,トラブルがあったときも自分一人でたいおうしていくのは,とても大変でしたが,かえしていくうちにだんだんけつだんりょくや行動力が身についたと思います。
たたみしょくにんの仕事を始めてから30年近くちますが,始めたころよりも仕事に楽しさや,やりがいを感じています。じゅつを身につけてしまえば年をとっても続けられる仕事ですから,お客さまのがおのため,いつまでも続けていきたいですね。

試練からげず,立ち向かって成長しよう

試練から逃げず,立ち向かって成長しよう

わたしが母から言われた言葉ですが,人生は山登りにていると思います。目標であるさんちょうに向かっていく道中には,必ず大きな岩が立ちふさがります。試練はけたいものですが,けているだけでは前に進むことはできません。ぜひ思い切ってえる努力をしてみてください。えられない試練はありませんし,えることで成長したり,新しい気づきがられたりします。わたしも仕事をいでから,あきらめずにさまざまな試練をえた結果,今まで以上にたたみしょくにんの仕事が好きになり,成長することもできたと感じています。みなさんもどうか試練に負けずに,目標に向かって歩んでいってください。

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取材・原稿作成:久保 駆(Playce)/協力:城北信用金庫