• 東京都に関連のある仕事人
  • 1954年 生まれ

    出身地 東京都

せっさくかこう切削加工

北澤きたざわ 義昭よしあき

  • 子供の頃の夢

    オートレーサー

  • クラブ活動(中学校)

    剣道部

  • 仕事内容

    プラスチックやアルミを(けず)って形にする。

  • 自己紹介

    人と(せっ)するのが好きで,交友関係が広いほうです。オフの日はフィットネスクラブで体を動かしています。

  • 出身高校

    京北高等学校
     (現:東洋大学京北高等学校)

  • 【このページに書いてある内容は取材日(2017年02月23日)時点のものです】

北澤 義昭


仕事人記事

最先端(さいせんたん)の研究を(ささ)える機械加工

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(わたし)は,「北澤(きたざわ)鍛工所(たんこうしょ)」という機械加工の会社を経営(けいえい)しています。機械加工という分野では,お客さまの依頼(いらい)沿()って設計図(せっけいず)をつくり,それをもとにプラスチックや金属(きんぞく)を加工して製品(せいひん)をつくります。一人でやっている会社なので,自ら営業(えいぎょう)し,製図(せいず)から製造(せいぞう)まで,全て(わたし)が行っています。
(わたし)の会社では,企業(きぎょう)や研究所で使われる,さまざまな機器の試作品製作(せいさく)などを()()っています。一口に研究機器と言っても多種多様で,これまでに,最新鋭(さいしんえい)の電子顕微鏡(けんびきょう)に使われる部品やMRIの機械の部品,ロケットエンジンの部品など,いろいろなものを製作(せいさく)してきました。また,研究関係以外でも,時計の(はり)など,依頼(いらい)を受ければ何でもつくってきました。
最近の機械加工は,プログラムだけ作成して,あとはボタン一つで機械に大量生産させる形式が()えていますが,うちで製作(せいさく)しているものは,量産形式では対応(たいおう)できない,高い精度(せいど)が求められるものばかりです。高価(こうか)な材料を(あつか)うことも多く,ミスがないよう一つひとつ(きび)しくチェックしています。

精度(せいど)の決め手は設計図(せっけいず)にあり

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朝は6時に起き,その後,午前8時から夜の9時頃(じごろ)まで仕事をしています。納期(のうき)(せま)っているときはもう少し(おそ)くなることもあり,土日も休めないことが多いですね。急ぎの注文が入るとそれだけで手一杯(ていっぱい)になり,ほかの案件(あんけん)(とどこお)ってしまうので,バランスを取るのに苦心しています。
ものをつくるには設計図(せっけいず),すなわち図面が必要です。新しい注文が入ったら,まずは図面を起こさないといけません。一日の半分は図面を()き,残りの時間は,機械を操作(そうさ)して実際(じっさい)製品(せいひん)をつくる工程(こうてい)にあてています。
図面は,それを見ただけで実物を完全に再現(さいげん)できるほど正確(せいかく)でなければいけません。図面が不正確(ふせいかく)なほど,完成図とはかけ(はな)れた製品(せいひん)に仕上がってしまうのです。たとえば,取っ手のついたカップの図面を()くとします。正確(せいかく)()くには,各部分の寸法(すんぽう)はもちろんのこと「この取っ手は溶接(ようせつ)してくっつけるのか,それとも本体から引き出すのか」といったところまで細かく決めていく必要があります。製図(せいず)非常(ひじょう)に時間のかかる作業であると同時に,製品(せいひん)(しつ)を左右する,最も重要な工程(こうてい)です。

自分で解決(かいけつ)しなければ前に進めない

自分で<ruby><rb>解決</rb><rp>(</rp><rt>かいけつ</rt><rp>)</rp></ruby>しなければ前に進めない

通常(つうじょう),機械加工の会社は製造(せいぞう)のみを()()い,図面作製(さくせい)は外部に依頼(いらい)することが多いのですが,(わたし)の会社では図面から製造(せいぞう)まで一貫(いっかん)して行っているので,すべての責任(せきにん)を自分で負わないといけません。何か上手くいかないことがあっても,全部一人で処理(しょり)する必要があり,他人に協力を求めることはできないのです。
起こした図面をもとに製品(せいひん)製造(せいぞう)する(さい),ときには(ねら)い通りのものができないこともあります。自分でつくった図面なので,何が原因(げんいん)なのか,自分で解決(かいけつ)しなければ前に進まないのが大変なところです。
(むずか)しい案件(あんけん)では,一度で図面を完成させるのではなく,お客さんと相談を重ねながら,何度も()き直すことがあります。電話でやり取りをして「ああしてください,こうしてください」という要望を聞き,その都度,(わたし)が図面に反映(はんえい)させていくのです。過去(かこ)には修正(しゅうせい)を8回も()り返して,ようやく最終の図面が決まったという案件(あんけん)もありました。

難題(なんだい)克服(こくふく)できてこそ,やりがいにつながる

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以前,ある企業(きぎょう)から,ロケットエンジンに使うタービン(よく)という部品をつくってほしいと依頼(いらい)をいただきました。宇宙(うちゅう)関連の仕事では,寸分(すんぶん)(くる)いもない精密(せいみつ)さが求められます。この案件(あんけん)は「こんなふうに設計(せっけい)してください」という指示(しじ)が,図形ではなく数値(すうち)の表計算で表されており,それを自分で解析(かいせき)して図面に()き起こすという,とても(むずか)しい作業をともなっていました。また,直線であれば2つの点を結ぶだけで簡単(かんたん)に表すことができるのですが,タービン(よく)形状(けいじょう)は流れるような曲線です。機械を使って正確(せいかく)に曲線の加工をするには,何万という数の点を計算で()り出して集合させなければいけません。その細かさは,1000分の1ミリメートル(=1ミクロン)単位。0.1ミリや1ミリ単位にすると(なめ)らかではなくなってしまうのです。ここまでの精度(せいど)実現(じつげん)するのは非常(ひじょう)(むずか)しいため,うちに来る前に他の何社かに(ことわ)られたそうです。この案件(あんけん)は無事成功し,お客さまからも高い評価(ひょうか)をいただくことができました。
このように困難(こんなん)が多い案件(あんけん)もありますが,うちにしかできない精度(せいど)の高さを武器(ぶき)に,難題(なんだい)克服(こくふく)して評価(ひょうか)をいただけると,大きなやりがいを感じます。

何でもつくってみたい

何でもつくってみたい

ものづくりの会社に求められるものは,一にも二にも精度(せいど)です。「どれだけ精密(せいみつ)製品(せいひん)をつくれるか」ですね。このため,図面の段階(だんかい)から精度(せいど)の高さは特に意識(いしき)しています。また,できあがった製品(せいひん)機能(きのう)充実(じゅうじつ)しているかという点も大切なポイントです。
(わたし)は「何でもつくってやろう」という気持ちが人一倍強いと思います。さすがに電気のようなものは自分でつくり出すことができませんが,加工してつくれるものなら,何でも挑戦(ちょうせん)してみたいです。もちろん苦労もたくさんありますが,ものをつくること自体に楽しさを感じているのだと思います。
(わたし)の会社では,ごく小さな部品から非常(ひじょう)に大きなものまで,依頼(いらい)があれば何でもつくります。材料で大きく分けると,金属(きんぞく)とプラスチックです。一般(いっぱん)的に金属(きんぞく)加工とプラスチック加工はそれぞれ専門(せんもん)の会社が行いますが,(わたし)は両方ともやっています。一つの案件(あんけん)に両方の加工が必要なことも多く,どちらとも自社でまかなえれば,外注せずにすむためです。

時代の変化とともに

時代の変化とともに

北澤(きたざわ)鍛工所(たんこうしょ)は,社名に「鍛工(たんこう)」とあるように,もともとは鍛冶屋(かじや)でした。鉄を打ち,いろいろな器具をつくる仕事で,(わたし)の父の代は,ミシンの精密(せいみつ)部品や貨物車の部品などを製造(せいぞう)していました。しかし,時代の変化とともに都内の騒音(そうおん)規制(きせい)(きび)しくなり,大きな音が出る鍛冶(かじ)の工場は操業(そうぎょう)(むずか)しくなったのです。
(わたし)は高校を出たあと,鍛造(たんぞう)の金型やプラスチックの金型の会社で働き,さまざまな仕事を覚えました。その経験(けいけん)を生かし,鍛冶屋(かじや)をたたんだあとの実家の工場で,機械を使った金属(きんぞく)加工をやってみようと考えました。それが今の北澤(きたざわ)鍛工所(たんこうしょ)(いた)経緯(けいい)です。
プラスチックの金型の会社で働いていた(ころ),コンピュータが登場しました。(わたし)は,“そのうち,コンピュータを駆使(くし)できないと機械加工で食べていけない時代がくる”と直感し,システムの動かし方や図面の起こし方を独学(どくがく)で身に付けていきました。また,機械を動かすには,三角関数を理解(りかい)して座標(ざひょう)点の計算をする必要もあります。自分なりに苦労して学びましたが,もともと数学が得意だったこともあり,新しく吸収(きゅうしゅう)していくのはそれほど(いや)ではありませんでした。

学校の勉強がものづくりの役に立っている

学校の勉強がものづくりの役に立っている

小さい(ころ)はとてもやんちゃな少年でした。ベーゴマやメンコがはやっていた時代で,親におもちゃを買ってもらうのではなく,自分たちで工夫して遊び道具をつくっていましたね。(かん)の底に(あな)を開けてひもを()り,下駄(げた)のようにして歩く「ぽっくり」とか,紙コップに糸を通して遊ぶ「糸電話」とか。小さいころから,いろいろなものを自分で作っていましたね。
小学校2年生からは剣道(けんどう)を始めました。中学では剣道(けんどう)部には入らず,地元の剣友会(けんゆうかい)に週3回ほど通い,大会があるときは剣道(けんどう)部から出場していました。剣道(けんどう)を通して,大事な友だちもできました。小さいときにできた親友は,60(さい)になっても親友なんですね。友だちはつくるのも(むずか)しいですが,長く継続(けいぞく)していくのも(むずか)しいです。みなさんも,友だちとの(えん)はいつまでも大切につないでほしいと思います。
実は,今の仕事には学校での勉強がとても役立っています。中学や高校で数学を習っていたときは「三角関数なんて勉強して何の役に立つんだ」と思っていましたが,あのとき勉強していなければこの仕事はとてもできませんでした。学校で教えてもらったことは,社会に出てから本当に役に立つんだなと身に()みて実感しています。

他人の意見に耳を(かたむ)けよう

他人の意見に耳を<ruby><rb>傾</rb><rp>(</rp><rt>かたむ</rt><rp>)</rp></ruby>けよう

先生でも上司でも,目上の人から何かアドバイスされたら,素直(すなお)(みと)めて受け止めることが大事です。他人からの忠告(ちゅうこく)(こば)んでしまうと,なかなか成長することはできないと思います。
忠告(ちゅうこく)を聞くのは耳が(いた)いですし,非難(ひなん)されているように感じて,反発したくなることもあるでしょう。でも,そこをグッとこらえて素直(すなお)な気持ちで聞き入れれば,いずれ困難(こんなん)()()えるための(かて)になっていくと思います。
(わたし)はものづくりをしていますが,発注してくれるお客さまや先生方の意見を聞かずに,勝手なことばかりやっていたらとても仕事になりません。自分の言いたいことばかり言う人もいるけれど,まずは他人の意見を聞く耳を持つことが大切です。そして,聞いたことを身に付けて,行動に表すこと。特に,学校を出て仕事を始めてからは,それができるようにならないといけません。みなさんも少しずつでいいので,他人の意見にしっかりと耳を(かたむ)けるよう,心がけてみてください。

  • 取材・原稿作成:東京書籍株式会社/協力:城北信用金庫