※このページに書いてある内容は取材日(2024年11月13日)時点のものです
「カップヌードルミュージアム 横浜」でスタッフとして働く
私は現在、「安藤百福発明記念館 横浜」、通称「カップヌードルミュージアム 横浜」で、スタッフとして働いています。
「カップヌードルミュージアム 横浜」は、世界初のインスタントラーメンを発明した安藤百福の「クリエイティブシンキング=創造的思考」を体感できるミュージアムです。ミュージアムは1階から4階まであり、1階はエントランスとミュージアムショップになっています。2階は、1958年の「チキンラーメン」の発売から始まったインスタントラーメンの歴史を圧倒的な数のパッケージで体感する「インスタントラーメンヒストリーキューブ」、安藤百福がチキンラーメンを発明した小屋を再現した「百福の研究小屋」、安藤百福の言葉や思考、行動の本質を6つのキーワードに集約し、現代アートの斬新なスタイルで表現した「クリエイティブシンキング ボックス」などの展示スペースとなっています。3階には世界で一つだけのオリジナルカップヌードルを作ることができる「マイカップヌードルファクトリー」、チキンラーメンを手作りできる「チキンラーメンファクトリー」といった体験型の施設があります。4階には巨大な工場の中で製麺から出荷されるまでの生産工程を体感できるアスレチック施設「カップヌードルパーク」、安藤百福が「麺」のルーツを探るために世界各国を旅した際に出会った8か国の麺料理を再現し、提供している「NOODLES BAZAAR(ヌードルズバザール) ワールド麺ロード」があり、私が担当しているのはこの「NOODLES BAZAAR」です。
スタッフの現状を把握しながら、働いてもらう場所を決める
「NOODLES BAZAAR」はアジアのナイトマーケットをイメージした空間の中で、イタリア、中国、ベトナム、タイなどさまざまな国の麺料理と現地の飲み物などを楽しむことができる場所です。私の仕事はこの「NOODLES BAZAAR」でスタッフや現場を統括するスーパーバイザー(SV)ですが、大きく分けて2つの仕事があります。
まずは「人の調整」です。「NOODLES BAZAAR」全体では延べで60人ほどのスタッフが働いています。そのスタッフのシフト調整を行ったり、一人一人と面談をしてより働きやすい環境をつくれないか考えたりする仕事です。もう一つは「物の管理」です。食材の在庫を把握し、売り切れにならないよう工夫しながら発注を行います。
スタッフたちは毎日、シフトによって定められたそれぞれの持ち場で働いているのですが、「NOODLES BAZAAR」内のブースは全部で9か所あり、場所によって違う調理作業が必要となります。こういったフードコートのような場所だと、「ただ温めて作っているのでしょ」と思われることが多いです。でも「NOODLES BAZAAR」で提供される料理は、朝から野菜を切ったりスープを仕込んだりという仕込み作業を行っていて、時間をかけているのが大きな特徴です。そのため、「この人は今、手の調子が悪いって言っていたな」など、個人の事情を把握しておくことが必要です。そうした事情も考え合わせながら、その日に働けるスタッフでシフトを組むという作業はなかなか大変です。どうしても、急に体調を崩してしまいお休み、ということはありますから、そういう場合は配置を変更したり、お休み予定の人にシフト変更をお願いしてみたりと、みんなで協力し合って乗り越えています。
安藤百福の理念や思いを伝える場
「カップヌードルミュージアム 横浜」の開館時間は10時から18時で、毎週火曜日が休館日です。スタッフは9時から19時までの間でシフトを組んで勤務しています。
私は出勤すると、まずバックヤードでメールの確認をしたり、前日までに発注した食材などの納品物が届いているので、そのチェックなどを行ったりします。お昼のピークタイムに合わせ、10時半ごろから出勤してくるスタッフが多いので、それに合わせて出勤を確認し、朝礼の準備や、スタッフのシフトを組む作業などを行います。12時から15時はお客さまが多い時間帯です。ホールに出て様子を見たり、洗い場に洗い物がたまっていたらそれを手伝ったり、調理の人手が足りていないお店を手伝ったりと、全体の様子を見て動きます。夕方からはスタッフとの面談や、足りなくなった食材や物品などの発注作業を行います。また、新メニューの開発を行うこともあります。
「NOODLES BAZAAR」は単なるフードコートではなく、安藤百福という人の理念や思いを伝える場でもあります。麺料理を食べることで、麺の文化が伝わってきた歴史を少しでも感じていただければ、という場所です。そのため、売り上げももちろん大事なのですが、そういった理念が伝わる場であることを第一に、新メニュー開発や日々の接客などを行っています。
海外からのお客さまとのコミュニケーションの手助けも
「カップヌードルミュージアム 横浜」のお客さまは、インバウンド(訪日外国人観光客)の方がとても多いです。実は現在、総入場者数の4分の1以上がインバウンドのお客さまとなっています。新型コロナウイルスの流行前、2018年の段階では総入場者数の約12%くらいでしたから、ここ数年で飛躍的に増えています。
海外からのお客さまに人気である理由としては、「カップヌードル」は世界中で販売されていて、よく知られているブランドであること、また、カップヌードルミュージアムはオリジナルのカップヌードル作りなどのさまざまな「体験」ができる場所であることが考えられます。そのため、ただ買い物をしたり、なにかを見たりするだけの観光ではなく、「体験できる場所」を探している方が検索サイトやSNSなどで情報を得て、足を運んでくださっているのではないでしょうか。
いちばん多いのはシンガポールや台湾などのアジア圏の方で、平日の昼間などは8割くらいがインバウンドのお客さまという場合もあります。そういうお客さまとスタッフとは英語でコミュニケーションを取ることが多く、私は英語で会話はできるのですが、すべてのスタッフが英語を話せるわけではありません。そのため、混んでいる時間帯にはフロアを観察し、スタッフが困っているときは手助けに入ります。もちろん、英語圏以外からのお客さま、英語が話せないお客さまも多くいらっしゃいます。そういった場合には身振り手振りなどでなんとかご理解いただいたり、スマートフォンの翻訳アプリなどを使いながらお話ししたりすることが多いです。
スタッフがお客さまに感謝されることもうれしい
お客さまやスタッフが笑顔になってくれると、やりがいを感じます。ときにはお客さまが私たちに感謝の気持ちを伝えてくださることがあり、「この仕事をやっていてよかったな」と思います。また、お客さまからのアンケートで「おいしかった」「スタッフの雰囲気がよかった」という言葉をいただくとうれしいです。先日、英語が苦手なスタッフが海外のお客さまに一生懸命接客をしたことで、お客さまから食後にメッセージカードをいただいていました。そういう報告を受けると、自分のことのようにうれしいですね。
自分自身は、どんなときでも常に笑顔でいることと、元気でいることを心がけています。やはり自分がそういった「笑顔の源」であることで周りのスタッフの笑顔をつくることができますし、スタッフの笑顔はお客さまに伝わります。そのためにも大事なのは、まずは、笑顔でいることや元気でいられることが「普通」になっていること。そしてさらに、自分のスキルだったり、勉強だったり、なにかレベルアップしたいと思うときは「普通より少し上」を目指すことを心がけています。この「少し」というのがポイントで、大きな目標ではないので目指しやすいのです。そのためにも、いい状態が自分の「普通」になっているように心がけています。
カフェと人材育成の会社で培ったスキルを生かし現職に
中学生、高校生のときはホテルマンに憧れていました。海外旅行でホテルに宿泊した際、ドアマンがとてもかっこよく見えたからです。そのため高校卒業後は外国語を専門に学べる大学に進学したのですが、卒業後はホテルには就職できず、カフェを経営している会社に就職しました。第一志望の業界ではありませんでしたが、お客さまと接し、ホスピタリティが必要な仕事という点では共通していたと思います。
カフェでは店長も経験しました。当時、若い学生アルバイトの人たちから「仕事にしても人生にしても自分には目標がない」というような言葉を聞くことがありました。また、店長になると自分が直接、接客することは減り、スタッフに接客のアドバイスをするなど、「人を育てる」仕事が増えてきました。そのような経験から、「若い人たちにも目標を持ち、それを達成する思いを味わってほしい。輝いて働く大人を見て、『同じようになりたい』と夢を持ってほしい」と思い、中小企業の研修を行う会社に転職し、6年間働きました。その後、以前の飲食業での経験を生かし、お客さまや働く人たち、未来の子どもたちのためになる仕事がしたいという思いからさらに転職、2024年の5月から現在の仕事をしています。
剣道とゲームで学んだ「目標を達成すること」の喜び
小学生のころは内気で体力もなく、外で遊ぶのも苦手な子どもでした。しかし、中学校から剣道を始めたことで、いろいろと変わることができました。最初は子ども用の短い竹刀すら振れないほど体力がなく、腕立て伏せも全然できませんでした。でも、先輩たちに恵まれ、なんとか頑張ってみんなについていくことで、市内の大会で相手に勝てるようになり、高校は剣道推薦で進学できるほどに上達しました。また、子どものころはゲームをするのが好きでしたが、父が「今やっているゲームをクリアしないと新しいゲームは買わない」という方針でした。そのため、難しいゲームでもなんとかクリアしようと頑張った記憶があります。剣道とゲーム、そのどちらも「頑張って目標を達成する」という経験を私に与えてくれたものです。この達成経験を積むことができたからこそ、今も「目標を持ち、それを達成する」ということを日常的に考えられるのかなと思っています。