• 東京都に関連のある仕事人
  • 1947年 生まれ

    出身地 東京都

シェフ

三好みよし 庸介ようすけ

  • 子供の頃の夢

    なし

  • クラブ活動(中学校)

    応援団

  • 仕事内容

    フランス,スイス,イタリアなどのヨーロッパ料理を調理し,お客さまに提供する。

  • 自己紹介

    猪突(ちょとつ)猛進(もうしん)型です。気に入ったら一流を目指し,とことんまでやります。

  • 出身高校

    日本大学高等学校

  • 出身大学・専門学校

    日本大学 法学部

  • 【このページに書いてある内容は取材日(2016年10月03日)時点のものです】

三好 庸介


仕事人記事

上質なヨーロッパ料理店

上質なヨーロッパ料理店

東京の荒川(あらかわ)東尾久(ひがしおぐ)で,フランス料理を基本(きほん)とし,スイス,イタリアなどの料理も取り入れたレストランを(いとな)んでいます。30年ほど前に始めた(ころ)は,当時まだ(めずら)しかった本格(ほんかく)的なフランス料理店でしたが,時代の流れに合わせてカジュアルなヨーロッパ料理店に変えてきました。昔から気に入っていた建物を参考にして中庭のあるレストランにし,一(まい)板のテーブルなどは自分で手作りしたこだわりの店です。
フランスでの修業(しゅぎょう)(さい),産地を回り親しんできたワインの品揃(しなぞろ)えには自信があります。また看板(かんばん)料理のチーズフォンデュはスイスで学んできたレシピを自分流にアレンジし,材料も吟味(ぎんみ)して4時間かけて作る自慢(じまん)の一品です。チーズの価格(かかく)は上がっていますが,開店以来,値段(ねだん)は変えずに提供(ていきょう)しています。
70(さい)に近づいた今でも,ヨーロッパをはじめ各国に旅行したり,国内の上質(じょうしつ)なレストランの料理を食べ歩いたりして,感動した味を自分なりに再現(さいげん)することを続けています。

仕入れも仕込(しこ)みも自分で

仕入れも<ruby><rb>仕込</rb><rp>(</rp><rt>しこ</rt><rp>)</rp></ruby>みも自分で

毎朝6時に家を出て,築地(つきじ)安行(あんぎょう)千住(せんじゅ)の市場に日()わりで行って,9時半ごろ店に着きます。仕入れたものをランチに間に合うように下ごしらえし,ランチのあとは時間のかかるものを仕込(しこ)んでおきます。魚はほとんどおろしておくけれど,切るのはお客さんからのオーダーが来てから。作り置きできないものが多いので,お客さんを待たせてしまうこともありますが……。
ディナーのあとは次の日の仕込(しこ)みです。日によってかかる時間は(ちが)います。スープが無くなってしまうと煮込(にこ)みに時間がかかるので,終わるのが夜中になることもあります。ですが,体にもこたえるので,たくさんあるレパートリーの中から手のかかり()ぎないものを選ぶようにはしています。ただ,コンソメには特にこだわっていて,牛のスネをおろして細かくし,スジを取ってミンチにし,野菜も入れて煮込(にこ)んでこして作るというやり方を守っています。手間はかかっても昔ながらの本物のコンソメ料理が自慢(じまん)です。

人を(やと)うことの(むずか)しさ

人を<ruby><rb>雇</rb><rp>(</rp><rt>やと</rt><rp>)</rp></ruby>うことの<ruby><rb>難</rb><rp>(</rp><rt>むずか</rt><rp>)</rp></ruby>しさ

独立(どくりつ)してから10年ほどたった(ころ),自家用のクルーザーに乗っていて足を怪我(けが)してしまい,義足(ぎそく)になってしまいました。(やと)っていた(わか)い人たちは,どうしても負担(ふたん)()えるため次々(つぎつぎ)に辞めてしまい,20年くらい苦しい思いをしながら,人に助けられつつやってきました。
そのうち優秀(ゆうしゅう)(わか)い人が来てくれて,何でも教えながら一緒(いっしょ)に働きました。でも,最初から5年契約(けいやく)にしてもらって,5年後には他の店を紹介(しょうかい)して(うつ)ってもらいました。(わか)い人を休ませるわけにはいかないと思うと自分も休むことができず,また指導(しどう)する以上は自分も同じように頑張(がんば)らなければなりません。年もとってきて,好きな時に休暇(きゅうか)をとって旅行に行ったり趣味(しゅみ)の時間をもったりするには,一人でやるのが気楽でいいのです。 (わか)(ころ)には(みな)でアイディアを出し合い,(たが)いに刺激(しげき)し合って働くことで,すごいものを(つく)り上げることができていたと思いますが,今はこだわりの味を守りながら,(しつ)は落とさずにいい料理を出し続けたいと思っています。

お客さんに喜んでもらうのが一番

お客さんに喜んでもらうのが一番

やっぱりお客さんに,「来て良かった,幸せな気持ちになった」と思ってもらえるのが一番です。コースの料理を全品食べ終って,「美味しかった!こんなに食べられると思わなかった!」と言って喜んでくれるお客さんが多く,それが本当に(うれ)しいです。おばあさんが「生きててよかった!」と言ってくれることもあって,思わずニコニコしてしまいます。その結果,20年来,家族の誕生日(たんじょうび)結婚(けっこん)記念日に必ず来てくれる,というようなグループがとても多いです。ほとんどがそういうお客さんだと言えるかもしれません。
今の(きび)しいご時世,西洋料理店というのは,やはり特別な日を()ごそうとお客さんが選んでくれる「記念日の店」なんだと思います。うちはそこまで堅苦(かたくる)しくならないようなメニューの選択(せんたく)価格(かかく)設定(せってい)を心がけてはいます。
クリスマスディナーを食べに来てくれるお客さまも多いので,自慢(じまん)のチーズフォンデュを()り込んだスペシャルコースに,プロの演奏家(えんそうか)生演奏(なまえんそう)もつけて,特別な時間を楽しんでもらえるよう力を入れています。

ソースへのこだわり

ソースへのこだわり

先に()べたように,ワインの品揃(しなぞろ)え,チーズフォンデュ,コンソメにはこだわりを持っていますが,特に大切にしているのは料理に()えるソースです。
それぞれの料理の素材(そざい)を活かした,肉汁(にくじゅう)や魚の出汁(だし)を使った濃厚(のうこう)なソースをたっぷり()えるのが,50年前から(わたし)修業(しゅぎょう)して体得してきたフランス料理の基本(きほん)でした。しかし今,日本でも本場フランスでも,軽い口当たりや見た目の美しさを重視(じゅうし)した,ソースと言えないようなものが少しだけ()えられた料理が主流になっています。伝統(でんとう)の味が継承(けいしょう)されていないことがとても残念ですが,(わたし)はあくまでも自分が学んできた味を守って,ステーキには肉汁(にくじゅう)の,魚料理には出汁(だし)の味わいの()まったソースをたっぷり()えるようにしています。
ただ,健康という面から見ると,伝統(でんとう)的なフランス料理を食べ続けたら体に悪いというのは事実です。そこで,大学に依頼(いらい)して店の料理のカロリー計算をしてもらい,トマトを使ってカロリーダウンしたチーズフォンデュを作るなど,健康志向(しこう)を取り入れる工夫もしています。

フレンチ一筋(ひとすじ)修業(しゅぎょう)日々(ひび)

フレンチ<ruby><rb>一筋</rb><rp>(</rp><rt>ひとすじ</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>修業</rb><rp>(</rp><rt>しゅぎょう</rt><rp>)</rp></ruby>の<ruby><rb>日々</rb><rp>(</rp><rt>ひび</rt><rp>)</rp></ruby>

温泉(おんせん)旅館を経営(けいえい)していた父から和食の道を(すす)められ,大学卒業後に料理の世界に入りましが,修業(しゅぎょう)に入った店で洋食部門に回されてしまいました。大学で学んだフランス語の助けもあり,ぜひフレンチでいくべきだとシェフに(すす)められ,そこからずっと修業(しゅぎょう)を続けて今に(いた)るというわけです。始めは大学4年間の(おく)れを取り(もど)すべく,同僚(どうりょう)より早く出勤(しゅっきん) して練習したり,皿洗(さらあら)いを少しでも早く終わらせて先輩(せんぱい)から仕事をもらったりと,必死でした。10年()ってようやくメインの料理を作らせてもらえるようになりました。結局,銀座(ぎんざ)で16年ほど修業(しゅぎょう)したのちフランスに(わた)り,ヨーロッパを回って帰って来て,麻布(あざぶ)でシェフをしたあと独立(どくりつ)準備(じゅんび)に入りました。
銀座(ぎんざ)にいた(ころ)はバブルの絶頂期(ぜっちょうき)でものすごく(いそが)しく,閉店後(へいてんご)から翌日(よくじつ)にかけてさらに2(けん)出張(しゅっちょう)宴会(えんかい)担当(たんとう)したこともありました。何ヵ月も店に()まり込んだり,徹夜(てつや)で働いたり,大変な毎日でしたが(つら)いとは思いませんでした。洋食が楽しくて仕方がなかったし,高校時代応援団(おうえんだん)(つちか)った根性(こんじょう)も活かされていたと思います。おかげでしっかりとした基礎(きそ)(きず)くことができました。
最近の(わか)い人は料理学校を出てフランス研修(けんしゅう)に行って,料理人になって修業(しゅぎょう)するというケースが多いようです。数年で独立(どくりつ)していくこともありますが,基礎(きそ)がしっかりしていないと自分の店を持ってやり続けるのはなかなか(むずか)しいようです。

猪突(ちょとつ)猛進(もうしん)のイノシシ型

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典型的なイノシシ型で何に対しても突進(とっしん)するのみですが,子どもの(ころ)荒川(あらかわ)で野球をしたり泳いだり,普通(ふつう)の男の子でした。中学の時,姉が音楽を教えてくれてカントリーウェスタンにはまり,クラス全員を指導(しどう)して歌わせるくらい歌に自信を持っていました。でも,高校で応援団(おうえんだん)に入り3年間,大声を出し続けた結果,すっかり声をつぶしてしまいました。
それで大学時代にはウッドベースを()いてプロダクションに所属(しょぞく)してバンド活動をし,レコードも出しました。子どもの(ころ)からやっていたスキーも,大学時代に山に(こも)って昼はスキー,夜はバンドの生活をするうちに,インストラクターになるほど上達し,競技(きょうぎ)スキーにも力を入れました。
足に(しょう)がいを負ったあとも,10年ほどして競技(きょうぎ)スキーを再開(さいかい)し,パラリンピックに出られそうなところまでいきましたし,休日の()りも続けて翌日(よくじつ)のメニューに出しては喜ばれていました。今は陶芸(とうげい)に熱中して陶芸(とうげい)教室もやっています。
生まれつきの猪突(ちょとつ)猛進(もうしん)と高校の応援団(おうえんだん)精神(せいしん)で,何事もやる時は一流を目指してとことんやるのが身上です。でもやっぱり原点は料理,仕事に合わせて趣味(しゅみ)を持てていると(うらや)ましがられています。

(ゆめ)を持って一歩ずつ

<ruby><rb>夢</rb><rp>(</rp><rt>ゆめ</rt><rp>)</rp></ruby>を持って一歩ずつ

今の子どもたちが,何かになりたいという(ゆめ)をもって,その(ゆめ)に向かって努力していけたらいいなと思います。最後までやり()くためのアドバイスとしては,ライバルを作ってその人に負けないような仕事をしていくことが料理では特に大切です。そして,段階(だんかい)()んで一から順に覚えていく。野菜が終わったら魚,魚が終わったら肉料理というふうに。いっぺんに何もかも覚えようとしてもそれは無理な話で,希望をもって一つひとつ上がっていった方が絶対(ぜったい)素晴(すば)らしいものができると思います。
(わたし)の場合は店を持つことを目指して修行(しゅぎょう)頑張(がんば)り,店があるから人一倍料理を覚えなきゃという気持ちで精進(しょうじん)してきました。30年以上,料理一本でそれしか頭になかったです。65(さい)()ぎてから,自分の好きなことをやろうとアメリカに音楽を()きにいったり,好きな時に旅行に行ったりし始めました。でも,そこで得たものがまた店に(つな)がっていく…。こんな(わたし)の話が少しでもみなさんの成長の参考になればと願っています。(ゆめ)を持ってちゃんとやれば,できないことはないから!

  • 取材・原稿作成:東京書籍株式会社/協力:城北信用金庫

私のおすすめ本

  • 荒田西洋料理

    荒田勇作

    日本の西洋料理の基礎。肉,野菜,卵,スープの全て渡って書いてある本。料理人を目指すならば,ぜひ読んでほしいシリーズです。

  • エスコフィエフランス料理

    オーギュスト・エスコフィエ

    現代のフランス料理の原点をつくった人の本です。膨大なレシピがあり,フランス料理人を目指すのであれば,何度も目を通してほしい名著です。