社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2012年06月07日)時点のものです
私(わたし)は,社会福祉(ふくし)協議会の運営(うんえい)するホームヘルパーセンターで,ヘルパーのリーダーとして働いています。ヘルパーとは,高齢者(こうれいしゃ)・身体障害者(しょうがいしゃ)といった体の不自由な方の家を訪問(ほうもん)し,その方ができないことをお手伝いする人です。ヘルパーの仕事は,料理や洗濯(せんたく)・掃除(そうじ)といった家事を手伝う「生活援助(えんじょ)」,食事やお風呂(ふろ)・トイレの動作を手伝う「身体介助(かいじょ)」の2つに分けられます。昔はどの家庭も大家族で,大抵(たいてい)は家庭内に高齢者(こうれいしゃ)の面倒(めんどう)を見る人がいましたが,今では親と子どもだけの家庭・働く女性(じょせい)の増加(ぞうか)により,家庭内で面倒(めんどう)を見ることが難(むずか)しいことも多くなっています。そこで,代わりにヘルパーを利用したい方が増(ふ)えているのです。私(わたし)の仕事は,こうした方からの依頼(いらい)を受けて,派遣(はけん)するヘルパーのスケジュールや仕事内容(ないよう)を管理することです。
私(わたし)の働いているセンターでは,まずヘルパーの利用者さんから,「この日の何時に来てください」と要望を頂(いただ)き,どういったお手伝いをするか内容(ないよう)を決めます。その後担当(たんとう)のヘルパーを利用者さんの家に派遣(はけん)します。場合によっては,要望を頂(いただ)いてからすぐに派遣(はけん)することもあります。ヘルパーさんの1回の訪問(ほうもん)時間は,短くて30分,長い時には5時間にもなります。訪問日(ほうもんび)に担当(たんとう)のヘルパーが行けなくなった場合には,他のヘルパーを代わりに派遣(はけん)し,利用者さんが困(こま)ることがないように気を付けています。以前は私(わたし)もヘルパーとして利用者さんの家を訪問(ほうもん)していましたが,リーダーになってからそうした機会は少なくなりました。しかし今でも,リーダーとして利用者さんの家を訪問(ほうもん)した時には,利用者さんの声が聞けて嬉(うれ)しく思うと共に,担当(たんとう)のヘルパーの様子も分かって満足しています。
ヘルパーを派遣(はけん)する上で工夫していることは,認知(にんち)症(しょう)の利用者さんへの対応(たいおう)です。認知(にんち)症(しょう)は,物事を忘(わす)れやすくなる病気です。認知(にんち)症(しょう)の方は,昔のことはよく覚えているのですが,最近のことを忘(わす)れてしまいがちです。例えば,介護(かいご)に関する法律(ほうりつ)が変わって,昔はヘルパーがお手伝いできていたことができなくなり,そのことをきちんと説明するのですが,利用者さんは説明を忘(わす)れていて,「前まではしてくれていた」と言われてしまうことがあります。また時には,利用者さんが自分で物をしまったことを忘(わす)れていて,ヘルパーが物を盗(ぬす)んだと誤解(ごかい)されてしまうこともあります。そこで,盗(ぬす)んだ物の隠(かく)し場所に見えてしまいかねないので,ヘルパーは利用者さんの家にバッグを持ち込(こ)まないようにしています。
この仕事のやりがいは,私(わたし)たちが利用者さんにとって安心できる環境(かんきょう)を作ることによって,利用者さんが私(わたし)たちのことを待っていてくださるようになり,「来てくれてありがとう」と感謝(かんしゃ)や喜びの言葉をかけてくださることです。「本当は病院で命を終えるところだったけれど,ヘルパーさんのおかげで家にいることができました」と感謝(かんしゃ)して頂(いただ)けることもあります。利用者さんだけでなく,そのご家族の笑顔も見られることがこの仕事の良いところです。ヘルパーという仕事は,人を思いやる気持ちがとても大切で,それを十分に生かせる仕事だと思います。
仕事をする上で大切にしていることは,人それぞれ価値観(かちかん)が違(ちが)うので,自分の意見を押(お)しつけないようにすることです。例えば,洗濯物(せんたくもの)のたたみ方や,野菜の切り方や味付けなどの好みは利用者さんによって違(ちが)います。ですからヘルパーは,小さなことも1つ1つ利用者さんに確認(かくにん)しながら作業をするようにしています。それから,細かい気づかいも大切です。料理の味付けには特に気を使っていて,利用者さんが病気にならないように味は薄(うす)めに作っています。また,利用者さんによって飲み込(こ)む力や食べることができる食べ物,1人でできることが違(ちが)うので,利用者さん別にノートを作って対応(たいおう)しています。
私(わたし)の祖母(そぼ)が亡(な)くなった時,元気な祖母(そぼ)が段々(だんだん)と弱っていくのを見ていて,私(わたし)は何もしてあげられませんでした。私(わたし)に知識(ちしき)があったらもう少し何かができたのではないかという思いがありました。そんな時,友だちにホームヘルパーの仕事へ誘(さそ)われました。私(わたし)は体が大きく体力もあったので誘(さそ)われたのだと思います。元々(もともと)世話好きで,お年寄(としよ)りも好きだったのでこの仕事を始めることにしました。最初は利用者さんがお風呂(ふろ)に入るのを手伝う仕事をしていましたが,途中(とちゅう)から利用者さんの家に行ってお手伝いをするようになりました。その後ヘルパーの経験(けいけん)を積み,ヘルパーのリーダーとなって今に至(いた)ります。
子どもの頃(ころ)は,田舎(いなか)育ちだったということもあり,近所のおじいちゃん,おばあちゃんにもよく「こんにちは」と挨拶(あいさつ)をしていて,お年寄(としよ)りの方から好かれていました。お年寄(としよ)りの方は,挨拶(あいさつ)をするとすごく喜んでくれました。だから,私(わたし)は子どもの頃(ころ)から,おじいちゃん,おばあちゃんが好きでした。小学生の頃(ころ)は,とても真面目で,中高生の頃(ころ)は,生徒会なども自分から進んで行い,任(まか)されたことは最後までやり通す,中途(ちゅうと)半端(はんぱ)なことはしないというように,責任感(せきにんかん)がとても強かったです。やはり子どもの頃(ころ)も,今と変わらず明るい性格(せいかく)でした。
ヘルパーの仕事をしていると,おじいちゃん,おばあちゃんは,お孫さんのことをとても嬉(うれ)しそうにお話ししてくださいます。お孫さんのことが本当に可愛(かわい)いのでしょう。皆(みな)さんには,おじいちゃん,おばあちゃんのことを大切にしてあげて欲(ほ)しいです。お年寄(としよ)りを大切にするということは,いずれは自分たちも大切にされるということにつながっていきます。また,目上の人の言うことからは,学べることが多いので,お年寄(としよ)りの言葉も大切にして成長していってもらいたいと思います。最後に,仕事というのは常(つね)に勉強です。大変なこともありますが,その勉強は自分を助けてくれます。何事も投げ出さずに最後まで頑張(がんば)ってもらいたいと思います。