仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

東京都に関連のある仕事人
1975年 生まれ 出身地 神奈川県

田中(たなか) 和江(かずえ)
子供の頃の夢: 看護師
クラブ活動(中学校): バスケットボール部
仕事内容
紙し器き,パッケージ,POP,ディスプレイなどの製せい造ぞうに使用する抜ぬき型がたを作る。
自己紹介
経けい営えい者しゃになったときに体力が必要だと感じ,それ以来,休みの日は必ずジムでトレーニングをするようにしています。もともと体はあまり強くありませんでしたが,継けい続ぞくするうちに少しずつ強くなりました。

※このページに書いてある内容は取材日(2020年01月21日)時点のものです

紙を加工するための「抜ぬき型がた」を作る会社

紙を加工するための「抜型」を作る会社

私わたしは東とう京きょう都と北きた区くにあるテイ製せい作さく所しょという会社の社長を務つとめています。テイ製せい作さく所しょは,紙し器きと呼よばれる紙でできた箱などの入れ物や,お店で商品を並ならべるための紙かみ製せいの棚たなを制せい作さくするほか,これらを量産するために使われる「抜ぬき型がた」を製せい造ぞうしている会社です。抜ぬき型がたというのは,ベニヤ板に切り取りたい紙の形に合わせて曲げられた刃は物ものをはめ込こんだもので,これを抜ぬき加工機という機械で紙に押おしつけることで,紙を切きり抜ぬいたり折り目をつけたりすることができます。
抜ぬき型がたの製せい造ぞうは,商品を企き画かくした会社や広告の会社から「クッキーが10個こ入る箱を作りたい」といった依い頼らいを受けた後,お客さまが求める条じょう件けんに合わせた箱や棚たなの設せっ計けい図ず作成から始めます。設せっ計けい図ずをもとに作ったサンプルにお客さまがOKを出してくれたら,紙を完成形に加工するための抜ぬき型がたを作り,でき上がった抜ぬき型がたを,抜ぬき加工機を扱あつかう業者さんに納のう品ひんします。抜ぬき加工した紙を折り目に合わせて組み立てることで,みなさんが普ふ段だん目にしているお菓か子しなどの箱や,コンビニなどで見かける小さな棚たなの形になるんですよ。

加工が難むずかしい素そ材ざいに対たい応おうできる技ぎ術じゅつ力りょく

加工が難しい素材に対応できる技術力

私わたしたちの強みは,「PASCO(パスコ)」という,木の繊せん維いで作られた,厚あつ紙がみのような,硬かたくて耐たい久きゅう性せいのある素そ材ざいを加工する技ぎ術じゅつを持っていることです。PASCOは軽くて丈じょう夫ぶで湿しっ気けにも強いので,プラスチックの代わりとして使える,環かん境きょうに優やさしい素そ材ざいとして注目されています。しかし,その硬かたさから加工が難むずかしく,PASCOの抜ぬき型がたを作っているのは国内で私わたしたちだけです。
私わたしたちがPASCOの加工を始めたきっかけは,あるお客さまからの「PASCOを使って店頭に設せっ置ちする棚たなを作りたい」という依い頼らいでした。他の会社からは「できない」と断ことわられてしまった,というお客さまの話を聞いたときに,これはチャンスだと思い「やってみます」とお伝えしました。加工に挑ちょう戦せんする中で特に苦労したのは,PASCOに折り目をつけることです。抜ぬき加工は,抜ぬき加工機で素そ材ざいに抜ぬき型がたの刃はを押おしつけることで折り目をつけるのですが,PASCOは非ひ常じょうに硬かたいため,刃は先さきが潰つぶれてしまうんです。しかし,刃はを硬かたくしすぎると,今度はPASCOが破やぶれてしまいます。そのため刃はの厚あつみ,硬かたさ,角度を調節しながら,うまく加工できる抜ぬき型がたの製せい造ぞうに取り組み,半年くらいかけて完成させることができました。私わたしたちはPASCOを使った商品をもっと国内に広めていくことで,環かん境きょうにも貢こう献けんしていきたいと考えています。

社長として,社員の成長に注力する

社長として,社員の成長に注力する

私わたしは新しい仕事を受けるための営えい業ぎょう活動や経けい理りの仕事なども行いますが,主に取り組んでいるのは,社員に仕事を通じて成長してもらえるような環かん境きょうづくりです。
特に重じゅう視ししているのは,単に職しょく人にんとして技ぎ術じゅつを身に付けてもらうだけではなく,人間としても成長してもらうことです。当社では図面の設せっ計けいをする人が2人,抜ぬき型がたの製せい造ぞうを行う人が4人,総そう務むが1人,経けい理りが1人の合計8人が働いています。社員に毎日同じ仕事を繰くり返かえしてもらうだけでは,技ぎ術じゅつを磨みがくことはできたとしても,視し野やを広げたり新しい考え方を学んだりすることはできません。そのため,外部講こう師しの方をお招まねきして経けい営えいの視し点てんを学ぶ研けん修しゅうを社内で行うほか,社員にリーダーシップを学ぶ研けん修しゅうなど,社外の研けん修しゅうを受けてもらう制せい度どを設もうけています。
研けん修しゅうを受けた社員がそれまでとは違ちがう考え方をしていたり,研けん修しゅうで学んだことを社内で共有したりしているのを見ると,学びがあったのだとうれしくなり,やりがいを感じます。

父親の会社を継ついで社長に

父親の会社を継いで社長に

私わたしは社長になる前は,フードコーディネーターとして飲食店の経けい営えいを手伝うなど,サービス業界で働いていました。そのころは,私わたしの父が職しょく人にんさんと2人でテイ製せい作さく所しょを経けい営えいしていました。
しかし,私わたしが34才のときに祖そ母ぼが倒たおれ,父は介かい護ごのために会社をたたむことを決めたんです。当時は妹もまだ小学生だったので,私わたしは家族を守りたいと思ってこの決定に反対し,父と大ゲンカになってしまいました。そのときに妹が「私わたしが学校を辞やめて働くからケンカしないで!」と言ったんです。私わたしはこの言葉を聞いたときに,「次に家族を支ささえるのは私わたしの役目なのではないか」と感じ,テイ製せい作さく所しょの仕事を引ひき継つぐことを決意しました。
入社当時は設せっ計けいを覚えつつ,主に営えい業ぎょう活動を行っていました。当時は抜ぬき型がた製せい造ぞうの知ち識しきがあまりなかったため,会社によっては話すら聞いてもらえず,苦労することがたくさんありました。そのときに役に立ったのは,サービス業界にいたころに学んだ接せっ客きゃくの姿し勢せいです。飲食店ではお客さまに心ここ地ちよい空間を提てい供きょうするため,元気な挨あい拶さつやコミュニケーションは欠かせません。抜ぬき型がたなどのことで分からないことは必死に学びながら,元気なコミュニケーションを心がけたことで,少しずつ話を聞いてもらえるようになり,取引先も増ふやしていくことができました。

経けい営えい者しゃの勉強会で経けい営えいを学んだ

経営者の勉強会で経営を学んだ

私わたしは社長になるまで会社経けい営えいについて学んだことがなく,そもそも経けい営えい者しゃに勉強が必要だなんて思ったこともありませんでした。業ぎょう績せきをあげている会社は,全て社長のセンスで経けい営えいをしていると思っていたんです。
ある日,知り合いの社長さんに招しょう待たいされて,都内で行われている経けい営えい者しゃの勉強会に参加しました。始めは交流会のようなものだと思っていたのですが,行ってみるとさまざまな会社の経けい営えい者しゃがみんなテキストを開いて勉強をしていて,そこで初めて,経けい営えい者しゃも勉強するのだということに気づいたんです。今まで何も勉強してこなかった自分に焦あせりを感じ,それからいろんな勉強会に参加しました。
そうした勉強会を通して学んだのは,社員みんなで同じ方向へ向かっていくためには,経けい営えい理念を持つことが重要だということです。そのため,「私わたしたちはチーム力を最さい大だい限げんに活いかしお客様の心に応こたえるモノづくりをします」「私わたしたちは仕事に誇ほこりを持ち一人一人の可か能のう性せいが広がる職しょく場ばづくりをします」「私わたしたちはあくなき挑ちょう戦せんと創そう造ぞう力りょくで永えい続ぞくする企き業ぎょうにします」という3つの経けい営えい理念を作成しました。さらに,理念を掲かかげるだけではなくきちんと実じつ現げんするために,会社のビジョンや人材育成の計画などをまとめた経けい営えい計画書を毎年,作るようにもなりました。
毎日の朝礼で社員と理念をテーマに話し合ったり,経けい営えい計画書を社員と共有することで,みんなでより一丸となって会社の成長に向かって進んでいけるようにしたいと思っています。

いい会社を作るため,社員の自じ主しゅ性せいを高める

いい会社を作るため,社員の自主性を高める

私わたしが経けい営えいで大切にしているのは,社員の人生が豊ゆたかになる会社を,社員と一いっ緒しょに作っていくことです。そのために,「作業をより効こう率りつ的てきに進めるにはどうすればいいかな」といった相談を社員に持ちかけて,解かい決けつ方法を自主的に考えてもらうきっかけを作るようにしています。既すでに私わたしの中に答えがある問題でもあえて相談してみると,それから社員が自主的にアイデアを出してくれるようになったり,今まで知らなかったその人の得意分野の発見にもつながったりします。
また,社員の自じ主しゅ性せいを高めていくためには,一つひとつの仕事に納なっ得とくしてもらうことが重要です。「なぜいまこの仕事をするのか」「なぜ売り上げや利り益えきを上げる必要があるのか」を納なっ得とくしてもらうために,会社の経けい営えい状じょう況きょうを社員に伝えるようにしています。会社作りや問題解かい決けつなどにみんなで取とり掛かかると,私わたしが一人で決める場合に比くらべて,長い時間がかかるかもしれません。しかし,達成できたときには「みんなで協力して達成した」という,大きな喜びにつながると考えています。

目標に向けて突つき進すすむ子どもだった

目標に向けて突き進む子どもだった

私わたしは子どものころからよく料理をしていて,小学生のときは学校から帰って自分で夕飯を作ったり,お弁べん当とうを作ったりしていました。週末には父がよくホームパーティを開いていたので,そのときに料理を出して喜んでもらうことがうれしく,人を歓かん迎げいすることや人にご飯を作ることが好きでした。
勉強はあまり好きではなかったのですが,勉強の目標を見つけられたときはものすごい集中力で取り組める子だったんです。例えば高校受験のとき,私わたしにはやりたいことがあまりなく,志し望ぼう校こうも決められませんでした。しかし,仲のいい友達が進学すると聞いて「私わたしも同じ高校に行きたい!」と火が付き,毎日何時間も勉強して,同じ高校に合ごう格かくすることができたんです。
昔はなかなか目標を見つけられず,だらだらと日々を過すごしてしまうことも多かったのですが,今は会社を継けい続ぞくしていくという目標に向けて,日々,全力で取り組んでいます。

譲ゆずれない目標を見つけて,苦しいことにもチャレンジしよう

譲れない目標を見つけて,苦しいことにもチャレンジしよう

これから将しょう来らいの夢ゆめに向けて努力したり,何か目標に向かったりするとき,苦しくて諦あきらめたくなってしまうことがあると思います。そんなときに諦あきらめるのは簡かん単たんですが,ぜひ苦しいことに立ち向かってください。苦しさを乗のり越こえた先に,必ず楽しいことやうれしいことが待っているはずです。
それから,絶ぜっ対たいに諦あきらめられない強い目標を持ってください。「絶ぜっ対たいに達成したい」という強い思いは,苦しい時期を乗のり越こえるための支ささえになります。そして,強い目標を見つけるために,たくさんのことを経けい験けんしてください。スキーでも,料理でも,経けい験けんしたことがないことをたくさん経けい験けんすれば,やりたいことが見つかる可か能のう性せいが広がります。もし興きょう味みがあることがあるならば,お父さんお母さんに「やってみたい」と相談すれば,きっと実じつ現げんするために協力してくれると思いますよ。

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私のおすすめ本

稲盛 和夫
「人間は物事を前向きに考えるか,後ろ向きに考えるかで行動が変わり,行動が変われば人生も変わる」ということについて書かれた本です。苦しいときを乗り切る考え方なども書かれています。

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取材・原稿作成:久保 駆(Playce)/協力:城北信用金庫