仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

東京都に関連のある仕事人
1962年 生まれ 出身地 東京都
利根とね とおる
子供の頃の夢: コメディアン
クラブ活動(中学校): 陸上部
仕事内容
きんぞくを加工して,さまざまなせいひんや部品を作る。
自己紹介
こうしんおうせいでフットワークが軽いので,仕事でも新しいことにどんどんちょうせんしています。休みの日には,よく音楽をきながらお酒を飲んでごしています。

※このページに書いてある内容は取材日(2020年02月27日)時点のものです

きんぞくを機械でき,さまざまな部品に加工する

金属を機械で切り抜き,さまざまな部品に加工する

わたしは東京都あらかわにあるトネせいさくしょという会社で社長をつとめています。トネせいさくしょは,きんぞくをレーザーでいたり,曲げたりするなどの加工をして,自動ドアやゲーム機などに使われる部品を作る「せいみつばんきんプレス加工」を行っている会社です。1969年にわたしの父がせつりつし,げんざいせいぞうげん,合わせて19人の社員が働いています。
トネせいさくしょでは,主に,お客さまかららいを受けて機械の部品を作る,受注生産の仕事をしています。部品を作るには,まず,お客さまから必要としている部品の完成図をいただき,続いて,それをもとにして「工場にある機械をどのように動かせば目指す部品が作れるか」を考え,機械のプログラミングをしていきます。その後は,プログラミングをしたおおがたの加工機械がきんぞくきやプレス加工などを自動で行います。他に表面のけんようせつなど,人の手を使って行う加工ぎょうもあります。あつかきんぞくは,鉄・ステンレス・アルミ・どうなどさまざまです。
こうして加工した部品に,そうやさびにくくする加工を行い,けんぴんし,お客さまのもとへ発送するまでがトネせいさくしょの仕事です。

部品のせいぞうだけでなく,オリジナル商品の開発をけることも

部品の製造だけでなく,オリジナル商品の開発を手掛けることも

トネせいさくしょで作っている部品は,しんかんせんの中にある自動ドアの金具や,駅のホームにせっされている転落ぼう用のホームさくのパーツ,銀行ATMに入っている機械部品など,実にさまざまです。変わったところでは,がた人工えいせいのバッテリーボックスを作ったこともありました。地元の高等せんもん学校といっしょに作ったこのえいせいは2009年1月に打ち上げられ,今も1日2回,東京の上空をつうしながら通信を続けています。
受注せいひんだけでなく,オリジナルせいひんも作っています。2019年に,はしよりも手早くきれいにたまごをかきぜられるステンレスせいのキッチンツール「ときここち」という商品のせいぞうはんばいを始めました。「ときここち」はもともと,たまごの白身が苦手なわたしつまから「たまごぜるとき,かんたんにきれいにぜたい」と要望されて作ったものです。2年かけて試作と改良をかえして商品化にこぎつけ,まずはデパートのイベントではんばいしたところ,6日間で300本以上を売り上げ,大きなごたえを感じました。げんざいこうひょうはんばい中です。
オリジナルのせいひんがあれば,例えば取引先の会社のじょうきょうが変わって受注の仕事がった場合でも,乗り切れるのうせいが上がります。以前から「安定的に会社をけいえいするためにも,自社商品を作ってはんばいしたい」と考えており,やっと形にすることができました。

よりよいていあんをし続けることが,お客さまのしんらいにつながる

よりよい提案をし続けることが,お客さまの信頼につながる

わたしは,せいぞうげんけいけんを積んでから社長になりました。げんざいは主に,お客さまのもとをおとずれて商談を行うえいぎょう活動をたんとうしています。わたしがお客さまと商談をするときこころけているのが,よりよいていあんをすることです。図面を見せていただいたらその場で「こういうせっけいにしたらもっとよいものになるのでは」と話したり,「こんなざいを使うとかくおさえることができますよ」と意見をべたりするようにしています。ただ言われたとおりのものを作るのではなく,げんでのしきけいけんを生かして,じんそくに,よりよいていあんをする。こうしたことの積み重ねがしんらいにつながっていきます。見積もりを出すときもげんギリギリに出すのではなく,できるかぎり早めに出すなどして,「先回りの行動」「前へ前へのえいぎょう」をするようにしきしています。
また,えいぎょうたんとうするわたし以外の社員がうまくお客さまとコミュニケーションを行えるようどうするのもわたしの仕事です。お客さまからのいんしょうというのは,ちょっとしたたいや言葉づかいひとつで変わってしまいます。ですから,日ごろから社員をしっかり見て,メールでの言葉選びや電話でのたいおうなどについてかいぜんてんを伝えるようにしています。もちろん,お客さまからのおめの言葉を伝えることもわすれません。かいぜんてんも,よいところも,つぶさに伝えて社員の成長をうながしています。

しんきゃくかいたくすることで,会社のピンチをえた

新規の顧客を開拓することで,会社のピンチを乗り越えた

今までで一番大変だったのは,14年ほど前,売り上げがガクッと落ちたときのことでした。当時は,会社全体の仕事の中で,ある1社からの仕事が約8わりめ,他のさまざまなぎょうの仕事が約2わりというじょうきょうでした。そんななか,約8わりの仕事を発注してくれていたぎょうからパタリと仕事が来なくなってしまったのです。8わりの仕事がなくなるというのはじょうに大きないたで,しばらくの間,けいえいてきに苦しい時期が続くことになりました。
しかし,その一方で,新しいことにちょうせんするゆうができたというメリットもありました。1社の仕事を大量かつ定期的にっていると,なかなか他の仕事を受ける時間が作れません。せっかく新しいお客さまから仕事のらいがあってもことわらざるをず,取引先が広がらないというじょうきょうが続いていました。皮肉にも大口のお客さまがいなくなったことで,新しいお客さまと取引をする,時間と人のゆうが生まれたのです。
こうしてできたりょくを生かし,積極的に新しいお客さまをかいたくすることで,なんとかピンチを乗り切ることができました。げんざいは,ピンチからけいけんを教訓にして「1社にそんしたけいえいは行わない」「オリジナル商品の開発などふくめ,新しいことに,はばひろちょうせんする」といったことをきもめいじ会社のけいえいに取り組んでいます。

自らの手で形あるものを作る,やりがいのある仕事

自らの手で形あるものを作る,やりがいのある仕事

ばんきん加工のおもしろさは,「絵を参考にして板から立体物を作る」というところにあると思います。お客さまからていされるのは,完成図という2次元の絵だけです。それを頭の中できんぞくばんじょうたいてんかいし,どう作ればきちんとした3次元の立体物になるか考え,機械にプログラミングを行って形作っていくのです。こうして作ったものがお客さまによろこばれたときには,何物にも代えがたいやりがいを感じます。
「ときここち」のようなオリジナル商品の場合は,じんのお客さまが,ちょくせつ,声をかけてくださることも多いんですよ。「ちょっと高いけど,使ってみてよかった」と言ってくださるおくさまがいたり,「毎日,使ってるわよ」というおばあちゃんがいたり。そういう何気ない一言が,とてもうれしくはげみになっています。
けいえいしゃとしてうれしいのは,社員に「この会社に入ってよかった」と言ってもらえたときですね。以前,会社せつりつ50周年を記念して動画をさつえいしたことがあったのですが,そのとき社員が「ここでずっと働きたいと思っています」とコメントしてくれて,苦労しながらもやってきてよかったなあと思いました。
新しいことにちょうせんしながら,自らの手で,形あるものを作り,そして人にがおよろこびをとどけられる。「ものづくりって,人を元気にする仕事なんだなあ」と実感しています。

これからも新しいことにチャレンジし続けたい

これからも新しいことにチャレンジし続けたい

今後は,「ときここち」だけでなく,さまざまなオリジナル商品を作っていきたいと考えています。げんざい,開発を進めているのが,ドレッシングをぜるためのキッチンツールです。いっぱんのご家庭だけでなくイタリアンレストランなどでも使っていただけるよう,ぜやすさなどののうせいと,持ちやすさや美しさといったデザインせいを追求して試作を続けています。
オリジナル商品の開発にこだわっているのは,受注の仕事だけに取り組んでいると,せまくなってしまうからという理由もあります。どんなに「よりよいていあんをしよう」としきしていても,言われたものを作ることにれてしまっていると,自社でじょうほうやアイデアを発信できないたいしつになってしまいがちです。受注の仕事にしっかり取り組むためにも,自社のせいひんやサービスの開発にちょうせんし続けたいと考えています。
また,てんかいにも積極的にしゅってんしたいと思っています。せいぞうげんの社員は,工場の中にこもって作業を行うことが多いものです。だからこそ,てんかいなどで外に出て,新しいお客さまとってもらいたい。いろいろなお客さまのご要望,ひょう,感想などを聞いて,何かしらの発見をしてもらいたいと思っています。
しんせんな空気をむと,人は成長していきます。これからも社員といっしょに,たくさんの人やものにれ,こうしんを持って,どんどん外に出ていきたいですね。

ものの仕組みが知りたい!「なんでもこわす」子ども時代

ものの仕組みが知りたい!「なんでも壊す」子ども時代

子どものころのわたしは,「なんでもこわす子」でした。ものの仕組みが知りたくて,時計をバラしたり,ラジオをこじ開けたり……。ねじで止まっているものは,とにかく1回バラしたい,そんな子どもでした。 今でもよく覚えているのが,上野動物園で見た,パンダがたのまんじゅうを作る機械です。自動でされ,パンダのかたながまれ,焼かれて,ベルトコンベアみたいなものに乗って焼き印がされたりあんこがめられたりするというものでした。それを見て,バラしたいどころか「一体どうなっているんだろう。あの中に入ってかくにんしたい!」と思ってしまうほどでした。そのぐらい機械に強いきょうを持っていたのです。
高校はじょうほうじゅつがあるところに進学し,今度はコンピューターにちゅうになりました。パソコン上でけんちくぶつせっけいいたり,プログラミングをしたり。ここで,プログラミングによって機械が動くことのおもしろさを学んだように思います。そのうちに,父がけいえいするトネせいさくしょの工場に出入りするようになり,げんしょくにんに教わりながら,自分で機械を動かすようになりました。
おさないころからいっかんして機械好きだったのは,身近にトネせいさくしょがあったからだと思います。生まれたときからたくの近くに工場があり,機械にさわれるかんきょうがありました。そこできょうが芽生え,関心が育ち,こうしんのおもむくままに好きなことに熱中しました。こうした子ども時代,学生時代が,げんざいの仕事につながっているのだと思います。

こうしんと,あきらめない気持ちを大切にしてほしい

好奇心と,諦めない気持ちを大切にしてほしい

みなさんにも,こうしんを持って物事を見るということを大切にしてほしいと思っています。ものの外側だけをサラッと見るのではなくて,「どういう風にできているのかな」とか,「だれの仕事なのかな」とか,いろいろなことをそうぞうしながら見てほしい。そうすることで,より深い仕組みやほんしつが見えてくるのではないかなと思います。
もうひとつ大事にしてほしいのが,あきらめないことです。あきらめたら失敗は失敗で終わってしまいますが,あきらめなければ失敗にはなりません。まよったらとりあえずやってみて,そして,今,形にならなくてもよいと思って続けてみる。続けることで道がひらけることもたくさんあります。しゅでも勉強でもなんでもいい,自分が好きなことを,ぜひけいぞくしてください。

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取材・原稿作成:久保 駆(Playce)・東京書籍株式会社/協力:城北信用金庫