仕事人

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東京都に関連のある仕事人
1971年 生まれ 出身地 千葉県

西川(にしかわ) 輝久(てるひさ)
子供の頃の夢: 青果卸売業の社長
クラブ活動(中学校): ハンドボール部
仕事内容
青果市場や生産農家から青果物を買い付け,小分けしたものを,スーパー,レストラン,ホテル,学校などに販はん売ばいして配送する。
自己紹介
明るく前向きな性せい格かくです。大おお雑ざっ把ぱなところもありますが,やるときはきちんと目標を決めてやり遂とげます。運動をすることも好きで,息子むすこの所しょ属ぞくする少年野球チームのコーチもしていました。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2021年06月22日)時点のものです

市場で野菜や果物を買い付けて,お客さまに届とどける

市場で野菜や果物を買い付けて,お客さまに届ける

私わたしは,東とう京きょう都と江こう東とう区くの豊とよ洲す市し場じょうの中にある「株かぶ式しき会がい社しゃ 丸まる大だい一いち」という会社で社長を務つとめています。“豊とよ洲す市し場じょう”というと,魚をはじめとする水産物のイメージが強いかもしれませんが,野菜や果物といった「青果」も取とり扱あつかっています。丸大一では,野菜や果物全ぜん般ぱんを扱あつかう青果の仲なか卸おろしを行っていて,私わたしは3代目の社長です。
仲なか卸おろしの仕事は,市場に出回る商品を買い付けて,小売店や飲食店などに販はん売ばいすることです。私わたしたちが商品を販はん売ばいしているお客さまは,主にスーパー,レストラン,ホテル,学校などで,そのほかにも豪ごう華か客船や南極の昭しょう和わ基き地ちなど,さまざまな場所に野菜や果物を届とどけています。
仲なか卸おろしは,生産者から委い託たくを受けて市場で商品を販はん売ばいする「大おお卸おろし(卸おろし売うり業ぎょう者しゃ)」から,買い付けをします。昭しょう和わ30~40年代ごろ,商品の取引方法は,複ふく数すうの買い手の中で一番高い値ね段だんを付けた人が商品を購こう入にゅうする「せり」が主流でした。現げん在ざいでも一部の商品はせりで販はん売ばいされていますが,最近では,生産者が利り益えきを安定して得えられるよう,JA(農業協同組合)や農林水産省が,ある程てい度ど,商品の価か格かくを決めるようになってきています。現げん在ざいは,その価か格かくをベースにしつつ,商品の状じょう態たいに応おうじた適てき正せいな価か格かくをこちらから大おお卸おろしに提てい示じして,お互たがいが納なっ得とくした上で売買することがほとんどです。
そのほか,購こう入にゅうした商品を小分けにすることも私わたしたちの仕事です。大おお卸おろしから購こう入にゅうした商品は大きなケースにまとめて入っています。それを私わたしたちが小分けにして出しゅっ荷かします。例えば,スーパーで袋ふくろ詰づめされて売られている野菜や果物を見かけると思いますが,あの袋ふくろ詰づめは仲なか卸おろしがしているんですよ。スーパーやホテル,レストランなど,お客さまによって,商品の分け方や詰つめ方かたは変わります。

適てき正せいな価か格かくで商品を買い付けるためには,目め利ききの力が必要

適正な価格で商品を買い付けるためには,目利きの力が必要

仲なか卸おろしの仕事は朝が早く,私わたしが市場に行くのは毎朝4時ごろです。しかし商品の仕分けや配送を担たん当とうする私わたし以外のほとんどの社員たちはさらに早く,終電で市場に来ています。そのため,私わたしが市場に着くころには,その社員たちが商品の仕分けなどの作業をすでに始めています。
私わたしが市場に来て最初にするのは,商品の品ひん質しつチェックです。商品の値ね段だんは,前日に大おお卸おろしと相談して,ある程てい度ど決めているのですが,実じっ際さいに届とどいた商品を見て,本当にその値ね段だんで購こう入にゅうして良いのかどうかを判はん断だんしています。その際さい,商品の色が悪いなど,状じょう態たいが良くないときには,大おお卸おろしに「決めていた値ね段だんでは買えない」と伝え,価か格かくを下げてもらうよう交こう渉しょうすることもあります。全国の産地から食材を仕入れている大おお卸おろしは,産地と深い関係を築きずいていて,食材についての知ち識しきも豊ほう富ふです。そんな大おお卸おろしに,値ね下さげの要求を納なっ得とくしてもらうためには,仲なか卸おろしの私わたしたちも知ち識しきを持って商品の状じょう態たいを見み極きわめ,根こん拠きょのある説明ができなければなりません。商品を適てき正せいな価か格かくで買い付けるためにも,仲なか卸おろしにとって「目め利きき」の力は非ひ常じょうに大切なのです。
大おお卸おろしと交こう渉しょうして最終的な商品の値ね段だんが決まり,朝の10時ごろにその日の商品の配送が終わると,終電で来ていた社員たちは帰き宅たくします。私わたしはその後,お昼ごろに大おお卸おろしからファックスで送られてくる,その日に購こう入にゅうした商品の一いち覧らん表ひょうに間ま違ちがいがないかチェックをします。それを終えると,早朝からの買い付けに関する作業はいったん終しゅう了りょうです。

生活に欠かせない「食材」を扱あつかうため,毎日が忙いそがしいハードな仕事

生活に欠かせない「食材」を扱うため,毎日が忙しいハードな仕事

午後からは,スーパーやレストランなどのお客さまに向けた作業を行います。その一つが「提てい案あん書しょ」の作成です。提てい案あん書しょとは,商品のおおよその価か格かくや産地の情じょう報ほうをまとめたもので,スーパー用と,ホテル・レストラン用との2種類に分けて作成しています。それを14時ごろまでにメールやファックスを使ってお客さまに送ると,早いところでは15~16時ごろから,翌よく日じつ分の発注が上がってきます。現げん在ざい,丸大一ではスーパー20店てん舗ぽ,レストラン30~40店てん舗ぽ,ホテル5,6社に食材を販はん売ばいしていて,それぞれから送られてくる注文書をまとめ,大おお卸おろしに発注する商品やその量を調整していきます。その後,17時ごろまでに大おお卸おろしに発注をかけて,19時ごろには帰き宅たくします。しかし,その後も大おお卸おろしやお客さまから連れん絡らくが来ることがあるので,帰き宅たくしてからも携けい帯たいは手放さないようにしています。
また,豊とよ洲す市し場じょうは基き本ほん的てきに水曜日が休みですが,私わたしたちは学校給食のための商品を配送する業ぎょう務むなどがあるため,完全に休みになることはなかなかありません。生活に欠かすことができない「食材」を扱あつかう仕事のため,毎日忙いそがしいですが,同時に使命感ややりがいも感じられる仕事です。

苦労するのは,天候に左右されやすい青果を欠品なくお客さまに届とどけること

苦労するのは,天候に左右されやすい青果を欠品なくお客さまに届けること

私わたしたちの扱あつかう商品である野菜や果物は,天候や自然災さい害がいなどによって出しゅっ荷か数が大きく変動するため,商品の確かく保ほに苦労することもよくあります。お客さまから注文された分が確かく保ほできないときに,全国の市場に連れん絡らくを取って,手配してもらえないか相談することは,非ひ常じょうによくあることです。
以前,足りなかった食材を大おお阪さかの市場で確かく保ほし,翌よく日じつの配送に間に合わせるために,トラックではなく航こう空くう便びんで送ってもらったこともありました。無事に商品は届とどけられたものの,輸ゆ送そう費ひが高く,結果的には損そん失しつが出てしまいました。しかし,“お客さまと約束した商品はなんとしてでも届とどける”ということが私わたしたちの仕事で,私わたしたちはそこにプライドを持っています。「丸大一は欠品せずにきちんと商品をそろえてくれる」という信しん頼らい感を持ってもらえているからこそ,何十年も付き合いを続けてくれているお客さまがいらっしゃるのだと思います。

「トレンドの食材」をいち早く知り,お客さまに提てい供きょう

「トレンドの食材」をいち早く知り,お客さまに提供

この仕事の魅み力りょくの一つは,トレンドの食材の情じょう報ほうをいち早く集められるところです。私わたしの会社では,青果の仲なか卸おろし業だけではなく,スイーツ専せん門もん店てん「果物問屋にしかわ」という小売店も経けい営えいしています。トレンドの食材の情じょう報ほうを手に入れられるおかげで,お店では流は行やりの果物を使ったスイーツをいち早く開発することができます。しかも私わたしたちは仲なか卸おろし業者なので,自信を持って選んだおいしい果物を安く手に入れることができ,お客さまに手ごろな価か格かくで提てい供きょうすることができるのです。トレンドの食材を使っているからこそ,さまざまな人に手に取ってもらいやすく,スイーツを食べたお客さまからは「果物がこんなにおいしいと思わなかった」「スイーツだけでなく果物そのものも食べたくなった」と言っていただけることも多くあります。私わたしたちが販はん売ばいするスイーツを食べて,果物のおいしさにあらためて気付いてもらえたり,果物を購こう入にゅうするきっかけになったりしたら,とてもうれしいですね。

一いっ般ぱんのお客さまにも商品を手に取ってもらえるように

一般のお客さまにも商品を手に取ってもらえるように

私わたしは,「お客さまが必要とする青果を届とどけ,それを食べて笑え顔がおになってもらいたい」という気持ちを持って仕事をしています。そのため,自分が目め利ききをして選んだ良い商品がきちんと一いっ般ぱんのお客さまの手元にまで届とどくよう,時には販はん売ばい先さきであるスーパーまで出向いて,従じゅう業ぎょう員いんの方たちにアドバイスをすることもあります。
例えば,旬しゅんの野菜や果物といった「今,お客さまにおすすめすべき商品」を伝えています。スーパーで働いている人たちは市場に直ちょく接せつは来ないため,「旬しゅんの食材が何か」を常つねに把は握あくすることは困こん難なんです。しかし私わたしが伝えておけば,彼かれらも,「今はこれが旬しゅんですよ」とお客さまに伝えることができます。「西にし川かわさんのおかげでいつでも『旬しゅんの食材』を伝えられるようになり,お客さまからの信しん頼らいも得えられるようになりました」と言ってもらえたこともありました。
そのほか,「なぜこの商品を販はん売ばいするのか」をお客さまに伝えるためのポップの書き方をアドバイスしたり,旬しゅんの食材が一目でわかるような売り場のレイアウトを考えたりして,販はん売ばいを助けることもあります。このように,ただ商品を卸おろすだけではなく,その先にいる一いっ般ぱんのお客さまに手に取ってもらえるよう働きかけていくことも,大切な仕事だと考えています。

スーパーで6年間働いたあと,3代目として会社を継つぐことに

スーパーで6年間働いたあと,3代目として会社を継ぐことに

丸大一はもともと祖そ父ふが立ち上げた会社で,2代目は私わたしの父でした。私わたしも大学3年生くらいになると父の跡あとを継つぐことを意い識しきし始めましたが,大学卒業後すぐ継つぐには,まだ自分の経けい験けんが足りていないと感じていました。父の時代は景気が良かったこともあって,レストランとホテルへの販はん売ばいだけで十分やっていくことができていたのですが,私わたし自身は「父と同じことを続けているだけでは,今後,丸大一の経けい営えいは厳きびしくなっていくのではないか」と危き機き感を持っていたのです。そこで私わたしは,ホテルやレストランに加えてスーパーへの販はん売ばいもやっていくべきだと考えました。当時,スーパーのように大量に商品を仕入れて安く提てい供きょうする量りょう販はん店てんが増ふえ始めていて,「これからは量りょう販はん店てんの時代が来る」と確かく信しんしていたのです。そのため私わたしは,流通の仕組みや販はん売ばいの仕方を学ぶため,大学卒業後は大手スーパーへ就しゅう職しょくしました。
スーパーで働いたことでさまざまな経けい験けんができて,一時は会社を継つがずにこのままスーパーで働こうかと考えたこともありました。それでも仲なか卸おろしの仕事をしようと思ったのは,「もっとたくさんの種類の青果を,お客さまに届とどけたい」という強い気持ちがあったからです。私わたしは品ひん質しつの良い青果や珍めずらしい青果を市場で多く見てきましたが,スーパーで販はん売ばいされているのはそのうちのほんの一部の商品に過すぎず,そのことをもどかしく感じていました。まだスーパーにはないそれらの商品を,安く新しん鮮せんな状じょう態たいでお客さまの手元に届とどけるためには,やはり仲なか卸おろしとしてスーパーへ商品を販はん売ばいしていく必要があると考えたのです。結局スーパーでは6年間働き,その後,3代目として丸大一を継つぐ道を選びました。

昔から「商売」に興きょう味みがある子どもだった

昔から「商売」に興味がある子どもだった

私わたしが小学生のころ,市場では,夏になると野菜や果物だけでなく,カブトムシやクワガタなどの昆こん虫ちゅうが入にゅう荷かすることもありました。木を掘ほって卵たまごを産むカブトムシやクワガタは,農家の人たちにとっては害虫です。でも東とう京きょうに持って来れば買いたい人がいるだろうと,商品と一いっ緒しょに販はん売ばいしようと考える農家さんもいたんです。私わたしは昆こん虫ちゅうが大好きだったため,小売店よりもかなり安い価か格かくで購こう入にゅうできるのがうれしく,毎年の楽しみでした。
さらに,私わたしは市場で購こう入にゅうしたカブトムシやクワガタを,ただ自分のものにするのではなく,近所で開かい催さいされる夏祭りや小学校のバザーで,父親と一いっ緒しょに販はん売ばいすることもとても楽しみにしていました。安い価か格かくで販はん売ばいしていたので喜よろこばれ,中でも小学校のバザーでは,すぐに完売するほど人気でした。私わたしはその売り上げが自分のおこづかいになるのではと期待していたのですが,そのときはバザーなので結局,学校に寄き付ふしなければならないとわかって,とてもがっかりしたことを今でもよく覚えています。扱あつかう商品は違ちがいますが,子ども時代から「市場で買い付けた商品に利り益えきをつけてお客さまに販はん売ばいする」という今の仲なか卸おろしと同じようなことを経けい験けんしていたんですね。

日々の生活で気になったことを書きとめる癖くせをつけてほしい

日々の生活で気になったことを書きとめる癖をつけてほしい

みなさんにはぜひ,日々の生活の中で疑ぎ問もんに思ったことや大切だと思ったことをノートに書きとめる癖くせをつけてほしいなと思います。私わたし自身,10年ほど前から,自分が気になった新聞記事を切り取ってノートに貼はるということを続けています。始めた理由は,これからもこの仕事を続けていく中で,いつか役に立つかもしれないアイデアを蓄ちく積せきしていきたいと思ったから。現げん在ざい,スイーツ店で販はん売ばいしている商品の中には,ノートに貼はった記事からヒントを得えて生まれたものもあります。アイデアはインターネットでももちろん探さがすことができますが,「新聞記事を切きり抜ぬいて貼はりつける」という私わたしのやり方は,自分が気になった情じょう報ほうを自分の手を実じっ際さいに動かしながら集めていくため,より記き憶おくに残りやすい方法だと思います。そして,アイデアの種が見つかるだけでなく,これまで自分が知らなかったことを知るきっかけにもなり,自分の興きょう味みのあることがわかったり,自分自身の強みを見つけたりすることにもつながるはずです。
食に関することでは,そのときの自分が「食べたい」と思うものを食べてほしいと思います。以前,ある栄えい養よう士しさんから「自分の体の状じょう態たいに合わせて食材を選べるのは人間だけ」と言われたことが印いん象しょうに残っています。人間は,体調が悪いときには消化の良いものを食べたり,筋きん肉にくをつけたいときにはたんぱく質しつが含ふくまれているものを食べたりと,自分の体の状じょう態たいや目的に合わせて食材を選ぶことができます。せっかく自由に選ぶことができるのだから,みなさんも自分自身が「食べたい」と思うものは何か,ぜひ考えてみてください。

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取材・原稿作成:土居 りさ子(Playce)・東京書籍株式会社/協力:城北信用金庫