• 東京都に関連のある仕事人
  • 1977年 生まれ

    出身地 神奈川県

しゅるいせいぞうぎょう こうほう酒類製造業・広報

小山こやま 久理くり

  • 仕事内容

    多くの人に自社の日本酒を知っていただくために宣伝(せんでん)すること。

  • 自己紹介

    初心を(わす)れず,丁寧(ていねい)に作業し,うれしいことは言葉にして伝えます。

  • 出身高校

    神奈川県立住吉高等学校

  • 【このページに書いてある内容は取材日(2016年11月11日)時点のものです】

小山 久理


仕事人記事

東京の地酒を守り続けるただひとつの酒蔵(さかぐら)

東京の地酒を守り続けるただひとつの<ruby><rb>酒蔵</rb><rp>(</rp><rt>さかぐら</rt><rp>)</rp></ruby>

明治11年の創業(そうぎょう)以来,小山酒造(しゅぞう)は東京23区で唯一(ゆいいつ)日本酒をつくり続けている酒蔵(さかぐら)です。(わたし)はこの小山酒造(しゅぞう)のお酒を宣伝(せんでん)する広報(こうほう)の仕事をしています。昨今では,ワインやウイスキー,リキュールといった洋酒が人気ですが,東京の地酒を残したいという思いで,各地で試飲会を開いたり,他の会社とのコラボ商品を企画(きかく)したりしています。
小山酒造(しゅぞう)は,創業(そうぎょう)当時から東京都北区・赤羽の地で酒づくりを続けています。宿場町として栄えていた赤羽は,最近では昭和の雰囲気(ふんいき)色濃(いろこ)く残る街として注目が集まっており,街が取材を受けることも()えました。取材を受けた地元の飲食店の方がうちのお酒を紹介(しょうかい)してくださったり,反対にこちらからも紹介(しょうかい)させていただいたりと,地域(ちいき)とのつながりを大切にしています。そんな環境(かんきょう)のお(かげ)もあり,日本酒に興味(きょうみ)を持ち酒蔵(さかぐら)を見学される方が()えてきました。2020年にはオリンピックが開催(かいさい)される東京。「開催地(かいさいち)東京の地酒」としてPRに力を入れています。

日本酒の魅力(みりょく)を伝える仕事

日本酒の<ruby><rb>魅力</rb><rp>(</rp><rt>みりょく</rt><rp>)</rp></ruby>を伝える仕事

仕事は毎朝8時半に始まり,朝礼のあと,問い合わせなどのメールを確認(かくにん)し,返信や電話を()ませます。取材の対応(たいおう)広報(こうほう)である私の仕事です。1,2時間程度(ていど)の取材の中で,会社のPRや新しい商品の宣伝(せんでん)を行います。他にも,イベントの企画(きかく)を考えたり,新しくできた商業施設(しせつ)などへ見学に行ったりすることもありますね。売り場のリサーチをするときは,どんなものがはやっているかを観察して他社のお酒を試飲し,人気のある酒(しつ)やパッケージ,ターゲットとなっている年齢層(ねんれいそう)などを調査(ちょうさ)します。
伝統(でんとう)産業を(にな)う会社の多くは中小企業(きぎょう)です。一社だけでは予算や人員,宣伝(せんでん)力も(かぎ)られてしまいますが,業界の(わく)()えて他社と協力することで(はば)が広がり,メディアに取り上げてもらえるチャンスも大きくなります。近年では,東京の色んな伝統(でんとう)産業とタイアップした商品づくりを積極的に取り組んでいます。

効果(こうか)的な宣伝(せんでん)をするには

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この会社の広報(こうほう)担当(たんとう)(わたし)一人しかいないため,(かぎ)られた時間と予算の中で仕事をまわさなければなりません。その中で大切にしていることは,どのように宣伝(せんでん)のチャンスをつかむかということです。一般(いっぱん)的な広報(こうほう)活動では,お金を(はら)って新聞や雑誌(ざっし)に広告を掲載(けいさい)することが多いと思いますが,小山酒造(しゅぞう)ではそういった有料広告を利用したことがありません。イベントなどでうちの商品に目を()めた方から取材のご依頼(いらい)直接(ちょくせつ)いただくことが多く,ありがたいことにこれまで色々(いろいろ)なメディアに取り上げていただきました。
イベントに出展(しゅってん)する場合でも,社員は10人ほどなので十分な人員を確保(かくほ)することがとても(むずか)しいです。自分たちにできる範囲(はんい)でいかに効果(こうか)的にPRするかを(つね)意識(いしき)しなければいけません。継続(けいぞく)して宣伝(せんでん)をしていくには,色々(いろいろ)な方と交流し,酒づくり以外の仕事も理解(りかい)することがとても大切だと感じています。

つくり手の「やりがい」を生み出す

つくり手の「やりがい」を生み出す

雑誌(ざっし)など,色々(いろいろ)媒体(ばいたい)で取り上げていただくことは,会社の宣伝(せんでん)になるだけではなく,社員にとっても大きなモチベーションになります。小山酒造(しゅぞう)の記事を見て,わざわざ遠方から買いに来られる方や,酒蔵(さかぐら)の見学に来てくださる方から,直接(ちょくせつ)意見をいただけることが仕事への(はげ)みにもつながっています。酒蔵(さかぐら)へ来ていただくだけでなく,文化と自然をあわせ持つ北区の魅力(みりょく)にも()れ,(みな)さんの“お気に入り”を見つけて,また足を運んでいただけたら(うれ)しいです。
(わたし)は会社の顔として広報(こうほう)活動を行っていますが,取材などをお受けするときは,社内で働いている社員にもスポットが当たるように意識(いしき)していますね。会社の外へ商品の魅力(みりょく)をお伝えするだけでなく,会社の中で頑張(がんば)っているつくり手のやりがいを生み出すことも,広報(こうほう)役割(やくわり)のひとつだと思います。

100年分の努力をいつも意識(いしき)して

100年分の努力をいつも<ruby><rb>意識</rb><rp>(</rp><rt>いしき</rt><rp>)</rp></ruby>して

小山酒造(しゅぞう)が今日まで存続(そんぞく)できたのは,先代をはじめ,この酒蔵(さかぐら)で働いてきた人たちがこつこつと努力を積み重ね,地元の方にも長年にわたり愛飲していただいたからこそだと思います。今ではメディアに取り上げていただく機会が多くなりましたが,(つね)謙虚(けんきょ)姿勢(しせい)で仕事に(はげ)みたいですね。長い歴史の中で(つちか)われてきたそのうえに今があるのだと意識(いしき)しています。
23区で唯一(ゆいいつ),100年以上続く酒蔵(さかぐら)であるということは,私たちの一番の強みです。商品企画(きかく)をはじめとしたあらゆる場面で,その強みをしっかりと生かすことができるよう心がけています。また,取材を受ける(さい)は,(わたし)がお話ししたことがそのまま記事になるので,誤解(ごかい)(あた)えることがないよう特に気をつけていますね。

美容(びよう)の世界から一転,酒づくりの現場(げんば)

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短大生のとき長年の(ゆめ)だった図書館司書の資格(しかく)を取りましたが,全国的に就職(しゅうしょく)(むずか)しく,事務(じむ)の仕事に()きました。そのときの同僚(どうりょう)(すす)められたエステティックサロンで,美容(びよう)の世界に魅力(みりょく)を感じ,ヘアメイクアーティストを目指すことにしました。働きながら学校へ通ってヘアメイクの仕事に()き,結婚式(けっこんしき)やファッションショーのヘアメイクを担当(たんとう)しました。相手からの反応(はんのう)直接(ちょくせつ)受け取れるのが面白く,ずっと続けていた仕事です。
小山酒造(しゅぞう)は夫の実家が経営(けいえい)する会社ですが,東日本大震災(しんさい)のときに義理(ぎり)の父が病に(たお)れ,(わたし)も手伝うことになりました。震災(しんさい)影響(えいきょう)低迷(ていめい)する売上を回復(かいふく)するため,社屋の空きスペースで利き酒のイベントを企画(きかく)したところ大きな反響(はんきょう)がありました。メディアにも取り上げられ,これをきっかけに広報(こうほう)(にな)うようになったのです。
酒蔵(さかぐら)は未知の世界でしたし,はじめは自分の経験(けいけん)を生かせないと思っていました。でも,最近は働く女性(じょせい)()えてお酒を好む女性(じょせい)()えたからでしょうか,「日本酒と美容(びよう)について話してほしい」とご依頼(いらい)をいただくこともあります。一見関連のなさそうなことでも,どこかでつながることを実感し,何事も無駄(むだ)にならないと思いました。

図書館と絵が好きだった子ども時代

図書館と絵が好きだった子ども時代

内気な性格(せいかく)だったこともあり,子どもの(ころ)は図書館で()ごすのがとても好きでした。本も好きでしたし,図書館という空間自体も好きで,司書の仕事に(あこが)れていましたね。
また,物心がついた(ころ)から絵を()くのも好きで,本格(ほんかく)的に習って,展示会(てんじかい)出展(しゅってん)させてもらったこともありました。小さい(ころ)は,自分の思っていることを言葉で表すのがあまり得意ではなかった分,代わりに絵を()くことで自分を表現(ひょうげん)していたように思います。中学校でも美術(びじゅつ)部に入り,将来(しょうらい)は絵を()く仕事か,大好きな図書館の司書を目指そうと思っていましたね。司書の仕事をしたいという思いが強かったので,短期間ですが大学の図書館で働く経験(けいけん)もしました。
広報(こうほう)の仕事は手紙を書くことが多く,最近は書道を習っています。仕事でも趣味(しゅみ)でも,やりたいと思ったことは一通り挑戦(ちょうせん)してきたように思います。

自信をつけて働くことを楽しもう

自信をつけて働くことを楽しもう

酒づくりに(あこが)れをもっている方にはとても(はな)やかな仕事に見えるかもしれませんが,会社の清掃(せいそう)作業を行うこともあります。(はな)やかでかっこいい場面は一瞬(いっしゅん)です。でも,(わたし)の周りには,その一瞬(いっしゅん)のために毎日をものすごく頑張(がんば)っている人たちがいます。
つらいことから決して()げることなく,()(わけ)せずに向き合うこと。そして,自分一人で何でも解決(かいけつ)しようとせず,周りの人にどんどん相談して視野(しや)を広げること。日々(ひび)職人(しょくにん)姿(すがた)を目の当たりにする中で,そういったことが大切なんだと感じています。
働くってどんな感じなのか,学校に通っている間は想像(そうぞう)がつかないかもしれません。(わたし)は働くことを通して,仕事は自分の内面を成長させてくれるものだと,身をもって体験することができました。みなさんも,周りと協力していくことで,自分に対しても仕事に対しても自信を持ち,働いてもらいたいと思います。「働くことは本当に楽しい」とみなさんにお伝えしたいです。

  • 取材・原稿作成:東京書籍株式会社/協力:城北信用金庫

私のおすすめ本

  • ぼくと原始人ステッグ

    クライブ・キング作/河野一郎訳

    通っていた小学校の図書館で出会った本です。男の子がごみ捨て場に迷い込んでしまい、そこで暮らしてる原始人と出会うというファンタジーです。いろいろな言葉が通じないのに、コミュニケーションを取って仲よくなるお話しです。当時は「ごみすて場の原始人」というタイトルでした。