仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

東京都に関連のある仕事人
1967年 生まれ 出身地 埼玉県

小山(こやま) 弘美(ひろみ)
子供の頃の夢: 警察官
クラブ活動(中学校): 剣道部
仕事内容
お客さまを安全・迅じん速そく・快かい適てきに目的地にお送りする。
自己紹介
仕事でお客さまのお役に立てることに喜びを感じます。休みの日は,両親とともにのんびりと時間を過すごしています。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2018年03月30日)時点のものです

安全・迅じん速そく・快かい適てきにお客さまを目的地へ

安全・迅速・快適にお客さまを目的地へ

私わたしは東京都荒あら川かわ区くにある「東京合同自動車」というタクシー会社で乗じょう務む員いんをしています。お客さまを目的地まで安全・迅じん速そく・快かい適てきにお送りするのが私わたしの仕事です。
タクシーを利用する方は,仕事や用事で急いでいる方,病院に通う方,疲つかれている方,お酒に酔よっている方などさまざまです。乗車されたお客さまの様子からお客さまの状じょう況きょうを察して運転をしています。中には出産間ま際ぎわで病院に向かう方や病気の方もいるので,そうした場合はとくに細心の注意を払はらって運転します。
私わたしの場合,運転する範はん囲いは東京都内が中心です。午前中は都心の官かん庁ちょうや会社,病院などに向かうお客さまが多いですね。午後になると買い物や病院から自じ宅たくへ帰る方が多くなり,夕方は営えい業ぎょう先さきから会社に戻もどる方や新しん幹かん線せんに乗る方,夜間や深夜は飲食の後に帰き宅たくする方が多くなります。また,その他には観光タクシーとして,貸かし切きりで利用されるお客さまもいらっしゃいます。
ふだんは東京都内が中心ですが,千葉,埼さい玉たまなど,比ひ較かく的てき遠くまで乗られるお客さまもいます。長野県までお客さまをお送りしたこともありますよ。一日の走行距きょ離りは平へい均きんで約350km,東京・名古屋間の距きょ離りとほぼ同じくらいです。

勤きん務むの日は朝から深夜まで

勤務の日は朝から深夜まで

いろいろな勤きん務む体たい系けいがありますが,私わたしは1日乗じょう務むしたら,次の日は休みになる「隔かく日じつ勤きん務む」をしていて,月に11日ほどの勤きん務むです。勤きん務むがある日は休きゅう憩けいをはさみながら,朝7時から深夜2時ごろまで乗じょう務むします。
朝6時半ごろ出しゅっ勤きんし,7時に点てん呼こ,朝礼とアルコールチェックをして車に乗りこみ,営えい業ぎょうを開始します。運転する車は決まっており,2人が1台を交代で使います。時間帯により,お客さまの利用目的がある程てい度ど決まってきますので,タクシーを利用しそうな方がいそうな地ち域いきを流してお客さまを探さがします。ほかに,会社の無線で「お客さまが待っているからこれこれの場所まで行ってほしい」と連れん絡らくを受けることもありますし,駅前やホテルでお客さまを待つこともあります。
深夜までの長時間勤きん務むですから,休きゅう憩けいは3時間に1回は必ずとります。タクシー用の駐ちゅう車しゃスペースがあるところに停とめて休きゅう憩けいや食事,時間調整をして,疲つかれがたまらないようにしています。
会社に戻もどるのは午前1時半前後です。一日の走行が記録されたICチップとその日の売上金を会社に提てい出しゅつし,車の清せい掃そうと車体のチェック,燃ねん料りょうのガスの補ほ充じゅう(※タクシーはガソリンではなくLPガス燃ねん料りょうで走るものが一いっ般ぱん的てき)をし,アルコールのチェックを受けて,午前2時ごろその日の仕事は終わります。その後,私わたしは電車通つう勤きんなので,会社の仮か眠みん室しつで仮か眠みんをとり,始発電車が動くのを待って帰き宅たくします。

注意と気づかいが必要

注意と気づかいが必要

お客さまを乗せた車内は密みっ室しつになるため,快かい適てきな空間を保たもつことに気をつかい,紳しん士し的てきな対たい応おうを心がけています。また,お客さまとのトラブルは絶ぜっ対たいに避さけなければいけません。そのため,行き先までのルートをあらかじめお客さまに確かく認にんする「経けい路ろ確かく認にん」は絶ぜっ対たいに欠かさないようにしています。「料金を上げるためにわざと遠回りをした」とお客さまに思われて,トラブルになってしまわないようにするためです。特に,ふだんあまり走らない地ち域いきに行くときは,「近道をご存ぞん知じでしたら教えてください」とお願いして,最短距きょ離り,最短時間で目的地に着くよう努力しています。
また,お酒に酔よったお客さまを乗せるときは,とくに注意するようにしています。私わたしたちはお客さまの身体に触ふれるわけにはいきませんから,その方が車内でぐっすりと眠ねむってしまったら,揺ゆり起おこすこともできません。どうしようもないときは交番前に停とめて警けい察さつ官かんにお客さまを起こしてもらい,ご自じ宅たくまでの道を聞かなければいけないこともあります。ですから,ひどく酔よった方を乗せるときは,なるべく一いっ緒しょにいる友人の方などに目的地まで乗ってもらうようにしていますね。

笑え顔がおでわかる「ありがとう」の気持ち

笑顔でわかる「ありがとう」の気持ち

やはり,お客さまに喜んでもらうとうれしいですね。関西から来ていた若わかい人たちのグループに「運転手さん,急いでや!」と言われて,空港まで安全に気をつけながらもなるべく早く着くように運転した結果,「おかげで飛行機に間に合ったわ。ありがとう!」と,みなさんから肩かたをぽんぽん叩たたいて大喜びされたこともあります。また,口に出して「ありがとう」と言われなくても,お客さまの笑え顔がおを見られれば,喜んでいらっしゃるのがわかるので,うれしいです。
長時間にわたって長い距きょ離りを運転する仕事ですが,私わたしにはまったく苦にはならず,むしろふだんの生活では自分からは行かないであろう場所に,お客さまに連れて行ってもらっている,と思えて,充じゅう実じつ感を持って仕事ができています。私わたしにとって,「仕事」は「楽しみ」でもあるんだと思います。

タクシーの「匠たくみ」が目標

タクシーの「匠」が目標

いろいろなタイプのタクシー乗じょう務む員いんがいますが,私わたしはお客さまとの会話は最さい小しょう限げんにしています。この仕事ではお客さまの「黒子」になるべきで,むだな会話は必要ないと思っているからです。でも,たとえ会話がなくても,このお客さまは体調が悪そうだなとか,急いでいらっしゃるなとか,そういうふうにお客さまを察して,気づかうことができる「匠たくみ」になりたいと思っています。たとえば,荷物をお持ちのお客さまがいれば,言われなくても,その荷物は壊こわれやすいものかもしれないと配はい慮りょして,席に置いた荷物が落ちないように,優やさしく運転するようにしています。
お客さまへの気づかいについて考えさせられた,ある出来事がありました。一度,足の悪い年配の女じょ性せいをお乗せしたのですが,その方が降おりる際さいに,「足が悪いと,ブレーキがかかったとき,足を踏ふん張ばれないから怖こわいのよ」と教えてくださったのです。はっとしました。それからは,とくにご高こう齢れいのお客さまをお乗せするときは,余よ裕ゆうを持ってブレーキを踏ふめるように前後の車との車間距きょ離りを大きくとり,ブレーキを普ふ段だん以上にやわらかく踏ふんで,そっと止まるようにしています。こうしたことを心がけるようになってから,お客さまから「ありがとう」と言われることが多くなった気がします。

運転と介かい護ごという二つの仕事経けい験けんの両方を生かせる仕事

運転と介護という二つの仕事経験の両方を生かせる仕事

私わたしが初めて就ついたのは,宅たく配はい便びんの運転手の仕事です。4トントラックを運転し,荷物を配達していました。その会社に入るとき,「家を建てる」ことを目標にしていたのですが,37歳さいで目標を達成できたので退たい社しゃし,今度は全く別の世界を見てみたいと思ってホームヘルパー2級の資し格かくを取ったんです。将しょう来らい的てきに両親の介かい護ごにも役に立つかもしれないと思い,高こう齢れい者しゃ介かい護ごの仕事に就ついたのですが,やってみて,福ふく祉しの仕事を一生続けていく覚かく悟ごは自分にはないなと感じられて,退たい職しょくしました。
その後,次の仕事を探さがす中で,タクシー乗じょう務む員いんなら運転と介かい護ご,二つの経けい験けんを役立てられるのではないかと思い,東京合同自動車の入社試験を受けました。運転する仕事の経けい験けんに加え,高こう齢れい化かで,これからはからだの不自由なお客さまがタクシーを利用する機会も増ふえるだろうから,介かい護ごの仕事をしていた経けい験けんが役に立つと思ったのです。
タクシーの乗じょう務む員いんとして働くためには,通つう常じょうの運転免めん許きょだけではなくて,お客さまを乗せて走るための「普ふ通つう自動車第二種免めん許きょ」が必要です。私わたしは入社が決まってから,入社前にこの免めん許きょを取りました。さらに,東京都内でタクシーの乗じょう務む員いんになるには,「東京タクシーセンター」という機関で地理と法令関係の筆記試験を受けなければいけません。この試験に合ごう格かくした後に社内の研けん修しゅうを受けて,乗じょう務む員いんになりました。これが2014年のことですので,乗じょう務む員いんになって今年で4年になります。

剣けん道どうで身につけた「察する力」

剣道で身につけた「察する力」

子ども時代は外遊びが大好きで,活発な子どもでした。それだけではなく,小学校,中学校では成せい績せきもよく,ずっと学級委員でした。また,「文ぶん武ぶ両りょう道どう」を重んじる父の教育方ほう針しんもあり,幼よう稚ち園えんから剣けん道どうを始め,中3で初しょ段だんを取るまで続けました。
剣けん道どうでは相手の目を見て相手の気持ちを読み,一いっ瞬しゅんのすきを見て相手の動きを封ふうじなければ負けてしまいます。このように相手の動きや気持ちを「察する」力は,確かく実じつに今の仕事につながっていると思います。ほかにも立たち居い振ふる舞まいや姿し勢せい,礼節など,剣けん道どうから得たものはいろいろあります。私わたしの剣けん道どうの先生が警けい察さつ官かんだった影えい響きょうもあって,警けい察さつ官かんになりたいと思った時期もありました。結局,他の仕事に興きょう味みを持ったため,警けい察さつ官かんにはなりませんでしたが,剣けん道どうのおかげで身についたものは,今の仕事にも大いに役立っています。

失敗を恐おそれず,何にでも挑ちょう戦せんを

失敗を恐れず,何にでも挑戦を

父親からもよく言われた言葉ですが,人生は「七転び八起き」,何回転んでもいいと思います。転んではじめて,転んだ人の気持ちがわかります。そして,転んでもいいから,何にでも挑ちょう戦せんしないと,何も生まれてきません。ぜひ失敗を恐おそれず,挑ちょう戦せんを続けるようにしてください。
また,今は多くのことがインターネットやSNSで済すんでしまう時代ですが,みなさんにはそれだけではなくて,相手の目を見て会話をして,友だち,仲間など,相手の気持ちを察し,いたわる力を身につけてほしいと思います。インターネット世代の人ほど,友だちと一いっ緒しょに喜き怒ど哀あい楽らくを共にする経けい験けんをして,人と接せっする楽しみを知り,コミュニケーションの力を磨みがいてほしいですね。

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私のおすすめ本

司馬 遼太郎
幕末の志士,坂本竜馬を主人公にした歴史小説ですが,その時代に,この国を変えようという熱い思いで行動した人々が描かれています。読んでからゆかりの地を訪ね歩くと,歴史をより深く知ることができておすすめです。私もお客さまからそういう場所を教えていただき,訪ねたりしています。

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取材・原稿作成:東京書籍株式会社/協力:城北信用金庫