仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

東京都に関連のある仕事人
1962年 生まれ 出身地 東京都

佐藤(さとう) 徹弘(てつひろ)
子供の頃の夢: 中学校教師
クラブ活動(中学校): 陸上部
仕事内容
患かん者じゃさんに喜んでもらえる,美しく噛かみやすい歯を作る。
自己紹介
海が好きで,釣つりやヨットが趣しゅ味みです。料理も得意で,週に1,2回はスタッフのために昼ご飯や夕飯を作ります。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2017年08月24日)時点のものです

歯に関わるものを作る

歯に関わるものを作る

私わたしは,東京都足立区にある「アシストワン」という歯科技ぎ工こうの会社を経けい営えいしています。「歯科技ぎ工こう」というのは,虫歯の治ち療りょうをして削けずったところに詰つめるものや,かぶせるものなどを作る仕事です。入れ歯や差し歯,歯は並ならびを矯きょう正せいするための「ブラケット」という針はり金がねや,インプラントを入れるときのパーツなども作ります。
歯科技ぎ工こうの仕事をするには,「歯科技ぎ工こう士し」という資し格かくが必要です。歯科技ぎ工こう士しは個こ人じんで営えい業ぎょうしているケースが多く,うちの会社のように歯科技ぎ工こう士しが40人ほどいる会社は珍めずらしいですね。社員それぞれの適てき性せいに応おうじて仕事を割わり振ふっていて,歯科技ぎ工こうの仕事をしながら営えい業ぎょうを担たん当とうする社員もいます。

精せい密みつに加工する技ぎ術じゅつ

精密に加工する技術

仕事は歯科医い師しからの依い頼らいと指し示じを受けておこないます。まず,患かん者じゃさんの治ち療りょう中の歯から取った型や写真をもらいます。石こうで固めた歯型は実物が届とどき,写真はデータで送られてきます。その型に合う詰つめ物ものや入れ歯を,機械やコンピュータと手作業とで作っていきます。
患かん者じゃさんが詰つめ物ものや入れ歯を作る際さいには,医い療りょう保ほ険けんを適てき用ようする治ち療りょうか,保ほ険けんの範はん囲い外がいの治ち療りょうかを選べます。保ほ険けん適てき用ようの治ち療りょうでは,銀やプラスチックなど素そ材ざいが限げん定ていされますが,値ね段だんは手ごろです。もっと精せい密みつで見み栄ばえがいいものを希望する場合は,保ほ険けん適てき用ようのされない自由診しん療りょうになります。費用は高くなりますが,ジルコニアやチタンなど,使える素そ材ざいの種類が増ふえます。
歯科技ぎ工こう士しは,素そ材ざいの選び方から,材料を練るときのボウルの温度など,さまざまな工く夫ふうをします。歯の透とう明めい感や白さをどう出すか,技ぎ術じゅつと知ち識しきに加えて,センスも必要です。細かい部分まで型と一いっ致ちしているか,顕けん微び鏡きょうで確かく認にんしながら作業して,完成させていきます。

信しん頼らいされる会社を目指して

信頼される会社を目指して

私わたし自身も,入れ歯を専せん門もんとする歯科技ぎ工こう士しです。でも今は,歯科技ぎ工こう士しの仕事は2割わりくらいで,8割わりは社長としての仕事をしています。細かい歯科技ぎ工こうの仕事をしていて頭が痛いたくなると,外の営えい業ぎょうや配達に出たりしていますよ。
社長としての大きな仕事は,スタッフを集めることと,集めたスタッフの教育です。北海道から仙せん台だい,新にい潟がた,名古屋,九州と全国の歯科技ぎ工こうの専せん門もん学校を回って,会社の魅み力りょくをアピールし,募ぼ集しゅうをかけています。寮りょうも完かん備びしているので,全国各地から若わかい人がやってきます。
また,若わかいスタッフが高度な技ぎ術じゅつを身につけられるように,勉強会や講こう習しゅう会かいを開いています。これからの時代,歯科技ぎ工こうに関しては医い師し以上の知ち識しきを持ち,医い師しにアドバイスできるような能のう力りょくを持つことが大事です。最近は,患かん者じゃさんの美に対する要求が高まっているので,それに応こたえるためにも,高度な技ぎ術じゅつが必要です。「あの会社に頼たのみたい」「あのスタッフに作ってほしい」と,医い師しから信しん頼らいされ指名されることが目標です。

仕事の先には,患かん者じゃさんの笑え顔がおがある

仕事の先には,患者さんの笑顔がある

歯科技ぎ工こうの仕事は,自分が作ったものの先に,患かん者じゃさんの笑え顔がおがあるのが,やりがいです。前歯の色が白くない,歯は並ならびが悪い,などを気にして,口を開けて笑えなかった人が,「人前で笑えるようになった」と喜んでくれます。歯が削けずられるのが悲しくて泣いてしまった患かん者じゃさんが,きれいな歯を入れたらニコニコなさったこともあります。歯の色を見るためや装そう着ちゃくのために歯科医院に出向いて立ち合ったときや,歯科医い師しを通してお礼を言われるときがうれしいですね。自分に合った入れ歯で,食べ物を噛かめるようになったお年とし寄よりの方もいらっしゃいます。
また,歯科技ぎ工こう士しとしては,自分が納なっ得とくできるものができたときの満足感もあります。型にピッタリ合ったときや,自分のイメージ通りの色や透とう明めい感が作れた瞬しゅん間かんは,「よっしゃー!」とガッツポーズしたくなります。
上手な歯科技ぎ工こう士しは,目がいいんです。手先の器用さよりも,よく見る力が大事です。細かい歯の溝みぞまで見る目の力がないと,良いものは作れません。また,アートと一いっ緒しょで,センスも必要です。私わたしが作るとヤボったくなるのを,いつもスマートに作るスタッフもいます。私わたしは歯科技ぎ工こう士しとしては,センスより機き能のう性せいで勝負するタイプですね。

長時間労働のない,働きやすい職しょく場ばに

長時間労働のない,働きやすい職場に

私わたしが若わかいころは,医い療りょう保ほ険けんが適てき用ようになる低てい価か格かくのものを,たくさんこなすという働き方をしていました。夜よる遅おそくまで休みもなく働き,1週間に8時間しか眠ねむれないこともあったんです。そんなブラックな働き方では,いい仕事はできませんし,長続きしませんよね。
そこで,今の私わたしの会社では,勉強会をしてスタッフの技ぎ術じゅつを向上させることで,単たん価かが高い自由診しん療りょうの仕事を多く請うけられるようにしています。また,1台が1千万円以上もする最新の機器を積極的に導どう入にゅうし,労働時間が短くなるようにしました。こうして,昔のような長時間労働はなくすことができたんです。
働き方も選べるようにしています。スキルアップのために勉強する人,たくさん稼かせぎたい人,それぞれの働き方の希望を社長面談で聞いて,希望に合った働き方をしてもらっています。うちの会社ではいろいろと工く夫ふうをして,無理のない働き方ができるようにしているんです。

父の会社を継ついだけれど

父の会社を継いだけれど

父も歯科技ぎ工こう士しで,4,5人のスタッフを雇やとっていました。朝早くから夜よる遅おそくまで働いていたので,私わたしは子ども心に,いつ寝ねているんだろうと不思議でした。
高校生のころは学校の先生になりたかったのですが,親には歯科技ぎ工こう士しを勧すすめられました。調べてみると,お金を稼かせげそうだったので,それもいいかもしれないと思い,歯科技ぎ工こうの専せん門もん学校に進学し,卒業後,歯科技ぎ工こう士し国家資し格かくを取得しました。
違ちがう会社に就しゅう職しょくが決まっていましたが,「あんたが入ってくれないとつぶれる」と親に泣きつかれて,跡あとを継つぎました。ところが,その会社が倒とう産さんしてしまったんです。人生,なにが起きるかわかりませんね。社会人生活のスタート直後から大変でした。とにかくたくさんの仕事をこなして借金を返へん済さいしました。
社長として若わかい人を指し導どうして育てるのは,ある意味,先生のような面もあります。スタッフが書く業ぎょう務む日にっ報ぽうに「うまくいかない」と書かれていたら,作業台の様子をすぐに見に行きます。自分も歯科技ぎ工こう士しなので具体的な悩なやみがわかるのは,強みですね。

失敗してもあきらめない

失敗してもあきらめない

小学校5年生のとき,東京の荒あら川かわ区くから足立区に引ひっ越こしましたが,隣となりの葛かつ飾しか区くにある水元公園へ釣つりに行ったり ,野球をしたり,とにかく外で遊んでいました。一方で,プラモデルを作るような,細かいものをいじるのも好きでしたね。
中学,高校では,陸上部で短たん距きょ離り走や幅はば跳とびをしていました。中学3年の夏,リレーの最後の試合,それに勝てば大きな大会に出られるという大事な場面で,大失敗をしてしまいました。2位で走ってきた走者からのバトンを,私わたしが落としてしまったんです。今でも夢ゆめに出ます。それでも,高校でまた陸上を続けました。こうした“あきらめない”根こん性じょうは,父の跡あとを継ついだ会社が倒とう産さんして,借金を抱かかえたときにも役に立ったと思います。

勝つまでやってみよう

勝つまでやってみよう

負けない方法は,勝つまでやり続けることです。どんな強い相手でも,勝つまでやめなければ,負けません。負けたとやめてしまうのも,やめると決めるのも,自分です。それなら,あきらめないで,やってみましょう。
やり続けることでまわりに迷めい惑わくをかけてしまうのはダメですが,やめないための努力をすることが大事です。努力して真しん剣けんに取り組んでいれば,苦く境きょうに立たされたときに,その姿すがたを見ていた誰だれかが,手をさしのべてくれるものです。私わたしも,やめてしまいたいと思うときもありました。でも,「勝つまでやるんだ」という信念で,仕事を続けてきました。
また,歯科技ぎ工こうという仕事については,派は手でではないですが,努力した分だけ実じっ績せきが認みとめられる仕事です。職しょく人にん同士が助け合って,患かん者じゃさんの笑え顔がおと健康をつくります。今は若わかい歯科技ぎ工こう士しが少なくなってきているので,逆ぎゃくに若わかい人にはチャンスです。興きょう味みがあれば,ぜひ挑ちょう戦せんしてみてください。

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私のおすすめ本

夏目 漱石
自分に正直に生きることを学びました。自分の信念を貫く姿に憧れて,学校の先生になりたいと思うようになりました。結局,歯科技工の道に進むことにはなりましたが,今でも印象に残っている本です。

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取材・原稿作成:東京書籍株式会社/協力:城北信用金庫