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大阪府に関連のある仕事人
1987年 生まれ 出身地 大阪府

浦田(うらた) 梨佐(りさ)
子供の頃の夢: パティシエ
クラブ活動(中学校): 茶道部
仕事内容
要よう件けん定てい義ぎからデザイン、コーディングまでを担たん当とうし、ホームページを制せい作さくする。
自己紹介
繊せん細さいで一人の時間が好きでありながら、活動的な面もあります。休みの日はたいてい郊こう外がいに出向き、自然の中を歩いたり、カフェでのんびりしたりして過すごしています。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2023年12月05日)時点のものです

ダイバーシティ経けい営えいに力を入れるIT企き業ぎょうで、自分の特とく性せいと付き合いながら働く

ダイバーシティ経営に力を入れるIT企業で、自分の特性と付き合いながら働く

私わたしは、大阪府大阪市にある「有ゆう限げん会がい社しゃ奥おく進しんシステム」という会社で働いています。奥おく進しんシステムは、生産管理システムや在ざい庫こ管理システム、ウェブ受注システムといった、企き業ぎょうの業ぎょう務むを改かい善ぜんしたりサポートしたりするためのシステムの開発や、企き業ぎょうや行ぎょう政せいなどのホームページ制せい作さくを行っている会社です。
奥おく進しんシステムでは現げん在ざい、役員2名、社員10名の計12名が働いていますが、そのうち10名には、精せい神しんもしくは身体の障しょうがいがあります。シングルマザーの人もいます。私わたし自身も「広こう汎はん性せい発達障しょうがい」という診しん断だんを受けており、自分の特とく性せいと付き合いつつ、周りの方からのサポートも受けながら仕事をしています。

人とのコミュニケーションが苦手

人とのコミュニケーションが苦手

発達障しょうがいの特とく性せいは人によって異ことなりますが、私わたしの場合は言葉にすることや、人とコミュニケーションを取ることが苦手です。振ふり返かえると、3歳さいくらいのときから、「自分は周りと少し違ちがうかもしれない」という違い和わ感かんを持っていました。家や遊び場では普ふ通つうに話せるのに、保ほ育いく園えんや小学校に行くと話せなくなってしまう、「場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)」という症しょう状じょうがあり、学校でうまくコミュニケーションが取れないことがつらくて、小学校4年生から約1年間、不登校になったこともありました。家から少し遠い高校に入学し、場面緘かん黙もく症しょうで話せなかったことを知っている人が周りにいない状じょう況きょうになってからは少しずつ人とコミュニケーションが取れるようになりましたが、ずっと苦手意い識しきはありました。
大学卒業後は、コミュニケーションが苦手なこともあり面めん接せつがうまくいかず、就しゅう職しょくが決まりませんでした。その後、母の勧すすめで検けん査さを受け、「広こう汎はん性せい発達障しょうがい」と診しん断だんされました。
今でもコミュニケーションは苦手で、初対面の人とであれば話題がたくさんあるので大だい丈じょう夫ぶなのですが、知り合いの人とは何を話したらいいのか、わからなくなってしまいます。嫌きらわれたくないという思いも強いので、職しょく場ばの人とのコミュニケーションにはとても気を遣つかいます。雑ざつ談だんや世間話が苦手で、休み時間に自分以外のスタッフが楽しそうに話しているのを見て、輪に入れないことがつらくて泣いてしまうことも何回かありました。また、他の人の言葉を重く受け取ってしまう傾けい向こうがあり、たとえば仕事の制せい作さく物ぶつに対する指し摘てきを受けたときに、自分自身を否ひ定ていされたように感じてしまい、落ちこんでしまうこともあります。

要よう件けん定てい義ぎからコーディングまで、ホームページ制せい作さくの一連の作業を担たん当とう

要件定義からコーディングまで、ホームページ制作の一連の作業を担当

私わたしが現げん在ざい、担たん当とうしているのは、ホームページを作る仕事です。社会福ふく祉し法人や特例子会社(障しょうがい者しゃ雇こ用ようの促そく進しんと安定を図はかるため、事業主が障しょうがい者しゃの雇こ用ように特別な配はい慮りょをした子会社)のホームページを作ることが多いのですが、大阪府などの行ぎょう政せい機関から依い頼らいを受け、行ぎょう政せいが進めるプロジェクトのホームページを制せい作さくすることもあります。
ホームページを作るときにはまず、お客さまと打ち合わせをして、「どういうページを作りたいか」という目標や要望を理り解かいし、それを具体的なシステムやソフトウェアの機き能のうや性せい能のう、操そう作さ性せい、品ひん質しつなどに落としこむ「要よう件けん定てい義ぎ」を行います。その要よう件けん定てい義ぎをもとにデザインを考えて、デザインが決定したら、プログラミング言語を使って実じっ際さいのページを制せい作さくする「コーディング」を行うのですが、私わたしはその一連の作業をすべて担たん当とうしています。さらに、公開されたホームページの補ほ修しゅう作業や、不具合が発生していないかを点てん検けんする保ほ守しゅ作業も私わたしの仕事です。
ホームページの規き模ぼにもよりますが、私わたしが担たん当とうしているホームページの場合、最初に打ち合わせをしてから2か月から3か月で完成するケースがほとんどです。その間のスケジュールや進行を管理することも私わたしの仕事ですが、直ちょく属ぞくの上司である奥おく脇わき社長にもたくさんフォローしてもらっています。たとえば、お客さまに定期的に進しん捗ちょくや確かく認にんの連れん絡らくをする必要があるのですが、程ほどよいタイミングで、「そろそろ連れん絡らくしたほうがいいんじゃない?」と声を掛かけてくれます。

自分なりの工く夫ふうを取り入れ、お客さまの意見を聞き出す

自分なりの工夫を取り入れ、お客さまの意見を聞き出す

私わたしは自分の特とく性せいとしてコミュニケーションが苦手なこともあり、担たん当とう業ぎょう務むの中では最初の要よう件けん定てい義ぎの部分が一番難むずかしいと感じています。お客さまは「こういうホームページを作りたい」という、なんとなくの希望はあっても、具体的なイメージまでは持っていらっしゃらないことがほとんどです。私わたしが質しつ問もんをしてお客さまの希望を聞き出し、一いっ緒しょに具体化していかなければならないのですが、どんな質しつ問もんをすればいいのかがわからず、まだまだ聞き出す力が足りないと反省することも多くあります。お客さまとの打ち合わせには、いつも奥おく脇わき社長と2人で参加しているので、フォローも受けながら試し行こう錯さく誤ごしているところです。
一方で私わたしの場合、言葉で聞き出すことには限げん界かいがあるので、ヒアリングの段だん階かいでページのデザインを試作してみて、ある程てい度ど、形にしたものをお客さまに見せる方法も取り入れています。形があると、お客さまも「ここにボタンが欲ほしい」「ここは青色にしよう」「この写真はもう少し大きくしたい」といった、具体的な意見を出してくれるようになるんです。

お互たがいがお互たがいの特とく性せいやハンディキャップを理り解かいしており、安心して働ける職しょく場ば

お互いがお互いの特性やハンディキャップを理解しており、安心して働ける職場

奥おく進しんシステムには2015年に入社し、8年目になりますが、非ひ常じょうに働きやすい環かん境きょうが整っていると感じています。
リモートワークが認みとめられており、雑ざつ談だんが苦手な私わたしにとっては、そうした機会が発生しない家で仕事ができるのは、とても気が楽です。話すよりも書くほうが得とく意いなので、ビジネスチャットツールでのやり取りのほうがコミュニケーションも取りやすいです。
また、社内では「障しょうがいプレゼン」という行事が行われています。これは、新しいスタッフが入社してきたときに、「自分にはどういう障しょうがいがあって、どんな配はい慮りょをしてほしいのか」を発表してもらう場です。既すでにいる社員からも、新しく入ったスタッフに対して自分の特とく性せいや配はい慮りょしてほしい点を伝えます。こうした時間が設もうけられているため、スタッフ全員がお互たがいの障しょうがいや特とく性せいのことを知っている状じょう態たいで仕事ができています。私わたしの場合は、言葉がすぐに出てこない場面があることを共有しています。また、スタッフとの雑ざつ談だんにうまく入れなかったりして、感かん情じょうのコントロールがうまくいかない特とく性せいも相あいまって泣いてしまったとしても、気にしないでほしいということも伝えています。
ほかにも、業ぎょう務む終しゅう了りょう後に日にっ報ぽうを書くのですが、日にっ報ぽうには「その日しんどいと感じたこと」も書くことになっています。そして、奥おく脇わき社長が必ずコメントをしてくれるんです。対面では伝えにくいことも文章だと伝えやすいため、とてもありがたいです。
私わたしは電話が苦手なため、電話対たい応おうも免めん除じょしてもらっています。また、メールの文面を作るのにも時間がかかるのですが、「チャットGPT」というAIツールも導どう入にゅうしていただいています。チャットGPTは生成AIと呼よばれるもので、人間のような自然な返答ができるほか、文ぶん脈みゃくを理り解かいしたり、新たな文章やアイデアを生成できたりという特とく徴ちょうがあり、メールの概がい要ようを簡かん潔けつに入力すると、チャットGPTが適てき切せつな文面を作ってくれます。文章の作成能のう力りょくが足りない分をAIに補おぎなってもらえるのはとても心強いです。こうしたさまざまな配はい慮りょがあるからこそ、安心して働けています。

お互たがいの得え手て不ふ得え手てをフォローし合うのが当たり前

お互いの得手不得手をフォローし合うのが当たり前

私わたしにも苦手なことと得とく意いなことがあるように、周りのスタッフにも苦手なことと得とく意いなことがあります。私わたしも配はい慮りょやフォローをしてもらっている分、他のスタッフに苦手なことがあればフォローすることは心がけています。
たとえば、ホームページのコーディング作業に関しては、最近、私わたしの下に後こう輩はいが入ったので、任まかせられる部分は後こう輩はいにも任まかせつつ、2人で進めています。後こう輩はいは発達障しょうがいの一種の「ADHD(注意欠けつ如じょ・多た動どう症しょう)」という診しん断だんを受けており、特とく性せい上、どうしても不注意によるミスが発生しがちなので、後こう輩はいが作ってくれたものは、必ず私わたしも確かく認にんしてからお客さまに提てい出しゅつするようにしています。
また、私わたし自身もそうでしたが、特とく性せいやハンディキャップがあることで、子どものころから落ちこんだ経けい験けんが多くあるはずなので、後こう輩はいに対しては可か能のうな限かぎり褒ほめるようにしています。加えて、後こう輩はいに送るメールやチャットの文章は硬かたくなりすぎないよう、「!」を付けたりして、親しみやすい雰ふん囲い気きになるよう意い識しきしています。

実習に参加したことがきっかけで、思いもしなかったホームページ制せい作さくの仕事に

実習に参加したことがきっかけで、思いもしなかったホームページ制作の仕事に

今はホームページを作る仕事をしていますが、最初からその道を目指していたわけではありませんでした。
私わたしは約10年前、「就しゅう労ろう移い行こう支し援えん」を受けられる施し設せつに通っていました。就しゅう労ろう移い行こう支し援えんとは、障しょうがいのある人が、一いっ般ぱん企き業ぎょうで働くために必要なスキルを身につけるためのトレーニングや、就しゅう職しょく活動のサポートを受けられる福ふく祉しサービスです。簿ぼ記きや情じょう報ほう処しょ理り、エクセルやワードなどの勉強をしていたのですが、通い始めてから約1年半経たったころ、実じっ際さいに会社で働く就しゅう業ぎょう体験を勧すすめられました。私わたしは単たん純じゅん作業が好きで、同じ作業でも飽あきることなく継けい続ぞくできるので、当時は事じ務む職しょくに就つきたいと考えていて、事じ務むの実習を受けられる会社を探さがし、見つけたのが奥おく進しんシステムでした。
1週間の日にっ程ていで、エクセルの表作成やデータ集計などの実習をさせてもらう予定だったのですが、5日経たったところで「ホームページの制せい作さくを勉強してみない?」というお話をいただきました。それまで、ホームページを制せい作さくしたいと考えたこともなければ、デザインはむしろ苦手なほうだと思っていたので迷まよいましたが、せっかくIT企き業ぎょうで実習させてもらっているのだからと、軽い気持ちで始めてみたんです。実じっ際さいに挑ちょう戦せんしてみると、コツコツとコードを打ちこんでホームページを作っていく作業は、予想外に楽しくもありました。それが、今の会社に入社したきっかけでした。実習の際さいにお世話になった社員のみなさんがとても気さくに接せっしてくれて、「この会社であれば働けるかもしれない」と思ったことも、入社を決めた理由の一つでした。

お客さまから直ちょく接せつ喜よろこびの声を聞けることが、一番のやりがい

お客さまから直接喜びの声を聞けることが、一番のやりがい

入社したものの、それまでホームページ制せい作さくに関する勉強はしてこなかったので、入社後には苦労しました。プログラミング言語にはたくさんの種類があるうえ、Photoshop(フォトショップ)やIllustrator(イラストレーター)といった画が像ぞうの編へん集しゅうや描びょう画がのためのソフトの勉強もあり、覚えることが多くありました。加えて、ウェブ関連では、最新の技ぎ術じゅつもどんどん変わっていくので、勉強した知ち識しきが古くなって使えなくなってしまうことも多々あり、今でも毎日、勉強の日々です。
ホームページ制せい作さくには正せい解かいがないことも、苦労するポイントです。デザインは主観的なものなので、作る人の数だけ答えがあります。私わたしが作ったものが本当に正しいのか、正せい解かいはわかりませんが、「自分が作りたいもの」ではなく、「お客さまが求めているもの」を作るという意い識しきを常つねに持ちながら仕事をするようにしています。
一方で、お客さまと直ちょく接せつやり取りをさせていただいている分、生の声が聞けるのは今の仕事の醍だい醐ご味みです。完成したときに「ありがとう」と感かん謝しゃの言葉をいただけると、頑がん張ばって作って良かったと心から思います。特に、自分なりに工く夫ふうしたり、こだわって作ったりしたデザインが褒ほめられたときは、自分自身も認みとめてもらえたような気がして、喜よろこびもひとしおです。

コツコツと手を動かす手芸が大好きだった子ども時代

コツコツと手を動かす手芸が大好きだった子ども時代

私わたしは、何かを作るのがとても好きな子どもでした。といっても、図工のようにアイデアを一から考えて作ることはあまり得とく意いでなく、家庭科の手芸のように、型かた紙がみなどのお手本があったうえで、その通りに手を動かして作ることが得とく意いでした。両親が働いていたこともあり、小学生のころは学童保ほ育いくに通っていましたが、5年生のときにフェルトで作ったマスコットの手芸品を1年生の子たちにプレゼントしたら、とても喜よろこんでくれて、うれしく思ったことを覚えています。大人になった今も手芸は大好きで、休みの日にはフェルトで小物を作っています。
ホームページ制せい作さくも、リアルな「もの」ではない、という点では手芸と異ことなりますが、ものづくりの一種です。デザインを一から考える部分には今でも苦手意い識しきがありますが、コードをコツコツと打ちこんで画面を作り上げていく作業については、実は自分に向いていたのだと思います。

人生の多くの時間を費ついやす仕事だからこそ、楽しむことが大切

人生の多くの時間を費やす仕事だからこそ、楽しむことが大切

私わたしは子どものころ、場面緘かん黙もく症しょうが原げん因いんで不登校だった期間もあり、今考えると小学校のころが一番苦しい時期だったと思います。ですが、少しずつ周しゅう囲いの人とコミュニケーションが取れるようになり、だんだん楽に生きられるようになってきました。だから、みなさんの中に、もし今、しんどい、つらいと感じている人がいたとしたら、大人になるまでずっとつらい時期が続くわけではないということを伝えたいです。
そして、「仕事は楽しむのが一番!」ということもお伝えしたいです。1日8時間・週5日働くことになる方も多くいると思います。人生の多くの時間を仕事に費ついやすことになるので、仕事の時間は楽しいに越こしたことはありません。仕事に就つくときまでに、自分が楽しめることを見つけられるよう、勇気を出していろいろなことにチャレンジしてほしいと思います。

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私のおすすめ本

木藤亜也
映画・ドラマ化もされている有名なノンフィクションの日記です。コミュニケーションの苦手さゆえに日常生活で悩むことの多かった時期に読み、著者である亜也さんが困難に負けず努力する姿に勇気をもらいました。

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取材・原稿作成:渡部 彩香(Playce)・楳園 麻美(Playce)・東京書籍株式会社/撮影:合田 慎二