社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2009年11月18日)時点のものです
林業の仕事は大きく分けて2つあります。木を切って出荷することと,木を植えて育てることです。私(わたし)は主に木を切って出荷する仕事をしています。私(わたし)の所有している山ではスギ・ヒノキ・ケヤキの木を主に育てていて,切った木はトラックで近隣(きんりん)にある2つの木材市場まで持って行きます。仕事はだいたい太陽が昇(のぼ)ってから沈(しず)むまでで,朝7時に家を出て,現場(げんば)に8時半頃(ころ)に着きます。17時には仕事を終えます。どの現場(げんば)も片道(かたみち)1時間半位かかります。
苗木(なえぎ)を植える時,まず間隔(かんかく)を詰(つ)めて植えます。これは,地面が直射(ちょくしゃ)日光を浴びて乾燥(かんそう)することを防(ふせ)ぐためと,もう1つは木を互(たが)いに競争させるためです。木は競争に負けると日が当たらなくなり,伸(の)びることができなくなるので,早く他の木の上に出ようとして,一生懸命(いっしょうけんめい)大きくなります。木を植えて15年~20年目位経(た)つと,「間伐(かんばつ)」と言って,競争に負けた細い木を切り倒(たお)し,残った木が一層(いっそう)元気に育つようにするための作業を行います。間伐(かんばつ)をしないと,雪の重みで先が折れた木や風に吹(ふ)き倒(たお)された木が,他の木を傷(きず)つけてしまいます。また,森の風通しが悪くなるので,病虫害も発生しやすくなります。ですから,良い木材を取るためにも,山を守るためにも間伐(かんばつ)作業はとても重要な仕事です。4月~8月は仕事が少なく,3月~6月位の間は木の皮に傷(きず)が付きやすいので,あまり間伐(かんばつ)作業には適(てき)さない時期です。ちなみに,上の写真が間伐(かんばつ)していない森,下の写真が間伐(かんばつ)した森です。
私(わたし)の所有している山は山地の奥(おく)の方にあるので,道が無い所が多かったのですが,木を切って機械で運搬(うんぱん)するためには道が必要です。だから私(わたし)は効率(こうりつ)よく仕事を進めるために道を作りました。どうすれば仕事が簡単(かんたん)になるか考えるので,たくさんの発明ができるんです(笑)。しかし,道を作るためには,近隣(きんりん)の山を持っている人と交渉(こうしょう)をしなければなりません。この交渉(こうしょう)がなかなか難(むずか)しく,5年位かかることもあり,道を作るための経費(けいひ)もかかります。一番遠い所は車を降(お)りて歩いて3時間位かかります。そこには国の調査(ちょうさ)のために行きましたが,チェーンソーを担(かつ)いでその場所まで行って,木を切って持って帰ることは遠くてできません。どこの山でも歩いて30分位で行けるように整備(せいび)されることを願っています。
自分が手入れした山を見た時に「綺麗(きれい)になった!」と感動します。誰(だれ)が見ても「きれい」と思ってもらえるように手入れをしたいと思っています。仕事には達成感がありますね。また,年数が経(た)った木は,とても魅力(みりょく)的になります。木を植えて,見栄えが良くなるまでに30年以上かかります。その間,大事に育てます。久(ひさ)しぶりに見た木が見違(みちが)えるように立派(りっぱ)になっている時はとてもうれしく思います。私(わたし)の山で一番大きな木は60年のものです。農業は単年性(せい)の作物を育てるので収穫(しゅうかく)が早くできますが,林業は何十年も経(た)たないと結果が出ません。農業と林業の大きな違(ちが)いです。それから,今後木材が燃料(ねんりょう)としてチップなどで使われるようになると思います。そうすれば,林業ももっと注目されるかなと期待しています。
木は何十年もかけて大きくなります。いつもまっすぐ大きく育って欲(ほ)しいと願いながら,子どもを育てるように大事に木を育てています。また,間伐(かんばつ)をする時には,周りの木を傷(きず)つけないように木を切ります。出荷の時にも太さや長さをよく見て,切り倒(たお)した時に他の木が傷(きず)つかないように気をつけて切り出しています。この作業は集中力がとても大切になってきます。ただ木を切っているだけではなく,頭で計算をしながら仕事をしています。
私(わたし)が仕事をしている愛媛(えひめ)県では,平成8年から18年までの約10年の間に,林業従事者(じゅうじしゃ)は半分になってしまいました。林業をしている人が年々(ねんねん)高齢(こうれい)化して後継者(こうけいしゃ)が急激(きゅうげき)に減(へ)ったため,昔あった林道の中には,人が入らなくなってどこにあるか分からないものもあります。今,多くの地域(ちいき)で問題になっているのは,山の境(さかい)を知っている人が少なくなっており,境界線(きょうかいせん)の調査(ちょうさ)があまりできていないことです。手入れができていない山もあります。大切な山を守るために多くの人が山に興味(きょうみ)を持ってもらい,林業従事者(じゅうじしゃ)が増(ふ)えてくれるといいなと思います。
小学校から20代の中頃(なかごろ)まで関西に住んでいましたが,親の実家が,今私(わたし)が仕事をしている愛媛(えひめ)県西条(さいじょう)市にあったので,夏休みには必ず西条(さいじょう)市に帰って,山を走り回っていました。低学年の時に,夕方暗くなって祖父(そふ)に呼(よ)ばれ,地面に小さい穴(あな)がたくさん開いているのを見ました。それはセミの幼虫(ようちゅう)が出てくる穴(あな)でしたが,地中にセミの幼虫(ようちゅう)がいるとは知らなくてびっくりしたことを覚えています。
中学生の頃(ころ),友達と西条(さいじょう)市へ遊びに来た時に,山番をしている人に初めて木を切らせてもらいました。その時に手ノコで木を切って,バタンと木が倒(たお)れた瞬間(しゅんかん)がすごく気持ち良かったです。大学を卒業して4年くらい別の仕事をしましたが,中学生の時に木を切った感触(かんしょく)がずっと心に残っていました。先祖(せんぞ)が山を買ってくれていたので,父親に2年間林業について勉強することを許(ゆる)してもらい,その後,西条(さいじょう)市で林業をしている会社に就職(しゅうしょく)し,間伐(かんばつ)や伐採(ばっさい)など山の仕事について色々(いろいろ)なことを勉強させてもらいました。
最近家の中でゲームをしている子が多くなって,外で遊ぶことが少なくなってきているように感じます。身近に山や川がある人は,自然や木にどんどん触(ふ)れて欲(ほ)しいと思います。外で遊ぶことによって知ることができることもたくさんあるので,自然の中で遊んでください。