社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2006年12月08日)時点のものです
栄養士は,学校や保育園(ほいくえん),老人ホーム,保健所(ほけんじょ)などいろいろな場所で栄養に関するアドバイスや食事の献立(こんだて)を考えたりしています。私(わたし)の場合は病院で働いているので,入院している患者(かんじゃ)さんの献立(こんだて)を考えます。私(わたし)達の病院には600人くらいの患者(かんじゃ)さんがおられるのですが,献立(こんだて)は患者(かんじゃ)さんひとりひとりの病状(びょうじょう)などに合わせて考えるので,朝・昼・晩(ばん)の食事の献立(こんだて)考え提供(ていきょう)する仕事はいつも時間との戦いです。献立(こんだて)を考え,食材を発注し,届(とど)いた食材の数や状態(じょうたい)を確認(かくにん)するだけではなく,調理士と一緒(いっしょ)に私(わたし)達も調理を行います。他にも,午後の時間を使って,医師(いし)・看護師(かんごし)・薬剤師(やくざいし)と一緒(いっしょ)に病棟(びょうとう)へ回診(かいしん)に行ったり,会議に参加して感染症(かんせんしょう)や食中毒,床(とこ)ずれなどについての情報(じょうほう)交換(こうかん)や対策(たいさく)を考えたりもします。また,「風邪(かぜ)に負けない食事」「血液(けつえき)サラサラの食事」などのテーマで栄養教室を病院の中で開いたり,病院の外で料理教室の講師(こうし)を務(つと)めたりもしています。
患者(かんじゃ)さんは一人ひとり病状(びょうじょう)などが異(こと)なるので,みんなが同じ物を食べられるわけではありません。メニューを替(か)えるだけではなく,少しでも食べやすい食事を作って適切(てきせつ)な栄養をとってもらうために,とろみを付けたり,小さく刻(きざ)むなどの工夫をしています。私(わたし)達の病院では,普通(ふつう)の病院よりも多い13人の栄養士で,患者(かんじゃ)さん一人ひとりに対して最適(さいてき)な食事を考えているのです。また,いろいろと工夫をしていても実際(じっさい)に患者(かんじゃ)さんが食べてみると「食べにくかった」ということもあるので,患者(かんじゃ)さんと話しをたり,ご家族の方にも聞いたりしながら,より食べやすい食事を提供(ていきょう)できるようにがんばっています。
私(わたし)たち栄養士だけではなく,医師(いし)・看護士(かんごし)・薬剤師(やくざいし)と一緒(いっしょ)にチームを作って,患者(かんじゃ)さん一人ひとりの栄養サポートを行います。チームで回診(かいしん)に向かう前に,患者(かんじゃ)さん一人ひとりについて「どうやって栄養を取ってもらうか」などを話し合います。その後,回診(かいしん)の時に患者(かんじゃ)さんとお話をして,その人に合ったより良い献立(こんだて)や調理方法を決めていきます。例えば,なかなか食事をする気が起こらない患者(かんじゃ)さんが「甘(あま)い物が好きだ」という情報(じょうほう)を看護師(かんごし)さんから聞いて,チームでプリンを食事に付けてみようと考えたことがあったのですが,その患者(かんじゃ)さんに会って「プリンなら食べられますか?」と聞くと,「食べられる」とおっしゃったので,「早速今日からプリンを付けますから楽しみにしていて下さいね」と言うことができました。少しでも食べる意欲(いよく)を出してもらい元気になってもらいたいので,こうして病室で患者(かんじゃ)さんの意見を聞くことは本当に大切なのです。
病棟(びょうとう)を回っていると,患者(かんじゃ)さんが「おいしい!」「食べられるようになった!」と言って笑顔を見せてくれるので,とても嬉(うれ)しくなります。なかなか聞く耳を持ってくれず食事に積極的ではなかった患者(かんじゃ)さんが「よし,食べてみよう」という気になってくれた時も,嬉(うれ)しい瞬間(しゅんかん)です。たくさんの食事の中のひとつではなく,患者(かんじゃ)さんにとっては自分だけのたった1つの食事なので,患者(かんじゃ)さんにとって楽しみな食事になったらいいな,と思いながら仕事をしています。
私(わたし)は,中途(ちゅうと)半端(はんぱ)なことが好きではありません。なので,どんな事にも一生懸命(いっしょうけんめい)取り組みます。「まぁ,いっか」と思ってしまうのではなくて,「もっといいものができるかも」と考えると,精一杯(せいいっぱい)頑張(がんば)ることができて,そうすることで始めて達成できることがあると思います。患者(かんじゃ)さんの食事も一生懸命(いっしょうけんめい)取り組んでいるからこそ,私(わたし)達にできる最高の食事を提供(ていきょう)できているのだと思っています。
目指していた大学に進学することが難(むずか)しくなり,家から通える短大への進学を考えた時に,初めて「栄養士」という資格(しかく)があることを知りました。母が作る食事は何でも手作りでおいしかったせいか,もともと食べることがすごく好きだったので,「食事に関わる仕事がいいな」と思い,栄養士の資格(しかく)の取れる短大に進学しました。短大に入ってから栄養士はいろいろな職場(しょくば)で働くことができるということを知ったのですが,赤ちゃんからお年寄(としよ)りまでいろいろな年代の人と接(せっ)することのできる病院で働きたいと思うようになりました。いろんな人と話をすることで学ぶことも多いので,病院で働くことができて本当に良かったと思っています。
子どもの頃(ころ)は,家の中で本を読むことも好きでしたが,外で遊ぶことの方が好きでした。けいどろ(警察(けいさつ)と泥棒(どろぼう)に分かれて行う鬼(おに)ごっこのようなもの)や陣取(じんど)り,泥(どろ)だんご投げなど,いろいろな遊びをしましたが,中でも忘(わす)れられないのが「ままごと遊び」で,雑草(ざっそう)をすり潰(つぶ)して本物そっくりの化粧水(けしょうすい)を作ったり,泥(どろ)パックと言って泥(どろ)を顔に塗(ぬ)ったりもしていたんですよ。
辛(つら)いことや大変なことにぶつかった時,それを乗(の)り越(こ)えるためにはとても頑張(がんば)らなければなりません。でも,逃(に)げずに立ち向かうことができた時,その経験(けいけん)は自分の財産(ざいさん)になります。逃(に)げたり,休んだりして,その場しのぎになってしまうよりも,今立ち向かえば次に来る大変なことにも対応(たいおう)できるようになるし,自分のできることも多くなるので,辛(つら)くても逃(に)げたらもったいないと思います。生きている以上,たくさんつらいことはありますが,皆(みな)さんにもいろいろなことから逃(に)げないで立ち向かって欲(ほ)しいと思います。