仕事人

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東京都に関連のある仕事人
1994年 生まれ 出身地 島根県
難聴うさぎなんちょううさぎ
子供の頃の夢: 芸能人(女優、モデル)
クラブ活動(中学校): 美術部
仕事内容
日本一のフォロワー数を持つじょせいちょうかくしょうがいしゃインフルエンサーとして、多様なしょうがいを持つ人々ののうせいを発信し希望と勇気をとどけている。起業家としては、かくしんてきこつでんどう集音器の開発やメタバース事業にたずさわり、聞こえの問題をかいしょうすることで、人々が人生をよりゆたかに楽しめる世界を目指す。しょうがいに関するにんしきを変え、すべての人にとってほうせつ的な社会をじつげんすることをこころざしている。
自己紹介
こうしんおうせいてんしんらんまん。何にでもチャレンジするせいかくです。世界一周をするほど旅行が好きで、とくはピアノとゲームです。おさないころから母に「何でもできるよ」と言われながら育ったこともあり、前向きでこわいもの知らずです。

※このページに書いてある内容は取材日(2023年12月07日)時点のものです

インフルエンサーとして、ちょうかくしょうがいをはじめとするしょうがいのじょうほうを発信するほか、会社けいえい

インフルエンサーとして、聴覚障がいをはじめとする障がいの情報を発信するほか、会社経営も

わたしは、インフルエンサー、会社けいえいしゃ、タレントとして活動している「なんちょううさぎ」です。SNSそうフォロワー数は60万人以上です。生まれつきほとんど耳が聞こえず、ちょうをつけて生活をしています。
インフルエンサーとして使っているSNSは主に、YouTubeやTikTok、Instagram、X(きゅうTwitter)で、わたし自身のちょうかくしょうがいをはじめ、さまざまなしょうがいについてのじょうほうを発信しています。わたししょうがいについて発信するのは、しょうがいがある人にもない人にも、しょうがいのことを知ってもらい、しょうがいのある人が不自由を感じない世界をつくりたいからです。また、「しょうがいによってこんなんなことがあっても、あきらめずにチャレンジすれば、さまざまなことができる」と多くの人に伝えたいという思いもあります。
発信の中でも動画メディアのはんきょうが大きく、TikTokでよく配信している「ダンス動画」にはたくさんの「いいね」がつきます。ほかに、さまざまなしょうがいのある人との「コラボ動画」もこうひょうです。コラボをしてもらうのは、ちょうかくしょうがいだけでなく、ダウンしょうこつけいせいぜんしょう、トゥレットしょうなど、さまざまなしょうがいのある人たちです。いっしょしょうがいについて語り合ったり、散歩や小旅行に出かけたりなど、和気あいあいと話をするわたしたちの姿すがたを動画にして配信しています。
こういったつながりから、しょうがいのあるインフルエンサー仲間がえ、もっと仲間のことを知ってもらいたいと思うようになりました。そこで、「かぶしきがいしゃASTOLTIA(アストルティア)」という会社をせつりつし、ぎょうからのPRあんけんなど、インフルエンサーの仕事を仲間にしょうかいする事業を始めました。

会話するときは、口の動きから言葉を読み取る「どくしんじゅつ」を使う

会話するときは、口の動きから言葉を読み取る「読唇術」を使う

わたしは「せんてんせいちょうかくしょうがい3級・かんおんせいなんちょう」というしんだんを受けていて、ちょうを外すとほとんど聞こえないレベルです。ちょうをつけると音は聞こえますが、かなりゆがんで聞こえます。また、聞きたい音としゅうの音が一気に耳に入ってくるので、聞きたいことを選べない感覚もあります。そこで、わたしは人と会って会話をするときには、相手の口の動きを見て言葉を読み取る「どくしんじゅつ」を使っています。話すときには口の動きがよく見えるように、口の動きが見える正面でしゃべってもらうほか、マイクから入力した会話のないようを文字にしてひょうしてくれるスマートフォンのアプリ「UDトーク」を使うこともあります。
わたしは発音やイントネーションもかんぺきではありません。今でも「イントネーションがちがうよ」などとてきを受けることもありますが、教えてもらえたことにかんしゃし、そのたびに正しい言い方をかくにんしてしゅうせいするようにしています。
ちょうかくしょうがいがある人はみんな手話ができると思われがちですが、実はちょうかくしょうがい者の中でもにちじょうてきに手話を使って生活している人は全体の15%足らずと言われています。わたしも、大人になってから手話を覚えました。世界一周旅行中、船上で行われる手話教室で学んだほか、お客さまの9わりちょうかくしょうがいしゃの「手話ラウンジ」で働き、手話でコミュニケーションを取りながら少しずつれていったのです。
にちじょう生活では、ちょうしゃちょうかくしょうがいのない人)であるマネージャーにフォローしてもらうことも多くあります。マネージャーは手話もできるので、わたしじょうきょうあくしきれていない場合は手話で教えてくれるほか、わたしも人前で言いづらいことをマネージャーに手話で伝えたりしています。

SNSは、「耳が聞こえない」ことをわたしらしさをアピールする場所

SNSは、「耳が聞こえない」ことを武器に私らしさをアピールする場所

わたしが動画配信を始めたのは、2018年です。遊びで、友人といっしょに音楽に合わせておどっている動画をTikTokにアップしたのが最初です。最初はなんちょうだということを公表していなかったのですが、あるとき思いつきで、ハッシュタグに「なんちょう」と入力してみました。すると、「耳が聞こえないのにおどれるなんて、すごい!」というおうえんコメントとともに、わたしとう稿こうがまたたく間にかくさんされました。いわゆる“バズる”というげんしょうです。こうしたはんきょうわたしはやりがいを感じ、「バズるためにはだれかのではなく、人とちがうことをしなければ」と思うようになりました。このとき、「自分らしさって何だろう」と考えて気づいたのが、「わたしは、ちょうかくしょうがいというユニークなとくせいを持っている。これがわたしせいだ」ということでした。
それこうわたしらしさを伝えるために、ダンス動画、しょうがいのある人とのコラボ動画、にちじょう生活のほうこく動画など、さまざまな動画をとう稿こうしています。動画を作るときに心がけているのは、自分がちょうしゃだったらどのような動画にきょうを持つかを考えて、ないようこうせいを決めていくことです。どんなかくが見たいのか、ハイライトになるシーンは、どの順番で入れると引き立つのか。そのコツはだれかに習ったわけではなく、ほかの人の動画をたくさん見ているうちにだんだんつかめてきました。
また、「さいせい回数をばしたい」とだけ考えて動画を作ると、かえってさいせい回数がびなかったりもします。人に見せることをしきして大げさにふるまうのではなく、あくまでわたしの自然体の姿すがたを見せる。そして何よりも、「自分が楽しむ!」という気持ちをわすれずに動画を作っています。
さいせい回数がびると、インフルエンサーとしてのしゅうえきも上がります。しゅうえきのルールはSNSによってことなりますが、どのSNSもフォロワー数や動画のさいせい回数などによってこうこくしゅうにゅうが決まります。ですから、つねに多くの人に注目される動画をとう稿こうし続けることが大切なのです。

しょうがいのある人たちとコラボ。多くの人にしょうがいのことを知ってほしい

障がいのある人たちとコラボ。多くの人に障がいのことを知ってほしい

動画のないようを考えるときに特にしきしているのは、「わたしにしかできない・語れないかくかどうか」です。例えば、TikTokではダンス動画をたくさん配信しています。「耳が聞こえないのにおどれるの?」と思われるかもしれませんが、リズムとテンポがわかれば、なんちょうわたしでもダンスを楽しくおどることができるのです。
また、YouTubeでは、しょうがいのある人たちとのコラボ動画をよくかくしています。どのコラボ動画もわたしからちょくせつダイレクトメッセージを送ってしゅつえんらいをし、事前打ち合わせはせずにほぼぶっつけ本番でさつえいしています。「どのようなしょうがいがあるのか」は必ず聞くと決めていますが、そのほかわたしもんに思っていることは、本番中にストレートにしつもんしています。その人の話をしきのないじょうたいで聞き、わたしのリアルなはんのういっしょとどけたいからです。
アイドルグループ「めん女子」のメンバーで、によって下半身ずいになったがりともかさんも、おたがいのSNSにしゅつえんし合うコラボ仲間です。わたしのYouTubeでは、「ドライブスルーで月見バーガーを買ってみる」など、さまざまなかくきょうえんしています。
かたみみなんちょう」のしょうがいがあるみゆさんも、わたしから声をかけてコラボ仲間になった一人です。生まれつき両耳が聞こえないわたしは最初、「かたみみだけでも聞こえるなんて、正直、うらやましいな」と思っていました。ですが、かたみみなんちょうならではのつらさや、どんなことにこまるのかは、体験したことがないのでわたしにはわかりません。動画では、かたみみは聞こえるけれど会話するときには相手の口の動きから会話のないようかいしていることや、コロナでマスクをする生活になったときは相手の口の動きが見えず、何度も聞き直すことが多くなったことなどを話してくれました。また、動画の後半では、わたしが開発に関わった、こつでんどう方式の集音器をためしてもらいました。このとき、かのじょは生まれて初めて左耳で音を聞くことができ、「聞こえた!」と言って泣き出すほど感動していました。

「好きなこと」をやってみることが大事。続けていけば、いつか結果になる

「好きなこと」をやってみることが大事。続けていけば、いつか結果になる

今では動画のかくからさつえいへんしゅうとう稿こうまで、当たり前のようにやっていますが、初めからスムーズにできたわけではありません。パソコンの使い方が全くわからず、キーボードの配列を覚えるところからどくがくで勉強しました。最初は覚えることが多くて苦労しましたが、何事もやってみて、それを続けていかないと身につきません。
続けるためのコツは、「好きなことをする」ことです。わたしは中学生のころから「YouTuberになりたい」というゆめがあり、配信の仕事は自分で選んでちょうせんしています。人と話すことも大好きです。言葉をかいしきれなかったり、発音もかんぺきでなかったりしますが、それでも相手とコミュニケーションをする努力をいっしょうけんめいしてきました。
また、「世界一周旅行がしたい」という小さいころからのゆめかなえるために、一人で「ピースボート」というクルーズ船に乗ったことがあります。クラウドファンディングや仕事できんを集め、1000人ほどの乗客といっしょに世界各国をめぐり、たくさんの人と出会うことができました。このときに、手話を使うちょうかくしょうがいしゃの方と仲よくなれたのがうれしくて、乗船中に手話の勉強も始めました。
ただし、いっしょうけんめいやっても、失敗することもあります。はんてきなコメントを受け取って落ちこむこともあります。そんなときにはマネージャーに話して、笑い飛ばしてもらいます。1日で暗い気持ちがおさまらなくても、2、3日したら気持ちがわって、また前向きになれるものです。気持ちが新しくなると、次に作る動画のアイデアも生まれやすいので、悪いことがあっても最終的にはプラスになると思っています。

あんで使いやすいこつでんどう集音器の開発に協力

安価で使いやすい骨伝導集音器の開発に協力

かぶしきがいしゃASTOLTIA」は、2021年に代表とりしまりやくわたしと、とりしまりやくけんマネージャーの2名でせつりつしました。起業したことにより、外部のぎょうと協働した大きなプロジェクトに関われるようになりました。
例えば、YouTubeのコラボ動画でみゆさんにためしてもらった、とっきょしゅとくこつでんどう方式のイヤホンがた集音器「Vibone nezu HYPER(バイボーン ネズ ハイパー)」は、おんきょう機器メーカーから声をかけてもらって開発に協力したせいひんです。開発にたずさわろうと思ったのは、安くて使いやすいせいひんがあるといいなと思ったからです。開発中は試作品のテストを何度もかえしています。「そもそも聞こえないので、最大音量を上げてほしい」「自然でクリアなおんしつで聞こえるようにしてほしい」「ぼうすい加工にしてほしい」「おしゃれなデザインにしてほしい」など、わたしもたくさんの意見を言いました。完成後にはちょうかいちょうかくしょうがいのある方々にもためしていただきましたが、音が聞こえることに感動して泣いてしまう方もいらっしゃったほどです。せいひんした後も改良は続けていて、げんざいは三代目の機器のリリースに向けてじゅんをしています(※2024年3月げんざい、リリースに向けてクラウドファンディングをじっ中)。
ほかにも、デジタル関連のぎょうとパートナーシップけいやくを結び、ちょうかくしょうがいがあってもなくても関係なく楽しめるメタバース空間「SILENT WORLD(サイレントワールド)」をこうちくするプロジェクトも進行中です。

発信することの大事さを強くしきしたのは、作文の県大会で最優秀賞に選ばれたけいけんから

発信することの大事さを強く意識したのは、作文の県大会で最優秀賞に選ばれた経験から

ちょうかくしょうがいのじょうほうを発信することの大切さに気づいたのは、中学3年生のときのことでした。学校の宿題でじんけん作文を書くことになったのですが、いざ書き始めようと思っても何を書いていいのか最初は全く思いつきませんでした。こまてていましたが、「自分のことなら書けるな」と思い直してなんちょうについて書き始めたところ、最後まですらすら書くことができたのです。この作文をていしゅつした後、先生から「あなたの作文がクラスの中で一番よかった。ぜひ、全校生徒の前で読んでほしい」と言われました。
全校生徒の前で発表してと言われても自信も勇気もないし、耳のことで注目を浴びることに不安もあり、まどったのを覚えています。ですが、「発表したらどうなるのかな?」「何かが変わるかもしれない」というこうしんいてきて、発表をすることにしました。
発表後、クラスメイトから「作文、とてもよかったよ」と声をかけてもらえたばかりか、作文コンクールの島根県大会で最優秀賞に選ばれて、とてもおどろきました。新聞にもけいさいされ、「感動しました」という手紙をいただいたこともあります。自分の書いた作文が多くの人にとどき、心を動かしたということを知って「がんって発信してよかった」「発信ってとても力があるものなんだ」と思いました。同時に、「耳が聞こえなくてもいいんだ」ということに気づいて、「耳が聞こえない自分を、わたし自身が受け入れよう」「もっともっと発信しよう」と思うようになったのです。

げいのうかいあこがれ、オーディションのおう用紙を何度も書いた中学時代

芸能界に憧れ、オーディションの応募用紙を何度も書いた中学時代

わたしは小さいころからこうしんおうせいで、特にピアノをくことが大好きでした。「耳が聞こえないのにピアノ?」と思う人もいるかもしれませんが、ピアノの先生をしていた母から「音が聞こえなくてもがくが読めればピアノはけるようになるよ」と教えてもらっていたこともあり、「耳が聞こえないから音楽ができない」と思ったことは一度もありません。じっさい、ピアノにれているうちにいつの間にかけるようになって、学校で合唱をするときにはピアノばんそうたんとうしていました。
また、小学校5年生ぐらいからげいのうかいやテレビの仕事にあこがれ始めました。中学生のころにはティーンをよく買っていて、かんまつについている読者モデルのオーディションおう用紙を何度も書いては、両親に「これを送ってほしい」とお願いしていました。たんにんの先生にも「げいのうかいに入りたいです」と話していて、オーディションおう用紙を学校に持って行き、おう用紙にる写真を先生に選んでもらったこともあります。結局、何度受けてもごうかくすることはなかったのですが、ゆめをあきらめたことは一度もありませんでした。
高校のときには「げいのうかいに入りたい」以外にも、「社長になりたい」「YouTuberになりたい」「世界一周旅行をしたい」「本をしゅっぱんしたい」などしょうらいゆめがさらにえていきました。こういったものをいちらんにした「しょうらいやりたいことリスト」も作って、学校の先生たちに配っていたんですよ。今思えば、それらは全てかなっているんです!だから、「発信すれば、願いがかなう」「まずは、発信することが大事」だと、わたしは信じています。

人生の主役はあなた自身。自分自身の一番の味方になって、自分のゆめおうえんして

人生の主役はあなた自身。自分自身の一番の味方になって、自分の夢を応援して

だれにでもコンプレックスはあります。わたしの場合は特に、なんちょうであることをずかしいと思ったり、かくそうとしたりしていたこともありました。でも、このしょうがいを受け入れ、発信することで、なんちょうわたしになりました。
だからみなさんにも、自分のコンプレックスを好きになって、自分のいいところをどんどん口に出して言ってほしいと思います。口にするときに気をつけてほしいのは、人がいやな気持ちになることは言わないこと。そして、かなってうれしいことだけを積極的に言葉にすることです。
例えば、「わたしはかわいくない」というくちぐせがある人は、「わたしはかわいくない」ことがかなってしまいます。だから、「わたしはかわいい」と言ってみるのです。最初はていこうがあるかもしれませんが、口にすることで、だんだんそう思えるようになります。かわいい自分を受け入れることができたら、それが自信になり、不思議と周りからも「かわいいね」と言われることがえていきます。
なんちょうをはじめ、しょうがいがある人も、わたしが小さいころからそうであったように、たくさんのゆめを持ち、それらのゆめをあきらめないでください。多くの周りの声が気になってしまうのは仕方ないけれど、一度失敗しただけで、ゆめをあきらめてしまうのは本当にもったいない!たくさんのゆめをノートに書いてみたり、ちょっと勇気を出して家族や仲のよい友達に言ってみたりするのもいいと思います。しょうがいは、せいの一つ。人生の主役は、あなた自身です。あなたのゆめおうえんするために、まずはあなた自身があなたの一番の味方でいてあげてくださいね。

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取材・原稿作成:秋山 由香(Playce)・佐藤 理子(Playce)・東京書籍株式会社/撮影:厚地 健太郎