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神奈川県に関連のある仕事人
1974年 生まれ 出身地 東京都
吉川よしかわ 太郎たろう
子供の頃の夢: 大工の棟梁
クラブ活動(中学校): バスケットボール部
仕事内容
これまでにないだいなリニア中央しんかんせんのプロジェクトを、を出し、あせをかき、周りをきこみ、形にしていく。
自己紹介
こうしんおうせいで、きょうを持ったことは何でもためすため、失敗は多いです。それでも少ない成功に満足しています。休日に子どもとごせる時間が楽しみです。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2023年06月19日)時点のものです

リニア中央しんかんせんで日本の3大都市を結ぶ

リニア中央新幹線で日本の3大都市を結ぶ

わたしは、東京――大阪間を結ぶ日本の交通のだいどうみゃく、東海道しんかんせんうんえいする会社であるJR東海で、土木たんとうとしてきんしています。駅や橋、トンネル、線路などをつくる仕事です。
げんざいわたしは、新たに開通予定のリニア中央しんかんせんていしゃえきである神奈川県駅(しょう。以下同じ)と駅にりんせつするトンネルをつくる工事のせきにんしゃとして、こうぞうぶつせっけいをしたり、工事を進めるための計画を立てたり、進行の管理をしたりしています。この工事は、2027年の完成を目指して進めています。
リニア中央しんかんせんは、今ある東海道しんかんせんとはちがうルートで東京――大阪間を結びます。なぜこれが必要かというと、ろうきゅうともなしゅうぜんだいさいがいによって、東海道しんかんせんが使えなくなってしまうリスクがあるからです。東海道しんかんせんは開業からはんせい以上っていて、しょうらいてきだいしゅうぜんが必要となった場合、しんかんせんを止めて工事をするのうせいもあります。またおおしんの発生などでせつこわれてしんかんせんが走れなくなると、どうできない方がおおぜい、出てきてしまいます。リニア中央しんかんせんはそうしたときのそなえとして、だいどうみゃくそうをバックアップするやくわりを果たします。
また、ちょうでんどうしゃくの力を利用して、じょうしながらちょうこうそくで走るリニア中央しんかんせんは、時速285キロメートルが最高速度の東海道しんかんせんよりずっと速く、時速500キロメートルで走ります。東京―間を最速40分、東京―大阪間を最速67分で結ぶ予定です。走行けん内で生活する約6,600万人の人々が1時間ちょっとで都市間をどうできるようになるため、人の行き来がえて、けいざいがより活発になることが期待されます。

工事を安全にこうりつよく進めるために

工事を安全に効率よく進めるために

駅やトンネルなどのこうぞうぶつをつくる工事には、「計画」「せっけい」「こうちく」という3つの手順が必要です。
最初は「計画」です。安全に、こうりつよく工事をするための方法やスケジュールを考えます。工事予定の土地のしつや地下水位などの自然かんきょうや、すでにある道路や駅、水道、電気などのインフラせつとのきょなど、周辺のじょうきょうをふまえて、計画を立てます。神奈川県駅のけんせつ予定地は10ヘクタールにおよぶ神奈川県立相原高等学校のあとを中心に行っていますが、人や車の通りも建物も多い橋本駅前(神奈川県相模さがみはら)にあるため、地下に駅をつくることになりました。深さ約30mの地下に、全長約680m、はば約50mの駅ができます。
工事スペースをかくするために、すでにあるせつの場所を見直すこともあります。今回のけんせつ予定地には、もともと電力を送るてっとうふくすう、立っていましたが、工事を安全に進めるためには電線のルートをどうしてもらう必要がありました。そこで電力がいしゃや土地を管理する自治体と数年かけてじっくりと話し合って、てっとうの位置をへんこうしてもらいました。このように、自治体やインフラの管理者、周辺にお住まいの方々など、さまざまな関係者との話し合いを重ねていき、ご協力いただきながら、工事の時期や場所などの計画を調整します。
続いて「せっけい」です。工事スペースなどのじょうけんが決まると、こうぞうぶつせっけいが決まっていきます。鉄道の場合は、トンネルや橋だけでなく電気や信号、線路、えきしゃなどのせつも必要です。建物のこうぞうだけでなく、電気や機械のせつの位置はこれでだいじょうなのか、りょかくじっさいにご利用されるときの動線はどうなるのかなどをけんしょうしながら、決めていきます。
そしてこうぞうこう方法のほうこうせいが決まると、いよいよ「こうちく」にあたる、工事に入ります。リニア中央しんかんせんの工事はだいで長期になることから、周辺いきの方々にはご不便をおかけしてしまいます。そのため工事のあんぜんせいかんきょうへのはいりょいきとのれんけいは何より大切に考えて進めています。

前例のないけんせつプロジェクトに立ちはだかる課題の数々

前例のない規模の建設プロジェクトに立ちはだかる課題の数々

リニア中央しんかんせんの計画はこれまでにないほどだいなプロジェクトなので、さまざまな課題にぶつかります。つう、地下に駅をつくる場合、地下水がしんにゅうしたり周りのばんくずれたりするのをふせぐため、地面を深くくっさくする前に、こうざい等でかべを地中につくります。これを「め」といいます。しかし神奈川県駅は面積がとても広く、深いため、めをこうちくする作業だけでもぼうだいな時間がかかるうえ、リニア中央しんかんせんけんせつ工事が各所で同時に行われており、めをこうちくする作業に必要な重機の数も足りませんでした。
そこでわたしたちはこの土地のしつや地下水位、高校あとの広い工事ヤードに注目し、くっさく方法を考え直しました。けんせつ予定地の一帯は、地下水が深いところを流れていますし、ひょうそうたいせきしている関東ロームそう(長い年月でざんばいねばづよくなったそう)はとても固くて安定しています。そのためめを使わずにちょくせつひょうそう部分をって、その下のれきそうすなや小石が多いそう)にだけめをつくることで、十分にあんぜんせいかくできるとはんだんしました。こうすることで、くっさくをスピーディーに行えますし、高校あととそれ以外でめのこうちく時期がずれることで、必要な重機の数も少なくすることができました。
また駅ホームのせっけいでも大きな課題がありました。つうじょうせっけいをすると、ホームをささえる柱がだいぶ太くなり、りょかくどうするスペースがせまくなることが分かったのです。そこでみんなでを出し合ったところ、車両がつうするさいふうあつからホームを守るためのかべ(ホームへき)をあつくすれば、柱のやくわりねることができて、柱をなくすことができ、その分、どうのためのスペースができる、という案が出ました。でもそうすると配線などほかのせつにもえいきょうが出るため、できればやり方を変えたくないという意見も出てきます。そこからホームへきあつくした場合の課題を一つずつかくにんし、どうすればかいけつするのかろんを重ねて、最終的に、ホームへきあつくするこうぞうへんこうすることになりました。全員がなっとくするところまでろんをするのは体力がいることですが、みんなと協力して課題がクリアできたときは大きな達成感があります。

安心と安全をとどけるために、いきの方々との対話が重要

安心と安全を届けるために、地域の方々との対話が重要

わたしがこの仕事にりょくを感じるのは、鉄道は多くの方にご利用いただくものだからです。中でもリニア中央しんかんせんは3大都市をつなぎ、日本をかっせいするための重要なプロジェクトだと感じているので、そうしたプロジェクトに関われていることにほこりを持っています。一方で、神奈川県駅の工事は長期間にわたりますし、だいに地面をくっさくすることから、いき住民の方からご心配の声をいただくことも多く、そうした声におこたえできるよう、説明会や、げんの見学会、イベント等の、いきとのれんけいを強化する取り組みをたびたび行っています。そういう機会に「開通を楽しみにしている」という声をいただくと、世の中から必要とされていることをやっていると感じますし、もっとがんろうという気持ちになります。先日、ごこうれいの方から「工事が進んでいるのが見えて、しょうらいここにリニア中央しんかんせんの駅ができたらどんな街になるのかそうぞうするだけで楽しい」という声もいただきました。鉄道の駅はその土地にずっと根ざすものなので、いきの方といっしょに育てていくことがとても大切です。いきの方に受け入れていただいていることを感じたとき、この仕事のやりがいを強く感じます。

「自分は正しい」ではなく、広いてんを持って考えることが大事

「自分は正しい」ではなく、広い視点を持って考えることが大事

リニア中央しんかんせんけんせつたずさわることは大変やりがいがある反面、「自分がやっていることは正しいんだ」とせまくなってしまうと、周りに気が配れず、失敗してしまうけんもあります。こう思うようになったのは、以前、しょぞくしていたこうほうの仕事での失敗がきっかけです。こうほうではマスコミ各社に対して会社の事業についてお知らせしますが、その伝え方が一方的になっていたせいでおしかりを受けたことがありました。それから反省して、自分のをもっと広げるためにいろいろな方と話したり、じょうほうれたりして、第三者の立場で客観的に物事をとらえることをしきするようになりました。工事を進める中でも、自分の考えをまとめるさいには部下にも上司にも役員(会社のえらい人)にも意見を聞きにいきますし、社内だけでなくちがしょくぎょうの方からもそっちょくな意見をもらうようにしています。
また、リニア中央しんかんせんの仕事では、けいけんしたことのない課題にぶつかることが多いので、じょうしきかんれいにとらわれずにちょうせんすることが大事です。ちょうせんする中でおかしいところはしゅうせいし、どういうものがみなさんに受け入れられるのかをてっていてきに考え、ほかの人との会話を重ねながら、かいしてもらえるように努めています。

世の中の役に立つものをつくりたくて鉄道の世界へ

世の中の役に立つものをつくりたくて鉄道の世界へ

わたしの父は大工のとうりょうで、小さいころからよく父についてけんせつげんで手伝いをしたり、図面をいて木材のあまりで遊具を作ったりして遊んでいました。だからしょうらい、大工のようにものをつくる仕事をしたいという気持ちがずっとありました。それからいろいろと勉強するうちに、「世の中の役に立つものをつくりたい」という思いがし、社会インフラをつくる計画やせっけいなどの仕事を目指すようになりました。しゅうしょく活動では、鉄道がいしゃのほかに電力やガス、道路、空港などのインフラぎょうへのしゅうしょくも考えましたが、リニア中央しんかんせんの計画の話を聞いたときにぜひ関わりたいと思い、JR東海へのしゅうしょくを決めました。当時はまだリニアしんかんせんをつくることは決まっていなかったので、ゆめだったプロジェクトにこうしていま関われていることはかんがいぶかいですね。

大工の父からものづくりの楽しさを学んだ少年時代

大工の父からものづくりの楽しさを学んだ少年時代

子どものころ、大工だった父はいろいろなものをつくってくれました。カブトムシとクワガタをいくする大きな箱がほしいとお願いしたら、子ども数人が入れるくらいの大きな小屋をつくってくれ、うらやまとうぼくを小屋の中心に立ててくれたりもしました。その後、うれしくて弟と毎日虫とりに行って、結局100ぴき以上う羽目になり、世話ができずに親にしかられ、カブトムシ・クワガタを売ることまで考えたものの、それは失敗に終わりましたが……。
とにかく何でもつくってくれる父親が近くにいたので、大体のものは自分でつくれる、直せるという考えが身につきました。でも自分には少しやりすぎるところがあり、失敗もたくさんしました。高校生のときには好きだったバイクの機械部分をいじったら動かなくなってしまったこともありますし、もっと小さいころには、うらやまあなったら出てこられなくなって、父に助けてもらったこともあります。でもそんなけいけんも、関東ロームそうしゃめんあなると意外にくずれないことも分かったりしたので、失敗のけいけんはいまの仕事にも生きているのだと思います。

子どものときのけいけんは、しょうらいチャレンジするための「土台」になる

子どものときの経験は、将来チャレンジするための「土台」になる

いまけんせつ中の神奈川県駅は2027年の完成を目指しています。リニア中央しんかんせんが開通すれば、人々の行き来がもっと便利になり、今までより広いはんで交流が活発になるので、仕事のきょてんごしかたなど、ライフスタイルが大きく変わります。みなさんが大きくなったときに、わたしたちがつくったものを使ってもらうことで、よりよい世の中がじつげんすることにつながればと、期待しています。しょうらいいっしょにリニア中央しんかんせんけんせつになってくれる人、そしてリニアのじゅつを世界に広げてくれる人が出てきたら、それはうれしいですね。
子どものときにけいけんしたことや考えたこと、身につけたことは、しょうらい大人になって何かをやるときの土台になります。人にめいわくをかけるのはよくないことですが、失敗をしてもいいので、きょうがあること、ちょうせんできることにはどんどんちょうせんしてみてください。そうしてたいろいろなけいけんから新しいことをそうぞうし、明るい未来を切り開いていってほしいと思います。

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取材・原稿作成:掛谷 泉(Playce)・東京書籍株式会社