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神奈川県に関連のある仕事人
1963年 生まれ 出身地 東京都
美坂みさか 至光しこう
子供の頃の夢: 科学者・アナウンサー
クラブ活動(中学校): バドミントン部
仕事内容
かんのんさまとみなさんをつなぐはしわたし役です。「観音様のおかげです」みなさんがそんなお気持ちになれるように、法要、法話、けいだい案内、お守りはんはんばい)などを通じ、観音様などほとけさまのお心をお伝えしています。
自己紹介
人にものを伝えることやコミュニケーションがとくです。「口から先に生まれたのでは……」とからかわれたりもしますが、何事もポジティブに受け止めています。大学時代に交通で命拾いをしてから、さまざまなことに前向きにちょうせんするようになりました。
出身高校
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2024年08月29日)時点のものです

でらそうりょとして、ほとけさまとみなさんの心をつなぐ

長谷寺の僧侶として、仏様とみなさんの心をつなぐ

わたしは、神奈川県のかまくらにある長谷寺で、ほとけさまとみなさんの心をつなぐそうりょとして働いています。長谷寺には、わたしたちが今生きている現世(げんぜ)のごやくを考えてくださるじゅういちめんかんおんさつ(観音様)を中心に、にょらいぞうさつだいこくてんべんざいてんなどが祭られています。お寺にざいせきするそうりょは十数人おり、1日に4~5人のそうりょきんしています。
お寺では、観音様の心を伝えるために法話(ぶっきょうの教えにもとづいた話)をしたり、ぶっきょうの行事に取り組んだり、けいだいを案内したり、お守りのごやくを説明したりします。家内安全や開運しょうふくのためのがん、各家のせんようや、おぞうさまを建てみず(生まれ出ることができなかったおさない命)のようも行います。そうしきなど法事のれんらくを受けると、だん(寺におはかのある家)のもとに出向いてくなった方をとむらいます。
長谷寺は、40種類2500かぶのアジサイやこうようかまくらの海やまちみが一望できるちょうぼうで知られており、インバウンド(ほうにち外国人観光客)のみなさんのたいおうにも力を入れています。げんざい、外国人向けの旅行サイトで「かまくらNo.1の名所」としてしょうかいされていることもあり、長谷寺をおとずれる外国の方がぞうしました。そのためけいだいおとずれる外国の方に、英語で話しかけたり、ときにはほんやくを活用したりして、観音様やお守りなどの説明をすることもあります。
夜の特別はいかんなどの行事にも力を入れており、かまくらによる働きかけで、インバウンド客をしきした夜の行事(ナイトテーブル)を期間げんていじっしています。ライトアップされた夜のけいだいかんのんどうでのライブコンサート、かまくらにあるイタリアンの名店の食事を特別に楽しむことができるイベントです。

朝早くからきんし、外国の方にもほとけさまの心を伝える日々

朝早くから勤務し、外国の方にも仏様の心を伝える日々

朝は7時ごろにしゅっきんし、(寺での作業服)にえてから、けいだいそうを始めます。午前8時の開門と同時にラジオのほうに合わせ当番のそうりょかねをつきます。朝のおつとめ(ちょうごんぎょう)の当番のときは、観音様の前でおきょうかんのんきょう)を読み上げます。まただいこくさまの前でおきょうだいこくてんきょう)を読むこともあります。その後、わたしはお守りはんじょ(売場)に入ることが多く、お守りのごやくや、観音様とおぞうさまのお守りのちがいなどを、お客さまに日本語や英語で説明します。水子ようをしたいという方や、がんを希望する方の受け付けをすることもあります。
お寺には毎月、ぶっきょう行事があります。観音様のえんにちである毎月18日にはかんのんせんなどをようする年2回のがん、節分には豆まき、などたくさんの行事があります。そうした行事のじゅんや実行、かたけなどをすることも、わたしたちそうりょの仕事です。
おとずれた外国の方に「Have a lovely day!(すてきな一日を!)」と英語で声をかけたり、けいだいを案内したりする機会も数多くあります。長谷寺は水子のようの寺としても知られており、ぞうどうには多くの水子ぞうならんでいます。水子ぞうを建てとむらうというがいねんのない外国の方に、自分の知っているかんたんな英語を組み合わせて水子の考え方を説明することもあります。
だんは17時、はんぼうは17時半に帰りますが、残業がある日もあり、特別なぶっきょう行事を行うときなどには午前3時ごろにしゅっすることもあります。大みそか、がんたんぼうで、じょに続き、年が明けるとその年の国家あんねいこくほうじょう、みなさんのじょさいしょうふくなどを願うしゅしょう、約6000のロウソクに火をともまんとうがんを行い、初日の出に合わせかねをつきます。

努力しても、真の英語力を身につけて仕事に生かすのは大変だと実感する

努力しても、真の英語力を身につけて仕事に生かすのは大変だと実感する

長谷寺をおとずれる外国の方々に積極的に英語で話しかけて、もっとわたしらしくお役に立ちたいと考えています。しかし力が足りず、自分にひょうげんできるはばが少ないことを、いつももどかしく感じます。だんからわたしはYouTubeなどを参考に、仕事で使えそうな英語ひょうげんをピックアップする努力を重ねています。使いたいひょうげんをまとめていちらんひょうにし、たずさえているのですが、使うべきときにとっさに自分の口から出てこないことがあり、そのときは自分にがっかりします。さまざまな英語ひょうげんを身につけて活用するのはむずかしいと実感するしゅんかんです。
このようなわたしでも、外国の方がこまっているときに、周りのスタッフからばれることがあります。わたしは多少なりとも外国の方のたいおうれており、相手が話す言葉ではなく、そのひょうじょうりからこまりごとをにんしきすることがとくです。しかし英語のリスニング力が足りず、何度話してもらってもないようを聞き取れないこともあります。そしてこまりごとに対して、英語を使いながらわたしなりのかいけつ方法をていあんしていますが、自分の伝えたいことが本当にせいかくに伝わっているのかがわかりません。その点でも歯がゆさを感じています。

自分のてんや発想を生かして、人の役に立つことができたときがうれしい

自分の視点や発想を生かして、人の役に立つことができたときがうれしい

観音様がみなさんを守ってくださっていることをお伝えできることや、そうりょとしてお伝えしたことをみなさんが本当にわかってくれたときのよろこびはかくべつです。
以前、信者さんとの会話の中で、信者さんのお母さんがにんしょうわずらっており、にちじょう生活が大変であるという話を耳にしました。ほんてきには家の中でごしているという話だったので、けんではないていのうげきあたえるために、すでに見知っているたくの庭に出てみたり、指先を使う訓練として折り紙を折ったりしてごすのはいかがですか、という話をしました。「新しいげきは、きっとプラスになると思いますよ、けがはしないように気をつけてくださいね」と伝えたところ、いいこうがあったようです。後日、その信者さんはなみだを流すほどかんげきしてお寺に来てくださって、お役に立ててよかったと心から思いました。お寺にはよく電話を通して、なやみごとのような問い合わせもきます。わたしは相手との会話の中で、相手がこまっていることを感じ取り、相手とはちがったてんや発想で課題をかいけつするような思考がとくだと思っています。少しでも人の助けになりたいので、電話のたいおうこまったときはわたしに回してほしい、と周りの人に伝えています。

自らを高め世のため人のためになることを

自らを高め世のため人のためになることを

そうりょとして、ぶっきょうせいしんでもある「」と、「世のため、人のため、地球のため」を大切にしています。
「自利利他」とは、“自分をせいじゅくさせ自ら幸せになるとともに他者を幸せにする”ことだと、わたしなりにかいしゃくしています。このせいしんは、信心深かったえいきょうもあり、子ども時代からわたしの心や行動の中心にいっかんしてそんざいしています。お守りはんの場(売場)で、お守りを買い求める外国の方にお守りの意味をえいやくした紙をわたはじめたのも、「日本に来たごえんでお守りを求めた人に、より幸せになってもらいたい、ごやくかいしたうえで大切にしてほしい」という気持ちからでした。
また、自分が法話をするときは「伝わらないと意味がない」というくらいの思いで、できるだけへいな言葉を使い、わかりやすく話します。また聞く人のねんれいそうに合わせてきょうを引く時事問題などを取り入れたり、みなさんのはんのうだいないようを変えたりすることもあります。そのようにふうすることで、ほとけさまとのきょも近づき、みなさんにごとではなく、自分のこととして伝わるように感じています。

テレビの世界からお寺へのてんしょくは「観音様のありがたいごえん」と感じた

テレビの世界からお寺への転職は「観音様のありがたいご縁」と感じた

学生時代から、物事をうまく伝えることが自分のとく分野だと実感していたため、大学卒業後は、テレビ局でほうどう番組をせいさくする仕事にきました。けんさいがいが起きると、発生直後にげんに向かい、くなった方もいるだろうという場所にさいがいけんえいたいとともに入ることもありました。人の生死を間近で見るような仕事を数多くしてきたのです。
ほうどうの仕事をめて東京からかまくらしてきた後、人づてに長谷寺のこうほうしょくしょうかいされました。神様やほとけさまに多くのいのりをささげてきたじょさんえいきょうを受けて、わたしにはすでにしんこうの道への下地が形成されていました。このお話がんだとき、観音様のごえんとおほとけさまが人々の苦しみをのぞき、楽しみをあたえる)をいただけるよい話であると感じ、お寺へのてんしょくをかなえることができました。
ほうどうの仕事では、テレビを通して世の出来事を伝えてきましたが、お寺では、観音様のお言葉を相手にちょくせつ伝えられて、そのはんのうをダイレクトに聞くことができます。そのちょくせつの手ごたえこそ自分のほっしているものだとも思いました。お寺で働くうちに“勉強してそうりょになったら、お伝えできることのはばが広がる”と感じたので、お寺の最高せきにんしゃであるじゅうしょくに申し出て、働きながら2年間しゅぎょうしました。がくやおきょうを唱える練習、24時間ねんぶつにょらいの前で、24時間ねんぶつを唱え続けるしゅぎょう)などの機会をて、とくじゅかい(出家してそうとなること)しました。

じょさんしんぶつに手を合わせる姿すがたえいきょうを受ける

助産師の祖母が神仏に手を合わせる姿に影響を受ける

小学生のころは、いろいろなことにきょうを持ち、物知りだったためか、“さか先生”とばれていました。わたしはグループのリーダー的な立ち位置で、遠くから友達がわたしの家に自転車で集まって、かんりや馬乗り、ドッジボールなどを楽しんでいました。中学・高校時代は、海外の短波放送を夜中に聞くことや、アマチュア無線にちゅうになり、高校ではバイクを乗り回すことに熱中しました。しかし大学生のとき、バイクの運転中に交通にあって、命拾いをしたのです。もともとは考えてばかりで実行力が足りないせいかくだったのですが、後は命の大切さを実感するようになり、前向きな気持ちでいろいろなことにちょうせんするようになりました。
げんざいそうりょとして観音様にお仕えしているのは、高校生時代までをいっしょらしたえいきょうが大きいと感じています。わたしの地元で生まれた子どもは、みなじょさんであるに取り上げられたといってもごんではないほど、は有名でした。当時住んでいたたくには産院がへいせつされており、は朝からばんまで出産に立ち合う合間をぬって、毎日、神様やほとけさまに手を合わせていました。その姿すがたを見ているうちに、自分も自然としんぶつに手を合わせるような人間に成長しました。

みなさんののうせいげんだい! 自分のとく分野を生かしおんがえしをしてほしい

みなさんの可能性は無限大! 自分の得意分野を生かし恩返しをしてほしい

一人一人、自分のとくとすることが必ずあると思います。いろいろなことにちょうせんして、その中で自分の強みを見つけてしきし、どんどんばす努力をしてもらいたいです。その努力は、人生において必ずプラスになります。自分の強みを生かして、人に何かをやってあげられることが自信になるし、みんなといるときの自分のやくわりを、おのずとにんしきしていけます。わたしの場合は、小学校、中学校と放送委員会に入り、給食の時間に流行の音楽やじょうほうを流すことを通じて、人にものを伝える力を自然とばしていきました。
自分の強みは、人に負けないくらいの強みでなくてもかまいません。人はスーパーマンになる必要はなく、一から十まで全部できなくてもよいと思います。
でも、自分の強みを自覚することは大切です。わかい人はみんなのうせいほうです。今はさまざまな人にお世話になりながら、どんなことにもちょうせんしてみてください。大人になったら、両親や、自分がお世話になった人や社会に対して、自分の強みを生かしたおんがえしができるような人になってくださいね。

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取材・原稿作成:星野 祐子(Playce)・東京書籍株式会社/協力:横浜銀行