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社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

神奈川県に関連のある仕事人
1975年 生まれ 出身地 神奈川県
うちゅうかいはつぎじゅつしゃ けんきゅうしゃ宇宙開発技術者,研究者
津田つだ 雄一ゆういち
子供の頃の夢: パイロット
クラブ活動(中学校): バスケットボール部
仕事内容
無人宇宙探査機を開発・運用する
自己紹介
これだと思ったものに、こだわる、頑固がんこになる。こだわらないものには、いい加減かげん。以前は休みの日に、趣味しゅみとして飛行機の操縦そうじゅうなどをしていたが、最近は子どもとごすことが多い。

※このページに書いてある内容は取材日(2014年01月17日)時点のものです

無人の宇宙うちゅう探査機たんさきをつくる仕事

無人の宇宙探査機をつくる仕事

わたし神奈川かながわ県にあるJAXAジャクサ相模原さがみはらキャンパスで,無人の宇宙うちゅう探査機たんさきをつくる仕事をしています。探査機たんさきは,まずどこに飛ばして何をさせるのかを決め,それらを実現じつげんするための設計せっけいをして,作り上げていきます。ロケットにせて宇宙うちゅうへ打ち上げられた後は,管制かんせいセンターから宇宙うちゅう空間を航行する探査機たんさき操作そうさ(運用)を行います。わたしはこれまで小惑星わくせい探査機たんさきはやぶさの運用,M-Vミューファイブロケット(衛星えいせい打ち上げ用ロケット)の開発~運用,IKAROSイカロス(太陽の力で推進すいしんする宇宙うちゅうヨット)の開発~運用を行ってきました。今は,はやぶさ2ツーの開発に取り組んでいます。JAXAジャクサ職員しょくいんは研究することも仕事のひとつですので,わたし専門せんもんである,無人探査機たんさき軌道きどうと運動に関する研究もつねに行っています。

地球から探査機たんさきに電波がとどく時間に出勤しゅっきん

地球から探査機に電波が届く時間に出勤

今は,はやぶさ2ツーの開発が仕事のほとんどをめていますので,朝8時半くらいから製造せいぞうや試験を行っています。仕事が終わる時間は日によってちがいます。試験が長引くこともありますし,トラブルがあれば対応たいおうします。打ち上げられた後は,勤務きんむ時間はさらに不規則ふきそくになります。探査機たんさき操作そうさは,地球から電波がとどく時にしか行えないからです。また,出張しゅっちょうが多いこともこの仕事の特徴とくちょうのひとつですね。打ち上げの時には鹿児島かごしまの種子島や内之浦うちのうらに行きますし,NASAナサ(アメリカ航空宇宙うちゅう局)やCNESクネス(フランス国立宇宙うちゅう研究センター),DLRディーエルアール(ドイツ航空宇宙うちゅうセンター)に行くこともあります。

同じ目標を追いかけ続けることのむずかしさ

同じ目標を追いかけ続けることのむずかしさ

プロジェクトには,たくさんの人と長い年月,莫大ばくだいなお金がかかります。はやぶさ2ツープロジェクトの場合,専任せんにんメンバーは20名程度ていどですが,兼任けんにんメンバー,JAXAジャクサ職員しょくいん以外のさまざまな分野のスペシャリストの方々かたがた,またアメリカ,ドイツ,フランス,オーストラリアの研究者もいます。所属しょぞくも,国籍こくせきも,専門せんもん分野もちがう,500名をえるスペシャリストたちの大集団しゅうだんです。全員が同じ目線で取り組めるようにまとめていくのは大変です。まず必要なのは知識ちしき。自分の専門せんもん分野以外も判断はんだんができるように,日々ひび日々ひび勉強です。そしてコミュニケーション。多くの人の意見を取り入れることで,ひとりよがりではない設計せっけいに仕上がります。それでも判断はんだんまよう場合,わたしはその意見が,シンプルなロジックで組み立てられているかどうかで判断はんだんします。むずかしい言葉やいくつものステップをまないと説明できないものは,あまりうまくいかないことが多いです。説明に4つのステップが必要なものよりも,2つのステップでむもの。むずかしい言葉を使わないと説明できないものよりも,だれでも分かるシンプルな言葉で説明ができるもの。それを判断はんだん基準きじゅんにしています。

より新しいことを。よりおもしろいことを。

より新しいことを。よりおもしろいことを。

プロジェクトが失敗しない簡単かんたんな方法ってなんだと思いますか?過去かこに成功した方法をり返すことです。でも新しい発見は得られませんよね。それにやる気も起きません。プロジェクトは10年以上かかるものが多いので,同じことのり返しでは,関わるメンバーがずっと高い意欲いよくたもち続けることがむずかしくなります。だからわたしは「これはおもしろそうだ!」と思ってもらえる仕掛しかけを,できるだけむようにしています。はやぶさ2ツーの場合,小惑星わくせいのサンプルを採集さいしゅうする時にクレーターができますが,はやぶさにはなかったカメラを取り付けることで,クレーターができる様子を撮影さつえいできるようにしました。撮影さつえいすることが決まったら,地質ちしつ学者から「だったらこんなデータが取れたらおもしろいんじゃないか」という意見が出てきたりもして,新しい挑戦ちょうせんの輪が広がっています。実現じつげんできるものも,できないものもありますが,こういうり返しで,プロジェクトはより有意義ゆういぎなものになっていくと思うのです。

探査機たんさきは,自分の子どものようなもの

探査機は,自分の子どものようなもの

ゼロから作り上げたものが,人間が行ったことのない場所へ行き,やったことがないことを成しげたとき,本当にやっていてよかったと思います。探査機たんさきは自分の子どものようなものです。第一子は大学時代に関わったCubeSatキューブサット。第二子はIKAROSイカロス,第三子ははやぶさ2ツーですね。はやぶさ2ツーは2010年12月に開発がスタートし,2014年の冬に打ち上げて,2020年12月に地球にもどってくる予定です。ちょうど東京でオリンピックが開かれる年ですね。自分の分身がこれからどんな形に仕上がり,宇宙うちゅうでどんな旅をしてくるのか,とても楽しみです。

小学生のころ,スペースシャトルの発射台はっしゃだいを見た

小学生の頃,スペースシャトルの発射台を見た

小学校のころ,フロリダのスペースシャトルの発射台はっしゃだいを見に行ったことが,宇宙うちゅう興味きょうみを持つきっかけになったと思います。その大きさにびっくりし,どうやって作るんだろう,どうやったら打ちあがるんだろう,と思いました。その後,ハレー彗星すいせいが地球に接近せっきんした時に世界中で探査機たんさきが打ち上げられましたが,そのうちの2機が日本の,それも自分が住んでいる相模原さがみはらでつくったものと聞いて,宇宙うちゅうをすごく身近に感じたのを覚えています。でも実は,高校生まではパイロットになりたかったんです。でも進路を考えるうちに,操縦そうじゅうするよりも操縦そうじゅうするものそのものをつくってみたい,できれば宇宙うちゅうにまでいくようなものをつくってみたいと思い,大学は宇宙うちゅう工学を専攻せんこうしました。

宇宙うちゅうに関する仕事をするには「宇宙うちゅう×○○」が大切

宇宙に関する仕事をするには「宇宙×○○」が大切

私自身わたしじしん宇宙うちゅうのものづくりがしたくて,宇宙うちゅう工学を学びました。でも,宇宙うちゅうに関する仕事って,宇宙うちゅうのことを勉強していないとけないと思うかもしれませんが,実はちがいます。宇宙うちゅう開発にはあらゆる分野の知識ちしきが必要になります。実際じっさい,プロジェクトには宇宙うちゅう以外のスペシャリストが大勢おおぜい関わっていて,かれらがいなければ成り立ちません。まずは宇宙うちゅう以外に興味きょうみがある分野は何なのかを考えて,めてみるとよいと思います。それが地質ちしつだったら,惑星わくせい地質ちしつ研究で宇宙うちゅうに関わることができるかもしれません。医学だったら,宇宙うちゅう空間が人間の身体にあたえる影響えいきょうといった分野で関わることができるかもしれませんね。

興味きょうみをもったことは,とことんめてみよう

興味をもったことは,とことん突き詰めてみよう

趣味しゅみでもスポーツでも,勉強でもなんでもよいです。興味きょうみを持ったことはとことんやってみてください。そこから,少しずつ自分のやりたいことや得意なことが見えてきます。大人になってから自分が得意だと思うことは,結局,子どものころ興味きょうみがあったこと,楽しいと思って,とことんやったことの集合体だと思うのです。仕事でも生活でも何かにまよった時,とことんやった経験けいけんがあるとそれが自分の道しるべとなります。宇宙うちゅう興味きょうみのあるみなさんはぜひ,はやぶさ2ツーのことを調べてみてください。もしかしたら,はやぶさ2ツーもどってくる2020年の冬には,今このページを見ているみなさんの中から,はやぶさ2ツーに関わる仕事をしたり,次の宇宙うちゅう開発に関わる仕事をする人が出てくるかもしれませんね。

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私のおすすめ本

司馬 遼太郎
歴史が好きになった一冊。父が持っていたので、全8巻を、8巻から読み始め、1巻まで順にさかのぼり、その後、1巻から8巻までを普通の順序で読み直した。日本人全体のエネルギーや高揚感、チームワークで難局を乗り切っていく様子、登場人物の個々人のキャラクターなどがよく描かれていて、面白かった。
ラジオや電子オルガンの電子回路を工作する本。小学生の頃に、父に教えてもらいながら、よく工作や改造をした。

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取材・原稿作成:横浜銀行、(c)学校ネット株式会社