社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2007年08月13日)時点のものです
私(わたし)たちの仕事を簡単(かんたん)に言うと,料理を作ってお客様に提供(ていきょう)する仕事です。小売業だと商品を買ってそのまま売ってしまうんですが,外食ビジネスというのは,食材を仕入れてから加工して商品を作り,接客(せっきゃく)サービスを付けて販売(はんばい)するという製造(せいぞう)販売業(はんばいぎょう)です。最近,手作りじゃないお店が増(ふ)えてきてますが,うちはすべて手作りにこだわってやってます。5,6年ほど前,ある東京のフランス料理のレストランに行ったときに,すごくおいしい料理だったんですけど,シェフに「どこの野菜を使ってるんですか?」と聞いたところ,「愛媛(えひめ)です。愛媛(えひめ)の物は最高です!」とフランス料理のトップシェフが言ってました。それを聞いて,今まで自分たちが地元のことを見ないで,外ばかり見ていたことに気付きました。そこで,できる限(かぎ)り地元の良い食材を使おうということで,「出来るだけ地産地消につとめ,愛媛(えひめ)のレストランを目指します」が,お店の方針(ほうしん)の一つになってます。
この仕事は,朝出勤(しゅっきん)したら開店業務(ぎょうむ)を行います。店の中はホールとキッチンとに分かれるんですけど,ホール業務(ぎょうむ)の人たちは,お店の中を掃除(そうじ)して,お客様が快適(かいてき)に過(す)ごすことができる環境(かんきょう)を整えます。キッチンの方は,その日のランチ食材の準備(じゅんび)をしたり,料理の下準備(したじゅんび)をします。それからランチタイムに入っていきますけど,ランチタイムはお客さんが多いです。3時から5時半くらいの時間帯はアイドルタイムっていうんですけど,この時間帯は少し暇(ひま)ができます。その間に休憩(きゅうけい)をとったり夜の仕込(しこ)みをして,6時半くらいからのディナータイムが始まります。お客さんのピークは7時半くらいですね。10時くらいから片付(かたづ)けして閉店(へいてん)業務(ぎょうむ)をします。全部で14時間くらいの営業(えいぎょう)時間になりますが,何人かでシフトを組んで交代で仕事をしています。
現在(げんざい),店舗(てんぽ)は3つ所有してますが,3店舗(てんぽ)とも使用している食材は同じレベルの物で,ある程度(ていど)良い品質(ひんしつ)の物を使ってます。しかし,3店舗(てんぽ)とも料理はすべて手作りで行っているので,どうしても味が違(ちが)ってきてしまいます。でも,あえて僕(ぼく)は,作る人の良さを活かすために,3店舗(てんぽ)とも同じ味になることはないと言ってます。また,その日の作る人の体調などによって味に若干(じゃっかん)のバラツキが出てきてしまうこともあって,お客様からご指摘(してき)を受けたりすることもあります。他の飲食店だと,料理もソースも一括(いっかつ)で作って味を合わせる手間暇(てまひま)を省いたりするんですけど,うちの場合は,シェフ,従業員(じゅうぎょういん),アルバイト全員が勉強会を行ったり外部の研修(けんしゅう)に参加したりして,人材育成に力を入れて,手作りにこだわってます。
僕(ぼく)はいつも,飲食業は世界で一番人を幸せにする仕事だと言ってます。おいしいものを食べると幸せになりますよね。人って多くて1日3回,少ない人で2回,最も少ない人で1回は食事をするわけですけど,人が一生のうちで食事をする回数は限(かぎ)られてます。でも絶対(ぜったい)に食事をしないと人間は生きられない。その中の何回かを,彼女(かのじょ)との初めてのデートだとか,家族の記念日だとか,いろんな理由でうちのお店で食べようかと思って来てくれるんです。しかも,この仕事は他の仕事と違(ちが)って,お客様が食べた後に「おいしい!」と感じるかどうか,結果がすぐに出てしまうので,お客様のためにも最高の物を出そうと思ってます。
うちの会社で大切にしているのは,自分らしさを大切にするってことです。会社の価値観(かちかん)を理解(りかい)して行動することも重要だけど,ロボットみたいに同じ物を作っていくんじゃなくて,スタッフそれぞれが自分の長所を発揮(はっき)してくれればなと思ってます。笑顔のいい人は素敵(すてき)な笑顔を出してくれればいいし,笑顔が苦手な人は,無理に笑顔を出さなくてもいいと思うんですね。仕事が丁寧(ていねい)にできるんだったら丁寧(ていねい)にやってくれればいいし,お客様の事によく気付けるんだったら気付いてくれればいいし。もし元気が無い人がいれば,誰(だれ)かがフォローすればいいですよね。長所はどんどん発揮(はっき)してもらって,短所はみんなで補(おぎな)い合(あ)っていければいいと思ってます。
僕(ぼく)は近畿(きんき)大学の理工学部に行ってたんですけど,二十歳(はたち)の時に双子(ふたご)の兄が亡(な)くなって,当時は僕(ぼく)が跡(あと)を継(つ)ぐ予定は無かったんですけど,跡取(あとと)りがいないということで急遽(きゅうきょ)この業界に入りました。でも,当時は前向きな気持ちが全く無かったです。商売人の家で生まれたこともあって,飲食業が嫌(いや)で嫌(いや)でたまらなかったです。世の中で一番嫌(きら)いな職業(しょくぎょう)が飲食業と言ってましたから。でも,今は大好きですよ。大学を卒業してフランス料理の道に入って,当時は大卒のコックなんていなかったから,結構(けっこう)いじめられました。でも,大学で応援団(おうえんだん)もやってたし,負けん気も強かったので,嫌(きら)いでも必死になって料理を覚えていって,3年くらい経(た)ってふと気付いてみたら,「あっ,おもしろいやん!」と思い始めたんですよ。僕(ぼく)は元々(もともと),工業デザイナーの仕事がしたかったんですけど,料理って材料も味も色使いも大事だし,よく考えてみたら同じなんですね。かなりおもしろい仕事だなって思い始めました。どんな仕事でも一生懸命(いっしょうけんめい)にやったらおもしろくなるんだなって思いました。
子ども時代は勉強をあまりしませんでした。昔,知能(ちのう)指数を測(はか)るテストがあったんですけど,先生からよくできて誉(ほ)められたんですよ。「俺(おれ)って頭いいんだ!」って思ったんですけど,その瞬間(しゅんかん)勉強しなくなりました(笑)。それから小中高校と学校で勉強したという記憶(きおく)は無いですね。大体授業(じゅぎょう)中は窓(まど)から外を見て「ええ景色やな」とか「車が走ってる!」って考えてました。成績(せいせき)はまあまあだったんですけど,ぼーっとしている子どもでした。でも,考えて物を作ったりすることは好きでした。プラモデルをたくさん作ってましたし,写生大会のときに神社に行って,みんなは神社や森の絵を描(か)いてる中で,僕(ぼく)だけ車の絵を描(か)いてました。先生には「なんでやねん!」って言われましたけど。。。
まずは自分の好きなことをしなくちゃいけないなと思います。人間はどこか神様からもらった才能(さいのう)があると思うんですけど,第一段階(だんかい)は好きか嫌(きら)いかというところで決まると思います。たまたま僕(ぼく)は嫌(きら)いの方から入っていったんですけど,人生嫌(いや)なことをしなくちゃいけないこともあるけど,一生懸命(いっしょうけんめい)やってみたら,好きになったり才能(さいのう)があるなと思ってみたりもします。第二段階(だんかい)としては,目の前に来たことを一生懸命(いっしょうけんめい)やってみるということが大事だなと思います。そこから夢(ゆめ)が開けていくんだと思います。