仕事人

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静岡県に関連のある仕事人
1981年 生まれ 出身地 千葉県

玉井(たまい) 礼子(れいこ)
子供の頃の夢: 中学校教師
クラブ活動(中学校): テニス部
仕事内容
後世に残る,より良い土木構こう造ぞう物ぶつをつくるため,現げん場ばをまとめる。
自己紹介
根気強く一つのことに向き合えるのが強みですが,一方でマイペースな面や頑がん固こな面もあります。今は静しず岡おかで仕事をしているので,休みの日は小学1年生の娘むすめと,静しず岡おかのおでかけスポットに出かけて楽しんでいます。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2018年11月01日)時点のものです

高速道路の高こう架か橋きょうをつくるのが今の仕事

高速道路の高架橋をつくるのが今の仕事

私わたしは株かぶ式しき会がい社しゃ大おお林ばやし組ぐみという建けん設せつ会社で,現げん在ざい建けん設せつ中の新東名高速道路(神か奈な川がわ県けんから愛あい知ち県けんへ至いたる高速道路)の一部となる高こう架か橋きょうをつくる現げん場ばの現げん場ば監かん督とくをしています。
私わたしたちが今,つくっているのは,静しず岡おか県けんの駿すん東とう郡ぐん小お山やま町ちょうにある「中島高こう架か橋きょう」という長さ500メートルほどの高こう架か橋きょうです。高速道路をはじめとする土木構こう造ぞう物ぶつは,“インフラ”と呼よばれる,社会や生活を支ささえる基き盤ばんの一つで,国や都道府県,高速道路会社などが発注者となります。
今,私わたしが担たん当とうしている高こう架か橋きょうの工事は,主に3つの段だん階かいに分かれています。まずは,「基き礎そ」と呼よばれる,柱の土台になる部分の工事です。高速道路を支ささえる大きな柱ですから,基き礎そ部分に掘ほる穴あなも,直径が最大で12メートルもの大きさになります。この穴あなに鉄てっ筋きんを入れてコンクリートを流し,「基き礎そ杭くい」をつくります。次にこの基き礎そから,「橋きょう脚きゃく」という高さ8~46メートルの柱を立ち上げます。そして,橋きょう脚きゃくが完成したら,実じっ際さいに道路が通る「橋げた」を左右に伸のばしていきます。隣となりの橋きょう脚きゃくからも伸のばしていって,お互たがいをつないでいきます。そうやって,500メートルを7本の橋きょう脚きゃくで支ささえる橋を完成させます。

さまざまな部分で現げん場ばを管理・監かん督とくする

さまざまな部分で現場を管理・監督する

現げん場ば監かん督とくの主な仕事は,現げん場ばの作業が円えん滑かつに進むよう,さまざまな管理をすることです。「5つの管理」という言葉があります。作業員さんの安全を守る「安全管理」,計画の日にっ程ていどおりに現げん場ばが進行しているか確かく認にんしながら,作業工こう程ていを立てていく「工こう程てい管理」,コンクリートや鉄てっ筋きんなどの材料の品ひん質しつをチェックする「品ひん質しつ管理」,でき上がりのものが規き定ていどおりのサイズでできるよう管理する「出で来き形がた管理」,予算内で工事を進められるよう管理する「原げん価か管理」。こうした管理が現げん場ば監かん督とくの主な仕事です。
今,私わたしのいる現げん場ば事じ務む所しょには18人の現げん場ば監かん督とくがいて,それぞれが自分の担たん当とうするエリアや役やく割わりを持っています。

発注者や協力会社とやりとりしながら工事を進める

発注者や協力会社とやりとりしながら工事を進める

今の現げん場ばでは,朝7時45分の朝礼から一日がスタートします。全員でラジオ体たい操そうをして体をほぐしてから,その日の作業予定と安全のポイントをチーム全員で確かく認にんし,危き険けんの芽をつぶします。現げん場ばは体力を使うので,健康管理も欠かせません。特に夏は熱ねっ中ちゅう症しょうのリスクが高いので,朝の段だん階かいで作業員さんたちの体調に異い変へんがないか,顔を見ながらしっかり確かく認にんします。
日中は,事じ務む所しょで協力会社へ連れん絡らくをしたり,書類を作ったり,現げん場ばに出て,作業が安全に行われているかをチェックしたりします。工事を進めるための計画書を策さく定ていし,それを元に現げん場ばで作業をしてもらうための図面を作ったり,現げん地ちを測そく量りょうして,詳しょう細さいの計画に反はん映えいさせたりもします。また,実じっ際さいにコンクリートを流したり,重機で土を掘ほったりという作業をしてもらう協力会社を選んで契けい約やくするのも,現げん場ば監かん督とくの仕事です。
現げん場ば監かん督とくの仕事には大きく2種類あり,現げん場ばに出て作業員さんに指し示じをする役やく割わりと,発注者とやり取りしながら,スケジュールやお金を管理していく役やく割わりがあります。私わたしは,現げん在ざいは後者の立場なので,比ひ較かく的てきデスクワークが多いです。若わか手てのうちは現げん場ばのことを知るためにも,現げん場ばでの管理業ぎょう務むがメインとなり,作業員さんたちに作業を指し示じしながら,いろいろなことを教えてもらいました。

日本全国,さらには海外の建けん設せつ現げん場ばにも行く可か能のう性せいがある

日本全国,さらには海外の建設現場にも行く可能性がある

土木工事は長期間にわたることが多く,工事がスタートしてから完成するまで,必ずしも同じ現げん場ばにいられるとは限かぎりません。基き本ほん的てきに,工事が進むにつれて,現げん場ば事じ務む所しょにいる人員は変化していきます。最初は少人数でスタートし,工事がピークの時期には現げん場ば監かん督とくの人員は増ふえます。完成が近づくとそんなに多くの人員は必要なくなります。そのため,私わたしたち現げん場ば監かん督とくは,完成を待たずに次の現げん場ばに移い動どうする,ということもよくあります。
また,日本全国,ときには海外の現げん場ばにも行く可か能のう性せいがあります。私わたし自身,最初の現げん場ばは京都でした。今は静しず岡おか県けんの現げん場ばに来て1年ほど経たちましたが,いつまた別の現げん場ばに行くかもわかりません。
生活する場所を変えなくてはいけないのは大変ですが,それでもやはり現げん場ばは魅み力りょく的てきです。就しゅう職しょくしてから3つの現げん場ばを経けい験けんし,その後はしばらく東京本社の設せっ計けい部ぶで働いていました。その間に結けっ婚こん・出産を経けい験けんし,子どもが小さいうちは時間的拘こう束そくが長い現げん場ば勤きん務むは諦あきらめていましたが,また「現げん場ばに出たい!」と思うようになりました。会社と話し合い,希望を叶かなえてもらって,1年前からこの現げん場ばに赴ふ任にんしています。

自然相手の工事は不ふ測そくの事じ態たいだらけ

自然相手の工事は不測の事態だらけ

土木工事は,自然を相手にする仕事です。天候や天てん災さいが,工事の進み具合に大きく関わってきます。例えば2018年は台風が多く,その都度,夜も現げん場ばに待機して,現げん場ばに異い常じょうがないか確かく認にんしていました。台風でなくても,雨や風の状じょう況きょう次し第だいでは,危き険けんな作業はできません。現げん在ざいの現げん場ばは富ふ士じ山さんが近いことから,強い風が吹ふくことも多いんです。風速が強ければ,クレーンは使用できません。このように,自然条じょう件けんで作業が制せい限げんされてしまうことが多々あります。冬になると,水道が凍こおって出なくなってしまったり,重機のエンジンが凍こおって動かなくなってしまったりということも起こるので,対たい策さくが必要になります。
また,外から見えない地中部分は,掘ほってみないと何が起きるかわかりません。事前に地中を掘ほってどんな地ち質しつか調べていますが,調ちょう査さで掘ほったところからちょっと離はなれると大きな石にぶつかることもあります。硬かたい石がゴロゴロしている地じ盤ばんだと,数センチ掘ほり進すすめるのに2~3時間かかることもあります。予よ測そくしていない場所から地下水が出ることもあり,地中に関しては,いつも不ふ測そくの事じ態たいだらけです。そんな状じょう況きょうでも,工期を遅おくらせないようにしなくてはいけない。そのリスク管理は難むずかしいですね。

共通のゴールに向かう一体感が好き

共通のゴールに向かう一体感が好き

「風景が変わっていくのを間近で見られる」のは,この仕事の大きな魅み力りょくだと思っています。山だったところが削けずられ,道ができ,橋ができていく,といったように,風景が毎日変わり,同じ風景が1日もないんです。変化した景色を見て,工事を主しゅ導どうしている私わたしたちでも,思わず「すごい!」と感じることがあります。
また,現げん場ばにはいろいろな立場の人が関わります。私わたしは現げん場ばを管理する立場として,協力会社の作業員さんや職しょく人にんさんたちと一いっ緒しょに仕事をします。それぞれの現げん場ばには「構こう造ぞう物ぶつを完成させる」という,共通のゴールがあります。そのゴールに向かって,全員が同じ方向を向いて動いて,長い時間をかけてゴールしたら解かい散さんする。いわば一いち期ご一いち会えのプロジェクトチームですが,この一体感がすごく好きなんです。
自分が工事に関わった橋が開通して,車が走っているのを見ると,感無量ですね。実じっ際さいに車に乗って通ると,ものの数秒のあっという間のことですが,橋の全景を見られる地点があれば,そこから眺ながめて「私わたしたちがつくったこの橋も,この風景になじんでいくんだな」と思う,そういう瞬しゅん間かんはとてもうれしいです。

楽しく仕事ができるように,下地を作る

楽しく仕事ができるように,下地を作る

私わたしたち現げん場ば監かん督とくには,発注者と現げん場ばの作業員さんや職しょく人にんさんたちとの間に入る,橋はし渡わたし的な役やく割わりもあります。現げん場ばでは日々,不ふ測そくの事じ態たいが起こります。天候が悪く作業ができない,地中を掘ほったら水が出てきてしまった……そういうときに「じゃあこういう解かい決けつをしよう」という技ぎ術じゅつ的てきな方法を提てい案あんするのは私わたしたちですが,「なぜその方法をとるのか」を発注者に説明する義ぎ務むもあります。そこで「こういう理由があったので,この方法に変へん更こうをしました」と,根こん拠きょをもって発注者に説明するのも私わたしたちの役目です。
日々の仕事の中では「楽しくやる」ことを心がけています。みんなが仕事をしやすい環かん境きょうを整えて,現げん場ばをうまく進めていくのが私わたしたちの役やく割わりですが,その中で自分も楽しむし,周りにも楽しんでもらう。楽しく仕事ができるように下地を作るのが私わたしの仕事だと思っています。
現げん場ば監かん督とくというのは人を動かす立場ですが,同じ現げん場ばにいても立場が違ちがえば見えているものも違ちがいます。しっかりとコミュニケーションを取り,みんながちゃんと納なっ得とくして,気持ちよく作業できるように,きちんと説明をします。一いっ緒しょに苦労することになっても,作業員さんや職しょく人にんさんたちに,また別の現げん場ばで「あいつがあそこの現げん場ばで苦労しているなら,助けに行ってやるか」と思ってもらえるような人間関係を作っていきたいと思っています。現げん場ばで過すごした日々が,思い返すと楽しく感じられるようにしたいですね。

歴史に残るものをつくれるというロマン

歴史に残るものをつくれるというロマン

もともと子どものころから,橋などの大きなものを見るのが好きでした。「こんな大きなものを人がつくれるんだ。どうやってつくるんだろう」といつも思っていたんですね。また「ものづくりに携たずさわる仕事がしたい」というのは漠ばく然ぜんと思っていました。でも高校生になっていざ自分の進路を考えたとき,例えば化学薬品メーカーで化け粧しょう品ひんを作ったり,機械メーカーでロボットを作ったりするのも魅み力りょく的てきだけど,自分は大きなものをつくりたい,という思いが湧わいてきて,大学は理工学部の土木工学科に進学しました。学んでいく中で,橋やトンネルなどの土木構こう造ぞう物ぶつは,100年使えるように設せっ計けいするというところに大きなロマンを感じました。就しゅう職しょくのときには,インターンシップで,発注者である官かん公こう庁ちょうの仕事や,設せっ計けい会社の仕事も体験しましたが,やはり「ものをつくっている実感をじかに感じたい」という思いから,今の建けん設せつ会社を選びました。

興きょう味みがあることは,まずやってみる

興味があることは,まずやってみる

幼おさないころは,好こう奇き心しんが旺おう盛せいで活発な子どもでした。「頑がん固こ」「変わっている」とも言われていましたね。絵を描かいたり,ものを作ったりすることも好きで,森に毛もう布ふやダンボールを持もち込こんで秘ひ密みつ基き地ちを作っていたこともあります。高校生くらいのときは地図が好きで,よく眺ながめていました。今でも地図があればずっと眺ながめていられます。
興きょう味みがあることに対してはやらないと気が済すまないタイプで,なんでも「まずやってみて,それから考えよう」というところがあるかもしれません。ですから,わりと直感で物事を選せん択たくすることが多いです。大学では景観デザインやまちづくりを専せん門もんにする研究室に所しょ属ぞくしました。そこは,出身大学の土木工学科で初めて女じょ性せいの教きょう授じゅが赴ふ任にんして,新しん設せつされた研究室でした。そこに入ることを選んだのも,なんだか面おも白しろいことができそうだと興きょう味みをもったから,というのが理由です。そこで土木工事が地ち域いきの風景や環かん境きょうに与あたえる影えい響きょうを学んで培つちかった価か値ち観かんは,橋やトンネルなどの公共インフラをつくる今の仕事にも役立っています。
自分の選んだことが何につながるかはその後に考えればいい,まずは自分の直感を大切にしよう,という気持ちで動いてきた気がします。

好きなことを見つけるため挑ちょう戦せんしてほしい

好きなことを見つけるため挑戦してほしい

みなさんには,ぜひ,好きなものを見つけてほしいです。見つけるためにはいろいろな経けい験けんをたくさんしてほしいし,興きょう味みを持ったらなんでもチャレンジしてみてほしい。「百聞は一見にしかず」で,まずはやってみるほうがいいですよ。
私わたし自身,この業界に入るときには「男だん性せい社会で大変だよ」「女の子には体力的に厳きびしい仕事だよ」といろいろな人に言われました。みんながそう言うならそうなのかな,とも最初は思いましたが,やってみないことにはわかりません。結果的に,今の仕事は大好きですし,とてもやりがいを感じています。実じっ際さい,最初こそ現げん場ばで会う人会う人に「なんでこの仕事を選んだの?」と言われましたが,この10年ほどで女じょ性せいの現げん場ば監かん督とくも増ふえ,現げん場ばに女じょ性せい用のトイレや更こう衣い室しつが整せい備びされるなど,“現げん場ばで女じょ性せいが一いっ緒しょに働く”ことは珍めずらしいことではなくなりました。土木の世界で女じょ性せいの働く環かん境きょうがずいぶん変化した今,女じょ性せいだから苦労するというようなことは,正直あまりないんです。
だから,面おも白しろそうだなと思ったら,まずはなんでも飛びこんでみてほしいな,と思います。

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ミヒャエル・エンデ
小学校高学年のときに読んだ空想ファンタジー小説ですが,「時間とは何か」について考えさせられた記憶があります。その後,何度か読み返してたどりついた考えは,「じぶんの時間」を生きるとは,自分にとって大切なものを抱えて生きることだ,ということ。これが大人になるほど難しい。何かに迷ったとき,行きづまったときには,本当に大切なものが何かを問いかけながら「じぶんの時間」を生きていきたいと思っています。

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取材・原稿作成:東京書籍株式会社/協力:一般社団法人 日本建設業連合会,株式会社 大林組