仕事人

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石川県に関連のある仕事人
1974年 生まれ 出身地 石川県

新後() 剛()
子供の頃の夢:
クラブ活動(中学校): テニス部
仕事内容
商品棚を塗装する
自己紹介

※このページに書いてある内容は取材日(2006年06月13日)時点のものです

プラスチックでつくった器などに色を塗(ぬ)っています。

プラスチックでつくった器などに色を塗(ぬ)っています。

プラスチックを溶(と)かしてカタチを作ったものを成形樹脂(じゅし)と呼(よ)んでいますが,その成型樹脂(じゅし)に色を塗(ぬ)るのが僕(ぼく)の仕事です。身近にあるものだと学校の給食や病院の食事をのせるトレー,お椀(わん),お盆(ぼん)などです。昔はこういった器は,自然の原料から作られていました。形は木や土で作られ,表面に漆(うるし)と呼(よ)ばれる自然の木(漆(うるし)の木)の汁(しる)(樹液(じゅえき))から造(つく)られている塗料(とりょう)を塗(ぬ)っていたのです。今では木や土の代わりに石油から作られる化学製品(せいひん)(プラスチックなど)が使われることが多くなり,塗料(とりょう)も漆(うるし)からウレタンやアクリルなど化学塗料(とりょう)に変わりました。一つの色を塗(ぬ)る他に,木材の木目模様(もよう)などを色で表現(ひょうげん)する難(むずか)しい塗装(とそう)もあります。その場合は刷毛を使ってひとつひとつ手作業で塗(ぬ)っていくんです。塗装(とそう)の行程(こうてい)は製品(せいひん)によって変わりますが2回~4回は作業があります。たとえば白い塗料(とりょう)を塗(ぬ)り,乾(かわ)いたら磨(みが)きをかけます。すると磨(みが)いた部分に模様(もよう)や柄(え)を出す事ができるんです。

本物そっくりにできあがるとウレシイですね。

本物そっくりにできあがるとウレシイですね。

製品(せいひん)を作る時はお客さんから「こんな感じの物を作って」という依頼(いらい)がきます。お客さんが想像(そうぞう)した通りの風合いを出すために,当然最初は見本を作ってお客さんに確認(かくにん)してもらうんです。これまでに記憶(きおく)に残っている仕事の一つに,材木を火で焦(こ)がしたような感じを,塗装(とそう)で表現(ひょうげん)してほしいというものがありました。今までにやったことがない塗(ぬ)り方だったので「こうやれば,こういう色がでる」ということがスグには想像(そうぞう)できませんでした。その時は実際(じっさい)に焦げ目(こげめ)のついた材木を観察しながら,いろいろな塗料(とりょう)や塗(ぬ)り方を試して完成させたんです。絶対(ぜったい)にできないと思っていたので,できた時はスゴク嬉(うれ)しかったですね。

必要な時は塗料(とりょう)を自分で作る事もあります。

必要な時は塗料(とりょう)を自分で作る事もあります。

むずかしい塗装(とそう)を頼(たの)まれると最初に「できるかなぁ」という気持ちがわきますが,いろいろ試していると意外とできてしまうんです。色も「この色を塗料(とりょう)で表現(ひょうげん)するのは難(むずか)しいかなぁ」と感じても,自分であれこれと色を組み合わせて作っていくんです。ほぼ目指していた色になったところで,塗料(とりょう)を作る会社に「この色に合わせて作ってください」というお願いをします。何色をどれくらい混(ま)ぜるというような割合(わりあい)で作るというよりは,感覚や経験(けいけん)で作る事が多いかもしれません。

塗装(とそう)の仕上がりはどれも同じにします。

塗装(とそう)の仕上がりはどれも同じにします。

プラスチックの器の塗装(とそう)を100個(こ)作らなければいけない。そういう仕事の時は緊張(きんちょう)します。なぜなら,1個(こ)目に塗(ぬ)ったものと100個(こ)目に塗(ぬ)ったものに差がありすぎては,製品(せいひん)にならないからです。製品(せいひん)は1個(こ)ずつ手作業で塗(ぬ)っていますから,どうしても最初に塗(ぬ)ったものと最後に塗(ぬ)ったものが違(ちが)って見えてしまうことがあります。濃(こ)かったり薄(うす)かったり。隙間(すきま)が空いてなければいけないのに埋(う)まってしまったとか。すべてを同じ仕上がりにするのは本当に難(むずか)しいですね。だから,そういう時は見本をひとつ置いて,確(たし)かめながら作るようにしています。

機械よりも手作業のほうがエライ!

機械よりも手作業のほうがエライ!

行程(こうてい)にもよりますが,一つの塗装(とそう)にかかる時間は3分くらいです。そのあと塗料(とりょう)を乾燥(かんそう)させるので完成するまでに1個(こ)1時間くらいは掛(か)かります。機械でも作る事はできるんですが,機械では,たとえばまるでホンモノのような木目の模様(もよう)を作り出すことは難(むずか)しいのです。機械がやるとただの縞模様(しまもよう)になってしまう。微妙(びみょう)に線の太さを変えたり,少しかすれさせたり・・・と,手作業で微妙(びみょう)にバランスをとっていくことで,まるでホンモノのような木目模様(もよう)が生まれるんです。また,機械は一度スタートさせると,一気に大量に仕上げますから,途中(とちゅう)で塗(ぬ)り方の調整がしづらいんです。たとえば100個(こ)塗(ぬ)ってからやっぱり少し塗(ぬ)り方を変えたい,と思った場合,また機械に塗(ぬ)り方の指示(しじ)を出し直してから,100個(こ)全部を塗(ぬ)り直さなければいけませんよね。でも手作業だとひとつずつ自分の目で確(たし)かめながら塗(ぬ)っていきますので,途中(とちゅう)で塗(ぬ)り方の調整がしやすい。100個(こ)塗(ぬ)り直す,なんてことは無いですね。

プラスチックはスゴイんです。

プラスチックはスゴイんです。

冬のコンビニエンスストアにはレジの横に「おでん売場」ができますよね。じつは,「屋台のおでん屋さん」をイメージした,おでんを温める器(仕切りがたくさんあって,だし汁(じる)とおでんを煮込(にこ)んでおくもの)のふたと,屋台の屋根の塗装(とそう)をしたことがあるんですよ。普通(ふつう)は「おでん」を温める器のふたや,屋台の屋根には,桐(きり)という木材が使われるのですが,コンビニの店内でそれを使うと湯気や熱で桐(きり)が曲がったり反ったりします。でも,高温に強いプラスチックだと温度が120度でも曲がらないんです。そこでコンビにではプラスチックを使うことが決まり,次に見た目の雰囲気(ふんいき)を本物の桐(きり)に近づけるという事になったんです。桐(きり)そっくりに塗(ぬ)ろうとしても,塗料(とりょう)の混ぜ合(まぜあ)わせ方次第で黄色味が多かったり,赤味が多かったりという違(ちが)いが出るので2,3種類の見本を出し,さらに,ベタっと塗(ぬ)るのと,サっと塗(ぬ)るのでも違(ちが)いがあるので,刷毛のサンプルも見せました。

仕事の進め方は自分で決めます。

仕事の進め方は自分で決めます。

僕(ぼく)の仕事は朝6時前にスタートするんです。今日はこんな流れで作業をしようと決めてから仕事をします。忙(いそが)しい時は夜中の1時,2時まで働く事もありますが,自分の仕事は何もかも自分のペースで決めます。仕事の途中(とちゅう)に1時間だけ外出をしたら,その分仕事の終わる時間を長くするとか。製品(せいひん)を完成させる期日は絶対(ぜったい)に守ります。11月の半ばからクリスマスまではとにかく忙(いそが)しいです。僕(ぼく)はお盆(ぼん)を1日300~400個(こ)は塗(ぬ)っていますが,お椀(わん)を1日1000個(こ)も仕上げる人もいるそうです。

地元以外で自分の作品を見た時に感動。

地元以外で自分の作品を見た時に感動。

仕事をしていてよかったと思うのは柄(え)や色が綺麗(きれい)にできた時。それと,外食した時やスーパーマーケットへ買い物に行った時とか。特に外で自分の作ったものと出会った時は嬉(うれ)しいですね。以前にもそういう瞬間(しゅんかん)がありました。クルマ出かけた際(さい)に県外の高速道路にある飲食店に入ったのですが,そこで,自分の塗(ぬ)ったものを見つけたんです。「ここで使われていたのかぁ」という気持ちになって,感動しました。友達にも,「これは僕(ぼく)が塗(ぬ)ったんだ」って自慢(じまん)しましたよ。

小さい頃(ころ)から父親の仕事は見ていました。

小さい頃(ころ)から父親の仕事は見ていました。

僕(ぼく)の家は自営業(じえいぎょう)なので,家は父親の仕事場でもありました。小さい頃(ころ)は「ちょっと触(さわ)らせて」といっていらなくなった器に色を塗(ぬ)って遊んでいましたね。そういう頃(ころ)があったから,いま,父親と同じ仕事をしているんだと思います。友だちと遊ぶ事も大好きでした。サッカーと,ローラースケートが流行っていてローラーホッケーをして遊びました。

仕事を教えてくれているのは僕(ぼく)の父親です。

仕事を教えてくれているのは僕(ぼく)の父親です。

塗(ぬ)った時にあきらかに仕上がりが揃(そろ)ってない。そんな時は苦労します。おそらく手の使い方の加減(かげん)だと思いますが。その理由や疑問(ぎもん)を,その場で解決(かいけつ)しながら,やり直さないといけないんですが,それはやはり経験(けいけん)がないとできないですよね。そういう時は父親に何回も聞いて教えてもらいます。父親はこの仕事の大先輩(せんぱい)ですから。僕(ぼく)はまだ10年しか経験(けいけん)していませんが,おそらく父親や周りの先輩(せんぱい)は30年以上の経験(けいけん)を積んでいるはずです。木目の感じを塗装(とそう)で表現(ひょうげん)しようとしても,まだまだ父親にはかないません。でも,僕(ぼく)が仕事を始めて3年目ぐらいに,父親が塗(ぬ)ったものを見本に塗(ぬ)ってみた事があるんですが,同じようにやっているつもりでも,なぜかできなくて。そこで,自分なりの考え方で塗(ぬ)ってみたんです。そうしたら,その時に父親が「それでいいと」いってくれました。なんだか,父親から離(はな)れて一人前になれたかなという気がしました。

自分が好きだと思っている仕事だから夢中(むちゅう)になれます。

自分が好きだと思っている仕事だから夢中(むちゅう)になれます。

いま仕事では,いろいろな塗(ぬ)り方を研究しているところです。他の人が塗(ぬ)ったものを見て「これはどんな塗(ぬ)り方をしたんだ」っていうことを考えたり。やはり,仕事でも遊びでも好きなことをしたほうがいいですね。ひとつのことを深く追求した方が楽しいし,仕事も長くやっていると,いろいろな楽しさに出会えます。やはり,なんでもやり続けないと。楽しいと感じられるまでがんばるのが大事です。

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取材・原稿作成:(c)学校ネット株式会社(足利)