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神奈川県に関連のある仕事人
1965年 生まれ 出身地 東京都

山村(やまむら) 一誠(いっせい)
子供の頃の夢: 天文学者
クラブ活動(中学校): 写真部
仕事内容
人工衛えい星せいを用いた天文観かん測そくデータの解かい析せきなどを行う。
自己紹介
次から次へといろいろ手を出す,せっかちな性せい格かくです。休みの日は5歳さいの子どもの相手をして,近所の公園で遊んだり出かけたりしています。

※このページに書いてある内容は取材日(2017年10月04日)時点のものです

赤外線人工衛えい星せい「あかり」が集めたデータを解かい析せきし,提てい供きょうする

赤外線人工衛星「あかり」が集めたデータを解析し,提供する

私わたしは,JAXAの宇う宙ちゅう科学研究所に所しょ属ぞくしている天文学者です。太陽のような星がどのように年を取って一生を終えるかを研究したり,2006年に打ち上げた赤外線天文衛えい星せい「あかり」のデータを解かい析せきして,世界中の天文学者が使えるように提てい供きょうする仕事をしています。
宇う宙ちゅう科学研究所では,人工衛えい星せいによる天文観かん測そくや,探たん査さ機きによる太たい陽よう系けい探たん査さを行っていますが,私わたし自身は赤外線天文衛えい星せい「あかり」のプロジェクトに携たずさわりました。衛えい星せいの運用中は,毎日数回,衛えい星せいと通信して,次の観かん測そくの計画を送信したり,観かん測そくしたデータを受信したりということを行いました。「あかり」が任にん務むを終えて運用を終しゅう了りょうした後は,「あかり」が送ってきたデータを解かい析せきし整理することで,データの内ない容ようがすぐに分かってすぐに研究に使えるような形にして,世界中の研究者たちに提てい供きょうしています。送られてきたデータは,そのままでは研究に使いづらい形なので,こうしたことをしているんです。
また,私わたし自身の研究としては,年老いて大きくふくらみ赤くなった恒こう星せいである「赤せき色しょく巨きょ星せい」という種類の星の性せい質しつを調べています。私わたしたちがふだん見ている太陽も,50億年後にはこの赤せき色しょく巨きょ星せいになるはずなので,太陽の50億年後の姿すがたを研究しているともいえますね。

データの整理を進めながら,自分の研究も

データの整理を進めながら,自分の研究も

宇う宙ちゅう科学研究所には,衛えい星せいごとにプロジェクトチームがあり,それぞれに何人ものスタッフがいます。私わたしが携たずさわっている赤外線天文衛えい星せい「あかり」は,赤外線で天体を観かん測そくするために,2006年に打ち上げられ,2011年には運用を終えて電でん源げんをオフにしました。現げん在ざいのデータ解かい析せきを進めるチームでは,正式な職しょく員いんは私わたしだけで,そのほかに5人ほどの若わか手て研究員がかかわっています。
一日の勤きん務む時間のうち,7割わり近くが「あかり」の仕事ですね。自分の担たん当とうのデータ処しょ理りや解かい析せきのほか,チームのまとめ役としての業ぎょう務むもしています。あとの時間は大学院生や若わか手て研究員の相談に乗ったり研究所の業ぎょう務むをするほか,自分の研究も進めなければいけません。
私わたしの研究分野である「赤せき色しょく巨きょ星せい」は生しょう涯がいの終わりに近づいた恒こう星せいです。恒こう星せいは中心で核かく融ゆう合ごう反はん応のうを起こして輝かがやいているのですが,その核かく融ゆう合ごうはいつか止まり,恒こう星せいとして死を迎むかえます。核かく融ゆう合ごうがいつ,どのように止まり,そのときに何が起きるのかなどを,赤外線や電波を使って調べています。「あかり」の観かん測そくでは,赤せき色しょく巨きょ星せいの表面から,星を構こう成せいしていたガスが宇う宙ちゅうに吹ふき出だされる様子や,ガスの中で作られた塵ちりの雲の様子などが高こう解かい像ぞう度どでとらえられ,研究に役立っています。

衛えい星せいがトラブルを起こすことも

衛星がトラブルを起こすことも

「あかり」の使命のひとつは,赤外線を放つ天体が宇う宙ちゅうのどこにあるのかを観かん測そくして,リストアップすることです。人間の目に感じる光(可か視し光こう)では見えない天体も,赤外線を使うことで観かん測そくすることができます。ただ,赤外線で遠くの天体の観かん測そくをするためには,望遠鏡をマイナス265度以下という,たいへんな低温まで冷やさなければいけません。液えき体たいヘリウムと冷れい凍とう機きで冷やすのですが,液えき体たいヘリウムは蒸じょう発はつしていくので,限かぎりがあります。
低温を保たもつため,望遠鏡を太陽に向けるなどはもってのほかなのですが,打ち上げ直後,「あかり」が太陽の位置を認にん識しきできなくなるというトラブルがあり,観かん測そくが始められませんでした。このときはプロジェクトチームと衛えい星せい開発メーカーみんなで考えて,「積んでいる太陽電池に一番光が当たるのはどこか」を調べて太陽の位置を把は握あくし,姿し勢せいの制せい御ぎょも最初に予定していたのとは違ちがう方法を考えて,当初の予定より6週間遅おくれ,打ち上げの約2か月後に観かん測そくを始めることができました。ようやく観かん測そくを始めることができたときには,ホッとしました。
「あかり」はその後,宇う宙ちゅうのあらゆる方向の,さまざまな天体を足かけ約4年にわたって観かん測そくしました。2011年11月に完全に停波(衛えい星せいの電でん源げんをOFFにし,電波を出さないようにすること)した「あかり」は今も宇う宙ちゅう空間にいますが,最終的には大たい気き圏けんに再さい突とつ入にゅうして,燃もえ尽つきる予定です。運用を終える際さいには,「あかり」がデブリ(宇う宙ちゅうゴミ)になってしまわないよう,軌き道どうを変へん更こうして,早く大たい気き圏けんに突とつ入にゅうするようにしました。

思わぬ発見に出会うこともある

思わぬ発見に出会うこともある

私わたしは以前から,思いがけない発見に出会う幸運に恵めぐまれています。約20年前,私わたしは,「SH」(※Sはイオウ,Hは水すい素その元げん素そ記号)という分子が宇う宙ちゅうにあることを発見したのですが,これは偶ぐう然ぜんがきっかけでした。当時,私わたしはオランダの大学で研究員をしていたのですが,日本の知り合いの教きょう授じゅが,出しゅっ張ちょうの途と中ちゅうでオランダに立たち寄よられたんです。夕食をご一いっ緒しょしているときにこの分子の話になり,「SHはまだ誰だれも見つけていない」ということだったのですが,私わたしは以前,1980年代の論ろん文ぶんにある大量のデータを調べているときに,これはSHではないかと思われる証しょう拠こをすでに見つけていたのです。まさかそんなに重要な分子だとは知らなかったので,あわてて論ろん文ぶんのデータを探さがし,帰国された教きょう授じゅにFAXしました。すると,「これは大発見だ!」ということになり,私わたしが論ろん文ぶんを書くことになりました。このときは印刷されたデータを電子データに変へん換かんすることから始めて,1か月くらいで論ろん文ぶんを書き上げて,投とう稿こうしました。思わぬ発見だったので,論ろん文ぶんを書いている時もかなり興こう奮ふんしましたね。
最近も,WISE(広こう域いき赤外線探たん査さ衛えい星せい)というアメリカの衛えい星せいが観かん測そくしたデータから,宇う宙ちゅう研けんの研究員が奇き妙みょうな天体を見つけたといって,「こういう星はあるのか?」と私わたしに聞いてきました。もし星だとしたら,これに似にたような天体があるから,それと比くらべてみてとアドバイスしたところ,ばっちり大当たり。年老いた恒こう星せいが大量のガスと塵ちりを一気に吹ふき出だしたと考えられる,貴き重ちょうな場面を発見することができたんです。私わたしの思いつきが発見につながるというのも気分のいい体験です。

使いやすいデータを提てい供きょうする

使いやすいデータを提供する

現げん在ざいの私わたしは「あかり」のデータを処しょ理り,解かい析せきして,世界中の研究者に提てい供きょうをしている立場なので,データを利用する研究者が使いやすいようなデータを作り上げようと,日々努力しています。みんなが満足してくれるには,よいデータを作ることが大切ですが,なかなか難むずかしいのも事実です。元データの持つ貴き重ちょうな情じょう報ほうを出来るだけ引き出せるよう,処しょ理り方法を工く夫ふうするなど,日々努力しています。
あとは,研究者から問い合わせがきた時に,少しおせっかいなくらいに,こちらでいろいろ調べて,なるべく早く回答してあげることも心がけています。自分がせっかちだから,ほかの人も早く回答が欲ほしいかなと思っているのです。
また,私わたしは,仕事においては,なるべく自分の手を動かすようにしています。大きい研究室があるわけではないので,何ごとも自分の手を動かし,自分で解かい析せきして,納なっ得とくして,進めたいと思っています。そうした中で発見に出会うこともありますから。

天文少年から天文学者に

天文少年から天文学者に

小学校3年生のころ,理由は覚えていないのですが,星が好きになって,望遠鏡を買ってもらってのぞいたり,星の写真を撮とったりするのが好きな天文少年になりました。そのころから将しょう来らいは天文学者になりたいと思っていたのですが,実は大学4年間は天文学ではなく,物理学を勉強していました。卒業研究は,金きん属ぞくの低温での性せい質しつを調べる実験でしたが,コンピューターで測そく定ていを半自動化して,データの取とり込こみから解かい析せきまで行うシステムを構こう築ちくしました。
けれど,なんとなく大学院は天文学科を受けてみようかなと思い,受験することにしたんです。無事,東京大の天文学専せん攻こうに合ごう格かくした直後に,ある先生から,国立天文台の野の辺べ山やま宇う宙ちゅう電波観かん測そく所しょ(世界最大級の口径を持つ電波望遠鏡がある観かん測そく所しょ)に観かん測そくに行くから来ないかと誘さそわれて,そこからそのまま,いまの研究テーマである,年老いた星の性せい質しつの研究につながっています。本当にこれはご縁えんだと思います。私わたしはどちらかというと流されるままに流れている方なので,たまたま今に至いたって天文学者になれている感じだと思っています。

繰くり返かえし本を読んでいた,人見知りの子ども時代

繰り返し本を読んでいた,人見知りの子ども時代

私わたしは子どものころ,よくしゃべる時と無口な時の波がありました。基き本ほん的てきには人見知りで,人前に立つなんてとても,という感じでした。今は人前で話す機会も多いんですけどね。小さいころはとにかくせっかちで落ち着きがないために,勉強ではケアレスミスが多く,ずいぶんテストでも損そんをしていたと思います。今もせっかちな性せい格かくに変わりはありませんが,ミスをしないよう,注意しています。
英語はNHKラジオで勉強していたおかげで成せい績せきもよかったです。天文学者は世界中の研究者とコミュニケーションをするので,英語も必ひっ須すです。今でも英語に苦手意い識しきがないのは,中学生のころの勉強が役立っているからでしょうね。中学,高校時代はインドア派はで,オーディオに凝こったり,ラジオを分ぶん解かいしたり,本もよく読んでいました。子どものころの私わたしは同じ本を何回も読むタイプで,今は一度読んだら次の本を読みたくなって,なかなか読み返したりはしないのですが,あのころは飽あきずに何度も読んでいたのを思い出します。たくさん本を読むことで,天文だけではない知ち識しきを得られたのは,今も財ざい産さんだと思っています。

自分の好きなことにのめりこむことが大切

自分の好きなことにのめりこむことが大切

理り系けいでも文ぶん系けいでも,インドア派はでもアウトドア派はでも,自分の好きなことがあれば,どんどん世界を広げていくことをおすすめしたいです。恥はずかしがらずに,どんどん自分の好きなところに出て行くことで,世界がぐんと広がります。さらに,同じようなことが好きな友だちも増ふえるかもしれません。
また,研究者になりたいという人に私わたしから言いたいのは,理科や数学の成せい績せきがトップクラスでないと研究者になれないというわけではありません。もちろん学校の勉強も大切だけれど,いかに自分の好きなことにのめりこむかという方が重要だと,私わたし自身の経けい験けんから,実感しています。
最近では,さまざまな大学などで中高校生向けのイベントをやっていたりするので,興きょう味みを持ったものがあれば,参加してみるといいですね。私わたしたちの宇う宙ちゅう科学研究所でも,「君が作る宇う宙ちゅうミッション(通つう称しょう「きみっしょん」)」という高校生向けの体験学習プログラムを,毎年夏に開かい催さいしています。これは4泊ぱく5日の合宿形式で,数人のチームを組んで自分たちの宇う宙ちゅうミッションを作り上げ,発表するものです。本ほん格かく的てきな科学研究の楽しみが味わえるので,宇う宙ちゅうが好きな人がいたら,ぜひ応おう募ぼしてみてください。

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R.P. ファインマン
ファインマンは,私が学生のころ,物理学を学ぶ学生にはある種のアイドルでした。この本はファインマンのエッセイ集の第二弾として出版されたものですが,楽しく読めるなかに「科学の本質」が語られています。理系だけではなく,自分は文系と思っている人にも読んでほしい本です。
S. Lowe,C. North
天文学や宇宙に関するさまざまな情報が,直感的でわかりやすく,かつ美しいグラフィックスで表現されています。単に天文学の知識を得るだけではなく,情報をどのように表現すべきか,という点からも興味深い本です。
梅原 猛
著者は哲学者ですが,ここで提唱されている説が正しいかどうかは別として,常識にとらわれず,新しい発想から論理を組み立ててゆく姿は,研究者のあるべき姿を示しています。

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赤外線天文衛星「あかり」
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取材・原稿作成:東京書籍株式会社/協力:横浜銀行