仕事人

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東京都に関連のある仕事人
1971年 生まれ 出身地 佐賀県

南里(なんり) 崇史(たかふみ)
子供の頃の夢: カメラマン,冒険家
クラブ活動(中学校): 水泳部
仕事内容
タンカーやコンテナ船などで乗組員を指揮し,貨物を安全で時間通りに運ぶ
自己紹介
今(いま)は陸上勤務(りくじょうきんむ)4年目で海(うみ)から離(はな)れて寂(さび)しいですが,家族(かぞく)と一緒(いっしょ)に暮(く)らせるのはうれしいです。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2016年05月25日)時点のものです

乗組員(のりくみいん)をまとめるリーダー

乗組員をまとめるリーダー

私(わたし)はこれまで,国際航海(こくさいこうかい)をする貨物船(かもつせん)の船長(せんちょう)として,世界各地(せかいかくち)で天然(てんねん)ガスや鉄鉱石(てっこうせき)などの貨物(かもつ)をお客様(きゃくさま)から預(あず)かり,日本へ届(とど)けてきました。ざっくり言(い)うと船長(せんちょう)には,三つの仕事(しごと)があります。船(ふね)を安全(あんぜん)に目的地(もくてきち)まで走(はし)らせること。貨物(かもつ)を無事(ぶじ)にお客(きゃく)さんへ受(う)け渡(わた)すこと。そして20名から30名程度(めいていど)の乗組員(のりくみいん)たちが,船内(せんない)の役割(やくわり)に従(したが)って仕事(しごと)ができているか監督(かんとく)すること。いずれの仕事(しごと)も乗組員(のりくみいん)たちが分担(ぶんたん)していますが,全(すべ)ての責任(せきにん)は船長(せんちょう)が負(お)います。例(たと)えば,ある乗組員(のりくみいん)がミスをしてしまい,船(ふね)が予定通(よていどお)り到着(とうちゃく)できなくなってしまうと,それは乗組員(のりくみいん)のミスではなく船長(せんちょう)の責任(せきにん)となります。「知(し)りませんでした」「見ていませんでした」などとは言(い)い訳(わけ)できません。乗組員(のりくみいん)が船外(せんがい)の人と仕事(しごと)の相談(そうだん)をする際(さい)にはできるだけ立ち会(あ)うことにしています。また,貨物(かもつ)の種類(しゅるい)によって積(つ)み下ろしの作業内容(さぎょうないよう)が異(こと)なりますので,その勉強(べんきょう)もたくさんしなくてはなりません。

報告業務(ほうこくぎょうむ)からお金の管理(かんり)まで

報告業務からお金の管理まで

船(ふね)では毎朝(まいあさ)6時半(じはん)に起(お)きて船内(せんない)の見回(みまわ)りをして,7時(じ)から乗組員(のりくみいん)との打(う)ち合(あ)わせに参加(さんか)します。乗組員(のりくみいん)の中には外国人(がいこくじん)もいるので,打(う)ち合(あ)わせは英語(えいご)で行(おこな)います。まず,航海士(こうかいし)(船(ふね)を動(うご)かす人),機関士(きかんし)(エンジンを管理(かんり)する人)からいろいろな報告(ほうこく)を受(う)けたあと,その日1日の仕事(しごと)の流(なが)れを確認(かくにん)します。注意点(ちゅういてん)があればそこで指示(しじ)します。また,どのような航路(こうろ)(船(ふね)が走(はし)る道(みち))で進(すす)むのかも,船長(せんちょう)が決(き)めます。そうした内容(ないよう)をまとめて,日本の本社(ほんしゃ)に報告(ほうこく)をします。船(ふね)の状態(じょうたい)や航海(こうかい)に関(かん)することなど,さまざまな報告事項(ほうこくじこう)がありますので,毎日(まいにち)とても大変(たいへん)です。午後(ごご)も書類(しょるい)の作成(さくせい)に追(お)われます。また,外国人乗組員(がいこくじんのりくみいん)に支払(しはら)う給料(きゅうりょう)や,食料(しょくりょう)を購入(こうにゅう)するときの現金(げんきん)の管理(かんり)もします。危険(きけん)な箇所(かしょ)を通過(つうか)するときや港(みなと)に入るときは,船長(せんちょう)はブリッジ(船橋(せんきょう))に立ち,安全(あんぜん)に航海(こうかい)できるよう指示(しじ)を出します。
6ヶ月くらい乗船(じょうせん)すると,次(つぎ)の3ヶ月はまるごと休暇(きゅうか)をもらうことができます。その間(かん),旅行(りょこう)に行(い)ったり,資格(しかく)を取(と)ったり,家族(かぞく)と過(す)ごしたり,さまざまなことにじっくり取(と)り組(く)むことができます。

「私(わたし)はこんなリーダー」と示(しめ)すことが必要(ひつよう)

「私はこんなリーダー」と示すことが必要

乗組員(のりくみいん)たちが気持(きも)よく働(はたら)けるよう,「私(わたし)はこういう態度(たいど)で皆(みな)さんに接(せっ)します」「報告(ほうこく)はこういう風(ふう)にしてください」など,自分(じぶん)はどんな船長(せんちょう)で,乗組員(のりくみいん)たちにはどんなルールを守(まも)ってもらいたいか伝(つた)え,それを変(か)えないことが大切(たいせつ)です。優しい人,厳(きび)しい人など,さまざまな船長(せんちょう)がいても良(よ)いのですが,乗組員(のりくみいん)たちに安心感(あんしんかん)を与(あた)えることがとても大切(たいせつ)です。日によって態度(たいど)を変(か)えると,乗組員(のりくみいん)たちはそれだけで不安(ふあん)やストレスを感(かん)じてしまいます。また,乗組員(のりくみいん)が大切(たいせつ)だと考(かんが)えていること,例(たと)えば宗教(しゅうきょう)や家族(かぞく)などを尊重(そんちょう)することもとても大切(たいせつ)です。ただし,わがままを許してはいけません。私(わたし)は優しくしたり,厳(きび)しくしたり,めりはりをつけながら,「この船長(せんちょう)との航海(こうかい)なら安心(あんしん)して仕事(しごと)に打(う)ち込(こ)める」と思(おも)ってもらい,事故(じこ)なく安全(あんぜん)に航海(こうかい)できるよう常(つね)に心(こころ)がけています。

事故(じこ)の無(な)い航海(こうかい)のために

事故の無い航海のために

船長(せんちょう)にとって最(もっと)も重要(じゅうよう)なことは,安全(あんぜん)に船(ふね)を走(はし)らせることです。最新式(さいしんしき)の船(ふね)には,安全(あんぜん)に航行(こうこう)できるよう,他(ほか)の船(ふね)の位置(いち)や速度(そくど)などが分(わ)かる機械(きかい)があります。その情報(じょうほう)も頼(たよ)りにするのですが,正確(せいかく)でないこともありますから,結局(けっきょく)は自分(じぶん)の目で見て確認(かくにん)することがとても大切(たいせつ)です。
万一(まんいち)の事態(じたい)が起(お)きた時(とき)でも,船長(せんちょう)は先頭(せんとう)に立って,どのようにその事態(じたい)に対応(たいおう)すべきか,指示(しじ)を出します。経験(けいけん)の浅(あさ)い航海士(こうかいし)にとって判断(はんだん)が難(むずか)しいようなときでも,船長(せんちょう)は冷静(れいせい)に「右に避(さ)けましょう」「ここでエンジンを停止(ていし)させましょう」などと指示(しじ)を出します。このほかにも航海中(こうかいちゅう)はいろいろなトラブルが起(お)こるものですが,乗組員(のりくみいん)みんなで知恵(ちえ)を出して乗(の)り越(こ)え,目的地(もくてきち)まで安全(あんぜん)に航海(こうかい)し,目的(もくてき)を達成(たっせい)したとき,船長(せんちょう)をしていて本当(ほんとう)によかったと思(おも)いますね。そして何(なに)より,巨大(きょだい)な船(ふね)を自分(じぶん)の指示(しじ)で動(うご)かせるということが,船長(せんちょう)という仕事(しごと)の最大(さいだい)の魅力(みりょく)です。

陸(りく)の上の船長(せんちょう)?

陸の上の船長?

私(わたし)は今(いま)の会社(かいしゃ)に入ってから最初(さいしょ)の6年間(ねんかん)は,船(ふね)に乗(の)る仕事(しごと)が中心(ちゅうしん)でした。コンテナ船(せん)に乗(の)った時(とき)はイギリスやオランダ,ドイツ,マルタ島(とう)などに立ち寄(よ)ったほか,シンガポールや香港(ほんこん)にも行(い)きました。入社前(にゅうしゃまえ)は,立ち寄(よ)った港(みなと)で長(なが)く滞在(たいざい)できると思(おも)っていましたが,実際(じっさい)に滞在(たいざい)できる時間(じかん)は短(みじか)いです。というのも,コンテナ船(せん)の貨物(かもつ)の積(つ)み下ろしは,クレーン(ガントリークレーン)を使(つか)って短時間(たんじかん)で済(す)ませ,すぐに次(つぎ)の目的地(もくてきち)に向(む)けて出発(しゅっぱつ)できるようになっているからです。一方(いっぽう)で,在来貨物船(ざいらいかもつせん)の場合(ばあい)は,人の手で一つ一つ貨物(かもつ)の積(つ)み下ろしをしてもらう港(みなと)もあります。ブルガリアのある港(みなと)で貨物(かもつ)の積(つ)み下ろしを頼(たの)んだところ,その仕事(しごと)をする人が船(ふね)の端(はし)の方(ほう)ばかりに貨物(かもつ)を積(つ)んでいってしまいました。「バランスよく積(つ)んで欲しい」とお願(ねが)いしましたが,「なぜ我々(われわれ)の仕事(しごと)に文句(もんく)を言(い)うんだ」と議論(ぎろん)になった結果(けっか),一緒(いっしょ)に積(つ)み下ろしの手順(てじゅん)を考(かんが)えるなど面白(おもしろ)い経験(けいけん)も積(つ)みました。
また,大型(おおがた)の船(ふね)には,中に忍(しの)びこんでひそかに外国(がいこく)へ行(い)こうとする密航者(みっこうしゃ)が紛(まぎ)れ込(こ)んでしまうこともあります。密航者(みっこうしゃ)を乗(の)せてしまった船(ふね)は,次(つぎ)の目的地(もくてきち)の港(みなと)に入ることができなくなることがあります。ですから,密航者(みっこうしゃ)が乗(の)っていないか確認(かくにん)する「密航者(みっこうしゃ)サーチ」も,とても大切(たいせつ)な仕事(しごと)となります。
船長(せんちょう)になれるのはだいたい34か35歳(さい)くらいです。そのころになると船(ふね)と本社(ほんしゃ)をだいたい3,4年ごとに交替(こうたい)して勤務(きんむ)します。本社(ほんしゃ)での勤務(きんむ)は陸上社員(りくじょうしゃいん)の仕事(しごと)をサポートすることです。貨物(かもつ)を運(はこ)ぶ全体像(ぜんたいぞう)が一通(ひととお)りわかっていますから,トラブルが起(お)こらないように配慮(はいりょ)したり,万一(まんいち)トラブルが起(お)きた時(とき)の対応(たいおう)もスムーズにできますので,会社(かいしゃ)として,よりきめの細(こま)かい丁寧(ていねい)なサービスをお客(きゃく)さんに提供(ていきょう)できるのです。私(わたし)も現在(げんざい)は東京(とうきょう)の本社(ほんしゃ)で勤務(きんむ)していますが,間(ま)もなく船(ふね)に乗(の)る仕事(しごと)に戻(もど)る予定(よてい)になっています。

世界(せかい)を見てみたかった

世界を見てみたかった

佐賀県(さがけん)で生まれ育(そだ)ち,子どものころは海外(かいがい)に行(い)ったこともありませんでした。テレビで海外(かいがい)の様子(ようす)を見て,憧(あこが)れるようになりました。またあるとき,近(ちか)くの港(みなと)で大きな客船(きゃくせん)を見て「格好良(かっこうよ)い」と感動(かんどう)しました。また,進路(しんろ)を選(えら)ぶ際(さい)には,「何(なに)かのプロと言(い)えるような技術(ぎじゅつ)を身(み)につけたい」という思(おも)いが重(かさ)なり,「船長(せんちょう)になりたい」と迷(まよ)いなく決(き)めました。
仕事(しごと)を始(はじ)めると,旅行(りょこう)では行(い)けないような街(まち)にも行(い)けることがとても新鮮(しんせん)でした。モロッコの小さな港(みなと)に立ち寄(よ)った際(さい),港(みなと)の近(ちか)くを歩(ある)いていると,「珍(めずら)しい人が来(き)た」という感(かん)じで地元(じもと)の人たちが接(せっ)してくれました。そこで日本のアニメグッズや工業製品(こうぎょうせいひん)が置(お)かれているのを見て、日本は凄(すご)いなと実感(じっかん)したこともありましたね。

リーダーに憧(あこが)れ,研究(けんきゅう)した

リーダーに憧れ,研究した

小学生のころは,いろいろなことを空想(くうそう)するのが好(す)きでした。校舎(こうしゃ)から山を眺(なが)めて「あの山の頂上(ちょうじょう)には何(なに)があるのだろう」「この林の奥(おく)には何(なに)があるのだろう」などと考(かんが)えを巡(めぐ)らせていました。冒険小説(ぼうけんしょうせつ)を読(よ)むことが好(す)きで,よく読(よ)んでいました。
もともと、内気(うちき)な性格(せいかく)で,得意(とくい)なことがあるわけでもなく,人を笑(わら)わせたりすることもできませんでしたので,みんなとは群(む)れず,一人でいることが多(おお)かったですね。その一方(いっぽう)で「本当(ほんとう)はリーダーやキャプテンになりたい」とも思(おも)っていたので,たくさん本を読(よ)み,本に登場(とうじょう)するさまざまなリーダーについて分析(ぶんせき)をするようになりました。どうしたら人がついてきてくれるのか,どう話(はな)せばチームがまとまるのかなどと、本を読(よ)みながら考(かんが)えました。黙(だま)っていても人がついてくるような「天才的(てんさいてき)」リーダーもいますが,私(わたし)はそういうタイプではありませんでした。もし自分(じぶん)がリーダーになるなら,言葉(ことば)や行動(こうどう)でリーダーシップを発揮(はっき)しなくてはならないとも思(おも)うようになりました。

見て,体験(たいけん)することを大切(たいせつ)にしてほしい

見て,体験することを大切にしてほしい

私(わたし)がみなさんにお伝(つた)えしたいことは,自分(じぶん)の目で確(たし)かめる,自分(じぶん)で体験(たいけん)することを大切(たいせつ)にして欲しいということです。現代(げんだい)の生活(せいかつ)では,テレビやインターネットやテレビでたくさんの情報(じょうほう)を得(え)られ,知(し)るだけなら十分(じゅうぶん)できるのかもしれません。しかし,身近(みぢか)なところからでも構(かま)いません。たとえば隣町(となりまち)に足を運(はこ)び,行(い)ったことがない公園(こうえん)や入ったことのないお店(みせ)に入ってみる。そして,自分(じぶん)の目で見てそれらの大きさや美(うつく)しさを直接肌(ちょくせつはだ)で感(かん)じましょう。
私(わたし)は大学の乗船実習(じょうせんじっしゅう)(実際(じっさい)の船(ふね)に乗(の)りながら受(う)ける授業(じゅぎょう))で,ひどく船酔(ふなよ)いをしてしまいました。「船長(せんちょう)になりたいと思(おも)っていたのに,これでは船長(せんちょう)になれないのではないか」と不安(ふあん)になりましたが,そこで昔読(むかしよ)んだ本のことを思(おも)い出しました。主人公(しゅじんこう)は船長(せんちょう)ですが,ひどく船酔(ふなよ)いしやすく,大変(たいへん)な苦労(くろう)をします。しかし,経験(けいけん)を積(つ)み,乗組員(のりくみいん)から絶大(ぜつだい)な信頼(しんらい)を受(う)けて,航海(こうかい)を何度(なんど)も成功(せいこう)させ,最後(さいご)には偉大(いだい)な船長(せんちょう)になるというストーリーでした。私(わたし)は、自分自身(じぶんじしん)の境遇(きょうぐう)に重(かさ)ねあわせ,自信(じしん)を取(と)り戻(もど)しました。このように,本で読(よ)んだことが,不安(ふあん)や心配(しんぱい)を乗(の)り越(こ)えるための助(たす)けになることもあります。知識(ちしき)を得(え)ることと,実際(じっさい)に体験(たいけん)することにバランスよく取(と)り組(く)んでいける大人になってください。

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セシル・スコット・フォレスター
大航海時代のイギリスのお話です。主人公は内気で,コンプレックスを抱えながらもとても賢い人で,たくさんの乗組員たちから信頼され,次々に戦いに勝っていきます。そうした船長の姿はとても格好良く,私が海に憧れるきっかけともなりました。「船長なのに船酔いに悩まされている」という姿も私と重なり,今でも共感を持って読み返すことができます。

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取材・原稿作成:東京書籍株式会社