仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

東京都に関連のある仕事人
出身地 福岡県

松尾(まつお) 卓哉(たくや)
子供の頃の夢: テレビCMをつくる人
クラブ活動(中学校): 野球部
仕事内容
広告(CM,ポスター,WEBなど)を企き画かく・制せい作さくする。
自己紹介
アイデアを生み出すクリエイティブな仕事は頭を使うため,休日は体を動かして頭を休めるようにしています。自分を大事にすることが,自分にとって大切な人たちの幸せにもつながっていることに最近気づいて,生き方を改めているところです。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2017年07月18日)時点のものです

広告の企き画かく制せい作さくって,どんな仕事なの?

広告の企画制作って,どんな仕事なの?

私わたしは東京都港区で広告を企き画かく・制せい作さくしている会社「株かぶ式しき会社17(ジュウナナ)」を経けい営えいし,クリエイティブ・ディレクターとして働いています。広告主である企き業ぎょうが“売りたい商品”や“告知したいサービス”を,テレビ,新聞,電車,店頭,WEB,イベントなど,それぞれのメディアに合った広告表ひょう現げんとして企き画かくし,制せい作さくしています。

クリエイティブ・チームの役やく割わり分ぶん担たん

クリエイティブ・チームの役割分担

例えば,テレビCMを制せい作さくする時は,役やく割わり分ぶん担たんがあります。
「コピーライター」は,“言葉のプロ”として,人の心を惹ひきつける宣せん伝でん文もん句くを考えます。「CMプランナー」は,15秒や30秒の限かぎられたCMの時間の中で,見る人の心に響ひびく魅み力りょく的てきなアイデアを練り,企き業ぎょうに「絵コンテ」という形で提てい案あんします。「絵コンテ」とは,CM全体の大まかな映えい像ぞうの流れ,状じょう況きょう設せっ定てい,セリフ,音楽の種類などを紙面にまとめた,CMの見取り図のようなものです。
そして私わたしの仕事である「クリエイティブ・ディレクター」は,クリエイティブ・チームの責せき任にん者しゃです。CMの方ほう向こう性せい,キャッチコピー,見終わった後の読後感などをチームを代表して企き業ぎょうに提てい案あんします。表ひょう現げんの全ての責せき任にんを負い,最終的な判はん断だんをする立場にあります。実じっ際さいの制せい作さく現げん場ばでは,監かん督とくやカメラマンをはじめ,多くのスタッフが関わり,映えい像ぞうをつくり上げていきます。そして,撮さつ影えい,編へん集しゅうなどの各制せい作さく過か程ていで,スタッフからも,企き業ぎょうからも,いろんな意見が出てきます。その時,企き画かくの趣しゅ旨しとズレないよう,クリエイティブ・ディレクターが取り入れる意見を決め,目指すゴールへと導みちびいていくのです。

常つねに「新しいこと」をプラスするように

常に「新しいこと」をプラスするように

かつて,広告は「商業芸げい術じゅつ」とも呼よばれていました。広告を制せい作さくする一番の目的は,広告主が希望する物やサービスを多くの人に知らせ,好きになってもらうことです。しかし,商品をただ説明するだけでは,人々はその広告を無む視しし,決して振ふり向むいてくれません。広告には,芸げい術じゅつ的てきな何か(心を揺ゆさぶる言葉,目が離はなせない映えい像ぞう,耳に残る音など)がなければ,人の気を惹ひき,好きになってもらうことはできません。
私わたしはクリエイティブ・ディレクターとして,どの仕事にも「新しいこと」を取り入れるように心がけています。過か去この成功体験に頼たよりすぎず,「こんなことをしたら,もっと面おも白しろくなるかな」「この表ひょう現げんは今までにないかもしれないな」と,常つねに何かに挑ちょう戦せんする気持ちを大事にしています。
仕事における「慣なれ」は,安定した質しつを生む大切なことではありますが,怖こわくもあります。意い識しきして新しいものに手を伸のばさなければ,慣なれが「怠たい慢まん」を生み,「停てい滞たいと腐ふ敗はい」がはじまります。そんな仕事からは,驚おどろきや発見を見た人に与あたえることはできなくなります。小さなことであっても,新しいものを積極的に取り入れ,緊きん張ちょう感を仕事に入れこむようにしています。

アイデアが生まれる「ひらめきの瞬しゅん間かん」は最高の気分

アイデアが生まれる「ひらめきの瞬間」は最高の気分

クリエイターとして目立つ,面おも白しろい広告を作るには,何よりも「アイデアのある企き画かく」を出すことが重要です。企き画かく中は,どうすればもっと企き画かくが面おも白しろくなるのかをいつも考えています。自分にしかできないものを世の中に出せるようにと,年中,もがいています。
アイデアを考えて,考えて,考え抜ぬいていると,ふとした瞬しゅん間かんに「これだ!」とひらめくことがあります。その瞬しゅん間かんは,自分の力を超こえた何かにつながった感じがします。 悶もん々もんとした暗くら闇やみから抜ぬけられた,その瞬しゅん間かんは本当に気持ちよく,それが夜中でも,電車の中でも叫さけびたくなります。そして,そのアイデアをお客さんに提てい案あんし,「いいですね!」と言ってもらえた時は,この仕事を選んで良かったなぁと心から思え,最高に幸せです。
また,多くの人の力を借りて企き画かくをカタチにしていきますが,制せい作さく現げん場ばの人たちが楽しそうに働いているのを見ると,「あぁ,この企き画かくは面おも白しろいんだな」と実感できます。「面おも白しろい仕事がしたい」という思いは,制せい作さくスタッフ全員が持っています。自分の企き画かくに関わっている人たちが生き生きと仕事をしていると,心の底からうれしくなり,感動します。しかし,それだけに,企き画かくする者の責せき任にんは重大です。

アンテナを広く張はり,知ち識しきを蓄たくわえる

アンテナを広く張り,知識を蓄える

いいアイデアを生み出すには,ここぞという時にインスピレーションが吹ふきこまれるものを普ふ段だんから取り入れておく必要があります。アイデアは,何もないところから魔ま法ほうのように生まれるわけではありません。欧おう米べいの広告業界では,「いいものを食べないと,いいウンチが出ない」と言ったりもするのですが,良い刺し激げきをたくさん取りこまないと,良いアイデアは生まれないのです。
映えい画が,小説などの表ひょう現げん物はもちろん,街行く人,スーパーの商しょう品ひん棚だな,自然など,いろんなことから刺し激げきを受ける自分でいられるように心がけています。例えば,女じょ性せいの美び容ようについて学んだ知ち識しきが,全く別のジャンルの広告を作成する時に生かせることがあります。知ち識しきと経けい験けんは,どこでどう生きるかはわからないんです。若わかい時には気づけませんでしたが,意い識しきして日々を生きていれば,無む駄だなことはひとつもないことを実感しています。

きっかけは中学時代の「反省文」

きっかけは中学時代の「反省文」

「CMを作る仕事をしたい」と思い始めたのは中学2年生の時です。きっかけは,当時,学校で毎日書かされていた「反省文」でした。学校全体のカリキュラムとして,1日を振ふり返かえって反省文を書くという時間があったのですが,毎日,反省しないといけないほど明めい確かくな目標に向かって生きていなかった当時の私わたしは,「世相をもじったキャッチコピー」や「ふざけた内ない容ようの短文」を書いていました。担たん任にんの先生には何度か注意されましたが,私わたしはそれらを書き続けていました。  そして,私わたしの駄だ文ぶんを面おも白しろがってくれる数学の先生がいました。ある日,その先生の授じゅ業ぎょう中に「1週間分の反省文をみんなの前で発表しろ」と言われました。その時に読み上げた文をクラスのみんなが笑ってくれました。そうなると,ますます反省文を書かなくなり,駄だ文ぶんの開発に力を入れるようになりました。
やがて,担たん任にんの先生が「松まつ尾おくん,あなた将しょう来らい,“電通”という会社で働いたら?」と勧すすめてくれました。九州の田い舎なか町まちで生まれ育った少年の人生では一度も出会ったことのない社名でした。当時,インターネットなどはなかったので,本でどんな会社なのかを調べ,すごく面おも白しろそうだな…と興きょう味みを持ったんです。先生の何気ない一言が,私わたしの将しょう来らいの明めい確かくな目標になりました。

「ここで働きたい」と電話をした

「ここで働きたい」と電話をした

中学卒業後も「電通に入社して広告を作りたい」という気持ちを持ち続けていました。そして,大学受験で2浪ろうした後,地元・九州と東京の2つの大学に合ごう格かくできた私わたしは進路に悩なやみ,思い切って電通の九州支し社しゃに,「将しょう来らい,電通で働きたいと思っています」と相談の電話をしたんです。その電話で話したのが,マーケティング部の部長さんでした。その方は「うちの若わかいもんと会って話すといい」と,社員の方々と話すきっかけを作ってくれました。そして,その時のアドバイスもあり,東京の大学に進学することに決めました。
月日が経たち,就しゅう職しょく活動の時期になりました。東京本社での電通の入社試験の選考が進んで,3次面めん接せつでの面めん接せつ官かんが,4年前に電話で話した,あの部長さんだったんです。部長さんとは電話でしか話さなかったのに,私わたしのことを覚えていてくれました。こんな不思議な縁えんがあるのかと,本当に驚おどろきました。そして,私わたしは電通で働くことになったのですが,今思うと,あの1本の電話が,運を引ひき寄よせてくれたのかもしれませんね。

自分を大切にすることが周りを幸せにする

自分を大切にすることが周りを幸せにする

学校では「周りと同じことができるようになること」を教えてくれます。でも,社会に出ると「人と違ちがうことができること」に価か値ちが出てきます。
「自分を大事にすること」は,一番大切なことです。自分が嫌いやだと思うことや,本当はこうしたくない,という自分の心の声に気づくことができれば,周りの人にも押おしつけなくなります。それが自分だけでなく,周りの人たちを大切にすることにもつながります。
だから,みなさんには,自分の心の声を素す直なおに聞き,自分の存そん在ざいを大事にしてほしいと思います。私わたしは子どものころ,「ここではないどこかへ行きたい」といつもモヤモヤと思っていました。もし,皆みなさんが今いる場所を居い心ごこ地ち悪く感じても,いつか必ず自分に合う居い場ば所しょを見つけられること,学校で教わることが必ずしもすべての選せん択たく肢しではないということを覚えていてほしいですね。
世界はとんでもなく広く,自分の中の恐おそれに負けずに歩んでいけば,これまでの自分が思いもしなかったような面おも白しろい生き方をしている人,すごい才さい能のうの人にたくさん出会えます。そして,そのことで,今はまだ目の前にない選せん択たく肢しがたくさん見つかりますから!

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私のおすすめ本

新渡戸 稲造
これからの時代に必要とされる人間のことが書かれています。今,グローバル化とインターネットの普及で,世界の均一化が進んでいます。一方で,先進国の人々は,自分たちのアイデンティティー(自分のキャラみたいなもの)を失いはじめています。この本の中には,尊敬される「日本人」として世界で生きていくヒントがたくさん詰まっています。
赤塚 不二夫 ほか
行き詰まった時,ぜひ読んで欲しい一冊です。子どもは学校や親から「立派な大人」になるように教えられますが,この本を読むと,「面白い大人」になることの方がずっと大切だとわかります。自分らしく自分の人生を歩むためのヒントが,さまざまな著名人との対談の中で語られています。

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取材・原稿作成:東京書籍株式会社