仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

大阪府に関連のある仕事人
1975年 生まれ 出身地 東京都
そうていし装蹄師
伊藤いとう まさる
子供の頃の夢: 牧場スタッフ
クラブ活動(中学校): 陸上部
仕事内容
馬の靴屋さん
自己紹介
子どもの頃からカッコイイ馬が大好き。体力があり工作が得意なのが自慢です

※このページに書いてある内容は取材日(2015年03月13日)時点のものです

馬のくつである蹄鉄ていてつは1ヶ月ほどで交換こうかん

馬の靴である蹄鉄は1ヶ月ほどで交換

装蹄師そうていしとは馬のひづめ蹄鉄ていてつを打つ技術者ぎじゅつしゃのことを言います。ひづめとは,簡単かんたんにいうと馬のつめのことです。馬だけでなく牛や鹿しかにもありますね。蹄鉄ていてつとは人間でいえばくつのようなものです。乗馬クラブクレイン大阪おおさかに来る馬は,ほとんどがこれまで競馬場で競走馬として走っていました。そしておおよそ8さいくらいで引退いんたいし,乗馬用の馬として訓練されます。ですから基本きほん的にはみなあし蹄鉄ていてつを付けています。その蹄鉄ていてつは,普通ふつうに運動していれば1ヶ月ほどですりり,同時にひづめびてきます。そこですりった蹄鉄ていてつを外し,専用せんよう刃物はものびすぎた部分のひづめけずります。そして,そのひづめに合わせて,新しい蹄鉄ていてつを調整して付けて直します。その時,蹄鉄ていてつ密着みっちゃくせいを高めるため,蹄鉄ていてつを熱しひづめ押し当おしあてることもあります。これが,わたしたちの基本きほん的な仕事の流れです。

1日6頭から8頭の馬の装蹄そうてい作業をします

1日6頭から8頭の馬の装蹄作業をします

出勤しゅっきん時間は,毎日午前8時。まずは道具の準備じゅんびをし,その後ストレッチ体操たいそうをします。毎日同じような姿勢しせいで作業をするので,わたしの場合はストレッチが欠かせません。9時から仕事がスタートします。この乗馬クラブには常時じょうじ170頭ほどの馬がいます。その中で装蹄そうてい作業を行うのはだいたい1日に6~8頭。1頭の作業時間は約1時間ほどです。ですから午前中に3頭,午後に3~5頭というペースです。時には専属せんぞく装蹄師そうていしがいない乗馬クラブに出張しゅっちょうして作業することもあります。季節による差はほとんどありませんが,夏場はお客様も多いですし,気温が高いとひづめびやすいので,いそがしくなります。馬はひづめびると,蹄鉄ていてつの安定せいが悪くなり,馬にとっても,乗馬をするお客様にとっても危険きけん状況じょうきょうになりますから,注意しなければなりません。

馬が話をしてくれたら楽なのですが

馬が話をしてくれたら楽なのですが

人間であれば靴屋くつやさんに行って,気に入ったくつを試しにいて,歩いたり屈伸くっしん運動をしたりしてみて,つま先がひっかかるとか,かかとがすれていたいから別のくつにしてくださいと店員さんに言えます。でも,馬の場合は残念ながらしゃべれません。例えば,新しい蹄鉄ていてつを付けてどうも左の後肢うしろあし違和感いわかんがあるとか,走るとちょっとだけどいたみを感じるとか言ってくれれば,すぐに修正しゅうせいできるわけですが,そうはいきません。ですから,歩く姿すがたあしの運びを慎重しんちょうに観察し,これまでとの微妙びみょうちがいを判断はんだんしていくわけです。また,馬ごとに蹄鉄ていてつの具合が良いとか悪いとか表現ひょうげん方法もみなちがうので,その個性こせい理解りかいしなくてはいけません。そこがこの仕事の大変なところですし,苦労するところです。

資格しかく試験を受験するのに15年

資格試験を受験するのに15年

わたしは,装蹄師そうていしになって今年で20年になります。その間に3種の免許めんきょを取得しました。まず,そう削蹄さくてい協会の認定にんてい試験に合格ごうかくするともらえる2級の免許めんきょ。そして,受験をするために必要な実務じつむを5年経験けいけんした後,次の1級試験に合格ごうかく。その後さらに10年の実務じつむ経験けいけんて,今度は指導級しどうきゅう資格しかく免許めんきょを取得しました。これまでに,そんな実務じつむと試験をて,さまざまな経験けいけんを積み,先輩せんぱい方の指導しどうも受け,その結果として,馬が喜んでくれるような新しいくつを作ってあげられるようになったのだと思います。古い蹄鉄ていてつを外し,完璧かんぺきひづめけずり,新しい蹄鉄ていてつをしっかりと装着そうちゃくできたとき,作業場から出ていく馬の歩く姿すがたがとても美しいのです。そんな姿すがたを見ると,仕事としてのやりがいをシミジミと感じます。

削蹄さくていに失敗はゆるされない

削蹄に失敗は許されない

例えば,人の場合を考えてみてください。もしも,間違まちがってつめを切りすぎたら,とてもいたいですし,深爪ふかづめはなかなか治りません。 人のつめも馬のひづめつめ)も本来は同じものです。馬の場合もひづめけずりすぎたりななめにけずったりしたら大変なことになってしまいます。馬のひづめは月に8~10ミリ位び,びた部分を専用せんようの道具でけずります。馬のひづめけずることを削蹄さくていといいます。馬のひづめけずる道具は削蹄剪鉗さくていせんかんという専用のニッパーを使います。人間用の軽くて小さい爪切つめきりとちがい,とても大きく,重いので,簡単かんたんにはあつかえません。かまのようなナイフやヤスリも使います。しかし,いくら大変だと言っても,削蹄さくていはやり直しはできません。ですからつねに十分な配慮はいりょと集中力が必要になりますし,相手は生きている馬なのだということをつね意識いしきしなくてはなりません。

たまたま見つけた資格しかくの本がきっかけ

たまたま見つけた資格の本がきっかけ

高校時代の教室の本棚ほんだなに,たまたま資格しかくに関する本が置いてありました。何気なくその本を広げ,順を追って見て行くと,巻末かんまつに「牛の削蹄さくてい」という項目こうもくがあり,読み進めていくと,今度は「馬の装蹄師そうていし」という項目こうもくが出てきました。読んでいるうちに,何となく面白そうだなと思い始め,そして牛より馬の方が好きだったこともあり,その本をきっかけに装蹄師そうていしになることを意識いしきし始めました。でも,今思えば,子どものころかられたこともないのに,牛や馬が好きだったのです。小学生のときに,将来しょうらいのやりたい仕事は何ですかと聞かれると「牧場で働くこと」といつも答えていましたから。

外でいつも走り回り,ゲームきらいな子どもでした

外でいつも走り回り,ゲーム嫌いな子どもでした

小さなころは兄や妹と,とにかく外でよく遊びました。ですから,ゲームとかテレビ番組には全く無関心でした。特に走ることが大好きで,中学は陸上部に入っていました。高校ではバレー部とサッカー部に入りました。なにしろ体を動かすことが好きなんですね。両親の教育もあったのだと思いますが,今でも体にしみついているらしく,ゲームは全くしませんし,テレビもあまり見ません。職場しょくばで毎朝必ずストレッチをするのは,この運動部時代の習性しゅうせいなのかもしれません。

最後までやり切ってみよう

最後までやり切ってみよう

わたしがいつも思っていることは,何かをやり始めたら途中とちゅうで投げ出さずやり切ってみるということ。最後までやり切らないと,どこが悪かったのかも分からないし,やり切ったことで分かることもたくさんあるのです。そんなわたしですから,この職場しょくばで仕事を始めて20年になりますが,今まで止めたいと思ったことは一度もないです。 みなさんもとことんまでやりましょう。

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