日本財団

海・川の仕事人

〈海洋生物学者〉の仕事

神奈川県横須賀市
わたなべ ひろさん
(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

わたしかいようけんきゅうかいはつこう(JAMSTEC)にしょぞくする研究者です。わたしが研究しているのは,深海の海底から数百℃の熱い海水がしている「熱水ふんしゅついき」にすむフジツボ,エビ,カニや貝類などです。かれらは子ども(ようせい)のうちは広い海中をただよい,成長すると熱水ふんしゅついきの海底に落ち着きます。広い海にポツンポツンとてんざいする熱水ふんしゅついきを,ようせいはどうやって見つけるのか。また,どうやってたくさんの種が生まれてきたのか。それらをさぐるのが,げんざいわたしの主な研究テーマです。

わたしの仕事には,調ちょうぶんせきろんぶんしっぴつという流れがあります。まず海に調ちょうに出かけ,生き物の観察やさいしゅをします。6,500mの深さまでもぐれる有人せんすい調ちょうせん「しんかい6500」にも,これまで8回ほど乗っています。じっさいもぐって自分の目でじかに深海を観察するのは,わくわくする体験です。さいしゅした生き物は船の上で仕分けなどのしょをして,実験室に持ち帰ってからDNAのぶんせきなどをします。その結果わかったことをろんぶんにまとめて,国内外のがくじゅつざっや学会で発表しています。

海の大部分は深海で,かんたんには見えないし,まだわからないことだらけです。見えない海がめているすごい力のごく一部でも,わたしは研究で明らかにし,伝えていきたいと思っています。でも1人の研究者の力はりょくで,研究や調ちょうは,たいていは共同研究者や,分野のちがう研究者たちとチームで行います。ときには,海外のチームにまねかれて調ちょうせんに乗ることもあります。わたしは,多くの研究のちくせきの上に自分がいることをいつもしきしていて,未来の研究に役立つようなろんぶんを書くことを心がけています。

助成:公益財団法人 日本財団
協力:NPO法人 共存の森ネットワーク,愛南漁業協同組合
取材・執筆:大浦 佳代/イラスト:友永 たろ,川島 星河,広野 りお