人の体と食べ物をつなぐのが私（わたし）の仕事です。高校の運動部やナショナルチーム，オリンピック選手に至（いた）るまで，さまざまな年齢（ねんれい）や種目の選手を指導（しどう）していますが，それぞれの選手がよい結果を出せる方法を監督（かんとく）やコーチなどの指導者（しどうしゃ）と話し合い，食からできることを進めていきます。具体的には，大会で最高のパフォーマンスを発揮（はっき）するための食事作りや，「体を大きくしたい」「スタミナをつけたい」「怪我（けが）を早く治したい」などの目的に合わせた体づくりのための献立作成（こんだてさくせい），食べ方の指導（しどう）などです。高い緊張（きんちょう）状態（じょうたい）にある選手が落ち着けるよう，努めて冷静に，安心感のある仕事をするようにしています。

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  髙橋（たかはし）大輔（だいすけ）さんの食事サポート

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  高校ラグビー部に栄養指導（えいようしどう）の講義（こうぎ）

高校生のときは痩（や）せていて，毎日胃が痛（いた）く，立ちくらみもしている状態（じょうたい）でした。そのとき医師（いし）に「体は自分の食べた物でできているんだよ」と言われ，その日はっさく1個（こ）しか食べていなかった自分の食事を振（ふ）り返（かえ）って愕然（がくぜん）としました。それから食に興味（きょうみ）を持ち，専門学校（せんもんがっこう）で栄養士の資格（しかく）を取得したものの，やりたいことが見つからず模索（もさく）していたのですが，大学のアメリカンフットボール部スタッフの一員になったときに「運動と栄養」のおもしろさに気づき，これがやりたいと思うようになりました。その後，強豪（きょうごう）の中央大学水泳部で栄養指導（えいようしどう）を本格（ほんかく）的に開始しましたが，当時はまだスポーツ界に栄養士がいるのは珍（めずら）しく，お金をいただける状態（じょうたい）ではありませんでした。それでも現場（げんば）で学びたくて，企業（きぎょう）に企画（きかく）を持（も）ち込（こ）むなどして自力で得た研究費をやりくりして続けました。このとき選手を間近に見て運動生理学などを実践（じっせん）的に学んだ経験（けいけん）が，今の仕事の土台となっています。その後も，いただいた仕事に対していつも100%や120%の力で取り組んできました。仕事をする中で，人としても教育者としても尊敬（そんけい）できる指導者（しどうしゃ）たちと出会い，刺激（しげき）を受けながら共に働けることがやりがいになっています。

選手が結果を出したときやいい顔をしたときです。自分の仕事の成果を判断（はんだん）されるときでもあるので大変ではありますが，選手の成長した姿（すがた）を見られるのは本当にうれしいことです。それだけ食には大きな可能（かのう）性（せい）があります。食に携（たずさ）わって人の体の快適（かいてき）さに役立てるこの仕事は，とても楽しいです。

今後のオリンピックで結果を出すことです。それと，オリンピックという大舞台（おおぶたい）で，私（わたし）を成長させてくれたすばらしい指導者（しどうしゃ）たちと，また共に仕事ができたらいいですね。

私自身（わたしじしん）は高校生の頃（ころ），やりたいことがありませんでした。でも，自分が好きなことや大切だと思うことを大事にしてきた結果，それらが結実して今の仕事にたどり着きました。ですから，今見つからないからといってあせる必要はなく，何でも大切にすることが大事です。今興味（きょうみ）がないからと切（き）り捨（す）てたりしないでいれば，きっと熟成（じゅくせい）して実るときがやってきます。スポーツ栄養士になるなら，人の話をちゃんと聞けるようになることと提案力（ていあんりょく）が必要です。自分が責任（せきにん）を取ることになると思うと，人に提案（ていあん）して新しく何かを始めることは勇気がいるかもしれませんですが，食の面から自分に何ができるか真剣（しんけん）に考えていれば，きっとその勇気が湧（わ）いてきますよ。