出身地 鹿児島県

アニメ3DCGデザイナー/演出
川尻かわじり 将由まさなお
子供の頃の夢:映画監督
クラブ活動(中学校):卓球部
仕事内容
TVや映画えいがなどのアニメーション作品に使用する背景はいけいなどを3Dで制作せいさくする
自己紹介
映画鑑賞が趣味で,休みの日は映画館へ行くか,家でDVDを観ています。
出身高校
学校法人東福岡学園 東福岡高等学校
出身大学・専門学校
大阪芸術大学 映像学科 アニメーションコース

※このページに書いてある内容は取材日(2015年09月04日)時点のものです

背景はいけいや物を一からき起こす

背景や物を一から描き起こす

ぼくは,CGデザイナーとして,TVや映画えいがなどのアニメーション作品に使用する背景はいけいなどを3Dで制作せいさくしています。3Dは例えば,作品の背景はいけいで使用する電車を依頼いらいされたら,参考となる写真を元に3Dアニメーションソフトを使って,ペンタブレットで一からき起こしていきます。今のアニメでは,自動車などもほとんど3Dで作っています。映像えいぞう設計図せっけいずとなる絵コンテをもとに打合せをして,アニメーターさんが一まいの画面を作り,その中で背景はいけいやCGの分担ぶんたんります。最初から電車が必要だと分かっている場合は,進められる所はあらかじめ作って準備じゅんびしておくこともあります。ちなみに演出えんしゅつとか絵コンテをくときは,ぼくは紙に鉛筆えんぴつで書かないとCGにできませんので,メモとかアイデアは手書きですね。

作品を全て一括いっかつで作ることも

作品を全て一括で作ることも

出社時間は決まっていません。てられた作業をこなせば,早く来て早く帰ってもいいし,時間に余裕よゆうがあれば,平日でも映画えいがへ行けちゃうんですよ。もちろん自己じこ責任せきにんですが,時間を自由に調整できるのは最高だなって思います。でも,しめ切りがせまって来ると,やはり夜型になってしまいますね。作品の作り始めから関わる大きな仕事を進めつつ,アニメPVなどを1,2ヶ月に1本ぐらいのペースで作っています。制作せいさくするものは作品の部品なので,絵コンテがおくれている場合は,後の作業が立て込たてこんでしまい,休みは取りづらくなります。納期のうきに合わせて仕事を進めていますので,正月休みは取りますが,おぼんや祝日はあまり関係ないです。社長以外はほとんど20代ですが,小さな会社ですから,企画きかくによってはディレクター,脚本きゃくほん監督かんとく演出えんしゅつなど,だれ担当たんとうするかを打合せで決めて,自社だけで作品を全て一括いっかつして作ることもあります。

積極せいと社交せいが大事

積極性と社交性が大事

子どものころから絵をくのが好きで,これだけで仕事ができればと思っていたんです。でも,制作せいさく現場げんばでは積極せいが大事で,最低限さいていげんの社交せいも必要です。ぼくは高校生のときは,しゃべることが苦手で,恋愛れんあいもなく,もやもやとした学校生活を送っていました。映画えいがも好きで,大学では実写の映画えいが研究会に顔を出したんですが,実写映画えいがの世界は体育会けいの人が多いんですよ。現場げんば怒鳴どなり声をあげるような雰囲気ふんいきは,ぼくは全然ダメで向いてないなと思いました。そういう意味でも,アニメ業界ならば大丈夫だいじょうぶだと思っていたのに,やはり社交せいは大事なんですよ。もし,本当に絵だけをいて仕事ができなら,よほどの天才じゃないと無理ですね。 それから,仕事がアニメで趣味しゅみ映画えいが鑑賞かんしょうって,小説家で趣味しゅみは読書と同じで,つまらないじゃないですか。もう一つ何か,例えば江戸えど時代のことならだれにも負けないほどくわしいといった作品の世界観をつくる武器ぶきが必要です。ぼくは今,その武器ぶきさがしている時期なんです。昔の自分には,もっといろいろな趣味しゅみ経験けいけんを持っておけって言いたいですね。

おもえがいたイメージが形になる

思い描いたイメージが形になる

自分が作ろうとおもえがいていたイメージが,映像えいぞう作品として形になった瞬間しゅんかんは仕事のやりがいを感じます。制作せいさくしたみんなとコミュニケーションをとって,それが伝わって,良いものが仕上がったときは快感かいかんです。お客さんに見てもらうときも,作っているときも,何かを伝えるってことがキーワードです。ぼくはコミュニケーションをとるのが苦手だから,それができたときに魅力みりょくを感じるんでしょうね。ぎゃくに,思ってもいなかったものが,他の人からの発想と感性かんせいで仕上がったときは,チームで作る大切さを感じます。種類は別ですけど,どちらも作品作りの魅力みりょくです。

自分の主張しゅちょうとわがままのバランス

自分の主張とわがままのバランス

作品は商品ですから,視聴者しちょうしゃのお客さんに喜んでもらえるようにしたいと思います。一方で,作るならば自分の痕跡こんせきを残したい,自分の作品だと言えるようにしたいんです。制作せいさく途中とちゅうで自分のやりたいことを主張しゅちょうしすぎて,わがままだなと思うこともあります。ぎゃくに,これが良いと思ったことをうまく伝えることができず,仕上がった作品を見て,もっと自分の意見を通しておけば,と思うこともあります。自分の中でも葛藤かっとうしていて,良い作品を作るためのバランスを見つけたいなと思っています。

アニメ制作せいさく会社の立ち上げにさそわれる

アニメ制作会社の立ち上げに誘われる

高校の美術びじゅつ部のころは,実写の映画えいが監督かんとくになりたいなと思っていたんですけど,だんだんとアニメに興味きょうみを持ち,文化祭でアニメを作ろうとして挫折ざせつしたこともありました。大阪おおさか芸大の映像えいぞう学科アニメーションコースへ進学したところ,教授きょうじゅがアニメCG制作せいさく会社を作るからとさそわれて入社しました。会社の立ち上げは4人ほどで,準備じゅんび運動みたいな感じでデッサンなんかもしていましたね。その後は,TVアニメの背景はいけいなどを3Dで制作せいさくするようになりました。チーフが別の制作せいさく会社で撮影さつえいなどをしていた方なので,アドバイスをいただきながらCGを制作せいさくしています。また,「ステラ女学院高等科C3部」という作品で監督かんとく経験けいけんしました。これからもいろいろな経験けいけんをつんでいきたいですね。

外へ出ずに絵ばかりいていた少年

外へ出ずに絵ばかり描いていた少年

ぼくは,インドアであまり活発ではない子どもでしたね。絵だけが好きで,小学生のころは,外へ出ずにずっと絵ばかりいていました。また,TVで放映ほうえいしている金曜ロードショーや日曜洋画劇場げきじょうを観ているうちに映画えいが夢中むちゅうになりましたね。最初に映画館えいがかんへ連れて行ってもらったのは,幼稚園ようちえんのときに観た「くれないぶた」だったかな。中学生のころも絵が好きで,教室でワンピースのキャラクターなどをいていました。高校は運動部が強く,全国の強豪きょうごう校だったのですが,ぼくの青春ははなやかではなくて,美術びじゅつ部に入り,地味な学校生活をごしていましたよ。

鬱屈うっくつとした気持ちは創作そうさくの熱量になる

鬱屈とした気持ちは創作の熱量になる

学校生活の中で,自分の居場所いばしょがないと思っている子がいると思うんですよ。たとえば,クラスの中で劣等感れっとうかんや不満をいたりして孤独こどくな気持ちになる人がいます。ぼくみたいに映像えいぞうを作る仕事では,そういう鬱屈うっくつとした気持ちそのものが,キャラクターや主人公の資料しりょうになったり,創作そうさくの熱量になったりするんです。クリエイティヴな仕事をする人達は,そのような経験けいけんがエネルギーとして作品に反映はんえいされることがあるんです。マイナスなことばかりではないんですよ。今,無気力にごしていたとしても,無駄むだなことじゃない。今がつまらなくとも,それを生かせる瞬間しゅんかんは来ると思います。

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どんな職場?
株式会社 吉祥寺トロン
取材・原稿作成:東京書籍株式会社