1986年 生まれ 出身地 広島県

研究職(建築系)
大本 おおもと 絵利 えり
子供の頃の夢:ピアノ講師
クラブ活動(中学校):吹奏楽部
仕事内容
けんせつげん での作業を機械化・ロボット化するための研究・開発をする。
自己紹介
平日,仕事が終わった後の夜や休みの日には,ヨガやボルダリングをしています。体を動かすことが好きです。
出身高校
国立お茶の水女子大学附属高等学校
出身大学・専門学校
早稲田大学 理工学部

※このページに書いてある内容は取材日(2018年11月28日)時点のものです

けんせつげんざいを運ぶためのロボットを作る

建設現場で資材を運ぶためのロボットを作る

わたしかぶしき がいしゃおお ばやしぐみというけん せつ会社にしょ ぞくし,東京都きよ にあるじゅつ 研究所で働いています。じゅつ 研究所では,けんせつ に使われるコンクリートなどの材料や省エネじゅつ めんしんせい しんたいしん じゅつ など,さまざまなさいせん たんじゅつ の研究・開発が行われていますが,わたしけん せつげん での作業の自動化やじょうほう 化などを進めるチームで,けんせつげんざいを運ぶ作業を機械化するための研究・開発をしています。
ざいを運ぶという作業は,どんな種類のけん せつげんでも必要です。今は,ざい を台車にのせたり,人が持ったりして人力で運ぶことがほとんどですが,それを機械が自動運転で運んでくれるようにするのが, わたしたんとう しているプロジェクトの最終的な目標です。わたしたちはこれを自動はん そうシステム(AGV=Automated Guided Vehicle)とんでいます。自動はんそう システムがあれば,げん の労力をらし,重いものを安全に,楽に運ぶことができます。
開発を始めたのは約5年前です。最初は,線路のように,げん テープをいて,その上をロボットが走るというしくみにしていました。しかしけんせつげん は毎日じょうきょう が変化し,それに合わせてロボットのルートも変わってしまうので,この方式はあまりげん じつてきではなく,げん ざいはコントローラーを使って,ラジコンのようにえん かくそう ができるしくみにしています。また,最初はいろいろなのう んでいたのですが,じっさいけんせつげん でのテストをかえ した結果,「ものを運ぶ」というシンプルなのう しぼり,サイズをどんどん小さくする方向になってきました。
研究所で何度もテストをした後,じっさいけん せつげんに持っていってテストをして,問題がなければそのまま使ってもらいます。そこでわかった問題点などを改良して,またげんでテストします。げん ためすことをかえしながら,実用化に向けて開発を進めています。

ちゅう エレベーターなどふくすう のプロジェクトに参加

宇宙エレベーターなど複数のプロジェクトに参加

自動はんそうシステムの開発にしゅ たんとう として取り組む以外に,ほかの人がたんとう している開発プロジェクトにもいくつか関わっています。その中には,おお ばやしぐみが進めている「 ちゅうエレベーター」のプロジェクトもあります。
ちゅうエレベーター」とは,地上からちゅうまで行くことのできるエレベーターです。人工えい せいは,地球の方向に られる重力と,地球の周りを回転して飛び出そうとする遠心力とのバランスがちょうど ったところにあり,地球に落下もせず, ちゅう空間に飛び出すこともなく,地球の周りを回っています。 ちゅうエレベーターは,その人工えい せいから ばした全長約9万6千kmのケーブルで地上とちゅう とをつなぎ,物や人をそう するしくみです。げんざいちゅう飛行士がたい ざいして実験などをしているこくさいちゅう ステーション(ISS)があるのは,地上から約400kmの場所なので,それにくら べるとちゅう エレベーターがとても長いことがわかると思います。これがじつげん すると,ちゅう 旅行や,ちゅうたん などが身近なものになるはずです。
わたしが関わっているのは,「クライマー」という,エレベーターの本体の部分です。人やぶっ をのせる箱をどんなふうに作り,どんなふうに動かせばよいかについて考えています。大学や他の会社と共同で研究をしていて,ちゅうエレベーターのしくみのせい のうきそきょう かい にも参加しています。きょうかいでは,気球からロープを るし,小型の「クライマー」を作ってそのせいのう きそいます。ちゅう エレベーターについては,年に1回てい ,プロジェクト全体で集まる会議のほか,共同研究をしている大学や会社の方と打ち合わせもしています。

研究が思い通りに進まない時期は苦しい

研究が思い通りに進まない時期は苦しい

新しいじゅつ の開発にあたって,実験ではうまくいっていても,げん に持っていったとたんに失敗することもよくあります。げん に持っていく前には,細かくスケジュールを立てるのですが,それがすべてになって引き上げなくてはいけないときは,つらいですね。
また,わたしが手がけている自動はんそう システムは,最近はやっと外に発表できるだんかい になってきましたが,イメージはあるものの,じっさい に形になっていない時期は苦しかったです。でも,一度形になってしまえば,あとは実験して,出てきた問題点を改良するということをかえしていけばいいので,まよ いはありません。
自動はんそう システムは,開発を始めたばかりのころは,タッチパネルでいろいろせってい するしくみにしていましたが,事前のじゅん が必要で,そう が覚えにくくてわかりづらいのと,そう するたびに軍手を外さなければならないといった理由で,げん しょくにんさんにあまり さわ ってもらえませんでした。もっと感覚的に使えるようにしなければいけないのだと思って,コントローラーをゲームのコントローラーのような形にするなど,こうさくを重ねて今にいたっています。
また,新しく取り組むテーマをていあん するのも研究員の大事な仕事で,実はこれが一番大変だと思っています。とにかくたくさんアイデアを出そうという「ブレインストーミング」とばれる会議のときなどは,なかなかアイデアがかばなくてこまりますね。どんなものがけんせつ げん にあると作業をする人たちが働きやすいのか,時にはげん でお世話になった人たちに相談したりしながら,いつも新たな研究テーマを考えています。

イメージが形になったときの喜び

イメージが形になったときの喜び

機械せいさくの場合は,最初にイメージ図をいて,それを協力してもらっている機械のせいさく 会社に持っていって,図面にできるかどうかけんとう してもらいます。図面ができると,とりあえず形にはできるということがわかるので,あとはそれに合う部品をさが します。例えば,げんざいの自動はんそう システムでは,「メカナムホイール」という車輪を使っています。これは,車輪になな めのつつのようなけい じょうのものがついているため,色々な方向に進むことができ,小回りがききます。海外のメーカーが最初に とっきょを持っていたのですが,その げんが切れて,だれ でも使えるようになりました。今はさまざまなロボットメーカーが利用しています。そういった部品を見つけるために,てん かいなどに行き,じょうほうしゅう しゅう をするのも仕事のひとつです。望みどおりのものが見つかったときには,「やった!」と思います。
おもえが いていたものが形になったときはうれしいですし,作ったものを最初にげんに持っていくときには,テンションが上がりますね。先日,自動はんそうシステムの開発を始めたばかりのころに いたスケッチを改めて見直したのですが,今,作っているものに近い絵を いていたんです。その当時のじゅつ だとじつげん ができないということでちが う方法を選んでいたのですが,結局もともと考えていたものに近づいているんだなと,最初の発想は ちがっていなかったんだなと,うれしくなりました。

げん から求められているものを作る

現場から求められているものを作る

自動はんそう システムの開発を手がけることになったきっかけは,げん から「自動で安全にざい が運べるシステムがしい」と言われたことです。人口のげん しょう で人手が少なくなる中,重いものを運ぶという作業をロボットで自動化できれば,人間はほかの作業に集中できますし,けんも少なくなります。自動はん そうシステムはわたしが開発のしゅたんとう をしていますが,けんせつ げんしょくにん さんや,機械を作る会社の人,部品会社の人,社内のチームのメンバーなど,関わってくれた多くの人のアイデアが まったものになっています。自分のイメージを関係先に伝えることは大事で,日々のコミュニケーションを大切にして,開発をしています。研究員というと,ずっと研究所にこもって,研究や開発をしているイメージがあるかもしれませんが,じっさいは外に出て,げん に通ったり,協力会社に相談に行くことも多いですね。
また,げん から求められているものを作るのが一番大切なことなので,「何が今,げんに必要なのか」をげん の人からていねいに聞くようにしています。そうしたコミュニケーションの中に,新しい研究テーマについてのヒントもありますから。

けんせつ の会社でも機械の仕事ができると入社

建設の会社でも機械の仕事ができると入社

子どものころから,すうけい の教科のほうが好きでした。中でも空やちゅう の話が好きで,テレビでちゅう の特集をしていたら見ていました。天文台や科学館に行ったりするのも好きでしたね。
大学では機械工学をせんこう し,流体力学の分野で,船のエンジンに使われるようなものの研究をしていました。また,空や ちゅうへのきょうから,こうくう けいの仕事にきたいと考えていて,しゅう しょく活動でも最初はこう くうけいかいけいの会社を主に受けていたんです。でも,しゅう しょく活動をしていく中で,おお ばやしぐみ じゅつ研究所で働いている方に出会い,けん せつ会社のおおばやし ぐみでもかい けいの仕事ができると知って ぼうし,入社しました。
おおばやしぐみ では,最初の1年目はげんかんとくとして,けん せつげん けいけんします。そのときにたずさわったのが,今,わたしが働いている じゅつ研究所の建物でした。けんちく学科の出身ではないため,わからないことばかりで,かんたんけんちく 用語もわからず,しょくにん さんにあきれられたりもしました。1年目はとにかくこう 管理の仕事を覚えるのに必死でしたね。わたしは研究者としてさい ようされて,最初のげんが終わったらすぐに研究所で働くことが決まっていたので,研究所の上司に,「げん にいる間に,自分だったらどういう開発をしたいか考えておきなさい」とアドバイスを受けていましたが,毎日が必死で,ゆうはありませんでした。

きょう のあることはやってみよう

興味のあることはやってみよう

きょう のあることは,なんでもやっておくといいと思います。わたし は大人になってから,ボルダリングやヨガなど体を動かすことにはまってしまい,今では仕事の後も,休みの日もやっています。子どものころにもっとスポーツをやっておけばよかったなと,子どもたちがボルダリングでかべをぴょんぴょんねながら登っているのを,うらやましくながめています。みなさんも学校の勉強以外にも集中できる何かを見つけると,生活にメリハリがついて,楽しくごせますし,勉強や仕事にも集中できるようになると思いますよ。
また,もしけんきゅうしょく を目指す方がいたら,いろいろな分野の勉強をすることをおすすめします。けんきゅうしょく というと,ひとつの何かに特化しているイメージがあるかもしれません。もちろんスペシャリストであることも大事なのですが,開発をしていくと,さまざまなしきが必要になってきます。また,けん きゅうしょくかぎ らず,仕事はひとりではできないので,人とのコミュニケーションも大事です。全然関係ないようなことも,後々,つながってくることがあるので,広くいろいろなことにきょうを持っておくといいですね。

もっと知りたいこの仕事人

会社
株式会社 大林組
けんせつ小町(日本建設業連合会)
けんせつ小町特集
取材・原稿作成:東京書籍株式会社