私わたしは東京都にある「興こう和わサイン株かぶ式しき会がい社しゃ」の社長を務つとめています。興こう和わサインは、屋外広こう告こくをメインに手がけている会社です。SNSで話題になるような巨きょ大だい看かん板ばんから、見る人が驚おどろくようなトリック3Dアートの看かん板ばんまで手がけています。
ビルの正面に大きく設せっ置ちしたネオン看かん板ばんが、映えい画がで使われたり、人気ミュージシャンが写真を撮とったりして、とても有名になったこともあります。また、人気ユーチューバーの動画で、エレベーターの床ゆかに穴あなが空いているようなトリック3Dアートをしかけることに協力したこともあります。これもかなり反はん響きょうがあり、動画自体も600万回以上再さい生せいされています。

会社の創そう業ぎょう自体は1973年で、私わたしは2代目です。もともとは鉄道看かん板ばんという、駅の中にある広こう告こく看かん板ばんの仕事がメインの会社でした。駅の中で工事を行うには、安全面などの配はい慮りょが必要で、作業できる会社が限かぎられています。鉄道看かん板ばんの工事は電車の運行がなくなり、駅が閉しまる夜間の作業が中心になります。社員の負ふ担たんも大きく、働き方としてだんだん難むずかしくなってきたと感じ、会社の規き模ぼを縮しゅく小しょうしました。そうして今のようなユニークな看かん板ばんやトリック3Dアートを中心に手がける会社へと変わりました。

屋外広こう告こくを手がけるうえで、「安全できちんとしたものを作ること」はとても大切です。特に屋外広こう告こくというのは、どんなに奇き抜ばつで目立つものを作っても、万が一壊こわれたり、風で飛んでしまって人にケガをさせたりしてはいけません。そのため、「屋外広こう告こく士し」などの特とく殊しゅな資し格かくを持った業者しか設せっ置ちができません。よりクリエイティブでおもしろく、変わったものでありながら、広こう告こく物ぶつとして事じ故こを起こさず安全に設せっ置ちできていることを第一にしています。看かん板ばんをつくるときは、風への対たい策さくはもちろん、雪が降ふった場合にかかる重さなども計算に入れて考えます。

トリック3Dアートを手がけ始めたのは、「広こう告こく」の変化を感じてからです。例えば、昔はお店を探さがすときは「タウンページ」という電話帳を見て探さがしたり、実じっ際さいにお店の看かん板ばんを見たりするというのがお店を選ぶ手しゅ段だんでした。しかし、インターネットが広まり、どんどん社会環かん境きょうが変化したことで、お店を選ぶときも看かん板ばんではなく、ネットで検けん索さくした情じょう報ほうをもとに選ぶ人が増ふえてきました。看かん板ばんの役やく割わりも変わり、よりSNSとの親しん和わ性せいが求められる時代になってきたのを感じました。
トリック3Dアートを選んだ理由は、人が看かん板ばんの世界の中に入ることができるからです。普ふ通つうの看かん板ばんとは違ちがい、トリック3Dアートだったらみんな自分が看かん板ばんの世界の中に入って写真を撮とりたくなりますよね。そうしたら今度は、撮とった写真をSNSにアップしたりして拡かく散さんする人がたくさんいます。これからの看かん板ばんの役やく割わりを考えたときに、これは強みになると思い、トリック3Dアートを手がけ始めました。

トリック3Dアート看かん板ばんは、3D画が像ぞうの処しょ理りやデザインを専せん門もんとするスタッフたちと一いっ緒しょにつくっていきます。もともとゲームクリエイターで、アート作家として活かつ躍やくしているスタッフもおり、トリック3Dアートに必要な画が像ぞうを作るのはお手の物です。
普ふ通つうの看かん板ばんに関しては「こうしたい」という具体的なイメージを持っているお客さまも多いですが、トリック3Dアートに関してはそもそもどういうことができるのかがわからない人も多いです。そのため、まず、トリック3Dアートでつくれる構こう造ぞうから説明していきます。今は３Dソフトを使って、実じっ際さいに設せっ置ちしたらどうなるかをシミュレーションして見せることもできるので、お客さまと一いっ緒しょにイメージを共有しながら作っていくことができます。

「看かん板ばん」というのは、誰だれもが目にするものです。現げん存そんする最古の広こう告こくは、紀き元げん前ぜん11世せい紀きごろから築きずかれた都市の遺い跡せきである、トルコのエフェソス遺い跡せきにあるものとも言われています。今、広こう告こくにまつわる仕事というのはたくさんあります。例えば、インターネットのWEBページの製せい作さくやデザイン、チラシや冊さっ子しのデザインの仕事があります。それらと看かん板ばん製せい作さくの違ちがうところは、作ったものがリアルに空間の中に浮うかんで、人々の目に留とまるということです。
2004年に「景けい観かん法ほう」という法ほう律りつができました。それ以い降こう、屋外にある看かん板ばんは「風景を壊こわす悪者である」と思われることがあります。実は「戦後の東京の復ふっ興こうはネオンから」と言われるくらい、昔はネオンの光や看かん板ばんというのは人々の希望の光でした。時代は変わっても、看かん板ばんが街の中に存そん在ざいするということはいつまでも変わらない。だから、街の中に、人を笑顔えがおにしてつながりをつくる「コミュニケーションツール」としての看かん板ばんが存そん在ざいするのだと思います。そうやって自分が描えがいたものがリアルの空間に残るというのは、素す晴ばらしい仕事だと思っています。