私わたしが働いている株かぶ式しき会社ファミリーマートでは，全国で18,000店規き模ぼのコンビニエンスストアを展てん開かいしています。ひとつひとつのお店は小さいのですが，お店があるそれぞれの地ち域いきでお客さまの期待に応こたえ，愛される店てん舗ぽを目指しています。ファミリーマートでは，環かん境きょう問題、高こう齢れい社会への対たい応おうなど地ち域いきの社会的な課題を解かい決けつすること，家庭や学校と一いっ緒しょに次世代のこどもたちを育てることも大切な仕事だと考えています。このように企き業ぎょうが担になう社会的責せき任にんのことを「CSR（“Corporate Social Responsibility”の略りゃく称しょう。企き業ぎょうの社会的責せき任にん）」といいますが，私わたしはファミリーマートでCSRを担たん当とうし，どうしたらファミリーマートが社会に貢こう献けんできるかを考える仕事をしています。
例えば，環かん境きょうに配はい慮りょして，お弁べん当とうなどを包んでいるフィルムを工く夫ふうし二に酸さん化か炭たん素その排はい出しゅつ量りょうを減へらし，地球温おん暖だん化かの防ぼう止しに貢こう献けんすることもそのひとつです。また，高校生が森・海・川の名手や名人を訪たずねて聞き書きを行い，その知ち恵えや技わざ，ものの考え方や生き方を学ぶ「聞き書き甲こう子し園えん」，こどもたちの豊ゆたかな感かん性せいを育てる「ありがとうの手紙コンテスト」，仕事のやりがいや楽しさを学ぶ「職しょく場ば体験」など，次世代を育成する活動にも幅はば広ひろく取り組んでいます。

私わたしたちファミリーマートでは，CSR活動の一いっ環かんとして店頭募ぼ金きん「ファミリーマート夢ゆめの掛かけ橋はし募ぼ金きん」を行い，みなさまからの募ぼ金きんに企き業ぎょう寄き付ふをプラスして，森林を守り，残すことにつながる「緑の募ぼ金きん」，「聞き書き甲こう子し園えん」や，世界中のこどもたちを支し援えんする「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」，飢き餓が救きゅう済さいのため食しょく糧りょう支し援えんを行う「国連WFP協会」といった団だん体たいへの支し援えんをしています。
なかでも，森林を守る活動に関して言うと，これからも私わたしたちが豊ゆたかな自然の恵めぐみを受けるためには，日本の森を守っていかなければなりません。ファミリーマートもオリジナルの天然水を販はん売ばいしていますが，これも日本の豊ゆたかな自然があってはじめて生まれるものです。環かん境きょうに関する教育や環かん境きょうの保ほ全ぜんに関する活動を支し援えんすることで，次世代まで森林を守ることにつながっていけばと考えています。
CSR活動を通してファミリーマートへの信しん頼らいや愛着をお客さまに持っていただければ，会社にとっても価か値ちのあるものになります。ファミリーマートのファンが増ふえたり，お客さまとの関係がより良いものになるようなCSR活動を目指しています。

CSRの仕事で一番苦労しているのは，結果をはっきり見える数字で示しめすのが難むずかしいという点です。感覚的なところを理り解かいしてもらったり，「思い」を共有していかなければ，社内でも先に進むことができません。CSRの取り組みをやめろという人はいませんが，「そこまでやる必要があるのか？」と思う人もいるので，なぜ取り組むのかをきちんと説明し，理り解かいしてもらったうえで進めていかなければなりません。そういう意味で，社内に共感してくれる人を増ふやすのも，仕事のひとつと言えるかもしれません。地道な努力でお客さまとの信しん頼らい関係を作ることで，会社の価か値ちを高めているのだということを，社内では常つねに伝えています。
CSR活動は，強い信念を持って進めていくことが重要だと思っています。結果が出るまでに何年かかるかはわかりませんが，必ず何かにつながっていきます。社会にとっても，そして会社にとってもプラスになることなのだと思いながら，日々，仕事をしています。

お客さまのほか，社員や活動に関わった人から「ありがとう」と言われたり，「いい活動ですね」と言われた時には，やりがいを感じます。こちらから思いを伝えて，それに対して共感の声が返ってくるのはうれしいですね。この仕事は，他の企き業ぎょうと競争して勝った負けたというものではないので，競合の会社から「そこまでやっているんですね。いいですね，うちでもやりたい」という反はん応のうが返ってくることもあります。そういう反はん応のうに出会うと，会社の枠わくを超こえて，みんなでみんなのプラスになるようなことをやっているのだと感じます。
たとえば，小学生に「ありがとう」の気持ちを文字や言葉にして伝えてもらう「ありがとうの手紙コンテスト」では，表ひょう彰しょう式しきに私わたしも出席して，受賞者には私わたしが直ちょく接せつ，表ひょう彰しょう状じょうを渡わたします。このとき，受賞した小学生だけではなく，いっしょに来ている家族も，手紙の内ない容ようを聞いて，涙なみだを流しながら喜んでくれることもあります。こうやって感動の輪が広がる場面を実じっ際さいに目にすると，やっていてよかったなと思います。

実は私わたしはこどものころ，とても内向的な性せい格かくで，あまり人前に出たくありませんでした。にもかかわらず，代表として壇だん上じょうであいさつをしたり，学芸会では主役をやらされたりといった役回りが多くまわってきたんです。なぜ苦手なのに，やらなくてはいけないのか……。それを考える機会を作ってくれたのが，小中学校のころにやっていたサッカーです。
たとえば小学校のころ，私わたしはレギュラーではなく，いつも後半から出場していました。スタメンの子は左ひだり利きき・左サイドのフォワードで，きちっとセンタリングを上げてチャンスを作るタイプでした。でも，私わたしは左ひだり利ききでもないし，小さかったし，キック力もないので，とにかくこぼれ球を拾って点をとっていくことに集中しました。そうやって，試合に出るときに，自分はどういうことを期待され，どういう役やく割わりで今ここに送り出されているのだろうと考えるようになったんです。自分の役やく割わりについて考える習しゅう慣かんがついたんですね。社会に出て組そ織しきに属ぞくすると，自分の役やく割わりについて日々考えなければいけないので，これは今にもつながる習しゅう慣かんになっていると言えるかもしれません。

私わたしがファミリーマートに入社すると決めたのには，2つの理由がありました。ひとつは，コンビニエンスストア業界がこれから成長していくのではないかなと感じたことです。私わたしが入社した当時はファミリーマートもまだ2,000店てん舗ぽぐらいで，規き模ぼも小さかったのですが，地ち域いきにとっても，お客さまにとっても，もっと身近な存そん在ざいになるのではと感じていました。2つめは，採さい用ようを担たん当とうしていた人がとても魅み力りょく的てきで，いっしょに働きたいと思ったことです。
入社して30年ほど経たちますが，想そう像ぞうしたよりもはるかに会社が成長し，店てん舗ぽも全国で18,000店規き模ぼとなり，社員も6,000名を超こえています。あのころ，「身近なところで誰だれかの役に立つ仕事だ」と感じたことに間ま違ちがいはなかったなと思っています。

自分が好きなことややりたいことが明めい確かくにあれば，その道を進んでほしいと思います。できればそれを仕事にするようにがんばってほしいです。とはいえ，就しゅう職しょくをする時，そこまで思っている人はなかなかいないでしょうから，仕事内ない容ようや働いている人に対して，何か共感できるものがあるか，興きょう味みがあるか，尊そん敬けいできる人がいるか，自分なりにこだわりを持って選ぶといいと思います。
私わたしは入社後，とくに自分から希望したわけでもなく人事部に配はい属ぞくされたのですが，自分なりにこだわりややりがい見つけることができて，20年以上，人事の仕事を続けられました。５年ほど前に現げん在ざいの部ぶ署しょに異い動どうしたのですが，CSRは人事同様，強い思いや信念を持っていないとできない仕事です。これから1人でも2人でも，ファミリーマートでCSRがやりたいという人が入社してくれたら，これほどうれしいことはないですね。