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- 神奈川県に関連のある仕事人
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1987年 生まれ
出身地 東京都
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水上 翔也(仮名) -
仕事内容
麻薬や覚醒剤などの違法薬物を取り締まる。
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自己紹介
※仕事柄、顔写真や名前は非公開です。
体を動かすことが好きなので、サッカーや筋トレをしていましたが、ここ数年は子どもと遊ぶことが楽しみです。
違法薬物を取り締まる
麻薬取締部、通称「マトリ」は厚生労働省の地方厚生局という支部に所属する組織で、麻薬や覚醒剤などの違法薬物を取り締まる組織です。現在、301人が所属しており(※取材日時点)、女性も約4分の1を占めています。
私は「関東信越厚生局」の麻薬取締部横浜分室で麻薬取締官として働いています。麻薬取締部にもさまざまな部署がありますが、最も人数が多いのが私の所属している捜査課で、その名のとおり、薬物を取り締まるための捜査を行うのが仕事です。時には警察や税関、海上保安庁などと合同で捜査を行うこともあります。また、病院や薬局、製薬会社などに入って、医療用麻薬がきちんと管理されているかチェックするという仕事もあります。
ほかにもいろいろな部署があり、例えば海外における薬物情勢の調査・分析を行ったり、海外の捜査機関と連携して密輸の捜査を行ったりしている部署や、薬物の取引に使われたパソコンやスマホなどを分析している部署、また、薬物の鑑定をしている部署もあります。
麻薬や覚醒剤は「薬物」ですので、職員の約6割が薬剤師の資格を持っています。ほかにも法律の知識やIT系の知識など、さまざまな知識、資格を持った職員が働いています。 -
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水上 翔也(仮名) -
仕事内容
麻薬や覚醒剤などの違法薬物を取り締まる。
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自己紹介
※仕事柄、顔写真や名前は非公開です。
体を動かすことが好きなので、サッカーや筋トレをしていましたが、ここ数年は子どもと遊ぶことが楽しみです。
夜の捜査や県外での捜査のほか、泳がせ捜査も
薬物犯罪に関わった疑いがあり、検挙された被疑者の人数は年間で約1万4千人です。薬物犯罪は、基本的には「被害者からの届け出がない」犯罪であるため、まず犯罪を見つけることから始めなくてはいけません。情報収集や張り込みなどで薬物の使用や密売の情報を得て、それをもとに捜査を進めます。例えば、ある人物が薬物を密売しているという情報があれば、その場所に行って張り込みや尾行をし、本当に密売しているのか確認します。薬物を売る人間は昼夜を問わず活動していますが、夜に取引が行われることが多く、私の勤務時間帯は日によって異なります。また私が所属しているのは「関東信越厚生局」で、東京、神奈川、埼玉、千葉、栃木、群馬、茨城、新潟、山梨、長野が管轄です。しかし、例えば「被疑者が大阪から覚醒剤を仕入れている」という情報があれば、手続きを踏んで管轄外の大阪に行くこともあります。
捜査は長期にわたることもあります。通常は違法薬物を見つけたらすぐに押収しなければなりません。一方、「コントロールド・デリバリー」という捜査(「泳がせ捜査」ともいわれます)では、背後の組織や人物を特定して逮捕するために、違法薬物を持っていると知りながらもわざとその人物を泳がせて、その動きを監視・追跡し続けます。
意外に思われるかもしれませんが、外に出て捜査をしているだけでなく、書類作成も仕事時間の多くを占めています。人の持ち物や家を強制的に調べるなどの強制捜査を行う際には、事前に裁判官の審査を受け、「令状」を発付してもらう必要があります。令状の形で裁判官に許可をもらわないと、強制捜査などは行えません。そういった令状を発付してもらうための書類や、捜査や取り調べの記録など、デスクワークも多いです。一つの事件を扱うために、これだけの手間がかかる、というのは、麻薬取締官になる前には想像していませんでした。 -
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水上 翔也(仮名) -
仕事内容
麻薬や覚醒剤などの違法薬物を取り締まる。
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自己紹介
※仕事柄、顔写真や名前は非公開です。
体を動かすことが好きなので、サッカーや筋トレをしていましたが、ここ数年は子どもと遊ぶことが楽しみです。
長時間の張り込みや危険な場面も
薬物犯罪は秘密裏に行われているため、それを見つけ出すのが大変です。また、昼夜を問わず対応するので体力的にも精神的にもきつい仕事です。例えば張り込みをしていても、対象者が一日、まったく家から出てこないこともあります。暑い日に、車の中でずっと張り込みを続けていると、なかなかつらいなと思うこともあります。また、強制捜査で被疑者を押さえるときに暴れられることもありますし、相手が武器を持っている場合もあるので、危険な場面もあります。そのため、逮捕術の訓練もしています。暴力団や危険な相手に対応するときは拳銃を携帯することもあるため、拳銃の訓練も行います。
麻薬などの違法薬物に関する捜査は私たち厚生労働省の麻薬取締部のほかに、警察でも行っています。警察と麻薬取締官の違いは、警察は幅広い分野への捜査権限があるのに対し、私たちは薬物事件に関してだけ捜査権限があるということです。 -
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水上 翔也(仮名) -
仕事内容
麻薬や覚醒剤などの違法薬物を取り締まる。
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自己紹介
※仕事柄、顔写真や名前は非公開です。
体を動かすことが好きなので、サッカーや筋トレをしていましたが、ここ数年は子どもと遊ぶことが楽しみです。
大量押収はその後の犯罪減少につながる
仕事をしていていちばん気分が盛り上がるのは、やはり大量の薬物が見つかったときです。というのも、私たちは警察と比べて人数が少ないので、効率よく仕事をする必要があります。末端の使用者を取り締まるのも必要なことですが、国内に多くの薬物が流れると、その分、使用者が増えてしまいます。つまり、なるべく多くの薬物を押収することは、薬物使用者を減らすことにつながるのです。
横浜は港があることから、海外から薬物が入ってくる事件が多く発生します。2024年には、大きなコンテナに入って外国から来た約531キログラムの覚醒剤(末端価格約350億円)を押収した事件がありました。この事件は警察、税関、海上保安庁と協力し、長期にわたって捜査員全員で休みなく対応しました。さらにその1か月後には、海上で外国船から日本の船に薬物を移す「洋上取引」の事件もありました。千葉沖でしたが、神奈川の警察や海上保安庁と協力して、コカイン約178キログラムを押収しました。船での密輸は大量になりやすく、飛行機では小口になる傾向があります。飛行機の場合は、荷物に少量ずつ隠されていることが多いです。 -
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水上 翔也(仮名) -
仕事内容
麻薬や覚醒剤などの違法薬物を取り締まる。
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体を動かすことが好きなので、サッカーや筋トレをしていましたが、ここ数年は子どもと遊ぶことが楽しみです。
日本の治安を守る使命感や正義感を大切に
この仕事はいつ危険な目に遭うかわからないなど、さまざまな困難があります。だからこそ、薬物犯罪を取り締まることで日本の治安を守るという使命感や、正義感を持って仕事をしています。
今、薬物汚染はどんどん広まっています。以前は取引も都会の繁華街などが中心でしたが、インターネットの普及により、地方でも薬物を取り寄せることができるようになり、都市部以外にも広がるようになりました。
逮捕した後の取り調べでは、薬物を使ったかどうかという事実確認だけでなく、なぜ使ってしまったのか、どうすればやめられるかといった話もします。覚醒剤は依存性が高く、一度使うとやめることが非常に難しいものです。病院に通うことや、同じ悩みを持つ人が集まる自助グループに参加すること、麻薬取締部で行っている再乱用防止支援を紹介するなど、その人に合った方法をアドバイスすることもあります。時にはかつて逮捕した人から感謝とともに近況を報告する手紙が来たり、電話がかかってきたりすることもあります。私たちの存在が、再犯への精神的ストッパーになっていることもあるのだと思います。 -
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麻薬や覚醒剤などの違法薬物を取り締まる。
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体を動かすことが好きなので、サッカーや筋トレをしていましたが、ここ数年は子どもと遊ぶことが楽しみです。
専門知識を生かせる「正義の味方」
理系科目が得意だったこと、両親が薬剤師だったことから、大学は薬学部に進みました。大学に進学する時点では明確な将来の職業は決めていませんでしたが、人の役に立ちたいという漠然とした思いはありました。最初は薬剤師としてどこかに就職するつもりだったのですが、就職活動の途中で麻薬取締官の仕事を知り、子どものころに正義の味方や警察官のような仕事に憧れていたこともあり、興味を持ちました。薬学部で学んだ専門知識も生かせますし、体を動かすのも好きだったので、自分に合っているのではないかと思いました。
麻薬取締部に就職するためには、薬剤師国家試験に合格するか、国家公務員試験に合格すると、採用試験の受験資格を得ることができます。その後、麻薬取締部の採用試験に合格すると、採用です。私は薬剤師国家試験に合格し、採用試験を受けて入省しました。 -
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水上 翔也(仮名) -
仕事内容
麻薬や覚醒剤などの違法薬物を取り締まる。
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※仕事柄、顔写真や名前は非公開です。
体を動かすことが好きなので、サッカーや筋トレをしていましたが、ここ数年は子どもと遊ぶことが楽しみです。
サッカーで培ったチームプレーが捜査に生かされる日々
幼いころから、体を動かすのが好きな子どもでした。小学校からサッカーを始め、サッカークラブに所属して土日はクラブでプレーしていましたし、中学、高校もサッカー部でした。サッカーはチームスポーツですが、今の仕事でも大きな捜査になると大人数で動きますし、チームワークが大切です。そういう点では、サッカーの経験が役立っているなと思います。また、今の仕事で長期間の捜査を通じて大きな成果を挙げたときの達成感は、合宿など大変なことを乗り越えた後で試合に勝ったときの達成感に通じるものがあります。
勉強では数学が得意だったのですが、英語は苦手でした。今の仕事では海外の捜査機関とのやり取りもありますし、外国人の被疑者と英語でコミュニケーションを取ることもあります。日本ではさまざまな国籍の人が薬物犯罪に関わることがありますが、日本語が通じなくても、英語なら通じることもあります。語学の重要性は、今になって実感しているところです。 -
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仕事内容
麻薬や覚醒剤などの違法薬物を取り締まる。
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※仕事柄、顔写真や名前は非公開です。
体を動かすことが好きなので、サッカーや筋トレをしていましたが、ここ数年は子どもと遊ぶことが楽しみです。
薬物犯罪は使用者だけでなく、周囲にも大きな不幸を生む
みなさんに伝えたいのは、将来の目標が決まっていなくても、好きなことを一生懸命やってほしいということです。私自身、この仕事に就くために特別なことをしてきたわけではなく、結果的に今の仕事に就いています。なにかに一生懸命取り組んでいるとさまざまな困難にぶつかりますが、それを乗り越えたときの達成感は大きな自信になります。そういう経験を積み重ねることで、将来どんな仕事に就いても積極的に取り組めると思います。
また、麻薬取締官として伝えたいのは、薬物犯罪は「被害者なき犯罪」といわれますが、実際には多くの被害者がいるということです。例えば、子どもが逮捕されたときの親御さんの様子を見ると本当に心が痛みますし、子どもが薬物を買うためのお金は親から盗んだお金だったり、悪いことをして得たお金だったりします。結局、家族やお金の出どころになった人が被害者になるのです。
薬物を使うと自分の体がボロボロになり、やめたくてもやめられなくなります。もしあなたの友達や先輩が薬物を使っていても「少しくらいいいか」とは絶対に思わないでください。そこから覚醒剤など別の薬物依存に発展したり、お金のために窃盗などの犯罪に手を染めたりする可能性もあります。
最後に、どんな悩みも一人で抱え込まないでください。あなたの周りには必ずあなたを救ってくれる人がいます。私たちもそのために存在しています。悩みがあったら、保護者の方や学校の先生など、信頼できる大人に相談することが大切です。もし、なにか薬物の使用や犯罪に巻き込まれることがあったなら、一人で悩まず周囲に助けを求めてください。 -