私わたしは、東京都足立あだち区くで「Trimming room Laugh（トリミングルームラフ）」というトリミングサロンを経けい営えいしながら、トリマーとして働いています。トリマーの役目は、お客さまからお預あずかりした犬の毛や爪つめのカットやシャンプー、ブラッシングを行い、見た目を美しく整え、犬の美と健康を保たもつことです。お客さまは、月に1回や2か月に1回など来店頻ひん度どはさまざまですが、愛犬のケアのために定期的にサロンに通ってくださいます。その都つ度ど、犬との信しん頼らい関係を築きずきながら、責せき任にんを持ってトリミングを行っています。
もともと私わたしはトリマーとしてペットショップで働いていたのですが、トリミングによって体調を崩くずすリスクのある老犬や病気のある犬は引き受けることができないケースが多く、もどかしい思いをしていました。その経けい験けんから、より多くの犬を受け入れ、最さい期ごまでケアしたいと考え、トリミングサロンの立ち上げを決めました。
起業を決意してからすぐに準じゅん備びを進めて、1年半ほどで開業することができました。最初は老犬や病気の犬の負ふ担たんを少しでも軽けい減げんしたいと、”移い動どう型がたトリミングカー“で営えい業ぎょうをしていました。車でお客さまのご自じ宅たくまで出向いて、車内でトリミングを行う形です。その後、お客さまからの要望もあって1年後には店てん舗ぽもオープンし、移い動どう型がたと店てん舗ぽ、それぞれ半々の割わり合あいで活動しています。
現げん在ざい、トリマーは私わたしだけですが、娘むすめが社会人になったタイミングから、お金の管理や予約管理などトリミング以外の事じ務む的てきな業ぎょう務むは娘むすめに担たん当とうしてもらい、二に人にん三さん脚きゃくでサロンを運うん営えいしています。娘むすめが服ふく飾しょくの専せん門もん学校に通っていたこともあり、ゆくゆくは事業を拡かく大だいして、犬用の洋服やスタイの販はん売ばいなどもしていきたいと考えています。

私わたしは朝9時から仕事を始めています。１頭あたりにかかるトリミングの時間はシャンプーと全体カットを入れて2時間ほどです。犬のサイズや毛け並なみの状じょう態たいによってはそれ以上かかることもあります。お客さまのご要望に合わせて、移い動どう型がたトリミングカーでのトリミングと店てん舗ぽでのトリミングを行っていますが、平へい均きんすると1日で5、6頭の犬をケアしています。お客さまの中には当店を信しん頼らいして遠くに引ひっ越こした後も予約を入れてくださる方もいて、移い動どう型がたトリミングカーで約15キロ圏けん内ないまではうかがっています。
店てん舗ぽではトリミングだけでなく、ペットホテルのサービスも行っています。宿しゅく泊はくだけでなく数時間のお預あずかりも可か能のうで、散歩に連れて行くサービスも提てい供きょうしています。ペットホテルの予約が入っている日は、サロンに泊とまり、朝まで犬を見守ります。
トリミングの仕事が好きで、より多くの犬に対たい応おうしたいという思いから、つい没ぼっ頭とうしてしまい、20時や21時ごろまで仕事をする日も多くあります。繁はん忙ぼう期きは、本来の長さよりも毛を短くするサマーカットが必要な夏と、お祝い事などが多いお正月です。加えて、私わたしは経けい営えい者しゃでもあるため、12月の決算期も忙いそがしくなります。

私わたしがトリミングサロンを経けい営えいするうえで大切にしていることは、「犬が安心して過すごすことができ、お客さまは安心して預あずけられる場所」をつくることです。ペットホテルやサロンによっては、夜になるとスタッフが帰ってしまい、夜間は犬だけになってしまうこともあります。当店では夜間もスタッフが常じょう駐ちゅうし、犬だけにさせないようにしています。また、できるだけ家と同じ環かん境きょうでストレスなく過すごしてもらいたいと考えているので、のびのびと過すごせるように、ケージを開放するなどの工く夫ふうもしています。
トリマーとして施せ術じゅつをする際さいには「犬ファースト」を徹てっ底ていしています。長時間のトリミングは犬に負ふ担たんがかかりますし、犬の集中力も長くは続きません。そのため、できるだけ手て際ぎわよく、スムーズに終えられるように心がけています。また、触ふれ合あうことが好きな犬以外には、自分の「かわいい」という気持ちだけで必要以上に触さわったり、しつこく構かまったりはしません。それぞれの犬の特とく性せいや体調を見ながら施せ術じゅつを行い、犬にとって少しでもサロンが楽しい場所だと思ってもらえるように、日々気をつけながらトリミングをしています。

「犬ファースト」であることはもちろんですが、飼かい主ぬしであるお客さまのご要望にもきちんとお応こたえしたいと考えています。ときには、老犬や病気のある犬のトリミングを希望されるお客さまに対して、「犬への負ふ担たんを考えると、このまま対たい応おうしてよいのだろうか」と思うこともあります。お客さまは「愛犬をきれいにかわいくしてあげたい」という思いからなのですが、犬にとって長時間のトリミングなどは負ふ担たんになってしまいます。そうしたときはお客さまとのコミュニケーションを通じて、犬への負ふ担たんが少ない施せ術じゅつを提てい案あんし、ご理り解かいいただくようにしています。
また、犬同どう士しの接せっ触しょくにも気をつけなければいけません。体たい格かくの違ちがう犬同どう士しだと、体たい格かく差さにおびえてしまい、トラウマになってしまうケースも少なくないので、予約がかぶらないよう細心の注意を払はらっています。
また、現げん在ざいトリマーは私わたし1人だけなので、犬を受け入れられる数に限かぎりがあり、どうにか受け入れられる数を増ふやせないかと模も索さくしています。経けい営えい者しゃとしては、将しょう来らい的てきに規き模ぼを拡かく大だいしたり、店てん舗ぽを増ふやしたりしたいとも考えるのですが、私わたし自身トリマーの仕事が好きで、現げん場ばで働いていたい気持ちも強いので、日々悩なやみ、葛かっ藤とうしています。

苦労や課題もありつつ、お預あずかりした犬たちが心を開いてくれるようになったときや、お客さまからの「助かりました」というお声をいただいたときには大きなやりがいを感じます。
家では元気いっぱいに走り回ったり、はしゃいだりする犬も、当店でのトリミングの際さいにはおとなしく振ふる舞まおうと頑がん張ばってくれます。また、かみつきやすい性せい格かくの犬に対しては、固定の仕方や施せ術じゅつの流れを変えると、落ち着いてトリミングをさせてくれるようになります。このような姿すがたを見ると、「心を許ゆるしてくれているのだな」とうれしく思います。お客さまの中には、「ここのサロンだと愛犬も安心している」という理由で、リピートを決めてくださる方もいます。犬たちの頑がん張ばりのもと、日々のお手入れを続けることができていると実感しつつ、うちのサロンに通い始める前よりも若わか々わかしく、きれいになった犬の姿すがたを見ると、改めてケアの大切さにも気づくことができます。
また、移い動どう型がたトリミングカーの場合は、飼かい主ぬしの方から、「移い動どう型がたトリミングカーが来てくれることで、サロンに預あずけてトリミング後に迎むかえに行くという労力や、移い動どうによる愛犬の負ふ担たんが軽けい減げんされている」という感かん謝しゃのお声をいただけることも励はげみになっています。犬と日々触ふれ合あうことで癒いやされながら働くことができるのも、この仕事の魅み力りょくです。

私わたしは、幼おさないころから何でも自分で決めて即そく行動するタイプでした。何を言われても諦あきらめきれない性せい格かくということもあり、自分で決けつ断だんすることが多かったです。
また、学校には1日も休まずに通い、放課後はいつも友達と外で走り回っているような活発な子どもでした。部活動でも運動部に所しょ属ぞくし、小学校から高校までバドミントン一ひと筋すじでした。今もついつい仕事に没ぼっ頭とうしてしまうのですが、当時もレギュラー入りや都大会出場という目標に向かって打うち込こんでいたので、昔から変わっていないかもしれません。
そして何より、とにかく動物が好きな子どもでした。家では動物を飼かうことができなかったので、近所の犬や猫ねこ、祖そ父ふ母ぼの愛犬といつも触ふれ合あっていたことを覚えています。物心ついたときにはすでに動物が好きだったようで、幼よう少しょう期きの写真は犬を抱だっこして写っているものばかりです。

外に出たら近所の犬や猫ねこと触ふれ合あうなど、動物といる時間が多かった幼よう少しょう期きを過すごしたこともあり、気づいたときには、動物関係の仕事に興きょう味みを持っていました。トリマーという仕事を選んだ理由も、動物が好きで、動物に関係する仕事に就つきたいという思いからです。
一人暮ぐらしをして自分で犬を飼かい始はじめたこともきっかけになりました。愛犬を迎むかえ入いれた当初は、自分でカットする技ぎ術じゅつがなく、トリミングサロンにお願いしていたのですが、知らない場所でカットされる愛犬の負ふ担たんを和やわらげたいと考え、トリマーを目指すことにしました。
幼おさないころから一いっ緒しょに動物をかわいがっていた妹の影えい響きょうも大きいかもしれません。実は妹のほうが先に犬に関わる仕事に就つき、好きなことを仕事にする姿すがたに刺し激げきを受けました。妹は現げん在ざい、ドッグトレーナーの仕事をしていますが、お互たがいに切せっ磋さ琢たく磨まし、それぞれの知ち識しきを共有し合いながら、よき相談相手にもなっています。

トリマーになるために資し格かくは必ひっ須すではありませんが、知ち識しきや技ぎ術じゅつは必要です。トリマーとして働くための方法は、いくつかあります。まず一番多いのが、トリマーの養成スクールや専せん門もん学校に通い、知ち識しきや技ぎ術じゅつを身につけるパターン。次に、資し格かくを取しゅ得とくするパターンです。トリマーに関する資し格かくはいくつかありますが、国家資し格かくではなく、いずれも民間団だん体たいによるものです。私わたしは「JKC公こう認にんトリマーライセンス」という資し格かくを取しゅ得とくしました。通信講こう座ざで取しゅ得とくできる資し格かくもあり、子育てが落ち着いた方や別のキャリアから転てん職しょくする方は、この方法で資し格かくを取しゅ得とくするケースが多くなっています。さらに、ペットショップやペットサロンなどで働きながら、先せん輩ぱいのトリマーから技ぎ術じゅつを教わるパターンもあります。この場合は、見習いから始めて、実地で働きながらトリマーとしての力をつけていきます。
どの場合もトリマーとしてデビューするまでに経けい験けんを積む必要があります。現げん場ばで活かつ躍やくできるようになるまでに時間もかかり大変な仕事ですが、動物が好きな気持ちがあれば、何なん歳さいからでも挑ちょう戦せんすることができます。

みなさんにお伝えしたいのは、本当に好きなことが見つかったら、それを続けてみてほしいということです。私わたしは幼おさないころから動物が好きで、動物に関わる仕事に就つきたいと夢ゆめ見みていました。実は、夢ゆめをかなえるためにトリマーの専せん門もん学校に通ったものの、一度挫ざ折せつしてしまった経けい験けんもあります。でも、夢ゆめを諦あきらめきれず、ペットショップで働きながらトリマーの資し格かくを取しゅ得とくしました。みなさんの中にも何かを目指して途と中ちゅうで挫ざ折せつしたり、気持ちが変わってしまったりする人もいるかもしれません。しかし、好きなことを続けていればきっと、やりたい仕事につながると信じています。
そもそも、好きなことを見つけるのが難むずかしいという人もいるかと思います。そんなときは、外に出ていろいろな経けい験けんをしてほしいです。インターネットでなんでも調べられる時代ですが、経けい験けんこそが自分の「好き」を探さがす一番の近道だと思っています。そして、ちょっとでも好きだと思ったことや興きょう味みを持ったことは、深ふか掘ぼりしてみてください。好きという気持ちは、必ず未来への道につながっていくはずです。