みなさん，オカリナって知っていますか？
粘ねん土どを焼いて作る素す焼やきの笛です。素そ材ざいは，縄じよう文もん土器や弥やよ生い土器と同じです。だから，太古の昔の遺い跡せきからも出土していて，儀ぎ式しきなどで使われたと考えられています。
1853年イタリアで素す焼やきの笛を近代音楽のドレミファソラシドの音階に調ちよう律りつした楽器であるオカリナが発明されました。 日本では，1985年頃ごろからオカリナの人気が高まってきました。最近では，中国，韓かん国こく，台たい湾わんなどでもオカリナが盛さかんになっています。欧おう米べいでは，ゲームの影えい響きようからオカリナを知るようになった人たちも沢たく山さんいます。
今後も，手軽な楽器であるオカリナは，世界中に広まっていくと思います。
また，いろいろな世代の人たちに知ってもらう必要もあります。
オカリナの普ふ及きゆう活動のため，海外に出かけてPRしたり，インターネットの動画サイトに投とう稿こうしたり，ゲームや，若わかい世代の人たちが好むボーカロイドなどの音楽とコラボレーションしたり，可か能のう性せいは沢たく山さんあります。

オカリナが完成するまでにはたくさんの工程(こうてい)があります。①２つの型の粘土(ねんど)を張(は)り合わせる，②乾燥(かんそう)，③調律(ちょうりつ)，④窯(かま)で焼いて焼成，⑤再度(さいど)調律(ちょうりつ)，⑥塗装(とそう)，⑦検査(けんさ)・調整。たくさんの工程(こうてい)を一から手作りで作っています。オカリナは楽器として品質(ひんしつ)が命です。社員全員が良いものを作ろうという気持ちになることで，一つひとつの工程(こうてい)の精度(せいど)もあがり，多くの人に愛されるオカリナを作り上げることができるのです。
私わたしは社長という立場ですので，朝８時じころに出社して身の回りの清掃(せいそう)と朝礼の準備(じゅんび)をします。朝礼ではその日の仕事の内容(ないよう)の確認(かくにん)と，昨日起きた事の報告(ほうこく)を受けます。それから会社で起きていることや，今後の予定などを説明して情報じょうほうを共有しています。
９時から11時ぐらいまでが大体検品(けんぴん)ですね。11時から12時くらいまではメールを見て，１時から４時くらいまでが打ち合わせやオカリナの調律(ちょうりつ)を行います。
４時から５時半くらいまではまたメールを見て，各方面の連絡(れんらく)です。今は大体その後も仕事があって，５時半から８時半くらいまでに新しいホームページの企画(きかく)などを行っています。

会社のやり方は２０～３０年で古くなってしまうものなので，時代の変化とともに会社も変わって行かないといけない，という危機(きき)意識(いしき)を常(つね)に持っています。
そして，その危機きき意識いしきが，攻せめの姿勢しせいを持つことにつながると思います。例えば，新商品を出すことは大事な攻(せ)めのひとつです。商品ラインナップを徐々(じょじょ)に増(ふ)やし，売上をあげるようにしています。商品は自社で作る事もあれば，場合によっては外注も一つの手段(しゅだん)となります。その際(さい)の交渉(こうしょう)は，やはり気を使います。例えば，オカリナ専用(せんよう)のクリーニングブラシを作っているのですが，機能(きのう)に特化して価格(かかく)を抑(おさ)えたり，発注数をできるだけ少なくしてもらったりと，小さな仕事を一つずつ，コツコツ積み重ねていく。これが大事です。小さなことの積み重ねていくことで，ちりも積もれば山となる，ということわざのように，いつしか高い頂いただきに登ることにつながるのです。

31歳さいのころに，ある楽器店さんが主しゆ催さいする70歳さい以上の高こう齢れい者しやの方たちのオカリナ演えん奏そう会かいに招まねかれました。そこで，1人のおばあちゃんが，曲の演えん奏そうができず，ドレミファソラシドの音階だけを吹ふきました。「一いつ生しよう懸けん命めい練習したけれど，今，私わたしが吹ふけるのはこれだけです」とお話していました。
でもね，曲じゃなかったけど，そのドレミファソラシドから，おばあちゃんの一いつ生しよう懸けん命めいな気持ちが伝わりました。オカリナは，手軽な楽器です。だから，今まで音楽が苦手だった方でも，楽器経けい験けんがなかった方でも，「オカリナだったらできるかもしれない。」と音楽とかかわるきっかけを作ってくれる「楽器」なんだ，そのことを実感した経けい験けんでした。そして，オカリナ製せい作さくという自分の仕事も「悪くないな。」と思った瞬しゆん間かんでした。
今は，オカリナでいろいろなジャンルの素す晴ばらしい演えん奏そうをしてもらいたいと思っています。でも，一方で「音楽の窓まど口ぐちとなる楽器」オカリナ，ということが，この楽器の原点である，と心に刻きざまれています。

私わたしは仕事をするうえで，3つのポリシーがあると思っています。
１つ目は「当たり前の事をきちんと当たり前にやる」ということです。たとえば朝８時半から出勤(しゅっきん)なら１５分くらい前には来て準備(じゅんび)をしておきます。そういった事ができるかできないか，そして，毎日続けられるかどうか，ということです。
2つ目は「コミュニケーション」です。コミュニケーション＝意思疎そ通つうは，どの仕事でも絶ぜつ対たいに必要です。その大だい前ぜん提ていは，自分以外の「人」は，自分と同じではない，違ちがう考え方，違ちがう性せい格かく，違ちがう得意分野や違ちがう苦手分野を持つ，別の「人」という認にん識しきが大切です。違ちがう「人」に自分の考え方をどのように分かってもらうか，反対に，違ちがう「人」の考えをどこまで理り解かいできるか，結果，どこを最さい適てきな結けつ論ろんとすれば良いか，毎日コミュニケーションを取って調整することが大切です。
では，問題が起きた時だけ話しかけてコミュニケーションは取れるのでしょうか。その時だけ話しても簡かん単たんにコミュニケーションは取れません。日々顔を合わせる中で，あいさつから始まり，その時々に，いろいろ話しかけたり，問いかけに応おうじたりして，一人ひとりのことを少しずつでも知っていくこと，自分のことを少しずつでも知ってもらう必要があります。
みなさんも，小学校，中学校に入学した時，クラスが変わった時，新しい先生や友達にちゃんとあいさつをして，そして，あいさつだけでやめずに，続いて，いろいろなことを話しかけてみてください。先生や，友達から話しかけてもらったら，自分の考えを話してみてください。きっと，かけがえのない恩おん師しや，友達ができると思います。
3つ目は「誰だれにもこの仕事は譲ゆずれない。」という強い意い志しです。よく自分にしかできない仕事をやりたい，という若わか者ものがいます。 でもね，世の中の仕事はほんとんどが誰だれにでもできる仕事です。私わたしがやらなくても，あなたがやらなくても，他に代わりはいくらでもいます。 それでも，他の人に譲ゆずりたくない，自分がこの仕事をやりたい，そういう強い気持ちがあって初めて仕事のスタートラインに立てるのだと思います。

大学を２２歳(さい)で卒業して，最初は銀行のシステムエンジニアとして就職(しゅうしょく)しました。サラリーマン時代に経験したことや先輩(せんぱい)や上司から教わった事を今，会社で話すこともあります。
会社を継(つ)ぐことを意識(いしき)して入社したのは２８歳(さい)の頃(ころ)です。オカリナを自社で作っていくことをゼロから始めて行く中で，やらなければならないことが多過すぎて，40代で社長にならないと間に合わない，と思うようになりました。
社長になる，と言っても，はいどうぞ，となれるわけではありません。私わたしは，とにかくオカリナの事業を成長させていくことで周囲に納なつ得とくしてもらえる環かん境きようを作ってきました。時には，朝5：00から仕事を始めることも，夜0：00過すぎまで仕事をすることもありました。なんでそんなことをしたのでしょう。 誰だれかに強きよう制せいされたわけではありません。まあ，自分がそうしたかったんですね。ただ，頑がん張ばることと，無む茶ちやをすることは違ちがいます。みなさんも，大いに頑がん張ばってほしいのですが，無む茶ちやはしないでください。

小学校，中学校のころは，まだ何をやっていいか分からないと思います。明確(めいかく)な目標を持っている人もいれば，まだ先にならないと目標を持てないという人もいます。
とにかく，目の前の事を一生懸命(いっしょうけんめい)やってください。
一生懸命(いっしょうけんめい)生きていると，自分には何が大事かということが分かってくると思うんですよ。だんだん自分の中で良い意味での好き嫌(きら)いができて「私(わたし)が求めていたのはこれだ！」というものに出会えます。だから，これからも力強く，何事にも一生懸命(いっしょうけんめい)頑張(がんば)ってください。