私わたしは「株かぶ式しき会がい社しゃ学がく友ゆう館かん」という会社で働いています。みなさんも授じゅ業ぎょうで使ったことがあると思いますが，おはじきやおもちゃのお金が入っている算数セットや習字セット，ドリルや工作キットなど，勉強が楽しく・分かりやすく進められるような商品を学校に販はん売ばいする会社です。沖おき縄なわには離り島とうも含ふくめて小中学校が300校ほどありますが，そのほとんどの学校に，私わたしたちが商品をお届とどけしています。
私わたしは，会社の中では「商品管理」という仕事を担たん当とうしています。前の日に入った注文の伝票を仕分けする事から1日の仕事が始まります。伝票にはどの商品がどの学校にいつまでに何なん個こ必要なのかが書かれていて，それを慎しん重ちょうに確かく認にんしていきます。注文の商品が会社の倉庫にあるものか，県外の会社に注文しなければいけないものかを確かく認にんし，それぞれの担たん当とうに仕事を振ふり分わけていきます。それから届とどいた商品の出しゅっ荷か準じゅん備びをし，注文と届とどける商品に間ま違ちがいがないかを最終確かく認にんします。各学校の営えい業ぎょう担たん当とうへ商品を引ひき渡わたすまでが，商品管理の仕事です。
細かいチェックをする丁てい寧ねいさと，期日を守るためにスピードも必要とされる仕事です。

学友館の商品管理は，男だん性せい3名，女じょ性せい17名の計20名のチームで動いています。商品管理のメンバーはそれぞれが役やく割わりを持っていて，仕事が遅おくれずに進んでいるか確かく認にんすることがチームをまとめる係長としての私わたしの役目です。
日によっては，ある人の担たん当とうしている仕事がとても忙いそがしくなるときもあります。そんなときは「今，私わたしは仕事がいっぱいです。どなたか空いている方は手を貸かしてください！」と大きな声でチームのみんなに宣せん言げんするように決まりをつくりました。1人で抱かかえきれない仕事があるときは，お互たがいに助け合って，チームのみんなで対たい応おうしています。仕事は1人で抱かかえ込こまないようにすることが大事です。誰だれかの仕事が止まっているのに気づかないままだと，商品のお届とどけが遅おくれてしまい，せっかく注文してくれた先生や，楽しみに待っている子どもたちを，がっかりさせてしまいますよね。それに，これまで会社が築きずいてきた学校との信しん頼らいを無くしてしまいます。私わたしたちのチームは先生や子どもたちと直ちょく接せつ会うことはないのですが，「学友館に頼たのんだら希望した日にちまでに丁てい寧ねいに届とどけてくれるな。また学友館にお願いしよう」と思ってもらえるために，毎日頑がん張ばっています。

私わたしは小さい頃ころから，テレビの中のアイドルが大好きでした。いつも明るくていきいきと楽しそうで，そして周りも明るくするような，そんな人に憧あこがれて，自分もそうなりたいって思っていました。マンガの『アタックNo.1』に出てくる主人公のこずえちゃんも，バレーボールが上う手まくなりたくてつらいことがあっても前向きな姿すがたがキラキラ輝かがやいてみえましたね。中学生のときは，こずえちゃんと同じバレーボール部に入部して練習に励はげんでいました。
その頃ころからだと思いますが，楽しそうにしている人を見ると，こんなに輝かがやいているのはどうしてだろうって，答えを知りたくて観察していましたね。そのせいもあると思いますが，その人の魅み力りょくをひきだすことのできる美び容よう師しになることを目指していました。

私わたしはヘアメイクが好きなのでお気に入りの口くち紅べにをつけると，いつでもハッピーな気分になります。自分だけでなく周りの人がいつでも明るい気持ちでいられるような工く夫ふうもいつも心がけています。チームの誰だれかがが少し疲つかれているなと気になるときにはチョコを配ったり，声をかけたりして，少しでも気分転てん換かんができるようにしています。仕事をするうえで，仕事の内ない容ようはもちろん大事だと思いますが，誰だれとどんな気持ちで働くのかという環かん境きょうも同じくらい大事だと私わたしは思います。
仕事はめちゃくちゃ忙いそがしい時期もあって，つらいときももちろんあります。ですが「楽しく仕事できています！」と言ってくれるチームのみんなの笑え顔がおをみると私わたしも嬉うれしいんです。ほんの少しの工く夫ふうや気き遣づかいで，自分も周りの人もいきいきとして働けます。子どもの頃ころ目指していた美び容よう師しにはなれませんでしたが，この仕事でもまわりの人を笑え顔がおにできることがなによりも嬉うれしいです。

私わたしがこの会社に入ったときは，短い時間で仕事をするパートタイムという働き方をしていました。その頃ころは，負まけず嫌ぎらいの性せい格かくもあって，時間内で終わらなかった仕事を，他の人に頼たのむのが申もうし訳わけないと思い，必死で仕事をこなしていました。それから，係長の役やく職しょくにつき，部下を持つようになりましたが，ここでも，他の人に仕事を頼たのむより，私わたしが進めた方が早いと思い，ついつい一人で仕事をしていました。自分に与あたえられた仕事を誰だれにも頼たよらず，自分だけの力でやりきることに達成感を感じていたかったからです。でも，それを続けた結果，どうなったと思いますか。抱かかえている仕事の量がどんどん増ふえ，私わたししか知らない事だらけで，休きゅう憩けいをとりたくても誰だれにも頼たのめず時間に追われ，心も身体もパンク寸すん前ぜんの状じょう態たいになってしまいました。「こんなに一いっ生しょう懸けん命めいやっているのに，どうして仕事が終わらないの？」忙いそがしくて気持ちの余よ裕ゆうもなくなり，ピリピリしてしまう事が多くなってしまったのです。そして「こんな私わたし，昔憧あこがれていた『輝かがやいている人』なんかじゃない！」と気づいたのです。自分も周りも輝かがやくためには，チームワークは一人だけで頑がん張ばってもダメなんです。

私わたしがチームに仕事を振ふり分わけるときに気をつけていることは，「相手の立場になって考える」ことです。細かい作業が得意な人には「この仕事を頼たのもう」とかですね。 たとえばあなたが得意な科目が算数だとしたら，算数の宿題はすぐに終わりますよね。それと同じです。自分が得意な事を任まかされると，スピードも速いし，何よりも自信を持って楽しく進められます。どちらが“良い・悪い”ではなくて，その人にとっての“得意・不得意”を見み極きわめて考えています。だからといって，得意な事ばかりを任にんせているわけではありません。相手の不得意な仕事だったとしても，ここまでは頼たのんでみようとか，次に頼たのむときには，その先まで頼たのむこともあります。そうすると，以前はできなかった仕事が，今ではできるようになるんです。チームのみんなが一歩ずつ成長している姿すがたをみることが，やりがいでもあり，誇ほこりでもあります。

部下を「成長させたい！」という思いは，そう簡かん単たんには伝わるものではなく，たくさん失敗もしてきました。考えるより先に強い言葉がぱっと口から出てしまい，私わたしはそんなつもりはなくても，相手にとっては傷きずつける言葉として受け取られてしまうこともあります。言いい過すぎてしまったかな，と叱しかった後に悩なやむ事もよくあります。
とはいえ，相手の成長につなげるためにも，注意するときは，相手の立場を考えるよう心がけています。特に自分の都合や感かん情じょうが混まざらないように常つねに気をつけています。もしも，そんな言葉を使ってしまったときは素す直なおに謝あやまり，冷静に話すようにしています。
指し導どうするという立場は，孤こ独どくを感じることもあります。そんなときは会社の同どう僚りょうや上司へ相談します。また，私わたしの尊そん敬けいする松下幸こう之の助すけさんの『叱しかる人は好きで叱しかっているわけでない』という言葉に励はげまされています。
指し導どうをする立場になって気づいたことは，厳きびしい言葉の裏うら側がわには相手を思いやる気持ちがあるということです。私わたしもこれまでに，上司から叱しかられることもありました。そのときはふてくされる気持ちになります。でも，その厳きびしい言葉があったからこそ，自分の足りない部分に気づくことができました。叱しかることは相手の成長につながると信じているし，「相手を信しん頼らいしているからこそ，厳きびしい事が言えるんだ」と今では確かく信しんがあります。

私わたしはこの会社に勤つとめて18年目の管かん理り職しょくです。これからは，今まで先せん輩ぱい方がたや周りの人からもらったアドバイス，そしてこれまでの自分の経けい験けんを，次の世代に伝えていくことが私わたしの役目だと思っています。私わたしの好きな言葉で，「人はみんなダイヤモンドの原石」という言葉があります。ダイヤモンドの原石は，もともと美しく輝かがやく本ほん質しつをもっているのですが，磨みがかなければ光ひかり輝かがやくことはありません。
みなさんは今まさに自分自身を磨みがいている途と中ちゅうだと思います。自分の夢ゆめや，やりたい事を見つけてどんどん磨みがいていってください。それから，先生や家族など周りの人からの厳きびしい言葉も，きっと自分を磨みがいてくれています。「どうせ私わたしなんて」という気持ちは，せっかくのダイヤモンドを逆ぎゃくに曇くもらせてしまいますよ。そんな時は受けとり方を変えてみてください。
自分も輝かがやいて，そしてその輝かがやきが周りの人を照らすような，そんな魅み力りょくあふれる人になってくださいね。