私わたしは，あらゆるジャンルの「ものづくり」のための機械や工具を製せい造ぞう・販はん売ばいする「シーフォース株かぶ式しき会社」の社長です。本社は東とう京きょう都と台たい東とう区くにあります。シーフォースは多た彩さいな品ぞろえが自じ慢まんで，三次元データをもとに樹じゅ脂しや金きん属ぞくで立体を作る「3Dプリンター」や，彫ちょう刻こくや切せつ断だん，溶よう接せつなどの加工ができる「レーザー機器」，材料を削けずったり磨みがいたりできる「超ちょう音おん波ぱ加工機」といった機械から，ハサミやピンセットなどの作業用工具までそろえています。
これらには，社内で開発・製せい造ぞうしている自社製せい品ひんと，海外から輸ゆ入にゅうしている製せい品ひんとの2種類があります。また，こうした機械と工具を使った加工も行っていて，お客さまからの依い頼らいで，キャラクターのフィギュアやトロフィーのほか，ときには格かく闘とう技ぎのチャンピオンベルトなども作っているんですよ。
お客さまの層そうも幅はば広ひろく，最新機器を開発している企き業ぎょうや大学の方，プロの造ぞう形けい作家さん，ものづくりを学んでいる学生さん，ネイルアートやアクセサリーづくりを楽しんでいる一いっ般ぱんの方など，実にさまざまです。
2020年1月にオープンした，店てん舗ぽと工こう房ぼうとを兼かねた本社ビルは，最新の加工機械を展てん示じするショールームとプロ工具ショップ，職しょく人にんに直ちょく接せつ，相談ができる加工室のほか，自社製せい品ひんの開発室や，写真や映えい像ぞうの撮さつ影えいができるスタジオまで完かん備びしています。
このような会社で，私わたしは社長として開発・製せい造ぞうを担たん当とうするほか，「お客さまや社員とよく話し，みんなが“楽しい”と思える会社にすること」を心がけて経けい営えいの仕事もしています。

自社製せい品ひんには，レーザー機器，超ちょう音おん波ぱ機器，メッキ装そう置ちなどがあります。どの製せい品ひんも，「こういう機械があったらいいな」という私わたしのアイデアから開発がスタートしました。社員も私わたしのアイデアを面おも白しろがってくれていて，「よし，みんなで作ろう！」と，とても前向きに取り組んでくれています。
設せっ計けい図ずも，私わたしが描かきます。このときに意い識しきしているのは，その機械を見た人や使った人に，「おぉ！こんな機械があるのか！」といった驚おどろきと感動を与あたえられるかどうか，です。もちろん，機械ですから壊こわれないことや信しん頼らい性せいは大切ですが，それ以上に，「面おも白しろい機き能のうが付いている」「外観がユニーク」などの，他社の機械にはないオリジナリティが重要だと思っています。
特にこだわっているのは，黒を基き本ほんにした色使いです。また，「かっこいいデザイン」であることも欠かせない要よう素そで，例えばレーザー加工機は，一見，加工機だとはわからないデザインです。まるでオーディオ機器のような外見に仕上げました。「これ，加工機だよね？このデザインは今までなかったな，素す敵てきだな」「ほかのメーカーより高かったけれど，このデザインが気に入ったから買ったんだよ」などとお客さまから言われると，うれしくなります。

自社製せい品ひんは，開発から製せい造ぞうまで，すべて社内で行っています。最初に自社製せい品ひんの開発にチャレンジしたのは，2014年です。当時は私わたしも含ふくめて社員全員，開発に関する知ち識しきはまったくありませんでした。普ふ通つうだったら「無理なんじゃないか」とあきらめてしまうところかもしれません。でも，やって無理なことというのは，実はあまりないんですよね。「わからなくても，とにかくやってみよう」「絶ぜっ対たいにあきらめるなよ」と，最初は本を読んで独どく学がくで勉強することから始めました。その後，開発のメンバー全員で，産業技ぎ術じゅつの研究機関が主しゅ催さいする勉強会に通いつめたりもしました。
どんな機械でも，機器の目的が同じであれば，基き本ほん的てきな仕組みはほぼ同じです。わからなければ，既き存そんの他社製せい品ひんの中身を見てみて，「こういう仕組みなのか」「この基き盤ばんはなんだろう」「わかる人に聞いてみよう」というふうに，疑ぎ問もんに対して素す直なおに立ち向かっていけば，必ず道は開けます。こういったことを積み重ねることで，さまざまなオリジナル製せい品ひんを社内で開発することができたのです。
また，自分たちで開発し，製せい造ぞうしているため，調整や修しゅう理りもすべて自社内で対たい応おうできます。中でもレーザー機器は，メーカーなどのお客さまの中でも，特に最新製せい品ひんの試作品を作る部ぶ署しょからの需じゅ要ようが大きい製せい品ひんです。それぞれのお客さまの要望に合わせてカスタマイズして作ったり，納のう品ひん後のメンテナンスで細かく調整したりできるのも，シーフォースが信しん頼らいされている理由なのではないかと感じています。

輸ゆ入にゅう製せい品ひんの中でも売り上げが大きいのは，3Dプリンターです。今では一いっ般ぱん的てきに使われるようになった3Dプリンターですが，私わたしが最初の1台を輸ゆ入にゅう販はん売ばいしたのは，2005年のことでした。
「まずは1台，売ってみよう」という好こう奇き心しんから，実じっ際さいに見てもいない，1,000万円ほどもする高こう額がくの機械をイタリアから仕入れたのです。当時は小しょう規き模ぼな会社だったので資し金きんも少なく，注文するときにとても緊きん張ちょうしたのを覚えています。
仕入れた後は，毎日，必死で営えい業ぎょうしました。しかし，やっとのことで売れたものの，「使い道がありません」と返品されてしまったのです。それでも，また必死に営えい業ぎょうして何とか販はん売ばいすることができました。無む謀ぼうにも思えるチャレンジでしたが，この経けい験けんがなければ，今の会社はありません。このとき取り引きしたメーカーの3Dプリンターは，今では多くの業界で導どう入にゅうされています。シーフォースでも輸ゆ入にゅうを続けていて，会社の中で大きな売り上げを占しめる主力商品になりました。

高校卒業後，私わたしはおしゃれなレストランで料理を作るシェフに憧あこがれて，調ちょう理り師しの専せん門もん学校に入学したんです。そんな私わたしが，機械や工具を扱あつかう仕事に就つくことになったのは，祖そ父ふが経けい営えいする金物屋でアルバイトをしたことがきっかけでした。当初は工具の面おも白しろさに気付けなかったのですが，あるとき職しょく場ばの人から「ジュエリーを加工する工具を扱あつかう仕事をしてみたら？」と勧すすめられて，アクセサリーの工場を見学することになったんです。当時，ファッションに興きょう味みがあった私わたしは，とても乗り気でした。また，見学先の職しょく人にんさんたちも親切に教えてくれて，一気に興きょう味みがわきました。
その後，自分でも工具屋をやってみたくなり，親の協力を得えて，2000年1月に会社を設せつ立りつしました。社名は，設せつ立りつしたのが辰たつ年どしだったので，英語でタツノオトシゴを意味する「シーホース」からさらにひねりを加えて，「海の力」という意味の「シーフォース」と名付けました。設せつ立りつ当時は，興きょう味みのあったジュエリー関係の機器や工具を中心に販はん売ばいをしていました。輸ゆ入にゅう機器の販はん売ばいは，「ジュエリーの加工に必要な超ちょう音おん波ぱの洗せん浄じょう機きがほしい」という私わたしの思いつきから，韓かん国こくのメーカーと提てい携けいしたのが出発点です。当時の私わたしはまだ若わかく，怖こわいものはありませんでした。一人で韓かん国こくに行き，現げん地ちのメーカーに交こう渉しょうに行ったのです。

会社を続けて20年たった今，事業が広がり，社員も50人ほどに増ふえました。自社製せい品ひんの種類も増ふえ，世界の15か国から製せい品ひんを輸ゆ入にゅうし，取とり扱あつかう工具も1万点以上にものぼっています。また，さまざまな加工に対たい応おうするための設せつ備びや技ぎ術じゅつも整いました。これらの原動力となったのは，「思いついたら，まずはやってみる」という精せい神しんです。
売り上げをのばすことができたのは，目先の売り上げよりも，会社が社員にとって居い心地ごこちのよい場所になることを優ゆう先せんしてきたからだと思います。シーフォースには，失敗しても怒おこる人はいませんし，売り上げよりも笑え顔がおでいることを，いつも大事にしています。
単に売り上げをのばすのが目的であれば，努力して営えい業ぎょうしたり，よい製せい品ひんを開発したりするなど，がんばれば達成できるでしょう。でも，いちばん効こう果か的てきなのは，「働く社員全員が楽しく仕事できること」だと思います。これができていれば，間ま違ちがいなく売り上げはのびると，私わたしは信じています。
そのために心がけているのは，普ふ段だんから社員と同じ目線でたくさん話すことと，自分ができないことを社員に要求しないことです。例えば，難むずかしい仕事を担たん当とうしている社員には，「この目標を達成するのは難むずかしいかもしれないね。だから，一いっ緒しょにやり方を考えようよ」というように話して，ともに考えていくようにしています。

子どものころから，友達はとても多かったと思います。考えてみたら，私わたしには嫌きらいな人がいないんです。嫌きらいな人がいないから，嫌きらわれることもないんですね。友達みんなのことが大好きだったので，自分から率そっ先せんして声をかけていました。朝は必ず「おはよう」とあいさつする，何かしてもらったら「ありがとう」と言う，誕たん生じょう日びには「おめでとう」と言う。たったこれだけのことですが，きちんと実行していました。
好こう奇き心しん旺おう盛せいで，行動力もあったと思います。例えば，中学2年生のときには，「手品をしていると目立つし，かっこいいから」という理由で，マジック部を設せつ立りつしました。当時，新しく部活を作ろうと考える人はだれもいなくて，部活の作り方すらわかりませんでした。そこで，「どうやったら部活は作れるんですか？」と，校長先生に聞きに行ったんです。その中学校では何十年かぶりに新しい部活ができたとのことで，まわりからはとてもめずらしがられていたようです。文化祭ではみんなでマジックショーをやったりして，とても楽しかったですね。
友達が大事だという気持ちは今でも変わっていません。実は，シーフォースの社員の中にも，私わたしの中学校と高校のときの同級生がいます。卒業後，久ひさ々びさに会ったときに，「手伝ってよ」と声をかけたのをきっかけに，そのまま20年近く一いっ緒しょに仕事をしています。

日々，私わたしが大切にしているのは，「笑え顔がおでいる」「友達を大切にする」「好こう奇き心しんを持つ」ことで，これらは小さいころから心がけています。どれも欠かせませんが，中でも好こう奇き心しんについては，浅く広くでもいいと思います。
私わたし自身も，高校卒業後は調ちょう理り師しと美び容よう師しに憧あこがれ，迷まよった末に調ちょう理り師しの専せん門もん学校に通いました。しかし，結局は「ものづくり」の工具や機械に興きょう味みがわき，学んだこととまったく違ちがう分野に進みました。一見，一いっ貫かん性せいがないように思えるかもしれませんが，いつも，そのときに自分が笑え顔がおになれることを選せん択たくしてきました。
これは今でも変わらず，最近は，ものづくりの楽しさを伝えるためのYouTube番組の配信に興きょう味みがわきました。そこでさっそく，「とみちゃんTV」というYouTubeチャンネルを作り，会社の撮さつ影えいスタジオで撮さつ影えいをすることにしました。テーマはそのときによって変わりますが，先日は，27インチの大画面のノートパソコンを自作し，その制せい作さく過か程ていを紹しょう介かいしました。設せっ計けいから自分で考えましたが，われながらとてもかっこよく仕上がったと思います。こういった楽しみを見つけながら，笑え顔がおで仕事をすることが，私わたしのモットーです。
みなさんも，いつも笑え顔がおでいてください。そして，やりたいことがあったら，仲間と一いっ緒しょにいろいろなことに挑ちょう戦せんしてほしいと思います。