私わたしは、東京都中央区にあるジェラート専せん門もん店てん「ジェラートミキ築つき地じ」を経けい営えいしています。ジェラートミキ築つき地じは、「ニュージーランドのジェラート屋さんの味を日本に広めたい」という思いから、2023年にオープンしました。現げん在ざいは、代表である私わたしを含ふくめた2名でお店を運うん営えいしています。お店がある築つき地じという街にはもともと大きな市場がありました。そして、今も続く築つき地じ場外市場には飲食店や食料品店などが立たち並ならび、観光地として有名です。そのため、場外市場のすぐそばにある私わたしたちのお店には、国内外から多くのお客さまが訪おとずれます。
開店前は、朝9時ごろからジェラートの仕し込こみを行います。その日に仕入れたフルーツなどの材料を下した処しょ理りし、牛ぎゅう乳にゅうや生クリーム、砂さ糖とうなど、ジェラートのベースとなる材料と一いっ緒しょに、ブレンダーでよくかき混まぜます。その後、ジェラートを作るためのマシンに入れて加熱殺さっ菌きんし、マシンでかき混まぜながら冷やし固めていくと、ジェラートの完成です。1種類のジェラートを作るのに、だいたい30分程てい度どの時間がかかります。でき上がったジェラートは、見た目でもお客さまに楽しんでいただけるよう、お店のショーケースにきれいに並ならべていきます。
お店の営えい業ぎょう中は店頭で接せっ客きゃく販はん売ばいをしながら、SNSでのお知らせや、デリバリー用のジェラートの準じゅん備び、また、材料の発注やお店の売上管理なども行っています。営えい業ぎょう時間は昼の12時から夜の23時まで。仕事帰りなど、夜よる遅おそい時間帯でもおいしいジェラートを楽しめるのが、ジェラートミキ築つき地じの特とく徴ちょうです。

お店では、世界でも有数のアイスクリーム大国であるニュージーランドのジェラートを再さい現げんしています。看かん板ばんやカップなどに使用しているキャラクターも、ニュージーランドの国鳥であるキーウィをモチーフにしています。
ジェラートは、ニュージーランド発はっ祥しょうの「ホーキーポーキー」や、欧おう米べいで人気の「アボカド」など、日本では珍めずらしいユニークなフレーバーが人気です。特に「ホーキーポーキー」は、中に「トフィー」という、サクサクした食感の甘あまいお菓か子しが入ったキャラメル風味のフレーバーで、お店の看かん板ばん商品です。店頭では、常つねに8～9種類のジェラートを提てい供きょうしており、定番商品である「濃のう厚こうミルク」「ホーキーポーキー」「ピスタチオ」以外はすべて日ひ替がわりです。また、毎週新しい味のジェラートを作っており、営えい業ぎょう中はジェラートの販はん売ばいや事じ務む作業の合間に新商品のレシピ開発を行っています。新商品は季節のフルーツやお酒、和の素そ材ざいを使ったものなどさまざまです。中には、お客さまからいただいたリクエストをヒントに作られたものもあります。以前、常じょう連れんのお客さまに「うなぎ味はどう？」と冗じょう談だん交じりに提てい案あんされたことがありました。蒲かば焼やきのたれを使うのはどうかなど、真しん剣けんに考えた結果、うなぎの蒲かば焼やきにかける「さんしょう」を練ねり込こんだミルクベースのジェラートを作りました。そんな意外な組み合わせのジェラートが生まれるのも、レシピ開発の面おも白しろさです。

ジェラート作りにおいて、私わたしが何よりもこだわっているのが、味です。ジェラートは素そ材ざいの味がそのままダイレクトに反はん映えいされるため、材料の分量ひとつで味が大きく変わります。例えば、同じフルーツ系けいのフレーバーでも、その日に仕入れたフルーツの糖とう度どや熟じゅくし具合によって味わいが異ことなるため、毎回、分量を細かく調整する必要があるのです。仕し込こみの段だん階かいでも、納なっ得とくがいくまで味の微び調ちょう整せいを重ねるため、ときには一から作り直すこともあります。
自分のこだわりを追求するためには、自分の足で材料を探さがしに行くことも大切だと考えています。使用するフルーツなどの材料は、自ら市場に行って味を確たしかめてから調達するなど、素そ材ざい選びにもこだわっています。また、お店で使用しているジェラートマシンも、開業前に展てん示じ会かいに行き、自分の理想に近いジェラートが作れるイタリアの老舗しにせメーカーのものを導どう入にゅうしました。私わたしが目指すのは、素そ材ざい本来の味わいをしっかりと感じられる、本当においしいジェラートをお客さまに提てい供きょうすることです。そのために、味には一いっ切さい妥だ協きょうせず、日々、努力を重ねています。

ところで、みなさんはジェラートとアイスクリームの違ちがいを知っていますか？ジェラートは、イタリア語で「凍こおったお菓か子し」を意味します。一いっ般ぱん的てきなアイスクリームと比くらべると、なめらかでふわふわとした口当たりが特とく徴ちょうです。その秘ひ密みつは、乳にゅう脂し肪ぼう分と空気の含がん有ゆう量りょうの違ちがいにあります。一いっ般ぱん的てきなアイスクリームの乳にゅう脂し肪ぼう分は8％以上とされていますが、ジェラートは5%前後と低いため、カロリーも控ひかえめでさっぱりした味わいになります。また、ジェラートやアイスクリームは、調理工こう程ていで材料をかき混まぜながら冷やし固めます。かき混まぜるときに材料の中に空気が含ふくまれますが、両者はその際さいに含ふくまれる空気の量が異ことなります。ジェラートはアイスクリームよりも空気の含がん有ゆう量りょうが少ないため、密みつ度どが高く、なめらかな食感が生まれるのです。ジェラートはなめらかでクリーミーな食感を保たもつために、お店のショーケースで温度管理をして保ほ管かんしています。

今でこそジェラート屋さんとして日々忙いそがしく過すごしていますが、実はジェラート店を開業する前は看かん護ご師しとして働いていました。とはいえ、もともと看かん護ご師しになりたいと希望していたわけではありません。両親の強い勧すすめにより、将しょう来らいに役立つ資し格かくとして看かん護ご師しの資し格かくを取しゅ得とくしようと考え、看かん護ご学部に入学しました。
私わたしにとって大きな転機となったのは、大学1年生のときに行った短期留りゅう学がくです。もともと海外での生活に憧あこがれていたこともあり、大学の留りゅう学がくプログラムを利用して1か月間、ニュージーランドに語学留りゅう学がくしました。現げん地ちで観光をしている際さい、何気なく食べたジェラートがあまりにもおいしく、日本にはないその味に強い衝しょう撃げきを受け、すっかり魅み了りょうされました。そのときに「いつかジェラート店を開きたい」という夢ゆめが生まれたのです。ニュージーランド滞たい在ざい中は現げん地ちのジェラート店で働きながらジェラート作りを学び、帰国後も看かん護ご師し国家試験の勉強や実習の傍かたわら、ジェラート作りや店てん舗ぽ経けい営えいのための勉強をこつこつと続けました。

大学卒業後は、看かん護ご師しとして約1年間、都内の医い療りょう機関で働いていました。看かん護ご師しの仕事は忙いそがしく、夜や勤きんもあったのでとてもハードな毎日でしたが、そこで身に付いた体力と忍にん耐たい力りょくは今の仕事にも生きていると思います。
働きながら開業資し金きんを貯ためつつ、仕事の合間を縫ぬって本ほん格かく的てきに開業のための勉強を始めました。特に苦労したのが、事業計画書の作成です。お店をオープンするには、機材の購こう入にゅうや材料の仕入れなど、初期費ひ用ようがかかります。自分で貯ためたお金だけではまかなえないので、銀行から融ゆう資しを受ける必要がありました。銀行から融ゆう資しを受けるには、事業計画書を作り、明めい確かくな事業計画を立てて提てい出しゅつする必要があります。事業計画書は、お店の経けい営えいを進めるうえでの重要な指標となる、非ひ常じょうに大切な書類です。お店の方ほう向こう性せいを示しめすだけでなく、どのように収しゅう益えきを上げて、借り入れたお金を返へん済さいしていくか、具体的な返へん済さい計画を立てなければなりません。事業計画書の作り方は、電子書しょ籍せきサービスを活用していろいろな書しょ籍せきを読みながら独どく学がくで学び、区の相談所で専せん門もん家かに相談して少しずつ形にしていきました。知ち識しきが全くない状じょう態たいから勉強を始めたので、初めは用語を覚えるのにも苦労しましたが、「絶ぜっ対たいに自分の力でお店をオープンするんだ」という強い思いが、私わたしを突つき動うごかしていました。

念願のジェラート店をオープンしてからは、大好きなジェラート作りに熱中できる毎日がとても楽しいです。看かん護ご師しとは働き方が全く異ことなるので、初めは戸と惑まどうこともありましたし、独どく立りつ開業して自分の力だけで生活していかなくてはならないという不安も感じていました。しかし、心を込こめて作ったジェラートをお客さまに「おいしい」と言っていただけたり、ジェラートを気に入ってくれたお客さまがリピーターになってくださったりすることが、何よりもうれしいです。一日の頑がん張ばりの成果が売り上げに表れているのを見るときも、やりがいを感じられる瞬しゅん間かんです。
「ジェラート店を開きたい」という夢ゆめはずっと周しゅう囲いには秘ひ密みつにしていて、自分の心の中だけで温めていました。看かん護ご師しを辞やめてジェラート店を開業するときも、両親には事後報ほう告こくだったため猛もう反はん対たいされましたが、自分の好きなことで生きていきたいという強い思いを貫つらぬきました。自分の後こう悔かいしない道を選んで本当によかったと思っています。次なる目標は海外進出です。いつか他のアジアの国々でも、私わたしのジェラートを食べてもらえるように頑がん張ばりたいです。

私わたしのモットーは「とりあえず自分でやってみる」です。自分の中で浮うかんだアイデアは、自分自身の力で行動に移うつしてみるということを大切にしています。みなさんにも、常つねに探たん求きゅう心しんを持っていろいろなことに取り組んでほしいです。やってみないとわからないことも多いので、何事にもまずは挑ちょう戦せんしてみることが大切だと思います。自分で実行することに意い義ぎがあると思うので、興きょう味みが湧わいたことにはぜひ積極的にチャレンジしてみてください。
中には「将しょう来らいやりたいことや好きなことが見つからない」と悩なやんでいる方もいるかもしれません。そんな方は、今のうちにしっかり勉強しておくことをおすすめします。私わたし自身、中学・高校時代は、熱中できるものが見つかりませんでした。県立大学に進学したのですが、開業するときに取引先の方から「県立大学出身なんですね」と言われ、それが信用につながった経けい験けんがあります。勉強してきたことが、社会的な信しん頼らいという形で役立つこともあるのだと実感しました。勉強は自分の視し野やを広げてくれるものでもあります。その過か程ていでやりたいことが見つかったり、将しょう来らいやりたいことが見つかったときに役立ったりすることがあるかもしれません。