私わたしは、企き業ぎょうから物品を提てい供きょうしていただき、物品を必要とする団だん体たいに寄き付ふするためのサービスを運うん営えいする「株かぶ式しき会がい社しゃStockBase（ストックベース）」という会社を経けい営えいしています。
企き業ぎょうなどでは、災さい害がいに遭あって自じ宅たくに帰れなくなってしまった従じゅう業ぎょう員いんや、避ひ難なんしてきた人たちの食料として、保ほ存ぞん食しょくを大量に保ほ管かんしています。災さい害がい用に用意された保ほ存ぞん食しょくにも賞しょう味み期き限げんはあるので、賞しょう味み期き限げんが近くなると、古いものを捨すてなければならないことがあります。まだ安全に食べられるものを、「賞しょう味み期き限げんが近いから」という理由だけで捨すててしまうのはもったいないですよね。そこで私わたしは、企き業ぎょうが持っている保ほ存ぞん食しょくなどを提てい供きょうしてもらい、必要としている誰だれかに寄き付ふして「譲ゆずってくれてありがとう」という思いに変えるためのサービスを考えました。そして、大学在ざい学がく中だった2021年4月に今の会社を起業しました。企き業ぎょうから提てい供きょういただく物品、お米や保ほ存ぞん水すいなどの備び蓄ちく食料のほかに、未使用のノベルティ（企き業ぎょうが宣せん伝でん用ように無料で配はい布ふする文具やグッズ）などもあります。寄き付ふ先さきは、全国にあるフードバンクや子ども食しょく堂どうなどを展てん開かいする福ふく祉し系けいのNPO法人のほか、大学などの教育機関が中心です。起業から2年経たった今、これまでに約80社の企き業ぎょうから物品を提てい供きょういただき、全国の約300の団だん体たいに寄き付ふするなど、たくさんの方々にサービスをご利用いただいています。
私わたしたちは、物品を提てい供きょうしてくれる企き業ぎょうから「サービス利用料」をいただくことで、会社を運うん営えいするために必要な収しゅう益えきを得えています。また、寄き付ふ先さきへの「配送料」も物品の提てい供きょう企き業ぎょうに負ふ担たんいただいています。物品の廃はい棄きにかかる廃はい棄き物ぶつ処しょ理り料金は、StockBaseに支し払はらうサービス利用料・配送料の合計金きん額がくと比くらべても、大きな違ちがいはありません。企き業ぎょうは、同じくらいの金きん額がくを支し払はらうことで、”廃はい棄きではなく寄き付ふ”という選せん択たくができるのです。一方で、寄き付ふを必要とする団だん体たいは、当社のウェブサイトから必要な物品を選び、無料で受け取ることができるというのが、このサービスの仕組みです。

私わたしの経けい営えい者しゃとしての仕事は、大きく3つあります。
1つ目は、サービスをよりよいものにするための仕組みを作ることです。例えば、物品を提てい供きょうしてくれた企き業ぎょうに、寄き付ふされた物品がどのように活用されているかをお知らせする方法を考えたり、寄き付ふ品の転売を防ふせぐためのルールを整えたりすることです。このように、サービスを作った後も、やらなくてはならないことはたくさんあります。サービスを利用した企き業ぎょうや団だん体たいからの要望をもとに、一いっ緒しょに働いている仲間や物品を運ぶ運送業者などの取引先とも相談しながら、サービスを安心してご利用いただけるよう、随ずい時じ、改かい善ぜんしています。
2つ目は、サービスをいろいろな人に知ってもらうことです。起業当初は、企き業ぎょうや団だん体たいに直ちょく接せつ、連れん絡らくし、当社のサービスで解かい決けつできる課題はないか、アプローチすることもありました。今は、イベントや展てん示じ会かいに参加して、当社のサービスに興きょう味みを持ってくれた企き業ぎょうや団だん体たいにアピールする機会を作っています。
3つ目は、会社をさらに大きくするための計画を立てることです。例えば、捨すてられる予定だった備び蓄ちく用のお米を紙の商品に作つくり替かえるといった、「アップサイクル」という方法で、「もったいない」をなくすサービスを展てん開かいできないかと考えています。このように、提てい供きょうできるサービスを今よりも増ふやし、会社をさらに成長させる計画を立てています。

起業当初は課題も多く、大きなトラブルに見み舞まわれたこともありました。一番、印いん象しょう的てきだったのは、何十トンもある食料品の受け取り方法の連れん絡らくに行いき違ちがいがあり、寄き付ふを希望していた団だん体たいに受け取っていただけなかったというトラブルです。このときは、自分たちで車を借りて食料品を回かい収しゅうし、ほかに受け取ってくれる方を探さがしながら夜通し配り歩くといった、大変な経けい験けんでした。もちろんその後は、物品の受うけ渡わたしまでの流れを見直し、物品を確かく実じつにお渡わたしするための仕組みを作りました。
また、大学生のときに起業したので、会社経けい営えいの方法やビジネスマナーのような基き本ほん的てきなことがわからず、全て手て探さぐりでした。そこで、起業家の先せん輩ぱいたちからアドバイスをいただいたり、起業家向けの学習会に積極的に参加したりすることで、仕事の進め方を一つずつ覚えていきました。

多くの課題を乗のり越こえ、スムーズにサービスを提てい供きょうできるようになった今は、お褒ほめの言葉をいただくことが多くなりました。食料品の寄き付ふを受け取った団だん体たいなどから「食事を十分に取れない方々に配はい布ふできて助かった」といった言葉を、物品を手にした方々の写真と一いっ緒しょにいただくと、とても励はげみになります。
そうした言葉や写真をレポートにして企き業ぎょうに届とどけると、「寄き付ふをしてよかった」という感想をいただけます。当社のサービスを通して「受け取れてよかった」「寄き付ふをしてよかった」という思いの循じゅん環かんが生まれていくことが、何よりうれしいですね。
また、こうした実じっ績せきを積み上げていくことで、私わたしたちのサービスを、ビジネス系けいのイベントやウェブメディアなどでたくさん取り上げていただけるようになりました。「『もったいない』をなくす」という当社の理念を伝え、それに共感してくれる方がいると実感することも、大きなやりがいにつながっています。

会社を経けい営えいしていると、重要な決けつ断だんをしなければならないことがたくさんあります。はっきりとした正せい解かいが見えていることもあれば、どうすることが正せい解かいなのかがまったくわからないこともあります。決けつ断だんに迷まよいそうなときに私わたしが大事にしているのは、「自分がどうしたいか」という原点に立ち返って、それを軸じくにして考えることです。
私わたしがなにより実じつ現げんしたいのは、「『もったいない』をなくす」ことです。そのためには、会社を成長させ、より多くの人にサービスを届とどけなくてはなりません。だから、事業を大きくするために資し金きんを借りるかどうか、など、会社を経けい営えいするための判はん断だんが必要なときには、「『もったいない』をなくすために、さらに会社を成長させるにはどうしたらいいか」という軸じくで、進むべき道を選んでいます。そして、選んだ道が正せい解かいだったと言えるよう、努力することも欠かせません。

昔から起業をしたいと考えていたわけではありません。子どものころに見た医い療りょうドラマの世界に憧あこがれ、「医い療りょうに関わる仕事がしたい」と考えていました。高校生になってからは「医い療りょう機関の経けい営えいを支し援えんする」という形で医い療りょうに関わることを志こころざすようになり、大学では経けい営えい学がくなどを学び、医い療りょう系けいメーカーなどに就しゅう職しょくしたいと思っていました。そんな中で起業を意い識しきしたのは、大学3年生のときでした。
大学３年生のとき、企き業ぎょうで余あまった新品の壁かべ掛かけカレンダーや卓たく上じょうカレンダーなどを高こう齢れい者しゃ施し設せつに届とどけている方に出会い、そのお手伝いをするというボランティアをしていました。私わたしはそのとき、自分では普ふ段だんスマートフォンのカレンダーアプリを使っているから、紙のカレンダーはあまり必要ないように感じていました。しかし、高こう齢れいの方はカレンダーに直ちょく接せつメモをしたり、薬を貼はり付つけて飲み忘わすれを防ふせいだりと、いろいろな用よう途とで使っていると知りました。そこで、「誰だれかにとってはいらないものでも、それを必要としている誰だれかがいる」ということに気づいたのです。
ちょうど同じ時期に、大学の「起業プランニング論ろん」という授じゅ業ぎょうで、ビジネスコンテストに応おう募ぼするという課題が出されました。そこで、ボランティアでの気づきを生かし、当社のサービスにつながるビジネスアイデアを、授じゅ業ぎょうを受けていた仲間とつくって応おう募ぼしたところ、３つのコンテストで受じゅ賞しょうしたのです。このことが起業への後あと押おしになり、大学3年生のときに大学を休学して、一いっ緒しょにコンテストに応おう募ぼした仲間とともに起業しました。

今は明るくポジティブに物事を考える性せい格かくですが、昔は自分の意い志しは出さず、友達に合わせて行動するような性せい格かくでした。中学から高校までバスケ部に所しょ属ぞくし、部長を務つとめていたのですが、そのころも自分を出すより仲間を支ささえるタイプの部長だったと思います。
そんな性せい格かくが変わったのは、大学に進学し、授じゅ業ぎょうやサークル活動を通して自分の世界が一気に広がったことがきっかけでした。また、大学で知り合った仲間たちはみんな個こ性せい豊ゆたかで、自分の考えやこだわりを大事にしている人ばかりだったのです。そんな仲間と授じゅ業ぎょうや遊びを通して関わっていくうちに、自分の考えや価か値ち観かんをアピールしていくことを、楽しいことだと思うようになりました。小さいころから両親には、「自分は自分、みんなはみんな」と言われていましたが、大学生になってようやく自分らしさを出す大切さを知ったように思います。

この記事を読んでいるみなさんの中にも、自分で会社を作ってみたいと考えている人がいるかもしれません。一方で、「将しょう来らいの目標が見つからない」と悩なやんでいる人も少なくないと思います。どんな人でも、将しょう来らいのことを考えるときに、まず始めにやってみてほしいことは、「自分が解かい決けつしたいと思う課題を見つける」ということです。
では、課題の見つけ方はどうすればいいのかと思いますよね。そんなときは、日にち常じょうの「なんでだろう」を探さがすことから始めてみましょう。例えば、電車に乗っている人や街を歩く人たちの顔を見て、「なんでこの人は悲しそうなんだろう」「この人はなぜうれしそうなんだろう」と考えてみてください。または、テレビや動画の合間に目にする広こう告こくを見て、「なんでこの商品が売られているんだろう」と調べてみるのもいいでしょう。日にち常じょうの中にある「なんでだろう」を深く考えれば、課題が見つけられるかもしれません。そうやって見つけた課題を、自分ならどのように解かい決けつするかを考えることで、誰だれかの役に立つサービスを思いついたり、自分の目標を見つけたりすることができますよ。
自分のやりたいことが見つかったら、あとは勇気をもって一歩踏ふみ出だしてみることです。きっと成功する、という気持ちを大事にして、失敗を恐おそれずにチャレンジしてみてください。