私わたしは東京・荒あら川かわ区くにある東京都認にん証しょう保ほ育いく所しょ「あっぷる園」で，園長を務つとめています。一時期，ほかの大きな保ほ育いく園えんで働いたこともありますが，2006年の「あっぷる園」開園時からのメンバーなので，もう通算で10年以上，ここで働いています。保ほ育いく園えん周辺の地ち域いきには待機児童が多いため，2017年には近くに姉妹園「あぷりこっとナーサリー」も開園しています。
現げん在ざい，私わたしが園長を務つとめる「あっぷる園」では，正せい規き職しょく員いん8名を含ふくめた15名体たい制せいで，0歳さいから2歳さいまでの子どもたち25名を預あずかっています。少人数なので，きめ細かく子どもたちを見て，アットホームな保ほ育いくをしています。園長の仕事では，子どもたちと保ほ育いくスタッフたちの状じょう況きょうを常つねに把は握あくして，柔じゅう軟なんに対たい応おうすることが求められます。子どもたち全員の安全を第一に考え，常つねに園全体を見て動きます。どこか危あぶないところはないかなど，環かん境きょうの整せい備びを心がけ，気をつけてほしいと思ったことはすぐに保ほ育いくスタッフに話して，改かい善ぜんするようにしています。

自分の子どもがまだ小さいので，現げん在ざいは9時半から17時の時短勤きん務む（子育てのために，働く時間を短たん縮しゅくして勤きん務むすること）をしています。だいたい9時すぎに出しゅっ勤きんし，まず，園全体の状じょう況きょう，子どもの人数と保ほ育いくスタッフの人数を把は握あくします。そして，一日の保ほ育いくが安全でスムーズに進められるように，人員を配置したり，その日の活動内ない容ようをスタッフたちに確かく認にんします。そのあとは，人手が足りなければ保ほ育いく士しとして保ほ育いくに入ることもありますし，人手が足りている時は，スタッフたちのシフトや園だよりをつくるなどの事じ務む作業をします。また，まめに園全体をうろうろするようにして，通りかかったときに気になるところがあれば，手伝いに入ったり，声をかけたりすることを大切にしています。
保ほ育いく士しとして保ほ育いくに入るときは，子どもたちが自分の思いを言葉で伝えられない年ねん齢れいなので，表ひょう情じょうやしぐさなどの様子をしっかりと観察します。その子が何を感じているのかをくみ取って，適てき切せつに関わることを心がけています。
「あっぷる園」は小さな保ほ育いく園ですが行事に力を入れていて，お誕たん生じょう日び会やハロウィン，発表会などの行事があります。行事の準じゅん備びは私わたしも率そっ先せんして進めるので，行事前は忙いそがしくなりますね。また，2月末は，保ほ育いく園えんを探さがす保ほ護ご者しゃからの問い合わせが多く来るので，あわただしくなるシーズンです。

保ほ育いく園えんでは子どもたちの命を預あずかるので，私わたしの仕事には大きな責せき任にんがともないます。また，仕事中は，どうすれば子どもたちが楽しく快かい適てきに過すごせるかを考えるのが楽しい反面，大変なところでもあります。この仕事の特とく徴ちょうとして，何か一つのことだけに集中してしまうことはありません。たとえ書類仕事をしながらも，いつも神しん経けいを研とぎすませて，まわりを気にしています。そのぶん，一日の仕事を終えるとぐったりしますね。何らかの理由で子どもがケガをしてしまったときに，「見ていなかった」とは絶ぜっ対たいに言えません。なぜケガをしてしまったのか，必ず説明できなければいけません。だから，保ほ育いくに入っていない時もつねに子どもたちに意い識しきを向けることができなければ，園長の仕事は務つとまらないんです。
また，「あっぷる園」は保ほ護ご者しゃと保ほ育いくスタッフとの距きょ離りが近い保ほ育いく園えんです。保ほ護ご者しゃとはお迎むかえのタイミングなどにお話をして，さまざまな状じょう況きょうをしっかり伝え合うように心がけています。「あっぷる園」では保ほ護ご者しゃの見学はいつでもできますし，保ほ育いく参加といって，保ほ護ご者しゃにマスク，帽ぼう子しをつけてもらい，普ふ段だんの子どもの姿すがたを見てもらう試みも行っています。
スタッフには，子どもや保ほ護ご者しゃのことで少しでも気になることがあったら，すぐに私わたしに伝えてほしいといつも言っています。また，保ほ護ご者しゃと園との間でやりとりする連れん絡らくノートに少しでも保ほ護ご者しゃの意見や要望が書いてあれば，その都度解かい決けつしていけるよう，お迎むかえ時に担たん当とう保ほ育いく士しや私わたしがお話をお聞きするようにしています。子どもたちが快かい適てきに過すごせる環かん境きょうをつくる努力はおこたりません。

子どもが日々，成長していくのを間近に見られるのは，保ほ育いく士しの仕事の大きなやりがいです。例えば，野菜を食べられなかった子が，食育活動を通して「自分たちが育てたものだから食べてみよう」と野菜を口にする姿すがたを見たり，トイレで排はい泄せつできなかった子が初めてトイレでできたり，歩けるようになる瞬しゅん間かんに立ち会えたり，語りつくせないくらい，いろいろなことがあります。0歳さいから2歳さいの時期というのは，毎日ぐんぐん成長して，さまざまな変化を見られるころです。私わたしたちは子どもと長い時間いっしょに過すごすので，初めての瞬しゅん間かんに立ち会えるケースもたくさんあります。

園長として，保ほ育いくスタッフたちとの関わり方にはいつも気をつけています。何か気になることがあるときは，その都度ミーティングをして，スタッフのみんながどう思っているのかを聞き出します。私わたしが一方的に言うのではなく，なるべくスタッフと同じ目線で話すようにしています。心を開いて話し合いをするには勇気も必要ですが，話し合いがうまくいくとスタッフの対たい応おうが大きく変わるので，言ってよかったなと思うことが多いです。また，どんなに小さなことでも報ほう告こく・連れん絡らく・相談をしてもらうことが大切です。園長として，園全体のことは何でも知っておくことが責せき任にんだと思っています。

私わたしが保ほ育いく士しになりたいと思い始めたのは，中学校の終わりごろからです。そして高校に進学し，卒業後の進路を考えたときに，子どもが好き，ピアノを弾ひく，絵を描かくなど，自分の好きなことを全部挙げてみたら保ほ育いく士ししかないと思い，進路を決めました。そこで，高校を卒業してから，保ほ育いく士し養成の専せん門もん学校に進学したんです。この専せん門もん学校では，卒業と同時に資し格かくを取れるので，すぐに保ほ育いく士しとして就しゅう職しょくができます。卒業後は現げん在ざいの保ほ育いく園えんに就しゅう職しょくし，保ほ育いく士しとして経けい験けんを積んでいきました。
私わたしが園長になることを打だ診しんされたのは，ちょうど育児休きゅう暇か中で仕事を休んでいたときのことでした。前の園長が出産のための休きゅう暇かに入るタイミングで，理事長から「園長をやってみないか」と言われました。そこで，「やらせてください」と即そく答とうしたのを覚えています。保ほ育いく士しとして働いてきて，「こういう保ほ育いくがしたい」という思いがちょうどしっかり固まってきた時期でもあったので，話をいただいたときは絶ぜっ対たいにやりたいと思ったのです。

小学生のころから友達に「ママ」と呼よばれるような子どもでした。すでにそのころから人の面めん倒どうを見るのが好きだったのです。小学校の卒業アルバムで「大きくなったらいいお母さんになりそうな人」ナンバー1が私わたしでした。相手が何を考えているのかを考えたり，人をよろこばせたりすることが好きで，これは今も変わりません。
小学生のころは，世話好きなだけでなく目立ちたがり屋な一面もあって，学芸会の劇げきでは目立つ役に立りっ候こう補ほしたり，ピアノの伴ばん奏そう者しゃも進んで引き受けたり，自分にできるものは全部やっていた記き憶おくがあります。放課後は校庭で友達とキックベースをしたり，体を動かすのも大好きでした。中学生のころは部活に熱中して，真っ黒になりながら，毎日ソフトテニスに打ちこんでいました。部活がない日の放課後は，友達と過すごすことが多かったですね。

私わたしがみなさんに伝えたいことは，何かひとつでもいいから好きなことを探さがしてほしいということです。本当にちょっとした好きなことでもいいのですが，それが自分の将しょう来らいの職しょく業ぎょうに繋つながってくるはずです。私わたしの友達で，包ほう装そう紙しでラッピングすることが好きな人がいます。彼かの女じょは子育てで仕事を断だん念ねんしていた時期に，ちょっとしたすき間の時間にできることを探さがして，商品をきれいにラッピングしてネットで販はん売ばいする仕事を始めました。そうしたら，今ではものすごくヒットしています。ほんの小さなことからでも，自分の得意なことを繋つなげて，人はどんどん自分の幅はばを広げていけます。だから，今からでも少しずつ，ひとつでもいいから好きなことを探さがしていってほしいです。